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「先天性ミオパチー」という筋疾患はご存知ですか?原因や症状など解説!

 公開日:2023/09/25
「先天性ミオパチー」という筋疾患はご存知ですか?原因や症状など解説!

先天性ミオパチーは難病指定されている病気です。早い場合は新生児期から発症するといわれています。

しかし、その見分けはつきにくく、誤ってほかの病と診断されてしまうこともある難病です。

病名を聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、具体的な症状や原因については知らない人もいるでしょう。

ここでは、先天性ミオパチーについて解説します。主な治療方法・日常生活における注意点なども紹介するので参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

先天性ミオパチーとは?

遺伝子

先天性ミオパチーってなんですか?

先天性ミオパチーは遺伝性の筋疾患です。筋肉に特異的な構造異常が認められます。早ければ新生児期から筋力低下や発育・発達の遅れなどが認められる難病です。ただし、先天性筋ジストロフィー・先天性筋強直性ジストロフィー・代謝性ミオパチーなどと区別がつきにくい特徴があります。
そのため、筋病理検査を行うのが一般的です。筋病理検査を行っても区別がつかないこともあります。その場合、経過をみながら病名を探ることになるでしょう。

先天性ミオパチーの種類を教えてください。

主に下記の4つに分類されます。

  • ネマリンミオパチー
  • コアミオパチー(セントラルコア・マルチミニコア)
  • ミオチュブラーミオパチー・中心核病
  • 先天性筋線維タイプ不均等症

これら4つについては、特徴的な所見が確認できます。筋病理検査を行った際に確認できた所見と照らし合わせて病名を確認するのが一般的です。ただし、必ずしもこれら4つの分類の一つに該当するとは限りません。特徴が確認できない場合もあるからです。その場合は、分類不能な先天性ミオパチーと診断されます。

先天性ミオパチーの患者はどのくらいいますか?

日本国内の正確な人数は不明です。しかし、海外では出生1000人当たり0.06人いるとされ、罹患率は10万人に3.5〜5.0人とされています。このことから、国内での推定人数は1,000〜3,000人ほどです。

先天性ミオパチーはどのような人に多いですか?

基本的には、地域性や性別などは関係ありません。男女関係なく発症する可能性がある病です。ただし、ミオチュブラーミオパチーは遺伝形式がX連鎖性であることから男性のみに発症し、女性が発症する可能性はないとされています。女性はX連鎖遺伝子を抑える対の遺伝子を持っていますが、男性にはありません。
そのためX連鎖性であるミオチュブラーミオパチーは女性の場合、対の遺伝子の発現抑制効果により発症しないとされています。一方、男性の場合は発現を抑える対の遺伝子がありません。よって、50%の確率で発症するといわれています。

先天性ミオパチーの症状と原因

車椅子

先天性ミオパチーの症状を教えてください。

主な症状として、下記の点があげられます。

  • 筋力・筋緊張の低下
  • 発育・発達の遅れ
  • 呼吸障害
  • 心疾患・不整脈
  • 関節拘縮・脊椎変形
  • 哺乳・摂食障害

筋力・筋緊張の低下は、新生児・乳幼児期で認められます。目に見える症状としては、「身体が柔らかい」「力が弱い」などがあげられるでしょう。また、発達・発育の遅れも認められます。これらの症状は成人になってあらわれることもあり、その場合は力が入らなくなったり疲れやすくなったりするでしょう。
呼吸障害は、主に呼吸不全や痰が出しにくいといった症状が認められます。この症状は夜間に発症することが多く、呼吸不全のために睡眠不足を併発することもあるでしょう。ただしゆっくり進行するため、自覚症状はほとんどありません。朝起きられなかったり寝不足が続いたりという症状で自覚する可能性が高いでしょう。心臓の機能低下や不整脈が認められることもあります。これらは検査で発見されることが多いでしょう。
心疾患・不整脈は先天性ミオパチーの症状ではなく、合併症です。関節拘縮・脊椎変形が認められるケースもあります。目に見える症状としては、「関節が固くなる」「脊椎が左右に曲がる」などがあげられるでしょう。急に姿勢が悪くなるなどの変化がみられた場合は、脊椎変形を発症している可能性があります。新生児・乳幼児期では哺乳障害が起こるかもしれません。成人期になって発症する場合は、摂食障害として発症します。
どちらも食欲や体力が落ちるという目に見える症状であらわれるでしょう。ここで取り上げた主な症状は上記の6つですが、これらがすべてではありません。これら以外にも知的障害やてんかんなどの症状が認められるケースもあります。症状が重い場合は、呼吸不全のために人工呼吸器が手放せなくなったり、筋力低下により車いすや寝たきりの生活を余儀なくされたりするでしょう。

先天性ミオパチーの原因はなんですか?

