「慢性疲労症候群」になると現れる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
目まぐるしい時代の変化に伴い、日々強いストレスやプレッシャーを感じている方が大半を占める世の中になりました。
いつの間にか疲れた状態が日常的になっており、それゆえに危機感を抱いている方はほとんどいないことでしょう。
しかし、疲労の中にも「慢性疲労症候群」という立派な疾患があることをご存じでしょうか。
あなたが通常の疲れだと我慢していたその症状も、実は「慢性疲労症候群」によるものかもしれません。
本記事では、本人も周囲の方も気づくことが難しい「慢性疲労症候群」について詳しく解説します。
監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
慢性疲労症候群とはどんな病気?
慢性疲労症候群とはどんな病気なのか教えてください。
日常生活に支障をきたすほどの疲労感・筋肉や関節の痛み・記憶力や集中力の悪化・無気力・脱力感などの様々な症状に悩まされます。
症状の程度は人によって異なりますが、総じて日常生活に影響が出ていることが特徴です。
慢性疲労症候群の原因はなんですか?
一概に原因がこれであると断定できることはなく、相互に関連し合いながら慢性疲労症候群を引き起こす可能性が指摘されています。
慢性疲労症候群を発症した際にみられる症状が知りたいです。
- 微熱がある
- 喉の痛み
- リンパ節の腫れ
- 原因不明の筋力の低下
- 少しの動作で全身の倦怠感に襲われる
- 良質な睡眠がとれていない
- 頭痛がしたり、重く感じたりする
- 無気力な状態である
- 憂鬱になる
- 耳鳴りがする
- 食欲がわかない
- 嘔吐や下痢がある
疲労感以外にもこれらの症状に悩まされることがあります。
半年以上続いていたり、再発を繰り返したりしている場合には、慢性疲労症候群の可能性が高いでしょう。ただこれらの症状には個人差があり、常に同じ症状に悩まされ続けるとも限りません。
長期間にわたって日常生活に支障をきたすような不調を感じているのであれば、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
通常の疲れとどのような違いがあるのでしょうか
疲労感がなくなったと思ってもすぐに再発することがあり、身に覚えがないのに突然現在よりも悪化することもあります。
体力だけでなく精神的にも大きなダメージを負うため、寝たきりになってしまう方も少なくありません。また通常の疲れとは異なり、前述のように様々な症状に悩まされることがあるのも慢性疲労症候群ならではの特徴です。
きちんと医療機関を受診して、診断してもらう必要があります。
慢性疲労症候群の特徴やリスク
慢性疲労症候群は何歳くらいの患者さんが多いのでしょう?
特に女性が発症しやすいというデータもありますが、正確なところはわかっていません。
日本では、人口のおよそ0.1%〜0.3%、つまり8万人〜24万人の患者さんがいるといわれています。
慢性疲労症候群を放置するリスクを知りたいです
放置してしまうと症状は一向に改善されず、耐える苦しさに悩まされ続けてしまうでしょう。
周囲の人たちからは怠けていると勘違いされ、当の本人にはその気がないのに理解を得ることも難しくなります。
症状が重く寝たきりになってしまった場合には、働けないことによる経済的な不安に駆られ、さらに症状が悪化してしまう原因にもなるかもしれません。
他の疾患の発症リスクを高めてしまうこともあり、軽視してはいけない病気だといえます。
慢性疲労症候群を通常の疲れと勘違いしてしまうことは少なくないので、少しでも異常を感じたら放置せずに医療機関を受診しましょう。
慢性疲労症候群になりやすい人の特徴はありますか?
実際、発症時に睡眠時間の変化・人間関係のトラブル・休養の取り方の変化・怪我や病気・生活環境の変化などでストレスを感じている方が多いです。
このような精神的なストレスを感じている方以外にも、例えば過重労働といった身体的なストレスを抱いている方も慢性疲労症候群になりやすい傾向があります。
とはいえ、誰もが明日に発症する可能性があるのが慢性疲労症候群の特徴です。
慢性疲労症候群の診断・検査方法や治療法
慢性疲労症候群の診断ではどのような検査をしますか?
そのため、診断されるまでに数年かかってしまうこともあります。
検査方法として一般的な血液検査・尿検査・甲状腺検査・心電図・MRIといったものでは特徴的な異常がみられません。
まずはこれらの検査を行って、何も異常がないことを確認します。
そして、問診による検査と、他の疾患との鑑別を行います。あらゆる病気の可能性から除外されてようやく慢性疲労症候群として診断されるのです。
それだけに慢性疲労症候群の検査や診断は難しいものとされています。
慢性疲労症候群の治療法が知りたいです。
患者さんの症状に合わせて治療法を模索していくことが一般的です。
ただ慢性疲労症候群は心理的作用が強いため、対症療法として鎮痛薬・抗うつ薬などを投与したり、カウンセリングをしたりする治療法が有効になることが多い傾向にあります。
最近ではビタミンB12やビタミンCが、睡眠障害だけでなく脱力感・疲労感にも有効であることがわかってきたため、慢性疲労症候群の治療に使われることがあります。
慢性疲労症候群を疑う場合、何科を受診したら良いのでしょうか?
疲労感や倦怠感が強い場合には内科、抑鬱状態など心理的な問題が大きい場合には精神科を受診することがおすすめです。
ただ、慢性疲労症候群の診断基準は、患者さんの自覚症状や医師の主観的な部分に依存しているため、診断や治療方法にずれが生じてしまうことがあります。
そのような事態を避けたい場合には、内科や精神科ではなく、慢性疲労症候群を専門的に扱っている医師に相談するようにしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
これらのアラートは、身体に休息を取るように催促するために発動するものです。このような社会的状況ですから、三大アラートの1つである「疲労」を当たり前のものだと認識してしまうのは仕方がありません。
しかし、中には慢性疲労症候群という指定難病の候補として検討されるほど大きな病気が隠れている可能性は決してゼロではありません。
このことを忘れないようにしましょう。
そして、ご自身の身体に続いているその不調は、本当に通常の疲れなのでしょうか。
これを機会にぜひ振り返ってみてください。そこでもし原因不明の疲労が長期間続いていると感じたのであれば、遠慮せず医療機関を受診することをおすすめします。
編集部まとめ
慢性疲労症候群は原因がわかっておらず、診断も難しい病気です。
それに伴い、当の本人が通常の疲れだと勘違いして我慢してしまったり、周囲から怠けていると誤解され続けてしまったりすることは少なくありません。
慢性疲労症候群は立派な病気です。
お一人で悩まず、きちんと医療機関を受診して診断してもらう必要があります。
原因不明の疲労や多様な症状が半年以上続いている場合は、放置せずに内科や精神科を受診するようにしましょう。
参考文献