「向精神薬中毒」になると現れる症状・副作用はご存知ですか?医師が監修!
向精神薬中毒についてご存知でしょうか?本記事では向精神薬中毒について以下の点を中心にご紹介します。
・向精神薬とは
・向精神薬中毒の仕組み
・向精神薬中毒の治療
向精神薬中毒について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
向精神薬について
向精神薬とはどのような薬のことを指しますか?
例えば、麻薬や覚せい剤、アルコールなども精神に作用するため、向精神薬に分類されます。ただし、これらの物質は一般的に有害とされる影響もあるため、厳密には治療薬とは言えません。向精神薬は脳に作用し、精神に変化をもたらすお薬の総称です。
向精神薬と抗精神病薬の違いは何ですか?
抗精神病薬は、向精神薬の中でも特にドーパミンをブロックする作用に優れる薬物を指し、主に統合失調症の治療に使用されます。具体的には、ドーパミン受容体をブロックすることで、精神症状の軽減を図る効果が見込めます。
なお、「抗精神病薬」という用語は特定の薬物を指すため、一般的な表現としては「向精神薬」という用語を使用する方が適切です。これにより、精神に作用する薬物全体を包括的に表現できます。
向精神薬はどこの診療科でもらえますか?
一方、神経内科は脳の血管や神経が原因となって体の症状が現れる際に専門的な診察を行いますが、向精神薬の処方は一般的にはされません。
向精神薬の副作用やリスクについて教えてください。
副作用やリスクは個人によって異なる場合もありますので、必ず医師に報告することが重要です。一部の副作用は重篤な状態を引き起こす可能性もあるため、症状が改善しない場合は別の病院を受診することをお勧めします。
向精神薬における悪性症候群とは何ですか?
具体的な原因は明確にはわかっていませんが、ドーパミン系の神経伝達物質の影響が関係していると考えられています。抗精神病薬はドーパミンをブロックするため、特に第一世代の古い抗精神病薬の使用によって悪性症候群が生じる可能性が高まります。
悪性症候群は抗精神病薬だけでなく、抗うつ剤、気分安定薬、抗不安薬、睡眠薬などの精神に作用する薬物全般、さらにパーキンソン病の治療薬や制吐剤など、ドーパミンに作用するお薬の使用によっても発症する可能性があります。
悪性症候群の症状には、高熱、意識障害、錐体外路症状(筋肉のこわばりや震え)、自律神経症状(血圧や呼吸の変化)、横紋筋融解(筋肉の破壊による筋肉痛・腎障害)などが挙げられます。これらの症状がすべて必ず出現するわけではなく、いくつかが認められた場合、悪性症候群と診断されます。
向精神薬中毒が発症する仕組み
向精神薬における乱用・依存・中毒とは何ですか?
精神依存は全ての依存性薬物に共通するもので、薬物による「快感」を求める心理的な欲求を示します。この快感を得るために薬物を使用し続けることが依存の本質です。一方、麻薬やアルコールなどの中枢神経抑制薬は身体依存も同時に引き起こし、耐性が生じたり、急激な減量や断薬によって離脱症状(禁断症状)が現れることがあります。
依存に基づく薬物の乱用は中毒症状を引き起こす可能性があります。急性中毒では「パニック」「意識や知覚の障害」が生じ、場合によっては昏睡状態から死に至ることもあります。慢性中毒では「幻覚・妄想状態を中心とする精神病性障害」「認知障害」「人格変化」などの精神的な問題だけでなく、さまざまな臓器障害が発生することもあります。薬物乱用を中断しても、長期にわたって慢性中毒症状が持続することもあるため、その後の治療やサポートも重要です。
向精神薬中毒とはどのような症状ですか?
誤飲や自殺未遂などさまざまな原因があり、迅速で適切な処置により回復することもあれば、重篤な場合には死亡に至ることもあります。
一方、慢性中毒は、依存性のある向精神薬を長期間使用した結果として発生します。この状態では、薬物の使用を中止しても、症状が自然に消えることはありません。患者は長期のリハビリが必要となります。
慢性中毒の症状には、身体的な依存や薬物への強烈な渇望、不安や抑うつ、睡眠障害、注意力の欠如などが含まれます。これらの症状は、薬物使用の終了後もしばらく続くことがあります。
向精神薬中毒になる仕組みとはどのようなものですか?
