【闘病】『膵臓がん』はステージ4の診断。「あとどれくらい普通に生活できますか?」

膵臓は体の奥にあり、がんの早期発見が難しい臓器の1つです。また、膵臓がんは進行が速く、転移しやすいタイプが多いことから、治療の難しいがん種とされています。ステージ4の膵臓がんと診断され、抗がん剤治療と疼痛緩和の治療を続けている北川さんの体験談を参考に、がんの早期発見への意識を高め、早期治療の重要性を理解しましょう。
体験者プロフィール:
北川 亨さん(以下、「北川さん」)
北川さんのブログ
「良性の腫瘍」のはずが思わぬ宣告

編集部
はじめに北川さんが治療している「膵臓がん」という病気について教えてもらえますか?
北川さん
膵臓がんは名前の通り、膵臓に発生する悪性腫瘍のことです。膵臓がほかの臓器の後ろ側に隠れる位置にあり、初期症状もほとんどないことから早期発見が難しい病気とされています。多くは進行してから腹痛や腰痛、体重減少、黄疸(おうだん)などの症状が表れて気づくようです。また、手術をおこなっても再発率が高いことから、がんの中でも厄介な部類とされています。
編集部
では、最初に北川さんが膵臓がんの経験を通して読者に最も伝えたいことを教えてください。
北川さん
どれほど体力があり、健康に自信のある人でも自分を過信せず、異常があるときは早めに医療機関を受診してほしいということです。私自身、普段から鍛えていたため体力には自信を持っていましたが、予想もしなかった「膵臓がん」と診断されることになりました。また、大きな病院だからといって安心せず、自分の中で「不安だな」「おかしいな」と感じたら、セカンドオピニオンを受けるということも徹底してほしいです。
編集部
北川さんに膵臓がんが判明するまでの経緯について、詳しく教えてもらえますか?
北川さん
2024年10月末に事務所で倒れているところを発見され、そのまま大学病院に救急搬送されました。その際、胆管炎による敗血症(感染症が原因で、細菌や毒素が血液に入り込み、全身の臓器〈肺、腎臓、心臓など〉が機能不全に陥る重篤な病態)になりかけていると説明されました。最初の胆管炎を含め、診断までに4度発症を経験しています。
編集部
そんなにくり返すものなのですね。
北川さん
1回目の発症時に胆管を圧迫している腫瘍があることが判明したのですが、医師の経験と腫瘍の形から良性と判断され、胆管炎の処置が優先されました。このとき、胆管ステントを留置(交換寿命2〜3カ月とのこと)したことから定期的にステントの交換をこの先も続けていかなくてはならないと告げられました。それから3度、1カ月も持たずにステントが詰まり胆管炎を繰り返し発症することになりました。毎回ステントの大きさや本数を変えていたみたいですが、私のように1カ月持たずにステントが詰まる人もいるとのことでした。しかし、くり返す胆管炎に対して、「胆管を圧迫している腫瘍を取り除かないと一生この状態が続くのでは?」という疑問があり、病院が自宅から遠いことも含めて転院を希望しました。すると、転院先で超音波内視鏡やドレナージといった、これまで受けてこなかった処置により、膵臓がんがすぐに発見されました。
編集部
最初の胆管炎発症からどのくらいの期間が経っていたのでしょうか?
北川さん
膵臓がんと診断されたのが2025年6月頃ですから、だいたい8カ月ほどかかりました。最初に治療を受けた病院ではなかった検査も転院先ではおこなってくれたため、時間はかかりましたが、確定診断に至りました。
抗がん剤治療と疼痛コントロールをしながらの闘病生活

