「ウェルニッケ脳症」の症状や原因など解説!アルコール依存症との関係は?
ウェルニッケ脳症についてご存知でしょうか?この疾患はビタミンB1不足によって引き起こされ、脳に深刻な影響をもたらします。主にアルコール依存症の方々によく見られますが、他の健康上の問題も原因とされています。本記事ではウェルニッケ脳症について以下の点を中心にご紹介します。
・ウェルニッケ脳症とは
・ウェルニッケ脳症の治療
・ウェルニッケ脳症の予防
ウェルニッケ脳症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
ウェルニッケ脳症について
ウェルニッケ脳症とはどのような病気ですか?
ウェルニッケ脳症の症状にはどのようなものがありますか?
錯乱: 患者は混乱し、周囲の環境や状況を正確に認識できなくなります。
眠気: 患者は過度な眠気を感じることがあります。
眼球の不随意運動(眼振):目が自動的に左右や上下に動くこと。
眼の筋肉の部分麻痺(眼筋麻痺): 目の筋肉が正常に動かなくなること。
平衡感覚の喪失:歩行時にバランスを失い、ゆっくりと小刻みに歩くことが必要となる。
特に、アルコールの過度な摂取が原因となることが多いウェルニッケ脳症は、早期の診断と治療が非常に重要です。症状が現れた場合、速やかに医師の診断を受け、必要な治療を受けることが推奨されます。
ウェルニッケ脳症の考えられる原因はなんですか?
食事の偏りや栄養不足:極端に偏った食生活や、栄養が不足している状態が続くと、ビタミンB1の摂取が不足します。
アルコール依存症:アルコールの過度な摂取はビタミンB1の吸収を妨げる可能性があり、特に毎日の食事を摂らずにアルコールを摂取する生活を続けると、ウェルニッケ脳症のリスクが高まります。
胃の手術: 胃の全摘手術などの医療処置により、ビタミンB1の吸収が低下することがあります。
これらの原因によりビタミンB1が不足すると、ウェルニッケ脳症の症状が現れる可能性があります。
チアミンとはなんですか?
ウェルニッケ脳症の治療について
ウェルニッケ脳症にはどのような治療が行われますか?
ビタミンB1の大量投与:発症した際、患者には静脈注射によるビタミンB1の大量投与が行われます。これにより、ビタミンB1の不足を速やかに補えます。
食事による予防:ウェルニッケ脳症の予防のためには、食事を通じてビタミンB1を積極的に摂取することが推奨されます。特に、豚肉、魚、ブロッコリーなどの食品にはビタミンB1が豊富に含まれています。
アルコール摂取の制限:アルコール依存症がウェルニッケ脳症の原因となる場合があるため、発症した場合は速やかに飲酒を中止することが必要です。
禁酒はウェルニッケ脳症の治療の一環ですか?
禁酒はアルコール性認知症やウェルニッケ脳症の治療において重要な一環です。アルコール性認知症は、長期間の過剰飲酒によって引き起こされる脳の損傷です。この状態では、脳組織が萎縮し、認知機能が低下します。しかし、適切なアプローチによって改善の可能性があります。
アルコール性認知症の治療において、まず断酒が重要なステップとなります。アルコールを摂取しないことで、脳への悪影響を減少させられます。ただし、アルコール依存症の方々にとって自制が難しい場合もあります。そのような場合は、療養施設への入院やアルコール外来での治療を検討することがあります。こうした場所では、飲酒欲求を減少させる薬の処方やアプローチが行われ、断酒を支援します。
代表的な薬として、「ナルメフェン」(セリンクロ)や「アカンプロサートカルシウム」(レグテクト)などが挙げられます。これらの薬は脳神経に働きかけ、飲酒欲求を抑える効果があります。また、「ジスルフィラム」(ノックビン)という抗酒薬も存在し、少量の飲酒でも不快な症状を引き起こすことで、アルコール摂取を抑制します。
ウェルニッケ脳症は治りますか?
コルサコフ症候群はウェルニッケ脳症の後遺症として現れることがあり、その特徴的な症状は記銘力の障害や失見当識、作話などです。この症候群になると回復が極めて困難であり、治療の難しさが示されています。
ウェルニッケ脳症やその後遺症であるコルサコフ症候群の重要な点は、早期発見と適切な治療の迅速性です。ウェルニッケ脳症が発症した際には、チアミンの大量点滴などによる治療が行われることで、症状の回復が期待されます。しかしながら、この病気は診断が遅れることが多く、治療の機会を逸することが多いのが現実です。
ウェルニッケコサノフ症候群とはなんですか?
ウェルニッケ脳症の予防法
ウェルニッケ脳症にならないためのチアミン(ビタミンB1)は何から摂取できますか?
肉類:特に豚肉はビタミンB1の豊富な源です。例として、豚ヒレ(焼き)には100gあたり2.09mg、豚ひき肉(焼き)には0.94mg、豚ロース脂身付き(焼き)や豚ボンレスハムにはそれぞれ0.90mgのビタミンB1が含まれています。
魚類:たらこ(焼き)には0.77mg、うなぎ(かば焼き)には0.75mg、むろあじ(焼き)やあゆ(焼き)にはそれぞれ0.28mgのビタミンB1が含まれています。
イモ、大豆類:いんげんまめ(ゆで)には0.22mg、絹ごし豆腐やさつまいも(天ぷら、蒸し)にはそれぞれ0.11mgのビタミンB1が含まれています。
野菜、果物類:切り干し大根には0.35mg、枝豆(ゆで)には0.24mg、スイートコーン(電子レンジ)には0.16mg、温州みかん(生)には0.10mgのビタミンB1が含まれています。
これらの食品を日常の食事に取り入れることで、ビタミンB1の適切な摂取量を確保し、ウェルニッケ脳症のリスクを低減できます。
ウェルニッケ脳症にならないためのチアミンの摂取量を教えてください。
ウェルニッケ脳症にならないためには禁酒するべきですか?
ウェルニッケ脳症を予防するため、特にアルコール摂取の過度な習慣がある場合は、アルコールの摂取を控えることが重要であると言えるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
ここまでウェルニッケ脳症についてお伝えしてきました。ウェルニッケ脳症の要点をまとめると以下の通りです。
・ウェルニッケ脳症はビタミンB1の不足によって引き起こされ、錯乱などの症状が現れる
・ウェルニッケ脳症の治療には、ビタミンB1の大量投与などがある
・ウェルニッケ脳症の予防には、豚肉などの食べ物からビタミンB1を摂取し、禁酒を心掛ける
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。