「肺線維症」を発症すると現れる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
肺線維症は、難病とされる病気です。肺が線維化することで酸素の取り込みが難しくなり、呼吸困難などの症状が現れます。
慢性経過の疾患ですが、治療に取り組むことで進行を抑制したり、急激な悪化を防止したりすることが可能です。
本記事では、この病気の特徴に触れながら、行われる治療方法などを紹介します。
病気の治療には、その病気をよく知ることが大切です。必要な知識を身につけて、病状の進行抑制や症状の軽快に役立ててください。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
目次 -INDEX-
肺線維症とは?
肺線維症の特徴を教えてください。
肺胞は肺に存在する器官です。血液中の二酸化炭素を取り込み、肺の中の酸素を血液に与える役割を果たします。
このやり取りは肺胞の壁を通して行われるため、線維化が生じるとやり取りが難しくなります。それによって、様々な症状が現れる疾患です。
どのような症状がみられますか?
安静時は問題ありませんが、階段の昇り降りや軽い運動で息切れが生じやすくなります。入浴・排泄といった日常生活の簡単な動作で生じることもあります。
また、硬くなった肺胞は膨らみにくいため、深呼吸が難しくなることも特徴です。痰の絡まない乾いた咳が続くケースもあります。
これらの症状は、病気が進行して現れる場合が多いです。初期段階では自覚症状がほとんどなく、病院を受診したときにはかなり進行していたということもあり得ます。
更に進行すると二酸化炭素の排出もうまくいかなくなり、全身状態が急激に悪化し命に関わります。
発症する原因は何でしょうか?
炎症・損傷によって傷つけられた壁は、時間をかけて硬く厚くなっていきます。この炎症・損傷が生じる原因は様々です。
膠原病と呼ばれる自己免疫が自分の身体を攻撃する疾患にかかっていると、免疫機能が肺を攻撃してしまう場合があります。
ほこり・羽毛・カビなどを慢性的に吸入していることで損傷が起きたり、服用した薬剤の影響で傷ついたりすることもあります。
その他にも考えられる原因はありますが、発症の原因は特定できないことが多いです。
発症した患者さんのおよそ半数が原因不明であるとされています。
間質性肺炎との違いを教えてください。
間質性肺炎の中で発症の原因が不明であるものは、「突発性間質性肺炎」と呼ばれます。
突発性間質性肺炎は7種類に分けることが可能です。その中でも最も多いのが、「突発性肺線維症(IPF)」という病気です。50%以上の割合を占めています。
なりやすい人の特徴を教えてください。
また、そのほとんどが喫煙者であることから、喫煙の習慣がある人はこの病気にかかる可能性が高くなります。
加えて、遺伝子に問題がある場合、肺線維症になりやすいです。家族や親戚に発症した人がいるならば、遺伝子の影響を受けている可能性があります。
その場合は「家族性肺線維症」と呼ばれます。年齢が若い方でも発病しやすいタイプです。職業によって発症しやすくなることも考えられます。
金属やアスベストの粉塵を吸う機会が多い職業の方は、肺が傷つくことで病気になるリスクが高いです。
肺線維症治療とステージ
どのような検査で診断されますか?
突発性肺線維症の場合、胸部CTで肺が線維化し、蜂の巣状になっていることが確認されます。以上の検査の結果と、問診によって得られた情報を総合して診断されます。
問診では家族の発病歴・職業・喫煙歴などが聞かれるケースが多いです。
治療方法を教えてください。
ただし、これらの薬は突発性肺線維症には効果が期待できません。この病気の場合、抗線維化薬を使用して治療を行います。
この薬は病気を完治させるものではなく、進行を抑える薬です。また、進行を抑えたり悪化を防いだりするためには、日常生活にも気を配ることが大切です。
喫煙をしている場合は、禁煙に取り組みましょう。体重増加は呼吸困難を引き起こしやすくなるため、食事制限や体重管理も行います。
風邪を引くと症状が急激に悪化することもあり得るので、手洗いなどの感染症対策も積極的に行いましょう。
肺線維症のステージについて教えてください。
初期には自覚症状がなく、進行すると呼吸困難や空咳といった症状がみられることがほとんどです。さらに重篤になると、自力では酸素を十分に取り込めなくなります。
そこまで進行した患者さんには、在宅酸素療法や呼吸リハビリテーションという治療が必要です。
病気は時間をかけて進行しますが、突然症状が悪化する急性憎悪が起きる場合もあります。
また、この病気を発症すると、肺がんなどの併発が起こる可能性が高いです。特に、喫煙をしている方はリスクが高いです。
肺がんが併発した場合、がんの治療である放射線や手術などが原因で線維化が進行するケースがみられます。
肺線維症の予後
肺線維症は完治するのでしょうか?
そのため、行われる治療は病気の進行を抑えるものや、急性増悪を防ぐものになります。
しかし、治療の効果で病状が安定し、症状が軽くなることも期待できます。治療には積極的に取り組み、症状の回復を目指しましょう。
肺線維症と診断された場合、余命はどのくらいでしょうか?
しかし、病気の進行は人によって様々であるため、一概にはいえません。進行がゆるやかで軽症の場合もあれば、急性増悪により急激に進行する場合もあります。
また、治療には進行抑制や急性増悪の防止の効果があるため、余命の延長が期待できます。
家族はどのようなケアをすれば良いでしょうか?
急性増悪を防ぐには、感染症の予防が欠かせません。
家庭内に風邪や感染症をもちこまないように、家族の方も手洗いうがいなどの感染症対策を積極的に行ってください。
また、患者さんの精神的なケアも重要です。病気と診断されると、多くの不安を感じるでしょう。
その不安を可能な限り取り除いてあげてください。病状を正しく理解し、寄り添うことが大切です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
そのため、申請を行うと医療費の補助が受けられる可能性があります。
助成が受けられるかどうかは病状の具合によって変わるため、担当医に相談してから申請を行いましょう。
この病気は完治が難しいですが、治療によって症状が軽快することも望めます。医療費助成などのサービスをうまく利用して、治療を積極的に行ってください。
編集部まとめ
肺線維症は肺胞の壁が線維化し、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が困難になる病気です。
初期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行するにつれて呼吸困難などの症状が現れます。しかし、場合によっては急性増悪が生じ、病状が急激に進行することもあります。
主に行われる治療法は薬物療法です。主に症状の進行を抑える薬が処方されます。薬を服用しても、線維化した肺が元に戻ることはありません。
また、日常生活の見直しで進行を抑えることも可能です。禁煙を行い、急性増悪の原因となる風邪などを徹底的に予防しましょう。
完治の難しい病気ですが、適切な治療を施せば症状が軽快する可能性もあります。担当医や家族のサポートを受けながら、治療に取り組んでいってください。
参考文献