編集部
医師からは治療に関してどのような説明があったのですか?
北川さん
ステージ4の膵臓がんと確定診断されてからは、腫瘍の大きさと状況(腫瘍が血管に絡んでいる)から手術は不可、抗がん剤で腫瘍を小さくしていく治療になると説明されました。さらに、抗がん剤治療をおこなっても手術ができるようになる確率は20%ほどとのことでした。現在は腫瘍の縮小を目指して「アブラキサン+ゲムシタビン」の抗がん剤投与を開始しました。
編集部
病名が判明したときの心境はどのようなものでしたか?
北川さん
自分の中で大事な告知を受けた瞬間は3回あったと思います。1回目は胆管を圧迫し、胆管炎になった原因が腫瘍によるものと告げられたときです。このときは「良性」と言われましたが、正直一番ショックが大きかったです。2回目は転院先で「膵臓がんの疑いがあるから検査しましょう」と言われたときです。内心では「あーやっぱりそうか」と思いつつ、自分自身がびっくりするくらい冷静でした。そして、3回目は最初の生検がグレー判定でしたが、再検査の結果を聞くと「やはり、がん組織出ました」と告知されました。この時点ではもう覚悟ができていたところがあり、「あとどのくらい普通に生活できますか?」と質問したくらい平常心でした(笑)。
編集部
これまでの体調や生活の様子についても教えてください。
北川さん
これまでの生活と大きく変わった部分はありません。抗がん剤治療で体調の悪い時期はありますが、生活の変化としては通院という新しい習慣が増えたことくらいだと思います。ただ、痛みは周期的にやってくるため、毎日オキシコンチンとオキノームという薬で疼痛のコントロールもおこなっていました。
編集部
抗がん剤治療を開始してからというもの、体調は安定しているのでしょうか?
北川さん
そうですね。疲れやすくなった以外には、本当に変わりはないと感じます。病気のことを調べる中で、末期がんの人のブログも拝見していますが、それに比べると同じくらいのステージでも大きな違いがあるのだと感じています。
編集部
抗がん剤治療が開始となってからの病状、現在の体調についてはどのような状況ですか?
北川さん
1次治療の「アブラキサン+ゲムシタビン」が功を奏し、「コンバージョン(手術による切除可能な段階)まで一気に行けるか」と期待を持っていましたが、すぐに耐性ができてしまい、今は2次治療のオニバイドの投与中です。現在(取材時)は、不思議と強い痛みはないため医療用麻薬、鎮痛剤の類は一切服用しておりません。しかし、抗がん剤の副作用で手足の痺れ、特に足先の感覚がありません。加えて、心不全の薬により立ちくらみが激しいので何度も転んだり、食器を落として割ったりはしていますが、なんとか日常生活は送れております。
編集部
痛みはほとんどないということですか?
北川さん
がん細胞は間違いなく膵臓・肝臓にいるみたいで、主治医もがん性疼痛がないのを不思議に思っているように感じます。ただ、先日は急に鼻血が止まらなくなり、緊急搬送からの入院もありましたから、何かしらの影響は出ているのかもしれません。
編集部
北川さんが治療中の心の支えにしているもの、支えになったものはありますか?
北川さん
友人との会話です。現在は一人暮らしをしており、さらに半年ほどは、ほぼ大部屋で入院生活を送っていました。私のもとには月2回ほど友人が訪ねて来てくれたことで、闘病に前向きな気持ちを持ち続けられました。車で片道1時間はかかるところに来てくれていたため、感謝しかありません。また、私が膵臓がんと告知されてから、友人は私以上に膵臓がんのことを学び、病気や生活のことでさまざまなアドバイスもしてくれています。なんでも相談できる大事な存在です。
どんな苦境・困難があっても前を向いて歩き続けたい

編集部
治療を続ける上で、北川さんが心がけていること、取り組んでいることはありますか?
北川さん
普段と変わりのない生活を送ることです。また、人生の第2ステージが始まったと考え、闘病生活をブログに書くことで、前向きな気持ちを維持できています。
編集部
病気が判明する前のご自身に言葉をかけるとしたら、どのような言葉を伝えたいですか?
北川さん
とにかく自分の健康を過信しないことです。仕事柄、体を鍛えていたこともあり、同年代と比べても気力、体力ともに自信がありました。しかし、いくら体を鍛えていても、思わぬことで体調を崩したり、入院になったりすることがあるとよく分かりました。
編集部
膵臓がんについて、知らない人や普段意識していない人にアドバイスはありますか?
北川さん
膵臓がんはがんの中でも発見が難しく、特に完治も難しい病気とされています。だからこそ、毎年の健康診断や人間ドックは受けてほしいし、健康的な生活を意識してほしいです。
編集部
医療従事者に期待すること、希望することはありますか?
北川さん
現状、膵臓がんはある程度進行すると完治が難しく、手術以外では完治は期待できません。ですから、早く膵臓がんに対する効果的な治療を見つけてほしいと思います。また、医療従事者に希望することとは違いますが、治療に関してもっと気軽に相談できる場がほしいです。「この診断、治療が正しいのかな?」と疑問に感じても、それを気軽に相談できる場がないのは患者にとって選択肢を狭めていると感じます。
編集部
最後に記事の読者へのメッセージをお願いできますか?
北川さん
病気になることや人生の転機など、自分の身に起きることは必然と捉えて、前を向いて最後まで歩き抜くことが大切だと思います。思いがけない出来事が降りかかることがあっても、希望を持って生きてください。
編集後記
膵臓はほかの臓器に囲まれており、血管も複雑に絡み合った治療の難しい臓器です。そのため、いかに膵臓がんを早期発見・早期治療するかが完治に向けた鍵となります。日頃から健診や人間ドックを受けることはもちろん、体調に異変がないかといったセルフチェックもおこない、自分自身の健康を振り返ることが大切です。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師
五十嵐 萌子(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。






