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「パーキンソン病の平均寿命」はどれくらい?末期症状についても医師が解説!

 公開日:2024/07/05
「パーキンソン病の平均寿命」はどれくらい?末期症状についても医師が解説!

パーキンソン病の平均寿命とは?Medical DOC監修医がパーキンソン病の平均寿命・末期症状・原因・パーキンソン病になりやすい人・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

神宮 隆臣

監修医師
神宮 隆臣(医師)

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熊本大学医学部卒業。熊本赤十字病院脳神経内科医員、熊本大学病院脳神経内科特任助教などを歴任後、2023年より済生会熊本病院脳神経内科医長。脳卒中診療を中心とした神経救急疾患をメインに診療。脳神経内科疾患の正しい理解を広げるべく活動中。診療科目は脳神経内科、整形外科、一般内科。日本内科学会認定内科医、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医、臨床研修指導医の資格を有す

「パーキンソン病」とは?

パーキンソン病とは、脳の中で中脳黒質という、運動機能に関わる部分の障害で発症します。手足が震える、手足が動かしにくい、歩き方が変などといった症状で気づかれて、発症します。だんだん進行する病気であり、完全に進行を止めたり、病気を治癒させたりする方法はまだありません。今回は、そのようなパーキンソン病のお話です。

パーキンソン病の平均寿命

パーキンソン病は50代から60代での発症が多いです。だんだん症状が強くなり、高齢者になるにつれ、徐々に動きが制限されていきます。主に運動機能の障害が主なので、全体の平均寿命と比べて極端に短いということはありません。おおむね3-4年短いとされています。そのため、パーキンソン病のみではなく、そのほかにどのような病気にかかるかも寿命を決定する重要な要素となります。

若年性パーキンソン病の平均寿命

前述のように、パーキンソン病は50-60代で多くが発症します。しかし、40歳以下の若年者に発症することもあります。若年性パーキンソン病と言いますが、症状は、通常のパーキンソン病と大きな差はありません。平均寿命も、同じように全体と比べて数年短い程度とされています。ただし、パーキンソン病全体を通して言えるのですが、運動機能が障害されていく病気ですので、健康寿命が短くなります。だんだん動けなくなるので、動けるうちにいかに「やりたいこと」をやっておけるかも重要になります。たとえば、興じているスポーツや趣味、旅行などは、症状が進むにつれてできなくなる可能性があります。無理のない範囲で楽しんでおくことが重要です。

パーキンソン病の末期症状

パーキンソン病は進行性の病気ですが、末期という概念が一般的に浸透している悪性腫瘍、いわゆるがんとは違います。平均寿命も極端に短いわけではなく、パーキンソン病における末期の定義が難しいです。ここでは、長期間パーキンソン病に悩まされた場合に見られる症状を末期症状として紹介します。

薬が効かない

パーキンソン病の治療が始まった当初は、治療薬が基本的によく効きます。治ったと思われるかたもいるくらいです。しかしながら、症状は確実に進行していきます。進行に合わせて薬も効かなくなっていきます。その都度、薬を増量したり、追加したりして対応をしていきますが、限界がきます。薬を飲んでも効かないno on現象、薬の効果が切れると動けなくなってしまうwearing off現象などが起こり、日常生活が制限されていきます。基本的にはかかりつけの先生へ相談することになります。内服薬の微調整を入院で行うこともよいでしょう。
さらにパーキンソン病が進行すると、飲み込むこともままならなくなります。食事がとれなくなると衰弱していきます。食事がとれない場合は、管を鼻から胃まで入れる経鼻胃管や栄養チューブをおなかの皮膚から胃まで通す胃ろうなどの方法があります。本人が意思を表せるうちに、どこまでどのような治療を行うか判断しておく必要があります。
また、パーキンソン病が進行してくると、介護量が増え、家族への負担も高まります。ご家族も疲れすぎないような工夫が必要です。ご家族の介護負担を減らすための入院(レスパイト入院)を受け入れている病院もありますので、かかりつけの先生へご相談ください。

ジスキネジア

パーキンソン病に罹っている時間が長くなると、前述の薬が効かなくなる症状に加えて、薬の効果が強くなることがあります。そうなると、自分の意志とは無関係に体が勝手にクネクネと動いてしまう、ジスキネジアが起こります。この症状に対しても、細かく薬の調整を行いますが、うまくコントロールできないこともあります。体が動かなくなる症状と勝手に動いてしまう症状との折り合いをつけて治療を続けていきます。勝手に動く症状が出現して困っている場合も自己判断で内服を中止することをせず、かかりつけの先生へご相談ください。

