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【理学療法士解説】高齢者が注意すべき「フレイル」の改善策・予防方法とは

 公開日:2023/10/24
フレイルとは?老化現象の正体を専門家が解説

年齢を重ねると身体機能や認知機能の衰えを感じるという方は多くなります。なかでも、健康寿命に大きな影響を与える「フレイル」は、高齢者にとって注意が必要な状態のことです。対策すればフレイルの予防は可能?」「フレイルになってしまっても改善はできる?」という疑問に対して、鹿児島大学教授で理学療法士の牧迫先生に詳しく解説していただきます。

牧迫 飛雄馬

監修理学療法士
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

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2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

フレイルとは? 要因や症状について

フレイルとは? 要因や症状について

編集部編集部

「フレイル」とはどのような状態ですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイル」とは、もともと「か弱さ」や「もろさ」を意味する “frailty(フレイリティ)”を日本語で表現したものです。具体的には加齢によって心身が老い衰えた状態で、これまでは「虚弱」や「老衰」などと表現されていました。フレイルの状態、もしくはその危険が高い状態を放置しておくと、健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間)を短くしてしまう恐れがあります。

編集部編集部

フレイルになる要因にはどのようなことがあるのですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルになる要因としては、疾患や加齢による活動の減少、筋肉量の減少、口の機能低下、低栄養などが挙げられます。また、これらの要因が悪循環することでフレイルの発生や悪化を加速させてしまいますが、これを「フレイルサイクル」と呼びます。例えば、加齢や疾患などで筋肉量が減少してくると、筋力も衰えます。これにより歩く能力も低下し、身体を動かす機会が減少することで、消費エネルギーの減少や食欲の低下につながります。その結果、低栄養の状態となり、さらなる筋肉量の減少や身体機能の低下を招く、といった負のサイクルを招いてしまいます。

編集部編集部

フレイルになるとどのような症状が表れますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルの特徴のひとつに「多面性」が挙げられます。フレイルになると筋力が低下して転びやすくなるといった身体的な問題だけでなく、気分の落ち込みや物忘れといった認知・心理・精神的な問題、社会交流の減少や経済的な困窮といった社会的な問題も含みます。身体的な問題としては、筋力の衰え、歩く速度の遅さ、疲れやすさ、活動の減少、体重減少が特徴的な症状に挙げられます。

フレイルは改善できる?

フレイルは改善できる?

編集部編集部

フレイルを改善する方法はありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルの状態は改善が可能であると言われています。しかし、フレイルの状態が進行するほど改善は難しくなるので、早期発見と早めの対処が大切です。フレイルの改善方法はさまざまありますが、まずはフレイルサイクルを断ち切りましょう。具体的には、運動による筋力低下の改善、日常生活での身体活動量の促進(体を動かす時間の確保)、食生活の改善(タンパク質の積極的な摂取)などが挙げられます。

編集部編集部

フレイルを改善するためのポイントはどのような点ですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルを改善するために重要となるポイントは、個人におけるフレイルのリスク要因に適した改善策を実施・継続することが挙げられます。多くの場合、フレイルの原因となっている要素は複数存在し、それらが積み重なってフレイルの状態を引き起こしています。そのため、的確なフレイル改善策を実施・継続することで、徐々にフレイルの改善につながります。

編集部編集部

フレイルの薬物療法はありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルそのものは疾患ではありませんので、薬物治療は一般的に行いません。また、高齢者では複数の疾患を有することが多く、服用が必要な薬剤の種類が多くなる傾向にあります。薬剤の種類を多数服用している状態はポリファーマシー(多剤併用)と言われ、フレイルの危険を高める要因にもなります。そのため、適切な処方薬の服用とともに、減薬や減量も必要な場合があります。また、フレイルに伴う食欲不振や全身の倦怠感の改善を目的に漢方が有効となることもあります。

フレイルの予防法を学ぶ

フレイルの予防法を学ぶ

編集部編集部

フレイルの予防法にはどんなものがありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルの予防法は大きく3つあり、「運動」「食事」「社会参加」になります。

編集部編集部

フレイル予防のための運動にはどのようなものがありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイルの予防のための運動としては、ジョギングや筋力向上を目的としたトレーニングに加え、普段の生活における身体を動かす活動(身体活動)が挙げられます。反対に、運動する機会が少なく、日常生活の身体活動量が減少するとフレイルのリスクは高まります。目安として、週150~300分の有酸素運動(ウォーキングなど)、週2~3回の筋力トレーニングを習慣化しましょう。

編集部編集部

フレイル予防のための食事のポイントは何ですか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

フレイル予防のための食事のポイントは、偏った食事を避けてバランスよく食べることです。特に、筋肉量を維持・向上させるには、タンパク質が重要です。肉、魚介類、卵、乳製品、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類、いも類、果物、油脂類の10食品群をできるだけ毎日摂取することが推奨されます。できるだけ多くの種類の栄養素を摂ることが、フレイルの予防につながります。

編集部編集部

そのほか、フレイル予防のための社会参加とはどのようなことがありますか?

牧迫 飛雄馬先生牧迫先生

先に述べたように、フレイルは多面性という特徴があります。そのため、認知・心理・精神的な要素や社会的な要素への対策も重要になります。例えば、知的な刺激のある活動(例:読書やカードゲームなど)や社会的な活動(例:ボランティアや地域行事の参加など)に積極的に取り組むことが大切です

編集部まとめ

身体機能の老化を指すフレイルは一般的にも広く知られていますが、認知や心理、精神的、社会的な面にも影響を与えることがあるようです。フレイルになる要因もさまざまで、的確な予防法を実施・継続することが大切だと分かりました。また、フレイルは早期発見により改善が期待できます。ぜひ、ご自身の生活を振り返ってフレイル状態にならないように意識してみましょう。

この記事の監修理学療法士