帯状疱疹ワクチンには、シングリックス筋注用と弱毒水痘生ワクチンの二種類のワクチンがあります。
弱毒水痘生ワクチンは安価ですが、シングリックス筋注用の方が長期の予防効果が高いです。このように、両者には違いがあります。
この記事では二種類の帯状疱疹ワクチンの特徴や副作用、スケジュールや価格について解説します。
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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科
帯状疱疹ワクチンの種類
シングリックス筋注用にはどのような特徴がありますか?
シングリックス筋注用は帯状疱疹ウイルスを使わずに、ウイルスの表面に存在する糖タンパク質E(gE)を活用した不活性ワクチンです。糖タンパク質E抗原をアジュバントと組み合わせることで、CD4陽性T細胞と抗体が誘導されて予防効果が発揮される仕組みです。発症予防効果が高く50歳以上で95%以上、70歳以上でも90%予防すると報告されています。加えて予防効果の期間が長く、少なくとも9年間予防し続けるでしょう。また、神経痛予防効果は50歳以上で100%、70歳以上で85%減少すると報告されています。投与スケジュールは2回で、2~6ヵ月の間に筋肉内に再度接種します。
弱毒水痘生ワクチンにはどのような特徴がありますか?
弱毒水痘生ワクチンは、1974年に大阪大学微生物研究所の高橋理明先生によって開発されたワクチンです。水痘患児より分離・継代された弱毒株(生ワクチン)で、患者さんの名前からOka株と命名されました。Oka株はWHOが認める唯一のワクチンで世界中の水痘予防として使われています。米国で使用されたことで水痘予防に使われた際に、帯状疱疹も予防できると発見され、以後帯状疱疹の予防ワクチンとして定着しました。弱毒水痘生ワクチンは水痘のために作られたワクチンであるため、発症予防効果は50%程度、神経痛予防効果は65%程度と効果は高くありません。ただし、接種は1回で済み安価であることが特徴です。
シングリックス筋注用・弱毒水痘生ワクチンの副作用(副反応)
シングリックス筋注用の副作用について教えてください。
シングリックス筋注用には一般の医薬品同様、さまざまな副反応の症状が報告されています。
- 疼痛
- 発赤
- 腫脹
- 胃腸症状(吐き気・嘔吐・下痢・腹痛)
- 頭痛
- 筋肉痛
- 疲労
- 寒気
- 発熱
上記は主な副作用で、持続日数の中央値は3日です。また稀に呼吸困難や蕁麻疹、冷汗のような、ショックやアナフィラキシーの初期症状が発生します。副作用がでた場合は即座に使用を中止し、医師の診察を受けましょう。副作用は上記に記載したもの以外もあるため、気になる症状がでた場合も相談するようにしてください。
弱毒水痘生ワクチンの副作用について教えてください。
弱毒水痘生ワクチンにはさまざまな副反応症例が報告されていますが、シングリックス筋注用に比べて稀です。シングリックス筋注用は、ショックやアフィラキシーの初期症状でなければ10%近い確率で副反応が起きます。一方弱毒水痘生ワクチンの副反応が現れる割合は高くても腫れや赤みが5%程度で、残りは1%程度の頻度で発生します。
- 注射部位の腫れや赤み
- 硬結などの注射部位反応
- 発熱や発疹
- 蕁麻疹
- 紅斑
- そう痒
- 水疱性発疹
- 小脳運動失調
硬結などの注射部位反応や蕁麻疹などの過敏症は頻度不明の副反応です。小脳運動失調にいたっては極めて稀な反応です。
副作用はどのくらいの期間続きますか?
一般的に副反応は体内の免疫システムによって発生します。多くは3~7日以内に弱まるでしょう。シングリックス筋注用の副作用の持続日数は、中央値が3日と報告されています。ショックやアナフィラキシーの初期症状である血圧低下や呼吸困難、全身性の蕁麻疹を伴うアレルギー反応のような重大な副反応は接種後30分以内に起こるでしょう。もし7日を超えても副反応が強い場合や重大な副反応だった場合は、速やかに医師へ相談してください。ちなみに弱毒水痘生ワクチンによる疼痛や腫れなどの一般的な副反応は、ワクチン接種後6~8週間後までに50%近い割合で発現します。一方発熱や全身性の水痘様発疹といった特異的な反応は、接種後1~3週間後に4%程度で発生する可能性があります。
帯状疱疹ワクチンが禁忌となる対象がいますか?