自律神経症状

自律神経症状とは便秘や立ちくらみなどのことを指します。実はパーキンソン病では、自律神経は早い段階から障害されます。特に便秘は早い段階から悩まされます。さらに末期になってくると、頑固な便秘となります。加えて、たちあがったり、座ったりするだけで立ちくらみや気が遠くなる、目の前が暗くなる症状が出現します。症状を抑えるようなお薬で治療を行いますが、なかなか治療が効かないこともあります。

パーキンソン病の主な原因

残念ながらパーキンソン病の正確な原因はわかっていません。遺伝的要因と環境因子などの色々な因子が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

遺伝

パーキンソン病の中には遺伝するものが知られています。家族性パーキンソン病と言い、血の繋がった血縁者に多く発症します。若くして発症することが多いとされています。近年の技術の進歩によりたくさんの原因となる遺伝子が特定されています。もし、血縁者にたくさんパーキンソン病の方がいる場合は、家族性パーキンソン病の可能性があります。脳神経内科を受診し、ご相談ください。
また、遺伝しないタイプのパーキンソン病の発症にも、病気になりやすさを決めるいくつかの遺伝子群が関わっています。しかし、遺伝子のみならず、次の項で述べる、環境因子と複雑に絡み合ってパーキンソン病は発症すると言われています。

腸内環境

さまざま身の回りの環境がパーキンソン病の発症に関わっていることが分かっています。その代表をご紹介します。有機溶剤を中心とした農薬や殺虫剤や鉛や銅などの金属に接する人はパーキンソン病を発症しやすいです。食事では不飽和脂肪酸をよく摂取していると発症しやすく、頭部の怪我や脳損傷も関連しています。
以上、代表的なものを示しました。避けられる場合は避けて生活するのが良いでしょう。

パーキンソン病になりやすい人の特徴

性別

パーキンソン病は、日本を含めたアジア圏では女性が多く発症します。男性に比べ、およそ1.5倍から2倍程度と言われます。しかし、ヨーロッパや北米などでは、男性に多いと言われています。なぜ性別ごとのパーキンソン病のなりやすさが、国によって違うのかは、完全には明らかにはなっていません。考えられる要因として、前述の項目にも関係しますが、人種による遺伝子の違いや国による環境因子の違いなどが推定されています。

社交性

社交性や社会での役割が減少することは、パーキンソン病に関連があるといわれます。他の人との交流は、いろいろな考え方や行動に触れることができます。感情が揺さぶられるようなできごともあるでしょう。また、社会での役割は自己肯定感や充足感につながります。このような脳への刺激が減少することが、パーキンソン病の発症に関連するといわれています。
ただし、注意が必要な点があります。パーキンソン病は本人が自覚する前から、表情が表に出なくなったり、漫然と動きにくさを自覚したりします。そのせいで、自ら社交的でなくなることもあります。
社交性とパーキンソン病は相互に関係していると心得るのがよいでしょう。

嗜好

一般に健康を害するといわれるタバコですが、パーキンソン病においては発症を抑える働きがあります。ただし、タバコを吸っているから絶対にならないわけではなく、肺癌をはじめとした多数の病気と関連するので注意が必要です。パーキンソン病を予防するためにタバコを吸い始めることは推奨しません。
カフェインを含む飲料の摂取はどうでしょうか?代表的な飲料である、コーヒーとパーキンソン病の関連は関係がないとされます。一方で、紅茶やコーラを摂取していると、パーキンソン病を発症しにくくなります。残念ながら、カフェインの直接的な効果とは確定していません。
飲酒とパーキンソン病の関連はわかっていません。

パーキンソン病の検査法

頭部MRI検査

頭部MRI検査は、強力な磁石の力で画像を撮る検査です。頭部MRI検査では、パーキンソン病の特徴的な異常はありません。では、なぜ行う必要があるのでしょうか?
パーキンソン病の症状はパーキンソニズムと呼ばれます。パーキンソニズムを来す病気はたくさんあり、その中からどの病気らしいかを検査していきます。大脳皮質基底核変性症や多系統萎縮症、進行性核上性麻痺では、頭部MRIで特徴的な異常がでるので、見分けができます。そのような病気を除外するため、パーキンソン病が疑われる場合でも検査を行います。

