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「甲状腺がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?原因・症状も解説!【医師監修】

 更新日:2024/02/06
「甲状腺がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?原因・症状も解説!【医師監修】

本記事では甲状腺がんの生存率について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・甲状腺がんの症状
  • ・甲状腺がんの生存率
  • ・甲状腺がんを放置するとどうなるか

甲状腺がんの生存率について理解するためにも参考にしてください。
ぜひ最後までお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

甲状腺がんとは?

甲状腺がんは、喉の下部に位置する「甲状腺」という臓器で発生する悪性腫瘍です。甲状腺は、体の代謝に関与する甲状腺ホルモンを生成し、貯蔵する役割を果たしています。甲状腺に形成された塊を甲状腺結節と呼び、その中で悪性のものが甲状腺がんとなります。多くのケースでは、自覚症状は存在しないか、結節以外の症状は見られません。しかし、病状が進行すると、喉の違和感、声のかすれ、痛み、飲み込みにくさ、誤嚥、血痰、呼吸困難などの症状が現れることがあります。これらの症状に気づいた場合は、早めに医療機関に相談することが重要です。

甲状腺がんの原因と症状

甲状腺がんの原因と症状について説明します。
原因:甲状腺がんの多くの原因は不明です。甲状腺髄様癌の約40%は遺伝により発生します。
症状:甲状腺がんが進行していない場合は、症状がほとんどなく気が付かないことがあります。甲状腺がんが大きくなるとしこりができ、甲状腺が腫れているのが目で見て分かるようになります。甲状腺がんが反回神経に浸潤して声のかすれが出てくることもあります。

【ステージ別】甲状腺がんの生存率

甲状腺がんのステージ別の5年生存率は、その大きさや浸潤度合、リンパ節転移や遠隔転移の有無により異なります。全国がんセンター協議会の生存率共同調査によると、以下のようになっています。
ステージⅠ:100.0%
ステージⅡ:98.6%
ステージⅢ:99.0%
ステージⅣ:73.2%
これらの数値については、手術だけではなく、放射線治療、薬物療法、その他の何らかの治療を2007年から2009年に受けた患者を対象にしています。

甲状腺がんの診断

甲状腺がんの診断について解説します。

血液検査

甲状腺の状態を詳しく知るために血液中の甲状腺ホルモンや腫瘍マーカーを調べることがあります。具体的な血液検査の項目については以下の通りです。
甲状腺ホルモン(Free-T4、Free-T3):これらは代謝を調整するための甲状腺ホルモンです。
甲状腺自己抗体:甲状腺がん以外の病気も考えられるため、他の病気を見分けるために測定します。
サイログロブリン:甲状腺ホルモンのもとになる物質です。手術で甲状腺をすべて摘出した後、再発の確認のために検査する可能性があります。
カルシトニン:カルシトニンは、傍濾胞細胞で作られます。髄様がんは、カルシトニンが増加します。そのため、髄様がんの可能性がある場合や治療の効果のために検査することがあります。
CEA(がん胎児性抗原):髄様がんではCEAが腫瘍マーカーとして用いられます。

超音波検査

甲状腺がんの診断には、超音波検査が一般的に用いられます。超音波検査は、非侵襲的で被爆リスクがなく、簡便な検査方法として知られています。
超音波検査では、超音波を体の表面に当て、臓器から返ってくる反射の様子を画像にすることで、周囲の臓器との位置関係やリンパ節への転移の有無などを調べます。特に、甲状腺がんの多くを占める乳頭がんのほとんどは、超音波検査で9割以上の確率で正しく診断できるといわれています。
ただし、超音波検査の結果は、医師の経験や技術に大きく依存します。そのため、超音波検査の結果に基づく診断は、他の診断方法と組み合わせて行われることが一般的です。

