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フレイル健診とは? どういったことが予防できるか介護福祉士が解説

 更新日:2023/03/27
フレイル健診とは? どういったことが予防できるか介護福祉士が解説

2020年から75歳以上の後期高齢者になると、フレイル健診が実施されます。日本のような高齢者社会においてフレイル健診は重要ですが、まだ多くの方にどんな健診なのか理解が進んでいません。フレイル予防に関する情報も、まだまだ行き届いていないのが現状です。そこで今回は、介護福祉士の山田さんにフレイル健診の内容やフレイルの概念・予防法について聞いてみました。

山田 亮太

監修介護福祉士
山田 亮太(介護福祉士)

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駿河台大学心理学部卒業。大学卒業後、埼玉の特別養護老人ホームに就職。2019年に介護福祉士を取得。2020年に認知症実践者研修を取得。介護に関する正しい知識をわかりやすく伝えるため、ライターとしても活動中。

フレイル健診とは

フレイル健診とは

編集部編集部

フレイル健診とは何ですか?

山田さん山田さん

フレイル健診とは、2020年4月から開始された後期高齢者医療制度の健康診査(健診)のことです。フレイル健診を受ける高齢者は、病院で健康状態をチェックする15項目の質問に答えたり医師との面談を受けたりします。高齢者のフレイル状態を確認するのが目的ですね。

編集部編集部

フレイルとはどういう意味なのでしょうか?

山田さん山田さん

フレイルとは、介護が必要とまではいかないけど健康ではない状態のことです。フレイルの一般的な基準としては、体重減少・疲れやすさ・筋力の低下・歩行速度の減少・活動性の低下などが挙げられます。

編集部編集部

フレイル健診はなぜ始まったのですか?

山田さん山田さん

75歳以上の健康支援サービスの分断を防ぐ目的として始まりました。被用者保険や74歳までの国民健康保険では、特定健診などが義務付けられています。しかし、75歳以上からは後期高齢者医療広域連合に加入することで、特定健診や保健指導が努力義務になり、特定健診に準じた健診を実施しているのみです。つまり、高齢者に行き届いた健康支援サービスが提供できていないという問題点がありました。そこで、高齢者の低栄養や重症病化を早期に発見する取り組みとして、フレイル健診が始まったのです。

編集部編集部

フレイル健診をすると今までとどう変わるのですか?

山田さん山田さん

かかりつけ医が、常に高齢者の状況を把握できたり直接指導ができたりする取り組みが行えます。加えて問診や面談を通して、管理栄養士や歯科衛生士などと連携し個別の支援ができます。必要に応じてデイサービスなどの通いの場への参加を促すことも可能です。フレイルは早期発見をすれば、健康状態に戻れる余地があります。そのため、健診を受ける高齢者は生涯健康に過ごせるでしょう。

フレイルの原因

フレイルの原因

編集部編集部

フレイルはなぜ起こるのでしょうか?

山田さん山田さん

後期高齢者は、健康的な生活をしていても若い頃と比べ体力や体重が減りやすい体質になっています。70代以上の方は50代に比べ、食事量が約15%減少しているといわれています。さらに活動量も低下するため、心肺機能や筋力低下が起きてフレイル状態になりやすいのです。

編集部編集部

食事量が落ちる原因はどんなことが考えられますか?

山田さん山田さん

高齢者の食事量が減少する理由としては、唾液の減少・味覚や嗅覚の減退・嚥下障害といった身体面の衰えだけではありません。うつや認知症による精神面の衰えも考えられます。

編集部編集部

食事をしっかりと摂れる高齢者でもフレイルになる可能性はあるのでしょうか?

山田さん山田さん

十分に考えられます。筋肉のもとになるタンパク質を摂っていても、運動不足であれば体力低下や筋力低下をしてしまいます。仮に運動をしていたとしても、タンパク質を必要量摂っていなければ低栄養が進行します。そのため、高齢者の生活全体を通したケアを考えていかなければいけません。

編集部編集部

低栄養や運動不足が続くとどうなるのでしょうか?

山田さん山田さん

筋肉量の減少や筋力の低下により、骨粗しょう症などの進行につながります。さらに、筋肉量が落ちた状態である「サルコペニア」や運動器の障害により歩行や日常生活に支障をきたす「ロコモティブシンドローム」と呼ばれる疾患に陥ってしまいます。これらを予防するためにフレイル健診は重要です。

フレイルの予防

フレイルの予防

編集部編集部

普段からフレイルを予防する方法はありますか?

山田さん山田さん

例えば運動が挙げられます。運動と聞くと難しいものを想像されるかもしれませんが、日常生活の中で片足立ちや腰回りのストレッチをするだけでも十分です。続いては食事です。筋肉を生成するタンパク質を意識して摂りましょう。おすすめはお肉ですが「食べるのが大変」という方は魚・大豆製品から摂取してみてください。高齢者になると、口腔機能の衰えも感じてきます。歯科医や歯科衛生士に正しい歯磨きの方法や、食事前の口腔体操をレクチャーしてもらうのがよいでしょう。人や社会とのつながりもフレイルに関わります。高齢者になると、家族や地域・職場との接点が少なくなることで、気力や活気・生きがいをなくしてしまう方がいます。そのため、ボランティアに参加したり趣味の会に参加したりしてみるのがおすすめです。出かける予定があると、身だしなみを整えたり外に出るので軽い運動にもなったりします。そうした行動がフレイル予防につながります。

編集部編集部

高齢者はフレイル健診の結果をどのように活用していけばよいでしょうか?

山田さん山田さん

普段から気にかけることが介護予防につながります。たとえば、フレイル健診の結果を受けて、1日10分散歩をする・食事量を増やす・デイサービスに行くなどの取り組むきっかけにしてみてください。フレイル状態を早期に発見し、対策をしていくことで、健康寿命を伸ばすことができます。

編集部編集部

フレイル健診の手続きはどのように受ければよいのでしょうか?

山田さん山田さん

健診の受け方は特定健診などと同じです。各市区町村で実施されているため、相談してみるとよいでしょう。

編集部まとめ

フレイル健診は、高齢者の介護予防に大きく役立つということがわかりました。フレイルの状態を放っておくと、生活動作・生活の質に影響する疾病を引き起こしてしまいます。それらを予防するにはフレイル健診は欠かせません。気になる方は、ぜひお近くの市町村で相談してみてください。

この記事の監修介護福祉士