「嗅覚障害」の症状や原因はご存知ですか?セルフチェック法についても解説!
「最近、好きだったお花の匂いがどれも同じように感じる」
「好物の食べ物が最近、美味しく感じなくなった」
「みんなが臭いと感じていたのに、自分一人だけわからなかった」
このような経験はありませんか。普段の生活ではなかなか感じにくいですが、お花や食べ物など匂いを感じる物の前で何も匂わないと、嗅覚障害を疑います。
ここでは、嗅覚障害について、その原因やどういった症状なのか。また改善策や治療となると、どのような診断をし治療するのか。
以上について、解説していきましょう。
監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
嗅覚障害の原因と症状
嗅覚障害の原因を教えてください。
- 気道性嗅覚障害
- 嗅神経性嗅覚障害
- 中枢性嗅覚障害
それぞれの詳しい原因を見ていきましょう。
- 気道性嗅覚障害とは、鼻から吸い込んだ匂いが嗅粘膜という匂いを感じる場所までのルートが遮断されていることによる嗅覚障害です。一番多い症状で、副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・鼻中隔湾曲症などがあります。蓄膿症なども、この気道性嗅覚障害の1つです。
- 嗅神経性嗅覚障害とは、匂いを感じる細胞(嗅細胞)がウイルス感染・薬剤による影響によって傷害を受けたことによる嗅覚の低下した状態をいいます。ウイルス感染などのほかには、転倒して頭を打ったなど、外傷を受けて嗅神経が傷ついた場合も原因となるのです。
- 中枢性嗅覚障害とは、頭部外傷・脳挫傷などが多く、その後に起こりうる症例として脳腫瘍・脳出血・脳梗塞なども原因になります。これ以外では、パーキンソン病・アルツハイマー型認知症など神経変性疾患にも嗅覚障害が合併することがあるのです。特に、神経変性疾患の場合、主症状を発症する前に嗅覚障害が現れることがあります。
嗅覚外来を受診する患者さんの多くは、気道性嗅覚障害であることが多いです。
嗅覚障害にはどのような特徴がありますか?
そのほかに、嗅覚障害は基本的に量的嗅覚障害と質的嗅覚障害とに分けられることも特徴です。
- 量的嗅覚障害とは、匂いの感じ方が低下した状態(嗅覚低下)とまったく匂いを感じない状態(嗅覚脱失)があります。嗅覚外来を受診される患者さんは、主にこの量的嗅覚障害であることが多いです。
- 質的嗅覚障害とは、異嗅症が代表的な症状です。異嗅症にはその物とは異なる匂いを感じる・どの匂いも同じに感じる刺激性異嗅症と本来周囲に存在しない自分の頭の中だけで匂いを感じる・何も匂わないのに自分だけで感じる匂いなどの自発性異嗅症があります。
このように、嗅覚障害には実にさまざまなことが原因になり、またそれぞれに特徴があるのです。
症状を教えてください。
- 匂いの感じ方が弱くなった
- 鼻を近づけないと匂いがわからない
- 周囲にわかる匂いが自分にわからなかった
- どれも同じような匂いに感じる
- わかる匂いとわからない匂いがある
- 食べ物の風味がなくなり美味しさを感じない
以上のようなことがいえるのではないでしょうか。さらに簡単にいうと、匂いを感じるか感じないか、みんなが感じる匂いと自分が感じる匂いが同じか違うかといったところでしょうか。
嗅覚障害の診断と治療
嗅覚障害の診断方法を教えてください。
- いつごろから嗅覚に異変を感じたか
- 匂いがわからないなどに思い当たるきっかけはあったか
- 匂いに関してどのようにおかしいと感じるか
- 現在、服用している薬の有無
- 他の病気の有無
主には以上のような点をもとに、嗅覚にどのような症状が起こっているかを探っていきます。どのような病気でも同じですが、嗅覚障害の診断をする上でも、この事前の問診なくしては正確な診断は行えません。
セルフチェックの方法を教えてください。
ごく身近なものでチェックできる方法として、以下のような方法があります。
- アロマオイル4種類ほど(100均で売っているものでOK)
- カレー粉・コーヒー粉・酢・茶葉・歯磨き粉
以上のようなものを使って毎日匂いを嗅ぎ分けるのです。方法としては、アロマオイルなどは小さい瓶に入っていることが多いので、そのまま蓋を外して鼻の近くに持っていき、匂いを嗅いでいきます。4種類ほどあれば、それぞれの匂いの違いを感じるか分かるでしょう。
例えばカレー粉やコーヒー粉などの場合は、空の瓶に脱脂綿などを入れてそれに匂いを付けて嗅いでいきます。この場合、なんの匂いか分かるように瓶に匂いの元の名前を書いて貼っておきましょう。
こうしたチェック方法は、嗅覚の訓練にもなりますので続けることで嗅覚の改善が見込める可能性があります。
嗅覚障害はどのくらいで治りますか?
