FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「母趾種子骨障害」の原因や症状を解説!足の親指の付け根が痛いことはありませんか?

「母趾種子骨障害」の原因や症状を解説!足の親指の付け根が痛いことはありませんか?

 公開日:2023/08/08
「母趾種子骨障害」の原因や症状を解説!足の親指の付け根が痛いことはありませんか?

以前スポーツをしていた、または、現在何かしらの運動をしていて足の親指の付け根が痛いと感じることはありませんか。

運動をしている間だけ痛いもしくは慢性的に痛みを感じる場合は母趾種子骨障害の症状かもしれません。

母趾種子骨障害とは母趾(足の親指)の付け根部分に極端に負担がかかったことで、骨が割れたり炎症が起きたりして、慢性的な痛みを引き起こす病気です。

この記事では母趾種子骨障害の症状や痛みの原因・治療方法について解説していきます。

母趾種子骨障害の予防と対策方法についても解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

母趾種子骨障害の原因と症状

足を押さえる女性

種子骨にはどのような役割がありますか?

足の裏の付け根部分には種子骨という小さな2つの骨があり、その間にある腱がスムーズに動くことで親指で踏み込んだり親指が大きな力を出せるようにサポートしています。
それ以外にも親指を踏み返す時、種子骨の間にある腱がこすれすぎないようにしたり親指が動く方向付けをしたりする役割があるのが種子骨です。足の裏にある骨の中でも種子骨は出っ張っている構造であるため、親指を反り返したり踏み込んだりする動作を続けていると極端に負荷がかかりやすい特徴があります。

母趾種子骨障害の原因を教えてください。

種子骨が支えている母趾MTP関節は着地の衝撃を和らげたり、関節の動きをスムーズにしたりする働きがあり、体重の50%以上を支えています。そのため種子骨には負荷がかかりやすく、継続的に負荷がかかる動作や骨折などの外的な衝撃が加わることで種子骨が割れてしまったり炎症を起こしてしまったりします。
長時間走るマラソンやバスケットボールなど踏み込み動作の多いスポーツ・労働などをしている人がなりやすい病気といえるでしょう。

症状を教えてください。

母趾種子骨障害は母趾の付け根にある種子骨や腱、母趾MTP関節など種子骨の周辺で起こる症状のことをいいます。さまざまな症状が現れますが、母趾種子骨障害の主な症状は以下の通りです。

  • 急性の骨折
  • 疲労骨折
  • 炎症
  • 二分種子骨
  • 骨壊死
  • 感染
  • 関節症

それぞれの症状には、腫れや痛みなどが伴います。症状が進行すると、歩くこともままならないほどの痛みになりますので、少しでも当てはまる症状があれば病院に行きましょう。

母趾種子骨障害が起こりやすいのはどのような人ですか?

先述したように、長時間走るスポーツや踏み込み動作の多いスポーツ・労働などをしている方は母趾種子骨障害になりやすいです。マラソンなどの歩数が多いスポーツは長時間に渡り地面からの衝撃を受け続けるため、種子骨や種子骨の間の腱が負傷し、炎症を引き起こします。
また、母趾種子骨障害はスポーツをしている方だけの病気ではありません。扁平足外反母趾の方は種子骨脱臼などが原因となり、痛みを伴う母趾種子骨障害になる場合があります。
それ以外にもハイアーチと呼ばれる甲高の足の方も、種子骨に負荷がかかりやすく母趾種子骨障害になりやすいので注意が必要です。

母趾種子骨障害の診断と治療方法

OKサインをする女医

母趾種子骨障害はどのように診断されますか?

母趾種子骨障害は、痛みがある場所画像所見により診断されます。「母趾の付け根部分に痛みがある」「押すと痛い」「母趾を反らすと強い痛みがある」このような症状がある場合、母子種子骨障害と診断されます。
種子骨の骨折や二分種子骨などの形状異常を見るにはレントゲンやMRIを使った画像検査が有効です。診断結果により治療方針が変わっていきますので、注意深く原因を探っていくことが大切です。
痛みの症状は同じでも、種子骨が骨折していたり壊死していたりする場合がありますので自分で判断せず必ず専門の病院で検査を受けましょう。

治療方法を教えてください。

母趾種子骨障害の場合、症状によって治療方法が変わります。症状が比較的軽度の場合、保存治療によって改善される場合がほとんどです。保存治療とは足に負担のかかるスポーツや動作を制限し、症状が改善するまでの間、安静に過ごす治療方法です。痛みの原因である母趾が反るのを制限するためにテーピングで固定したり、足の裏にかかる負荷を軽減するためにパットをインソールに使用する治療方法もあります。
使用するパッドは柔らかく弾力性があり、痛みのある局部だけくり抜くことにより体重をかけたときに圧力がかからないようになっています。いずれの場合も、痛みを取り除き、足に負荷がかからないようにするのに有効です。

手術が必要になることはありますか?

