漢方薬は本当に効き目あるの? 西洋薬との違いや特徴、メリット・デメリットを紹介
「漢方薬はあんまり効かないような気がする……」。このようなイメージを抱いている人もいるはずです。漢方薬は日本独自に発展した「漢方医学」で使用され、いくつかの症状に複合的にアプローチできる薬です。そこで気になるのが、西洋薬との違いや漢方薬のメリット・デメリットだと思います。そこで今回は「日吉の森内科クリニック」の森田先生に、「漢方薬とは何か」という初歩的なところから解説していただきました。
監修医師:
森田 あかね(日吉の森内科クリニック 院長)
聖マリアンナ医科大学卒業。聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院呼吸器内科勤務。その後、国立病院機構災害医療センター、国立国際医療研究センター病院呼吸器科で後期研修、東京明日佳病院内科、はなまるクリニックに勤務し、内科・呼吸器疾患治療を中心におこなう。2020年、神奈川県横浜市に「日吉の森内科クリニック」を開院。日本呼吸器学会専門医、日本呼吸器内視鏡学会専門医、日本アレルギー学会専門医、日本内科学会認定医。難病指定医。
目次 -INDEX-
漢方薬とは
編集部
漢方薬とはどのような薬なのか、改めて教えてください。
森田先生
漢方薬は、2つ以上の薬効成分を組み合わせてつくられる薬です。漢方薬に使用される薬効成分には、自然界に存在する鉱物や植物などがあります。一般的に、漢方薬は病気そのものではなく、体質や複数の症状に対してアプローチする薬です。
編集部
西洋薬との違いはなんでしょうか?
森田先生
西洋薬は、人工的に化学合成された1つの物質でつくられています。特定の病気や症状に対して、強い薬理作用をもたらすことが西洋薬の特徴と言えます。一方で、漢方薬は様々な成分でつくられており、いくつかの症状に対して自然治癒力を利用しながら改善を図ります。つまり、「西洋薬は特定の病気や症状にピンポイントで効かせるといったイメージ」であるのに対して、「漢方薬は体質やいくつかの症状に対して、複合的にアプローチするといったイメージ」と言えば分かりやすいでしょうか。
編集部
西洋薬が向いているのはどのような場合でしょうか?
森田先生
感染症や外傷など、特定の治療法が有効とされる場合や病気の原因が明確な場合などは西洋薬が向いています。
編集部
一方で、漢方薬はどのような症状の場合に処方されるのでしょうか?
森田先生
何らかの症状があっても検査ではっきりとした原因が特定できない場合などに、漢方薬を使用することが多い印象です。また、体質が関係する場合や慢性的な疾患の場合などにも、状態に応じて漢方薬を用いるケースもあります。ほかにも、ご本人の症状が楽になるように西洋薬と漢方薬を併用したり、精神的な不調を訴えていて向精神薬の内服に抵抗がある人にも漢方薬を処方したりするケースなどがあります。
漢方薬のメリット・デメリット
編集部
漢方薬を使用するメリットを教えてください。
森田先生
漢方薬には様々な種類があるため一概には言えませんが、全身から局所まで幅広く働いたり、自然治癒力を高めたりするものがある点でしょうか。また、例えば花粉症や鼻風邪で透明の鼻水が出ているときは、同じ種類の漢方薬を使用します。つまり、病気に対して処方するのではなく、患者さんの状態や症状に対して処方できる点もメリットと言えます。
編集部
反対に、デメリットもあるのでしょうか?
森田先生
漢方薬のなかには、血圧の上昇や浮腫などの副作用を生じたり、飲み合わせに注意が必要だったりする種類もあります。
編集部
漢方薬は、効果が出るまでに時間がかかるイメージがあります。
森田先生
種類にもよりますが、急性期に効果が期待できる漢方薬もあります。ただし、効果の発現やその薬が患者さんにとってうまく適合するかは、問診で体質や症状などを詳しく調べる必要があります。そのため、その人にとって何が足りていないか、どんな機能が乱れているかによって、漢方薬を選択することが大切です。このように土台の部分を整えて不調の改善を図る場合には、ある程度の時間を要することもあります。
漢方薬の正しい服用方法
編集部
漢方薬を食間や食前に服用するのはどうしてですか?
森田先生
漢方薬の薬効成分の特徴により、空腹時の方が吸収しやすいと言われています。しかし、食後に服用しても効果が期待できないということではありません。大切なのは、食前でも食後でもいいので、決められた量を忘れずに飲み続けることです。
編集部
先ほど、漢方薬も飲み合わせに注意が必要な場合があるとのことでした。
森田先生
はい。西洋薬によっては処方された漢方薬と相互作用を示すこともあるため、どんな薬かに関わらず、内服されている薬がある場合は「お薬手帳」を必ず持参するようにしてください。
編集部
自分に合った漢方薬は、どうやって見つけられるのでしょうか?
森田先生
これは実際に服用してみないとわからないでしょう。あくまで一例ですが、服用してみて甘く感じたり飲みやすく感じたりする場合は、その人に合っているというケースがあります。ただし、苦く感じたり飲みにくさを感じたりする場合でも、効果を実感する場合には飲めるという患者さんもいらっしゃいます。薬を処方した医療機関では、飲み続けてみて問題なく飲めるのか、飲むことがつらいと感じるのかなどを聞いたうえで、その薬が合っているか、もしくは追加で必要な薬がないかなど、症状を改善させるために調整してくれるでしょう。先ほどもお話ししましたが飲み続けることが大切なので、諦めないでほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
森田先生
何らかの不調があるのに病院で検査をしても原因が特定できず、つらい思いをしたことがあるという人には漢方薬が有効となるケースがあるため、一度病院で相談してみるといいかもしれません。漢方薬は自然界に存在する成分でつくられ、体質や症状に応じて幅広く使用できる薬です。うまく適合すれば、様々な症状を改善する効果も期待できるでしょう。しかし、どんな薬であっても飲み続けなければ効果は期待できません。西洋薬でも言えることですが、自己判断で飲むのをやめず、医師の指示に従って正しく内服してください。
編集部まとめ
漢方薬は、いくつかの症状に複合的なアプローチができるのが特徴です。しかし、そんな漢方薬も副作用が生じることがあるほか、飲み合わせに注意が必要なものもあるとのことでした。漢方薬を処方される際には、お薬手帳を提示して医師や薬剤師の指示に従って正しく服用しましょう。
医院情報
所在地 | 〒223-0051 神奈川県横浜市港北区箕輪町1丁目24−9 2階 |
アクセス | 東急東横線「日吉駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 内科、呼吸器内科、アレルギー科 |