MIBG心筋シンチグラフィ

パーキンソン病では発病初期から心臓における自律神経の働きが悪くなります。MIBG心筋シンチグラフィは、心臓の自律神経を評価する検査になります。心臓の自律神経に集まりやすい物質(MIBG)を注射して、どれだけ心臓に集まるかを調べます。パーキンソン病では初期からMIBGの集まりが低下します。パーキンソン病に似た症状を引き起こすレビー小体型認知症もこの検査で集まりが低下します。

ドーパミンシンチグラフィ

ドーパミンシンチグラフィでは、脳のドーパミンがどれほどあるかを検査します。検査方法は、検査薬を点滴から注射して、画像を撮ります。ドーパミンが低下している、パーキンソン病をはじめ、レビー小体型認知症、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺などで低下します。パーキンソン病に似ている本態性振戦や薬剤性パーキンソニズム、脳血管性パーキンソンニズムなどでは正常です。

パーキンソン病の治療法

内服治療

パーキンソン病の基本的な治療はお薬による治療になります。診断を受け、治療を始めた最初のころは、特にお薬の効果が高く、症状は著しく改善します。しかし、パーキンソン病は進行性の病気であり、病状は確実に進行します。さらに、パーキンソン病に罹っている期間が長くなれば長くなるほど、薬の効果も弱まってきます。お薬の量や種類を増やしたり、内服するタイミングを工夫したりして対応していきます。

リハビリテーション

パーキンソン病の初期から慢性期まで、リハビリテーションは有効とされています。体を動かしたり、大きな声でしゃべったりすることで、パーキンソン病で引き起こされる症状を緩和することができます。運動症状だけではなく、運動以外の症状にも効果があります。さらに、お薬などの治療に効果が乏しい場合にも、リハビリテーションは効果を発揮します。

外科的治療

パーキンソン病でも症状が進行すると手術による治療を行うことがあります。
現在、比較的よく行われている手術は、脳深部刺激療法です。パーキンソン病におけるふるえや体の動かしにくさを改善します。全身麻酔を行い、原因となっている脳の部分まで刺激を行うための電極を慎重に挿入します。症状の緩和はできますが、根治ではなく、この治療を受けたあとも症状は進行していきます。大きな手術にもなるため、年齢や病状を慎重に考慮して治療を行うかどうか判断します。
最近、行われるようになった治療は、集束超音波療法です。超音波を用いて、ふるえなどの原因となっている脳の部分を破壊します。この治療は、前述の脳深部刺激療法ができない方を主に対象とします。
いずれも治療を行う前に、十分に検討を行い個々人の状況に合わせて治療を行うべきかどうかを判断します。

「パーキンソン病の寿命」についてよくある質問

ここまでパーキンソン病の寿命などを紹介しました。ここでは「パーキンソン病の寿命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

パーキンソン病を発症してから、どれくらいで寝たきりになりますか?

神宮 隆臣神宮 隆臣 医師

かつては15年以上経過すると寝たきりになるといわれていました。現在は治療薬も増えてきて、完全な寝たきりになる方は非常に少なくなっています。

パーキンソン病の進行スピードは早いのでしょうか?

神宮 隆臣神宮 隆臣 医師

パーキンソン病の経過は非常にゆっくりと進みます。急速に症状が進む場合は違う原因を探す必要があるでしょう。

編集部まとめ

パーキンソン病は、ふるえや体の動かしにくさなどで発症します。どの年代で発症しても命に関わる可能性は低い病気です。しかし、治癒させる治療法はなく、また、ゆっくりではありますが確実に進行します。日常生活が制限されていくので、病状に合わせてできることをできるうちに楽しむことも必要になります。

「パーキンソン病の寿命」と関連する病気

「パーキンソン病の寿命」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

呼吸器科の病気

消化器科の病気

脳神経内科の病気

パーキンソン病は似た症状の病気も多く、一緒に起こる別の症状もあります。気になることがあれば脳神経内科を受診してください。

「パーキンソン病の寿命」と関連する症状

「パーキンソン病の寿命」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 手足がふるえる
  • 手足が動かしにくい
  • 足が出ない
  • 表情が乏しい
  • よく倒れる

体の動きに関わる症状で気づく方が多いです。体の動きで困ることがあれば脳神経内科へご相談ください。

この記事の監修医師