依存に基づく薬物の乱用は、中毒症状を引き起こすことがあります。急性中毒では「パニック」や「意識や知覚の障害」、時には昏睡状態から死に至ることもあります。慢性中毒では「幻覚・妄想状態を中心とする精神病性障害」や「認知障害」、そして「人格変化」などが現れることがあります。また、慢性中毒により様々な臓器障害も起こる可能性があります。薬物乱用を中断した後も、慢性中毒の症状が長期間にわたって持続することもあります。
したがって、向精神薬の中毒は乱用と依存のサイクルによって引き起こされ、急性中毒や慢性中毒といった症状が現れる可能性があります。薬物乱用の問題は薬物使用期間に限られず、中断後も長期にわたって影響を及ぼすことがあるため、早期の予防や適切な治療が重要です。
向精神薬中毒の治療法
向精神薬中毒は治りますか?
重要なのは、専門家との協力、適切な薬物管理、健康的な生活習慣の確立、必要なサポートの受け入れなど、積極的な取り組みです。
向精神薬中毒はどのように診断しますか?
同時に、肝臓や腎臓の機能を示す一般的な検査も実施されます。これにより、全身の臓器に異常がないかどうかを調べます。特に、薬物中毒の場合、肝臓や腎臓に負担がかかる可能性があるため、これらの臓器の機能を確認することが重要となります。
また、拮抗薬のある薬物の中毒の場合、原因となる薬物を同定することが治療において非常に重要です。そのため、薬物検査キットを使用して迅速に薬物を同定する手段も用いられます。
さらに、意識障害がみられる場合には、簡易血糖値測定器だけでなく、頭部CT検査などを行って、他の原因がないかも検査されます。意識障害の原因を特定することは、適切な治療を進める上で非常に重要なステップとなります。
向精神薬中毒の治療法にはどのようなものがありますか?
まず、全身管理が重要です。患者の状態を安定させるため、生命徴候のモニタリングや酸素供給、静脈内輸液などが行われます。
次に、中毒の原因物質を特定する必要があります。これには、患者の証言や病歴、血液や尿などの検査結果を元に行われます。特定した薬物に対して、適切な対処法を選択します。
吸収の阻害も重要な治療法の一つです。胃洗浄や活性炭の投与などを行い、薬物の吸収を抑制します。これによって体内の薬物濃度を減らせます。
さらに、排泄の促進と解毒も行われます。尿中排泄を促進するために利尿剤が使用されたり、特定の解毒薬が投与されたりすることもあります。解毒薬は、中毒の原因物質に対して特異的な影響を及ぼし、毒性の中和が期待されます。
向精神薬中毒の治療において入院の必要性はありますか?
ただし、全ての向精神薬中毒の患者が入院が必要とされるわけではありません。症状が軽度で安定している場合や、アウトパティエント治療や日帰り治療プログラムが適切な場合もあります。治療の方針は個別の状況と患者のニーズに基づいて決定されます。
向精神薬中毒を治すために私生活の中で気をつけるべきことはありますか?
まず、睡眠薬や抗不安薬に頼ることを避け、規則正しい生活リズムやバランスの取れた食事、適度な運動、リラクゼーション、光を浴びることなど、健康的な生活習慣を心がけましょう。また、依存性のない睡眠薬を選ぶと良いでしょう。もし依存性のある薬を使用する場合は、厳密に用量と使用方法を守り、漫然と長期間服用しないように注意しましょう。
常に医師と相談しながら減薬や中止を考えることが必要です。自己管理や治療計画の遵守、適切なサポートやカウンセリングを受けることも大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
編集部まとめ
ここまで向精神薬中毒についてお伝えしてきました。向精神薬中毒の要点をまとめると以下の通りです。
・向精神薬とは、脳に作用し精神に影響を与えるお薬の総称
・向精神薬中毒の仕組みは、乱用と依存のサイクルによって引き起こされ、急性中毒や慢性中毒といった症状が現れる
・向精神薬中毒の治療は、急性中毒が疑われる場合には全身管理、中毒原因物質の特定、吸収の阻害、排泄の促進及び解毒が必要となる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。