穿刺吸引細胞診

甲状腺がんの診断には、一般的に穿刺吸引細胞診(FNA)という手法が採用されます。この手法では、超音波検査を用いて甲状腺がんの可能性がある部位を特定し、その部位に針を挿入して細胞を採取します。その後、採取した細胞を顕微鏡で観察し、細胞が良性か悪性かを判断します。
穿刺吸引細胞診は、皮下注射に使われるような細い針を使用し比較的短時間で完了します。また、この検査は入院を必要としないため、患者の負担を軽減できます。ただし、手術を行わないと良性と悪性の区別がつかない場合もあり、鑑別診断が必要となることがあります。

病理組織生検

病理組織生検は、患者から取り出された組織を用いて組織標本を作成し、これを顕微鏡で観察して病理組織学的に疾患・病態を診断する検査です。この検査は、患者の最終診断となる非常に重要な検査であり、治療方針を決定するために行われます。病理組織生検には以下のようなものがあります。

  • ・細胞診断
  • ・生検組織診断
  • ・手術で摘出された臓器・組織の診断
  • ・手術中の迅速診断
  • ・病理解剖

これらの診断は病理医から主治医へ報告され、治療に活用されます。なお、病理診断のプロセスには多くの場合数日から2週間程度の時間を必要とします。これは、取り出された組織が良性か悪性か、その組織型は何か、また悪性ならば腫瘍の広がりの程度などを診断するためです。

甲状腺がんの種類別治療法

甲状腺がんの治療は、がんの進行の程度やがんの性質、体の状態などを確認し行います。そのため、治療方針を決める際には、自身の病気の状態や治療方針についてよく理解することが重要です。以下に、甲状腺がんの種類別の治療法について解説します。

乳頭がん

甲状腺乳頭がんは、甲状腺がんの中で最も一般的なタイプで、甲状腺がんの90%以上を占めています。
症状としては、甲状腺(前頸部)のしこりが最も一般的で、がんが進行すると首のリンパ節に転移して首にしこりとして触れることがあります。さらに進行すると、声帯を動かす神経が麻痺して声がれや飲み込みにくさの症状が出ることがあります。
診断は、甲状腺超音波を行い、腫瘍に針を刺して細胞を調べる検査で行われます。他にも血液検査、頸部CT検査、PET-CT検査なども行われます。
治療は手術で、甲状腺を摘出します。進行度に応じて術後に放射線のついたヨードを内服する治療が行われます。このがんの進行は遅く、手術後の10年生存率は90%以上と良好です。甲状腺のしこりの原因は様々であり、まずは一般内科の受診が推奨されますが、甲状腺等の病気に対応している内科が望ましいです。

濾胞がん

甲状腺濾胞がんは、甲状腺がんの中で2番目に一般的なタイプで、全体の約5~7%を占めています。このタイプのがんは進行が遅く、しばしばその悪性度は低いとされます。
最も一般的な症状は甲状腺のしこりで、がんが進行すると声帯を動かす神経が麻痺し、声がれや飲み込みにくさなどの症状が現れることがあります。
診断は、甲状腺超音波検査や細胞診を行い、濾胞がんの可能性があると判断された場合、手術で腫瘍と甲状腺の一部または全部を除去します。良性と悪性のがんの区別は手術前には困難であり、超音波検査の結果や腫瘍の大きさなどに基づいて手術が決定されます。
手術後に診断が濾胞がんであった場合、追加で甲状腺全摘手術を行い、放射性ヨードを内服する治療が行われることがあります。このタイプのがんは骨や肺に転移する可能性があります。手術後の10年生存率は70〜80%とされています。

低分化がん

低分化がんは、甲状腺がんの中で比較的まれなタイプで、高分化がん(乳頭がんや濾胞がん)と未分化がんの中間の性質を持っています。このがんは、高分化がんと比較すると、遠隔転移しやすいとされています。
低分化がんの治療は、乳頭がんや濾胞がんと比較して予後が良くないため、甲状腺を全て摘出する手術と放射性ヨウ素内用療法を組み合わせた治療が行われる場合があります。また、濾胞がん由来の低分化がんでは、肺や骨などに遠隔転移を起こす可能性があると考えられています。治療後は生涯にわたる甲状腺ホルモン薬の内服が必要となります。