この病態は、嗅覚障害全体の2割程度を占めるとされています。嗅覚障害の症状の軽さや重さにもよりますが、一般的に軽度の場合は半年程度で自覚的に治ることが多いです。
一方、中度〜高度の症状では、発症後半年ほどでようやく自覚的に改善が始まることが多いとされています。長期的に見た場合ですと、全体の80%の患者さんに改善が見られますが、完全に治るのは3割程度です。
治療方法を教えてください。
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の治療としては、以下のような治療法を用います。
- 鼻洗浄
- 点鼻薬
- 内服薬
これらを用いて原因とされる鼻炎が治るかどうかを診るのです。もしも、この治療法で効果がなかった場合は、手術での治療をすすめる場合があります。
また原因が難治性の副鼻腔炎である好酸球性副鼻腔炎の場合、手術のあと定期的に内服薬を処方し場合によっては再手術を要する場合も多いです。先に説明しましたウイルス感染などによる感冒後嗅覚障害の場合、これまでは漢方薬やビタミン剤の内服が従来行われてきました。
最近では、嗅覚刺激療法というリハビリテーションが注目されています。感冒後嗅覚障害の場合は、数年続けていくことで治っていくことがある疾患です。そのため、粘り強く根気よく続けていくことが重要といえるでしょう。
嗅覚障害の予後
嗅覚障害の予後を教えてください。
また予後が良い(経過が良い)という判断もできます。これは嗅覚障害に限らず、何かしら病原体を治療後は必ず予後(経過・結末)を診ていく流れです。
予後の見通しができれば、治療期間が長引いたとしても今どのような状態なのか・あとどのくらいで改善が見通せるかなどの目安にもなるので、リハビリなども頑張れます。
嗅覚障害の注意点を教えてください。
期間は最低でも数ヶ月~数年かかると思ってください。その結果、改善の見通しがつき、自覚的にも前より良くなった気がするという変化も現れる可能性はあります。
治療後も定期的に診察と嗅覚検査を行うので、嗅覚の変化を観察できるのです。そうした観察が前述した嗅覚障害の予後にもなっているのです。諦めなくて良かったといえるように根気強く頑張りましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
例えば、ガス漏れ・食べ物の腐敗などによる異臭がわからないとガス漏れにおいては、爆発の危険もあります。こうした危険を未然に防ぐためにも少しでも嗅覚に異変を感じたら、すぐに嗅覚外来を受診しましょう。
編集部まとめ
今回は、嗅覚障害についてその原因や診断・治療・セルフチェック方法などを解説してきました。
嗅覚障害は突然起こる病気のようですが、意外にも加齢が原因によるものでもあります。普段は匂いについては、あまり意識しないもののように感じるでしょう。
しかし、毎日の料理や食事などで1日1回は必ず匂いを嗅ぐことはあるものです。特に食事をしているときに今まで美味しいと感じていたものが、最近美味しく感じなくなったなどがあると要注意ではないでしょうか。
そのようなときは、一度心を落ち着けていろいろな匂いを嗅ぎ分けることをしてみてください。いわゆる嗅覚のセルフチェックです。
嗅げば何の匂いかわかるようなものが良いですね。例えば、今回の記事でも解説したカレー粉・酢・歯磨き粉などはすぐわかる匂いです。
これらの匂いがわからない、または違う匂いがするなどがある場合はすぐ嗅覚外来を受診してください。