前提として帯状疱疹ワクチンは50歳以上を対象としているため、49歳以下は接種できません。その他では、37.5度以上の明らかに発熱している方や重い急性疾患にかかっている方もワクチンを接種できないです。また、過去にワクチンと同じ成分で接種後30分以内に出現する呼吸困難などのアナフィラキシーを起こした方も接種は禁忌です。一方禁忌ではありませんが、妊婦さんや心臓血管系に基礎疾患がある方は医師への相談が必要なので必ず申告しましょう。ただし、弱毒水痘生ワクチンは妊婦さんには使用できないため注意が必要です。また、接種後2ヵ月間は妊娠を避けなければなりません。
副作用が出たらどうすればよいですか?
副作用とは関係なく失神を起こす可能性があるため、接種後30分は背もたれのある椅子にゆっくり腰をかけましょう。その後、明らかな高熱や痙攣などの異常反応や体調の変化を感じた場合はすぐに医師の診察を受けます。ワクチンの接種によって健康被害が発生した場合は、医薬品副作用救済制度で治療費などが支給される可能性があります。医薬品副作用救済制度とは、ワクチンのような医薬品を適正に使用したにも関わらず、入院が必要な程の副作用が生じた際に救済給付を行う公的制度です。健康被害を受けた本人または遺族が請求書と診断書を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に送付すると、医療費が給付されます。
帯状疱疹ワクチンの効果と費用
各ワクチンの効果の違いを教えてください。
シングリックス筋注用は弱毒水痘生ワクチンに対して、全体的に治療効果が優れています。シングリックス筋注用の発症予防効果は95%以上で、50~70代以上のどの年齢層でも同程度の効果を発揮します。一方弱毒水痘生ワクチンの予防効果は60~70%程度で、70代以上は35%前後にまで効果が低下するようです。シングリックス筋注用の効果は10年以上持続しますが、弱毒水痘生ワクチンは3~5年程度しか持続しません。さらに、帯状疱疹後神経痛に移行するリスクも差があります。シングリックス筋注用では50代で100%軽減し、70代以上で85.5%軽減しますが、弱毒水痘生ワクチンでは全年齢層で66.5%しか軽減しません。
ワクチンの投与スケジュールを教えてください。
帯状疱疹ワクチンは完全予約制であるケースがほとんどです。弱毒水痘生ワクチンかシングリックス筋注用を選び、接種の1週間前までに予約をしましょう。弱毒水痘生ワクチンは一度だけの皮下注射で済みますが、シングリックス筋注用は2回筋肉注射をしなければ予防効果が得られません。一度注射をしてから2~6ヵ月以内に、再度筋肉注射をしましょう。当日の体調がすぐれない場合は、接種が中止になる可能性もあります。その場合は、予約し直すことになります。
費用はどのくらいかかりますか?
弱毒水痘生ワクチンは8,800円(税込)で済みますが、シングリックス筋注用は1回の注射毎に20,000円(税込)程かかります。このように、シングリックス筋注用の方が高価です。ただしワクチンの予防持続期間は弱毒水痘生ワクチンがシングリックス筋注用に対し半分以下なので、実質的な価格差は2倍程度に収まるでしょう。
編集部まとめ
この記事では、帯状疱疹ワクチンの特徴や副作用について解説しました。帯状疱疹には、シングリックス筋注用と弱毒水痘生ワクチンの二種類のワクチンがあります。
弱毒水痘生ワクチンは水痘予防として開発されたワクチンですが、帯状疱疹にも予防効果があることが発見されました。費用は安価で一度の注射で済む一方、発症予防効果は低く、効果持続期間も短いです。
シングリックス筋注用は帯状疱疹用に開発されたワクチンで、高価ですが発症予防効果は高く、効果持続期間も長いことが特徴です。
両方のワクチンに副作用が確認されており、軽度の症状であれば高い頻度で現れます。ショックやアナフィラキシーの初期症状が出た場合は、すぐに医師へ相談してください。