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「AGAが遺伝」するの?予防法も併せて解説!【医師監修】

 公開日:2023/08/21
「AGAが遺伝」するの?予防法も併せて解説!【医師監修】

「親がハゲているから、自分も将来そうなるの?」などと不安を抱えている方がいると思います。結論から先に言うと、薄毛は遺伝によるものが大きいので可能性が高いです。

遺伝だともうどうしようもできないと考えた方もいるかもしれませんが、誰しもがそうなるとは限りません。

AGAの予防方法も様々あります。ここではAGAの仕組み・予防方法を詳しく解説していきます。

また、AGAは遺伝以外でもなる可能性の高い病気です。正しい知識をつけて、将来に備えることが大切です。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

AGAの薄毛は遺伝する?

生え際を気にする男性
AGAは親の遺伝子を引き継ぐと考えられています。5αリダクターゼの活性度・男性ホルモンレセプターの感受性のどちらかまたは両方とも引き継いでいる場合は発症のリスクが高くなります。特に母方の祖父・曽祖父が薄毛の場合はリスクが非常に高いです。
理由は、男性性染色体は「XY」、女性の性染色体は「XX」となっていて、男性は父親の「Y染色体」と母親の「X染色体」を受け継ぐからです。男性ホルモンレセプターはX染色体に存在すると言われていて、X染色体は母親からしか遺伝しません。
そのため母方の祖父・曽祖父に薄毛の方がいると母親の持つX染色体と同じ遺伝子になるためです。遺伝も関係していますが、必ずしも遺伝から来るものだけではないので誤解しないようにしてください。

AGAの仕組みは?

問診票を持つ医師
AGAの主な原因は遺伝・生活習慣、または男性ホルモンが影響して発症すると考えられています。髪の毛の成長には「毛周期(ヘアサイクル)」と呼ばれる周期があり、通常の状態では繰り返されることで、髪の毛を保っています。
ヘアサイクルは3〜5年で成長期・退行期・休止期のサイクルを1周していて、生涯繰り返される回数がそれぞれの髪の毛で決まっていますが、AGAでその周期が乱れ、薄毛・抜け毛の原因となるのです。成長期を極端に短縮させるためです。十分に成長していない髪の毛は長く太い髪の毛になれないため、AGAが進行してしまいます。
発症までには以下のような経過をたどります。

  • テストステロンと5αリダクターゼの結合によって発症
  • DHTが男性ホルモンレセプターと結合
  • 脱毛因子が増加
  • 脱毛因子が髪の毛を退行期に移行

それぞれについて解説していきます。

テストステロンと5αリダクターゼの結合によって発症

テストステロンは男性ホルモンの代表的なもので、「男性らしさ」を構成する重要な男性ホルモンです。また大脳にも作用するため、前向きな思考や集中力にも影響する性ホルモンです。5αリダクターゼにはⅠ型・Ⅱ型が存在し、どちらも全身に分布しています。
Ⅰ型はヘアサイクルを正常に保つ働き・育毛促進の効果がある要素を持っています。
Ⅱ型は頭部では脱毛の症状を促しますが、脇や髭には発毛を促す作用があるのです。またAGAには主にⅡ型が大きく関係していると考えられています。

DHTが男性ホルモンレセプターと結合

テストステロンと5αリダクターゼの結合によって、ジビドロテストステロン(DHT)が作り出されます。DHTはもともと人の体に存在していて、記憶などの調整に関与している性ホルモンです。DHTがAGAに直接的に関係しているわけではなく、DHTが男性ホルモンレセプターと結合することによって脱毛因子が増加して、薄毛・抜け毛の原因となるのです。
直接的な関係は認められていないものの、DHTには毛母細胞の働きを低下させる働きがあります。DHTがヘアサイクルを乱すことによって、髪の毛の成長期が極端に短くなります。

脱毛因子が増加

DHTが男性ホルモンレセプターと結合することによって、脱毛因子を増加させます。脱毛因子は2種類ありTGFーβとFGF-5です。TGF-βはタンパク質の一種で、本来の役割は細胞の増殖を抑え、働きをコントロールしています。FGF-5は傷口を直す・既存の血管から新しい血管を形成する役目を持っています。
これらの脱毛因子が増加することによりヘアサイクルを退行期に移行させます。ではどのようにしてこれらの脱毛因子が、髪の毛を退行期に移行させるか見ていきましょう。

脱毛因子が髪の毛を退行期に移行させる

本来は身体に必要不可欠な役割を持つ2つの細胞がなぜ脱毛に関わっているのかわからないことが多いと思いますが、わかりやすく説明していきます。まずTGF-βは、毛乳頭や毛母細胞を含む上皮細胞の活動を抑える働きがあり、この働きによって髪の毛の成長を止めてしまいます。
一方FGF-5は、髪に抜け毛の指令を出すスイッチのような働きを持っていて、TGF-βが過剰に増えた際に成長する前の髪の毛にも退行期の指令を出してしまい抜け毛が増えます。

AGAの薄毛が遺伝する理由

鏡で生え際を確認する男性
AGAが発症するきっかけとなる物質は元々どんな人にも存在します。それなのに発症する人としない人がいるのはなぜでしょう。発症する人には以下の様なことが遺伝しやすいと考えられています。

  • 5αリダクターゼの活性度
  • 男性ホルモンレセプター

この2つについて詳細を見ていきましょう。

5αリダクターゼの活性度が遺伝しやすい

5αリダクターゼの活性度は親から引き継がれる遺伝子の一つです。活性度が高いことでテストステロンとの結合も多くなり、AGAの原因とも言える脱毛因子を作ります。また5αリダクターゼは顕性遺伝です。顕性遺伝とは父と母から受け継いだ遺伝子のうち、どちらか片方に変異があると発症する遺伝形式です。
そのため父や母方の祖父・曽祖父に薄毛の方がいると遺伝し、発症しやすくなります。

