「朝起きるのがつらい」起立性調節障害に効果的な漢方薬を医師が解説

「朝起きるのがつらい」「立ちくらみやめまいが頻繁に起こる」。このような症状に悩む思春期の子どもたちに多い疾患が「起立性調節障害」です。この病気は、成長期特有の体調変化やストレス、環境要因などが原因で起こり、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。治療には薬物療法や生活習慣の改善が用いられますが、特に注目されているのが「漢方薬」を用いた治療です。本記事では、園ペインクリニックの松本先生に、起立性調節障害の基礎知識や漢方薬の作用と選び方について詳しくお話を伺いました。

監修医師:
松本 園子(園ペインクリニック)
起立性調節障害とは?

編集部
はじめに、起立性調節障害とはどのような疾患か教えてください。
松本先生
起立性調節障害は、主に思春期の子どもたちに多く見られる疾患です。ただし、成人でも発症することがあり、幅広い年代に影響を与えることがあります。この疾患は、朝起きるのがつらい、立ち上がるときにふらつく、疲れが取れないといった症状が特徴です。自律神経が血圧の調整をうまく行えないために起こることが多く、心と体の両面に影響を及ぼすことがあります。一方、起立性低血圧は血圧が一時的に低下する状態であり、特定の器質的な要因が背景にある場合が多いですね。
編集部
起立性調節障害と似た症状を持つ疾患には何がありますか?
松本先生
似た症状を持つ疾患には、貧血、慢性疲労症候群、自律神経失調症などがあります。貧血では、立ちくらみや倦怠感、息切れが特徴であり、血液検査で簡単に診断できる場合が多いです。一方、慢性疲労症候群は強い疲労感が数ヶ月以上続く疾患で、診断には複数の検査が必要です。また、内分泌系の異常や脳血流の低下も関与する可能性があるため、慎重な診断が求められます。
編集部
この疾患の原因について教えてください。
松本先生
起立性調節障害の原因は、成長期のホルモンバランスの乱れ、自律神経の未発達、ストレスなどの環境要因が絡み合っています。特に、女子はホルモンの変動が大きく、影響を受けやすいと言われています。また、不規則な生活習慣や睡眠不足、栄養不足が症状を悪化させることもあります。こうした原因が複合的に関与するため、患者ごとに異なるアプローチが必要です。
「起立性調節障害」の検査と治療について知る

編集部
病院を受診すべき症状やセルフチェックの方法を教えてください。
松本先生
朝起きられない、立ち上がるときにめまいやふらつきがある、疲れが数日以上続く場合は、医療機関での診察を検討してください。また、学校や日常生活に支障をきたしている場合や、頭痛や吐き気を頻繁に感じる場合も注意が必要です。セルフチェックとしては、「座っているよりも立っているときに症状が悪化するか」「日中に異常な眠気があるか」を確認してください。これらの症状が1週間以上続く場合は、早めに病院を受診しましょう。
編集部
病院ではどのような検査を受けることになりますか?
松本先生
病院では、まず問診を通じて症状の詳細を確認します。その後、血圧測定や心電図、血液検査が一般的に行われます。また、「起立試験(立ち上がったときの血圧や心拍数の変化を調べる検査)」も実施されます。必要に応じて、脳の血流や内分泌機能を調べる追加検査が行われることもあります。これにより、ほかの疾患との区別がつきやすくなります。
編集部
この疾患の治療方法について教えてください。
松本先生
治療方法は、生活習慣の改善が基本です。例えば、規則正しい睡眠時間を確保し、バランスの取れた食事を摂ることが大切です。また、水分や塩分を適切に摂取することで症状が緩和される場合もあります。軽度の症状には漢方薬が使われることが多く、副作用が少ないため子どもにも適しています。ただし、重症例では抗うつ薬や血圧を安定させる薬が処方されることがあります。
漢方薬を用いた治療とは?

編集部
漢方薬が起立性調節障害にどのように作用するか教えてください。
松本先生
漢方薬は、全身のバランスを整えることで症状を改善させます。例えば、めまいや倦怠感には血流を促進する漢方薬が有効です。また、ストレスによる緊張が強い場合には、心を落ち着ける作用を持つ漢方薬が使用されます。これにより、めまいや頭痛、立ちくらみといった症状が緩和されることが期待できます。
編集部
漢方薬が効果的な場合とそうでない場合について教えてください。
松本先生
漢方薬は軽度の症状に向いており、子どもや副作用を避けたい方に適しています。ただし、器質的な疾患や重症例では、漢方薬だけでは十分な効果が得られないことがあります。患者の体質や症状に応じた適切な処方が必要です。
編集部
市販の漢方薬を選ぶ際の注意点について教えてください。
松本先生
市販の漢方薬は、軽度の症状に対して効果を発揮する場合がありますが、自己判断で使用すると症状が悪化するリスクもあります。漢方薬は一人ひとりの体質に応じた処方が重要なため、必ず専門医や薬剤師に相談してください。特に子どもの場合は、適切な指導の下で使用することが大切です。
編集部まとめ
起立性調節障害は、思春期の子どもたちにとって心身ともに大きな負担となる疾患ですが、早期に適切な治療を受けることで改善が期待できます。特に漢方薬は、副作用が少なく、子どもにも安心して使用できる選択肢として注目されています。本記事が、症状で悩む方やその家族にとって役立つ情報となれば幸いです。
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