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「小脳梗塞」とは?症状や前兆についても解説!

 更新日:2023/02/28
「小脳梗塞」とは?症状や前兆についても解説!

小脳梗塞は後頭部にある小脳に発生した脳梗塞です。通常の脳梗塞とは異なる小脳梗塞ならではの症状も見られます。

こちらでは小脳梗塞の症状や治療法についてさまざまな質問にお答えしています。

突然発症する小脳梗塞ですが、早い段階で治療を行うことで後遺症も残さず完治が可能です。

治療法とともに効果的なリハビリの内容や予防法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

小脳梗塞の特徴や症状

指を立てる男性医師

小脳梗塞とはどのような病気ですか?

  • 小脳梗塞は脳の小脳で発生する脳梗塞です。小脳は後頭部の下部にあり、体のバランスを保つ機能を司ります。
  • 小脳の血管のうち、椎骨動脈が詰まり血液が充分に流れなくなることで発症します。
  • 脳梗塞の中では発症頻度は比較的少なく、脳梗塞全体の2〜6%です。
  • 前期高齢者がかかりやすく、どちらかというと男性に多いのが特徴です。
  • 比較的かかりにくい疾病ですが、早期に発見し治療を行う必要があります。

どのようなことが原因で小脳梗塞になりますか?

  • 小脳梗塞の発症原因としては生活習慣によるものが多く、脂質や糖質の多い食べ物の過剰摂取は、血流の妨げになり小脳梗塞を引き起こす大きな原因です。
  • アルコールの過剰摂取や喫煙習慣も血管を収縮させて血流悪化のもとになります。
  • これもまた小脳梗塞の原因となるのです。糖尿病や高血圧などの生活習慣病も血管を詰まらせるリスクを高めます。
  • また先天的に椎骨動脈が細い場合や狭まっている場合には、怪我などがきっかけで血管が詰まってしまうことがあります。
  • この場合にも小脳梗塞を引き起こすことがあるのです。これは比較的若い人に多いケースです。

症状について教えてください。

  • 小脳は体のバランスを保つ役割を持っています。小脳梗塞によってバランス感覚や平衡感覚に支障をきたし、真直ぐに歩けない・ふらつきがあるなど運動障害を引き起こします。
  • その他、めまいや嘔吐が主な症状です。
  • しかし、これらの症状だけでは突発性の難聴と診断されることがあり、小脳梗塞と診断がつきにくい場合もあります。
  • また、小脳梗塞特有の症状として、麻痺は無く力も入るのに手足がうまく動かないことが挙げられます。
  • 構音障害も症状のひとつですが、酔っぱらったような話し方になるため、障害が起きているとすぐに理解されないこともあるのです。

前兆はありますか?

  • 小脳梗塞は突然起こることが多いのですが、小脳梗塞を含む脳梗塞の前兆と考えられる症状に一過性脳虚血発作があります。
  • 一過性脳虚血発作の場合、血管が一時的に詰まっている状態で血栓が溶ければ自然に血流が戻り症状は消えます。
  • このため重要視されないことが多いのですが、この後脳梗塞になってしまうケースがあり、脳梗塞の前兆ともいえるのです。
  • 一過性脳虚血発作の症状には次のような症状があります。
  • ろれつが回らなくなる
  • 顔面麻痺
  • 手足の痺れ
  • 症状が改善されても15%〜20%の人が3ヶ月以内に脳梗塞を発症するといわれ、その半数は数日以内に発症しています。
  • 放置せずにできるだけ早く医療機関を受診するようにしてください。
  • さらに小脳梗塞の場合、回転性のめまいやふらつきなどの運動障害が初期の症状としてあらわれる場合が多いので早急な受診が必要です。

小脳梗塞の検査方法や治療法

MRI室

どのような検査を行いますか?

  • 小脳梗塞の検査には画像検査・血液検査・心電図・超音波などがあります。
  • 画像検査には頭部CT検査と頭部MRI検査があります。
  • 頭部CT検査は発症後すぐの小脳梗塞は発見しにくいのですが、脳梗塞と脳出血との区別を確認するために行う場合が多いです。
  • 検査の結果脳梗塞が疑われる場合には頭部MRIが行われます。頭部MRIでは発症直後の脳梗塞が発見されやすいのです。
  • 頭部MRIでは拡散強調画像・T1強調画像・T2強調画像が使われます。
  • また血液検査が行われるのは糖尿病・脂質異常症など小脳梗塞の原因のもととなる疾病の有無を確認するためです。
  • 心臓の血栓が脳に送られることがあるため不整脈を確認する心電図や、首の頸動脈に狭窄がないか確認する超音波検査が行われることもあります。

治療法について教えてください。

  • 小脳梗塞に限らず脳梗塞には早急な治療が必要になります。発症後4.5時間以内であればrtーPA(アルテプラーゼ静注血栓溶解療法)の薬物療法で血流を戻すことが推奨されます。
  • この療法は早いほど効果的です。
  • その後は脳の浮腫を防ぐためや血液の凝固を抑えるための薬剤を点滴し、ダメージを回復させます。
  • 症状が落ち着けばリハビリが開始されますが、急性期の治療により後遺症を残さないケースが増えています。

リハビリはどのようなことを行いますか?