髄様がん

髄様がんは、甲状腺がんの特殊なタイプで、甲状腺がんの1〜2%程度を占めます。この種のがんの一部は遺伝子が原因で家族性に発生します。
髄様がんの診断は、超音波検査でがんの可能性があれば穿刺吸引細胞診検査を行います。がんの可能性が高い場合は、転移を確認するためにCTを行います。
非遺伝性の髄様がんの治療については、がんが広がっている範囲を手術で切除します。遺伝性の髄様がんは甲状腺を全て摘出しリンパ節の切除をします。

未分化がん

未分化がんは、甲状腺がんの一種で、進行が早く、悪性度が高いとされています。このがんは、甲状腺のしこりが急に大きく硬くなり、周囲の赤みや疼痛などが現れることが特徴です。また、甲状腺の後ろにある気管に広がって呼吸困難を起こすことや、肺など全身へ転移することがあります。
診断は、甲状腺超音波検査で行われ、その他に、血液検査や頸部CT検査、PET-CT検査なども行われます。未分化がんのステージは、ⅣA・ⅣB・ⅣC期に分類されます。未分化がんは、長年存在していた乳頭癌や濾胞癌の性質が急変し、転化することで発症するといわれています。
治療は難しく、放射線治療や抗がん剤を用いた化学療法を行う場合もあります。進行が速いため、甲状腺のしこりが急に大きくなったり、痛みなどが出たりした場合は、早めに内科もしくは、耳鼻咽喉科や甲状腺外科などを受診しましょう。

「甲状腺がんの生存率」についてよくある質問

ここまで甲状腺がんの生存率を紹介しました。ここでは「甲状腺がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

甲状腺がんを放置するとどうなりますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

甲状腺がんは、痛みが少ないがんといわれています。しかし、そのまま放置すると、甲状腺外に腫瘍が広がり、肺や骨にも転移するリスクがあります。
甲状腺がんの治療は、がんの種類やステージなどに応じて決められます。危険リスクの少ない小さいがんの場合は経過観察になるケースもありますが、経過観察は必要不可欠です。以下に、検討される治療方法について説明します。
外科治療:甲状腺がんでもっとも多くの場合に用いられる治療方法です。手術の場合、検査によっては甲状腺をすべて摘出するか、一部を残して摘出する場合もあります。
放射線治療:X線やその他の放射線を用いてがん細胞の増殖を抑え、縮小させる治療方法です。内照射と呼ばれる方法や、外照射と呼ばれる方法の2種類があります。

甲状腺がんの好発年齢はいくつですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

甲状腺がんは、年間約1万5000人が罹患しており、年々、増加傾向にあります。男性よりも女性が多いという特徴があります。年代別には、60代後半〜70代が一番多いのですが、30代、40代など比較的若い世代にも見られます。この中で一番多いのが乳頭がんで、甲状腺がん全体の約90%を占めます。

編集部まとめ

ここまで甲状腺がんの生存率についてお伝えしてきました。
甲状腺がんの生存率についてまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・甲状腺がんが進行していない場合は、症状がほとんどなく気が付かないことが多い
  • ・甲状腺がんの生存率は、その大きさや浸潤度合、リンパ節転移や遠隔転移の有無により異なる
  • ・甲状腺がんをそのまま放置すると、甲状腺外に腫瘍が広がるリスクが高まる

「甲状腺がん」と関連する病気

「甲状腺がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

甲状腺がんと同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。

「甲状腺がんの症状」と関連する症状

「甲状腺がんの症状」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 喉の前部にしこりができる
  • 喉に違和感がある
  • 咳が続く
  • 飲み込みにくい
  • 呼吸困難

これらの症状が当てはまる場合には、甲状腺がんなどの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師