「尾骨骨折」の原因や症状を解説!長時間のデスクワークも骨折の原因に?
昨今では食生活や生活習慣の変化によって骨密度が下がり、骨自体が脆くなって骨折しやすい状態の人が多いです。特に高齢者は少し尻もちをつくだけで、骨にひびが入ったり折れたりします。
今回は骨折する部位の中で尾骨にフォーカスを当てて見ていきましょう。 そもそも尾骨はどこにあるのでしょうか。また、何が原因となって骨折してしまうのでしょうか。
この記事では、尾骨骨折の原因・症状・治療方法・後遺症について解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
尾骨骨折の原因や症状
尾骨(尾てい骨)とはどの部分の骨ですか?
お尻の割れ目のあたりを強く押すと固く感じる人も多いのではないでしょうか。この固く感じる部分が尾骨です。人間には尻尾がありませんが、尾骨が尻尾の名残だといわれています。
尾骨骨折とはどのような状態ですか?
また、打撲や捻挫と混同することもありますが同じではありません。打撲は骨ではなく局所に強い力が加わることで、皮下組織が損傷している状態のことです。 稀に骨の内部が傷つく骨挫傷になることがあります。
捻挫は骨や局所に外からの力が加わって起こるわけではありません。関節を捻ったときに、関節を結んでいる靱帯が伸びたり切れていることで起こります。いずれも痛みを伴うことが多いですが、そのうちに収まると自己判断せず整形外科を受診しましょう。
尾骨骨折の原因は?
他にも長時間のデスクワークによる筋肉の凝りによる痛みを放置していると、尾骨骨折につながることがあるので気を付けましょう。
また、出産時に尾骨周辺の筋肉が凝っていると胎児が出てくるときに十分に伸びることができず、尾骨に負荷がかかって骨折します。これは尾骨痛の中でも18%に該当するので、同じ態勢を続けないなど普段の行動を意識しましょう。
症状について教えてください。
- 臀部の痛み
- 腫れ
- 体動困難
- 内出血
痛みは骨折が原因で起こるだけではありません。打ち所が悪く尾骨周辺の靭帯が傷ついていると、激痛になることが多いです。
歩行時よりも座ったり寝転がったりすると痛みを感じやすいでしょう。そのため、起き上がれなかったり動くのがつらかったりと日常生活に支障が出やすいです。特に高齢者だと骨が脆くなっているので、より体動困難に陥りやすくなるでしょう。
骨の骨片が転移し、他の組織にダメージを与えていると腫れや内出血が起こってしまいます。この骨片が転移した場所によっては、排尿障害など臓器の不調が出て合併症を引き起こすことがあるので早めに検査を受けましょう。
尾骨骨折の検査や治療方法
尾骨骨折の検査方法を教えてください。
しかし、脆弱性による骨折だった場合は正確に診断できるとは限りません。また、軽くひびが入っている程度だとレントゲンでは写らないこともあります。出産時に骨折した場合、CTの放射線によって授乳を通して赤ちゃんに影響があるのか心配な人もいるでしょう。
日本医学放射線学会造影剤安全性委員会では、授乳中のCT撮影に対して制限をしないと公表しています。ただ、造影剤を100%吸収しないわけではありません。心配な人はCT撮影をやめるか24時間の授乳制限を行いましょう。
治療方法を教えてください。
- 薬物投与
- 安静臥床
- 尾骨切除
- 徒手療法
- 高圧平流感電刺激療法
前提として、痛みが出てしまう行動は控えましょう。足や手の骨折のようにギプスをはめたりする固定による治療法は行われません。痛みによって日常生活に支障が出る場合、痛み止めや湿布が処方されます。高齢者や座ったり起き上がることが困難な人は、ベッドの上で寝て過ごす安静臥床処置になることが多いでしょう。
尾骨骨折で手術になることはほとんどありません。しかし、尾骨骨折の不安定性が痛みになっていると、尾骨を切除する手術を行います。他にも徒手療法で骨の位置を戻し、筋肉の緊張をほぐすことで痛みを和らげる方法があります。
授乳中に薬を服用したくないけど痛みをとりたい人は、この方法が良いでしょう。高圧平流感電刺激療法では、深部組織までの筋肉の緊張をほぐし痛みを軽減します。
尾骨骨折の注意点や後遺症
座るときの注意点を教えてください。
座るときは腰椎が正しい位置にくるよう、椅子に深く座って地面に足を付けて背筋を伸ばしてください。正しい姿勢でないと、臀部の痛みだけでなく、腰痛の原因にもなるので気を付けましょう。
猫背のような背骨が曲がった姿勢は、尾骨に体重がかかってしまいます。体重がかかると改善どころか痛みが増してしまうので、悪化させないためにも姿勢を意識しましょう。
寝るときの姿勢について注意点はありますか?
一方柔らかすぎると、寝返りの量が増えてしまうので身体によくありません。寝返りは血流が滞らないようにするための行動ではありますが、回数が増えれば快眠から遠のきます。寝ているときに体に負担をかけないためには、腰のS字カーブの隙間が2〜3cmになるマットレスを使用しましょう。
後遺症が残ることもあるのですか?
- 瘢痕狭窄
- 陰萎
- 尿失禁
- 瘻孔形成
- 神経因性膀胱
尾骨骨折が起こると尿道が傷ついたり神経損傷が高い確率で併発します。骨盤周辺には仙骨神経根という神経が存在しこれが傷つくことで、排尿や性機能に違和感を感じるでしょう。
また、この神経が傷つくと自律神経の乱れも引き起こします。膀胱や性機能を正常に動かすためには、この自律神経が乱れてはなりません。尿が出にくい・失禁してしまうといった状態のときは、泌尿器科を受診しましょう。後遺症の度合いによってはカテーテルなどの手術が必要になる可能性があります。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
少し痛いかなと放置していると排尿障害が現れたり寝たきりになってしまうことがあるので、痛みを感じたら整形外科を受診しましょう。日常生活では長時間同じ姿勢にならないことや、ストレッチで筋肉をほぐすことが大切です。
また、骨粗鬆症予防のためにカルシウムを摂取したりウォーキングをして骨密度を高めましょう。座ったり起き上がることが難しくならないためにも、日常生活に取り入れられる予防策が大切です。
編集部まとめ
尾骨骨折は交通事故や打ち所が悪いと起こりやすい骨折です。骨が脆くなっている高齢者に多いですが、骨密度が下がっている若い人でも起こってしまいます。
痛みや違和感があるのに放置していると、排尿障害など別の病気が起こることがあるので早めに整形外科を受診しましょう。検査時に骨折以外の症状が確認されることもあります。
日頃から血行不良にならないように軽く運動をしたり、カルシウムを積極的に摂取して予防しましょう。