  • 小脳梗塞のリハビリのポイントとしては運動失調を改善することが挙げられます。小脳は体のバランスなどの機能を担っていて、それは次の3つの要因から成り立っています。
  • 筋出力のタイミング
  • 筋肉の選択・組合せ
  • 筋出力の程度
  • 小脳梗塞ではこれらの要因が上手く調節できなくなり、余分な筋肉が動いてしまうなどの運動失調が発生します。
  • そのためこれらの機能を正常にし運動失調を改善するためのリハビリが重要です。それには小脳を意識したリハビリが必要となります。
  • 細かく滑らかな動きに向けた運動イメージを持つ
  • 運動イメージに沿った動きを行うように調整していく
  • 小脳では、ゆっくりとした単純な運動から複雑な運動への展開が望ましいとされています。まずは肘の曲げ伸ばしなどの運動を行い、少し小さなものを持つなどの運動に移行させていくとよいでしょう。
  • 単純な運動から徐々に複雑な運動へとステップアップしていくリハビリが推奨されます。

小脳梗塞の予防法

ノートパソコンを使う男性医師

予防法はありますか?

  • 小脳梗塞の予防法としては他の脳梗塞と同様、動脈硬化の予防が大切になります。
  • 塩分や脂肪分の摂り過ぎには充分注意し、食事内容のバランスを考慮することが大切です。
  • 血液がどろどろと固まり血栓を作るのを防ぐため、水分補給もしっかりと行ってください。
  • 日頃から生活習慣病について考え、必要なら生活習慣の改善を行うことが大切です。
  • 適度な運動で体を動かすことと、気持を穏やかにしてストレスを溜めないことも予防につながります。

治療後に再発することはありますか?

  • 小脳梗塞を再発させないためには、脳の血管へのダメージを与えないことが一番必要なことです。
  • 予防法でもお答えしましたが、生活習慣の見直しが必要な人は改善を心掛けることで再発を防ぐようにしましょう。
  • ニコチンは血管を詰まらせるリスクを高めるため禁煙してください。過度なアルコール摂取もやめましょう。
  • 他人まかせではなく自分自身で再発をふせぐ努力をすることが大切です。
  • 無理のない程度に体を動かし、定期的に医師の診断を受けることも必要です。
  • 病院によっては栄養士の相談も受けられるので小脳梗塞を再発させないための食事療法についても相談するとよいでしょう。

日常生活で気をつけるべきことについて教えてください。

  • 日常生活では生活習慣を改善し、バランスのよい食事を心掛けること・睡眠をしっかり取ること・適度な運動を心掛けることなどに気をつけましょう。
  • 食事では血液をサラサラにする食材を選び、摂取するのも効果的です。
  • ストレスを溜めずに気持を明るく前向きに生活するようにしてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

  • 脳梗塞とは、脳へ血液を送る血管がつまるために起こる病気であり、脳への血管が閉塞して詰まってしまうと、その先に存在する大切な脳細胞へ血液が流れなくなって、脳細胞が死滅してしまい脳梗塞に繋がることになります。
  • 脳梗塞をはじめ脳卒中は青天の霹靂のように突然に起こるのが最大の特徴であり、かかってからしまったと後悔しても手遅れです。
  • そこで、健常人でも普段から脳梗塞を予防しておく方法を知って身に付けておくことが重要です。
  • 普段から魚中心の食生活を心掛けると同時に、脳梗塞を予防する薬を根気よく飲んで再発を防ぐ必要があります。

編集部まとめ

指示する女性
脳の中で体のバランスや平衡感覚を司るのが小脳です。小脳梗塞は小脳の椎骨動脈が何らかの要因で詰まることで発症します。

小脳梗塞の症状ではめまいや嘔吐の他に、体が思うように動かない・ふらつきがあり真直ぐ動けないなどの運動失調が大きな特徴です。

早急な治療で後遺症を残さないケースが多いのも特徴なので、おかしいと思ったらすぐに受診するようにしましょう。

この記事の監修医師