先天性ミオパチーは、その特徴によってさまざまな種類に分類されます。これらの中で共通しているのは、遺伝子が関係している点です。通常、遺伝子の変異がみられるのは1種類ですが、それぞれの症状では複数の変異が関係していることがわかっています。ただし、明確にはなっていません。

先天性ミオパチーは遺伝しますか?

先天性ミオパチーの原因が遺伝子にあると考えられるため、遺伝する可能性はあるといえるでしょう。なぜなら、遺伝子は親から子へ受け継がれるものだからです。しかし、突然変異によって発症するケースもあります。その場合、両親を含めた近親者で先天性ミオパチーを発症した人は認められません。
そのため、必ずしも親から子への遺伝で伝わっているとはいえないでしょう。

先天性ミオパチーの寿命を教えてください。

寿命については、正確なデータはありません。その理由は、症状の重さに差があるからです。症状が重い場合は、人工呼吸器の装着や栄養剤の点滴などを行うケースがあります。生命を脅かす症状なので注意が必要です。一方、軽症の場合は長期間に渡る対症療法で治療を行います。
日常生活に支障をきたさないケースもあるため、治療方法もさまざまです。しかし、軽症の場合でも命にかかわる合併症を引き起こす可能性があり、これは無視できません。そのため、寿命については一概にいえないというのが現状です。

先天性ミオパチーの治療

女医

先天性ミオパチーの治療はどのようなものですか?

完治を目指した治療方法は存在しません。現在の主体は対症療法です。筋力・筋緊張低下や関節拘縮・脊柱変形などの症状がある場合は、リハビリテーションを行います。また、手術を行う場合もあり、その際は整形が目的です。呼吸障害の症状が認められる場合は、人工呼吸器の管理が主体になります。軽症の場合は、酸素ボンベ使用による対症療法になることもあるでしょう。
心疾患・不整脈に対しては、内科的治療を行います。主な治療方法としては投薬です。哺乳・摂食障害の症状が認められる場合は、入院による全身管理が必要になるでしょう。これらはすべて、日常生活に支障をきたさないレベルまで症状を抑えるための治療です。完治を目的としたものではないため、長期での治療になります。

日常生活で気を付けることはありますか?

症状が軽症であっても、呼吸不全や筋力低下が進行する可能性があるので注意してください。呼吸不全については風邪が原因で症状が悪化するかもしれません。痰を出しにくくなるなどの症状を併発する可能性もあるため、痰を出すリハビリを行うことをおすすめします。運動面については、過剰な運動は控えたほうがよいでしょう。しかし、まったく運動しない状態は好ましくありません。
心肺機能や骨格可動の向上を維持するために、適度な運動は日常生活に取り入れましょう。ただし、心肺機能低下の症状が認められる場合は、軽い運動でも大きな負担になる可能性があるので医師の相談をおすすめします。心臓に負担をかけない運動を提案してもらいましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

先天性ミオパチーは、ほかの難病と初期症状が似ているため、診断が難しい病気です。1〜2回程度の診察や検査ではわからないこともあります。また、成人発症型の場合は、ほかの病気が隠れている可能性もあるため、さらに診断は困難になるでしょう。違和感を覚える場合は、素早く医師の診察を受けてください。早期に発見することで、軽症で済む場合もあります。
また、根治療法は現在ありません。長期的な対症療法のみなので、認められた場合は日常生活でのわずかな違和感や変化に注意してください。不安や疑問を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。

編集部まとめ

気持ち
先天性ミオパチーは、先天性の難病です。遺伝子が関係している病なので、子供に遺伝すると思う人もいるかもしれません。

しかし、遺伝子は突然変異を起こすため、それが原因で発症することもあります。必ずしも遺伝するとは限らないのです。

早期発見が重要です。発見が早ければ早いほど、対症療法も早い段階でスタートできます。不安や違和感がある場合は、医師に相談してみてください。

この記事の監修医師

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