「腸閉塞(イレウス)」になりかけている「初期症状」はご存知ですか?【医師監修】
お腹の不調は、誰もが経験したことがある程よくある症状です。
症状が長引くときは腸閉塞という病気の可能性があります。腸閉塞とは、何らかの理由により、食物や消化液などが腸のなかに詰まってしまった状態です。
腹痛や食欲不振などの症状は、さまざまな病気に共通するもので、それだけですぐに腸閉塞と診断することは容易ではありません。しかし、腸閉塞は外来診療では珍しくない病気です。
この記事では、腸閉塞になりかけの前兆や初期症状について詳しく解説します。原因や予防方法、なってしまったときの診断方法・治療方法も併せて解説するので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
腸閉塞(イレウス)になりかけの前兆・初期症状
前兆症状はありますか?
- 腹部の張り
- 不快感
- 食欲低下 など
しかし、これらは胃腸炎や便秘の症状と似ていて前兆症状だけですぐにこの病気とはわかりづらいのが実情です。
初期症状の特徴を教えてください。
さらに悪化すると、嘔吐やひどい腹痛が波のように起こり、痛みは徐々に持続的な痛み方になっていきます。腸がねじれるタイプの腸閉塞では、突然激しい痛みが起き、顔面蒼白・冷や汗・ショック状態になり緊急を要します。
受診の目安を教えてください。
緊急外来を受診する、または救急車を呼びましょう。特にお腹の手術歴がある方は、この病気のリスクが高いため重篤な状態になる前に早めの受診をおすすめします。
放置するとどうなりますか?
この状態でさらに放置すると、腸が膨張して粘膜が腫れ、炎症が起きます。炎症を起こした腸壁は破裂することもあり、破裂すると出血や内容物が腹腔内に漏出し、腹膜炎やショックを起こします。
こうなると感染症のリスクが高まり、全身に菌が及ぶと敗血症になる可能性もあるため、注意が必要です。初期では簡単な処置で済むことが、放置をしたために手術をしなければならなくなることもあります。発見・治療が遅れると重篤な状態になることもあるため、早く受診しましょう。
腸閉塞(イレウス)の原因と予防
腸閉塞になる原因は何ですか?
癒着予防の処置をしても開腹手術を受けた方の9割に癒着が起きるといわれています。癒着が起きていても何も症状がなければ問題はありません。
しかし、癒着により不自然に引っ張られると曲がったりねじれたりして、この病気の原因になってしまいます。ほかの原因としては、化学療法や放射線照射、進行大腸がんによって発症するケースも増えています。まれに寄生虫や胆石が原因になることもあります。
腸閉塞になりやすい人はいますか?
また、中高齢者で、もともと腸の動きが弱く便秘がちな方や腸の壁に腫瘍ができている方、結核などの感染経験のある方は通過障害が起きやすくなります。進行大腸がんもこれにあたります。
予防方法はありますか?
- 暴飲暴食をしない
- 消化のよいものを食べる
- 規則正しい食事と排便リズムを心がける
- ゆっくりよく噛んで食べる
- 食物繊維の多いものは避ける
食物繊維は普通便秘の改善に役立ちますが、腸が狭くなっているときや腸の動きが悪いときは不溶性食物繊維は消化しにくいため摂り方に気をつけましょう。ただし、いくら気をつけていてもこの病気になってしまうこともあります。気になる症状があれば、食事量を減らすことが効果的とされています。
腸閉塞(イレウス)の診断と治療法
どのような検査で診断しますか?
腸閉塞を疑ったら必ずレントゲン検査を行います。鏡面像と呼ばれる特徴的な様子が見られたら腸閉塞の診断につながるためです。エコーでわかることもあります。腹部のCTでは拡張している場所、細くなっている場所がわかります。
癒着以外の腸閉塞の原因となる腫瘍が見つかることもあり、造影剤を使ってCT検査ができれば、血行障害の有無もわかります。血行障害の有無は腸の壊死の可能性を判断できるため重要な情報です。
治療法を教えてください。
必要な水分は点滴で補うため入院が必要です。絶飲食と点滴で改善することもありますが、通常はイレウス管と呼ばれるチューブを鼻腔から腸まで挿入し、内容物を吸い取り、腸内圧の減圧をします。症状が落ち着き、残りの内容物が自然に吸収されるのを待ちます。
この病気の多くはこの保存方法で改善しますが、改善傾向が鈍いときは1週間を目安にほかの治療方法を検討しなければなりません。内視鏡治療は、主に進行大腸がんやS字結腸捻転が原因の腸閉塞に対して行われます。
内視鏡を使い、狭窄場所にステントと呼ばれる筒状の器具を留置します。これにより、腸の整復・腸内圧の減圧・詰まりの解消が期待できます。保存療法や内視鏡治療が難しい場合は、開腹手術を行います。特に腸管がねじれて腸の血流が悪くなる複雑性腸閉塞の場合は、わずか数時間で腸壁が壊死し重篤な状態になる可能性があるため、はじめから開腹手術を選択することになります。
手術をするか否かは問診やさまざまな検査結果から総合的に判断します。
治療中の入院期間はどのくらいですか?
手術をした場合、翌日から歩行を開始し、腸の蠕動運動を促します。腸が正常に動き始めたと判断されたら、食事を再開します。腹痛がなく、便通があり、通常の食事ができることを確認後退院となります。手術をした場合の方が入院期間は少し長くなる傾向があります。
編集部まとめ
腸閉塞は腸のなかで食べ物が詰まってしまい、腹痛や吐き気が続きます。お腹の不調は珍しくなく、つい受診を先延ばしにしがちです。しかし、この病気は、急激に重篤化する場合もあり、治療のタイミングを逃さないことが重要です。早めの受診で手術を回避できることもあります。心配な症状があれば、我慢せず受診しましょう。
特にお腹の手術の経験がある方や病気になった経験がある方は、暴飲暴食をしない・ゆっくりよく噛んで食べるなど日常で心がけられる予防方法があるのでぜひ取り入れてみてください。