男性ホルモンレセプターの感受性が遺伝しやすい

男性ホルモンレセプターの感受性は母の遺伝子からしか引き継ぎません。男性ホルモンレセプターの感度が高い遺伝子はX染色体にのみ存在するためです。
また男性ホルモンレセプターの感受性は隔世遺伝で引き継ぐ可能性があり、隔世遺伝とは祖父母以前やそれ以前の先祖から世代を飛ばして引き継ぐことです。そのため両親が感受性に高い遺伝子を持っていなくても、遺伝情報を引き継いでしまう可能性があります。
しかしこれらの遺伝情報によってAGAが必ず発症するとは限りません。これらの要素に加え、生活習慣や環境も影響します。あくまで遺伝情報はAGAの一部を決定するのみで、その他の要素がその後の薄毛・抜け毛に大きな影響を与えるのです。

AGAの予防方法

笑顔の医師
AGAは予防によって進行を遅らせることができます。主に生活習慣を見直すような内容が多いですが、誰でも簡単に取り組めるものとなっています。下記のようなことに気をつけると良いとされていますので、将来が心配な方は実践してみましょう。

  • ストレス解消法を見つける
  • 喫煙や過度な飲酒を控える
  • バランスの良い食事を心がける
  • 良質な睡眠をとる
  • 正しい方法でヘアケアする

詳細を解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ストレス解消法を見つける

ストレスとAGAの直接的な関係は解明されていません。しかし過度なストレスは頭皮環境・体内環境を悪化させます。頭皮環境・体内環境の悪化はAGAの原因になりかねません。
ストレスは日々の何気ない生活でも受けているものです。自分なりの適度なストレス解消方法を持つことで、頭皮環境・体内環境を健康に保つことが可能です。ストレスの解消方法は人によって様々ですが、趣味を楽しむ・適度に身体を動かすことでストレス発散になることがあります。ストレスをためない様に心がけましょう。

喫煙や過度な飲酒を控える

喫煙によって取り込まれる物質として主なものはニコチンです。ニコチンを体内に取り入れると、血管を収縮させる効果が認められています。血管の収縮によって起こることとして、血液の流れが阻害され栄養・酸素が十分に行き渡らなくなるのです。頭皮には毛母細胞があり、細い血管であるため栄養・酸素の供給が滞ります。
過度な飲酒によって取り込まれたアルコールは、アセトアルデヒドという悪性の物質に変換されます。通常では肝臓によって分解され、悪性ではない物質になりますが過剰に飲酒してしまった場合は、分解が間に合わず全身に巡ってしまいます。アセトアルデヒドにはDHTを生成する作用があるので注意が必要です。
しかし急に禁酒・禁煙をしてしまうとそれがストレスとなり、AGAを進行させてしまう可能性があるので気をつけましょう。

バランスのよい食事を心がける

バランスの良い食事はAGAに有効な手段です。髪の毛に長期的に栄養が行き届いてないと抜け毛・薄毛の原因となることがあります。髪の毛を構成する主な成分はタンパク質・シスチン・メチオニン・亜鉛・ビタミンB群・イソフラボンなどがあります。
その中でも髪の毛の大部分を占めているのがタンパク質です。また亜鉛が不足すると新しい髪の毛を生成できなくなります。ビタミンB群は血流を良くし、イソフラボンは髪の毛の成長を促す・ヘアサイクルの成長期を保つといった役割があります。バランスの良い食事は頭皮環境を整える効果が期待できます。
こういった栄養素は慢性的に不足したりするので、心がけて摂取する様にしましょう。

良質な睡眠をとる

睡眠不足によって成長ホルモンの分泌量の減少・血行不良・代謝の低下が挙げられます。成長ホルモンの効果は体の細胞の修復を促すことです。その成長ホルモンは睡眠時に多く生成されています。睡眠時は副交感神経が優位になり、血管が広がって血液の流れが良くなります。
また生命活動に必要なエネルギーも睡眠によって蓄えます。睡眠不足になると、身体にダメージが蓄積した状態が続いてしまうのです。生命活動にとって優先順位の低い髪の毛への栄養が行き渡らなくなり、発毛不足となるのです。
このようなことが睡眠不足によって引き起こされるので、睡眠が不足しないように心がける必要があります。

正しい方法でヘアケアする

日頃からヘアケアを意識することでAGA予防が期待できます。しかしシャンプー方法の改善では直接的に増毛を期待できません。また使用するシャンプーは洗浄力の強いものを使うと過剰に皮脂を落としてしまいます。育毛環境を整え、維持させるためには適度な皮脂が必要です。シャンプーをした後のすすぎ不足によって頭皮環境を悪化させる場合もあります。
すすぎが十分にできていないと、シャンプーの成分である界面活性剤が頭皮に残ってしまい、トラブルを起こしがちです。正しい方法でヘアケアをすることで頭皮の状態を維持でき、AGA予防にも期待できます。

編集部まとめ

笑顔の男性
AGAについて解説していきましたがいかがでしたでしょうか?

AGAと遺伝は密接な関係にあることが理解できたかと思います。またAGAについての正しい知識もつけられたと思います。

何度も言いますが、AGAは誰でもなる可能性のある病気です。

正しい予防方法を実践することで、少しでも予防になればいいなと思います。また遺伝以外の要因で発症することも少なからずあるので、上記記載したものに気をつけて、生活を送ってください。

発症の可能性がある方は、医療機関を受診してみてください。

この記事の監修医師