保存療法を行っても症状が改善されなかったり繰りかえされたりする場合は、手術療法が行われます。母趾種子骨障害の原因となる種子骨を手術で取り除く方法ですが、骨を取り除いても日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。
ただし、種子骨を全摘出してしまうと母趾を曲げる力が弱くなってしまうので、部分摘出か腱の機能を温存・再建する手術方法が望ましいでしょう。種子骨をどの程度取り除くかは症状の進行度によりますが、術後は普通の生活に戻るのに数週間から数ヶ月かかる場合があります。

母趾種子骨障害の予防と対策

かかとに手を当てる

母趾種子骨障害は再発しますか?

足の裏には、体を支えながら常に体重の負荷がかかっています。そのため、保存療法により一時的に症状は緩和されても、母趾に負担がかかるスポーツや動作を繰り返すことで痛みが繰り返される可能性があります。
アスリートの方の中には、従来の手術方法により種子骨を取り除いても十分な治療効果がみられなかった事例もありました。このように、母趾種子骨障害は一度なってしまうと長引いてしまう病気であるといえるでしょう。

予防方法を教えてください。

母趾種子骨障害を予防するためには原因となる母趾に負荷がかからないようにすることが重要です。ストレッチなどでこまめに足の指を伸ばし、意識的に動かすようにしましょう。スポーツをした後にアイシングをして炎症を抑える方法も有効です。
また、母趾種子骨障害はスポーツをする人だけの病気ではありません。外反母趾や扁平足の人は、足全体で地面をとらえることが難しいため母趾に負担がかかりやすく母趾種子骨障害になりやすいです。
外反母趾の主な原因は靴を履いている間に足先が圧迫されることです。自分の足に合わない靴を履いていたりハイヒールを履いて痛みを感じたりする方は自分に合った靴を選びましょう。足にしっかりフィットするサイズで、母趾に負担がかからないよう足先がゆったりとした靴がおすすめです。

母趾種子骨障害の対策方法を教えてください。

母趾種子骨障害の症状が現れたら、まずは足の指のストレッチテーピングなどをしてみましょう。母趾種子骨障害の対策方法は母趾だけにアプローチするものと思われがちですが、下半身全体のストレッチにより効果が出現する場合もあります。
これはストレッチにより股関節周辺の筋肉がほぐれ、足関節背屈可動域が広がることで地面に着地するときに母趾にかかる負担が軽減されるためです。このように、母趾種子骨障害が起きている部分だけではなく総合的にアプローチすることで症状が改善される場合があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

スポーツをしている間だけ痛いといった場合、あくまで一時的な痛みなので安静にしている間に痛みがなくなり、母趾種子骨障害とは気付かない方もいらっしゃると思います。ですが、一時的に痛みが緩和されても、知らず知らずのうちに症状が悪化し痛みが慢性化してしまう場合もあります。
少しでも母趾種子骨障害の症状を感じたら自分で判断せず、できるだけ早く専門の病院で診てもらいましょう。母趾種子骨障害は悪化する前に正しい治療法を行うことが肝心です。不安な症状があれば医師に相談してみましょう。

編集部まとめ

青空に向かってOKサイン
母趾種子骨障害はスポーツなどで、母趾の付け根部分に極端に負担がかかることで起きる病気です。

母趾種子骨障害になると骨が割れたり、炎症が起きたりして慢性的な痛みに悩まされます。

母趾種子骨障害の原因を取り除き、安静にしていると回復する場合がほとんどですが、症状が悪化すると種子骨を摘出する手術を行わなければならなくなります。

足は日常生活の基盤となる体の重要な部分です。正しい予防方法と対策方法で母趾種子骨障害の進行を未然に防ぐことがなにより大切です。

この記事の監修医師