【医師監修】背筋や首の違和感には要注意!「脊柱靱帯骨化症」とは?

脊椎をつなぐ靭帯が肥厚し硬くなることにより脊髄が圧迫される「脊柱靭帯骨化症」とは、一体どのような病気なのでしょうか。
今回は、その気になる症状・治療方法・治療期間・注意点などを詳しく解説します。
脊柱靭帯骨化症は、脳から連続した中枢神経の一部である脊髄が圧迫されることにより様々な神経症状が現れる病気です。
障害される靭帯の種類や位置によって症状の出方が異なります。その中でも代表的なのが後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症の2つです。
この2つは難病に指定されている病気で、症状が急激に悪化する可能性もあります。症状の特徴や注意点を確認し、必要に応じて医療機関を受診するようにしましょう。

監修医師:
甲斐沼 孟(国家公務員共済組合連合会大手前病院)
脊柱靱帯骨化症とは?
脊柱靱帯骨化症とはどのような病気ですか?
痛みが出現する部位は骨化した靭帯の種類や部位によって異なりますが、特に多いのが後縦靭帯骨化症・黄色靭帯骨化症の2つです。後縦靭帯と黄色靭帯は、どちらも脊柱管と呼ばれる椎骨でできた管の中に存在しています。脊柱管の中には脳から延長した中枢神経である脊髄が存在しているため、後縦靱帯と黄色靭帯が骨化することにより脊髄神経に関連した症状が現れるのが特徴です。
後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症は、どちらも国が定めた難病に指定されています。後縦靭帯骨化症(OPLL: ossification of posterior longitudinal ligaments)は、脊髄の前方にある薄いテープ状の後縦靭帯が骨化し脊髄を圧迫し、神経症状を引き起こすのが特徴です。
好発する部位は頚椎です。頚椎で骨化が起こった場合、首周辺の痛みから始まり徐々に痛みやしびれの範囲が広がっていきます。手足のしびれ・痛み・動かしにくさなどが特徴的な症状です。重症化した場合には、歩行困難・排尿障害・排便障害が引き起こされることもあります。
また、胸椎や腰椎で骨化が起きた場合に症状が現れるのは体幹や下肢です。下肢の痛み・しびれ・動かしにくさ・歩行障害がみられ、症状が進行すれば排尿障害や排便障害へと進行していきます。黄色靭帯骨化症(OYL: ossification of yellow ligaments)は、脊髄の後方にある膜状の黄色靭帯が硬く肥厚することで神経を圧迫する病気です。頚椎や腰椎で骨化が起こることは珍しく、多くは胸椎部分で骨化が起こります。主な症状は足のしびれや歩行障害です。頻尿や尿漏れといった排尿障害や排便障害が引き起こされることもあります。
脊柱靱帯骨化症でみられる症状を教えて下さい。
脊柱靱帯骨化症は何が原因で発症してしまうのでしょう?
遺伝子的素因としては、欧米に比べて、日本・台湾・中国・韓国などの東アジアでの発症が多く報告されています。また、家族歴との関連も特徴的です。必ず遺伝するわけではないものの遺伝子が発症に大きく関わっていることは明らかとなっています。
発症しやすい人の特徴などあれば教えて下さい。
既往歴に関しては、糖尿病・肥満・女性ホルモン異常・カルシウム代謝異常などの患者さんでの発症が多く報告されています。遺伝的な素因も発症に関連しているため、家族が発症している場合には罹患する可能性が高くなります。また、一部に骨化がみられた場合、他の部位にも骨化巣が併発していることが多いので注意が必要です。
脊柱靱帯骨化症の受診目安と診断
脊柱靱帯骨化症はどのような症状がみられたら受診したら良いのでしょう?
痛みやしびれなどの異常を感じたら早めに受診するようにしましょう。脊柱靭帯骨化症は基本的には緩やかに症状が進行する病気ですが、何らかの衝撃により急激に悪化することもあります。
何科を受診したら良いですか?
脊柱靱帯骨化症はどのように診断するのか知りたいです。
検査内容が知りたいです。
脊柱靱帯骨化症の治療方法と注意点
脊柱靱帯骨化症の治療方法はどのようなものがありますか?
痛みが強い場合には痛み止めのお薬で対応します。保存療法での効果は1か月以内に現れることがほとんどです。安静を保っても症状が改善しない場合や神経症状が強い場合には手術を検討することになるでしょう。
手術では骨化した靭帯を切除し、脊髄の圧迫を取り除きます。その後は脊椎を器具で固定することもあります。術式は骨化した部位や進行度によって様々です。しかし、どの手術も硬膜損傷や神経損傷といった危険なリスクが伴うことがある難しい手術となります。
脊柱靱帯骨化症は治療で完治しますか?
脊柱靱帯骨化症の治療期間や注意点などあれば教えて下さい。
脊柱靭帯骨化症は、些細な刺激でも神経の圧迫が進み症状が急速に悪化してしまうことがある病気です。場合によっては手足に麻痺が残る可能性もありますので、転倒・振動・衝撃などには特に注意が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
初期症状としては背筋の痛みや違和感として現れることもあります。それだけで病気を判断することは難しいですが、他の病気が隠れている可能性もあります。そのため、背筋や首の違和感を感じた時には放置せずに受診することが重要です。
編集部まとめ
手足に痛み・しびれ・感覚障害といった神経症状が現れる脊柱靭帯骨化症についてご紹介しました。
脊柱靭帯骨化症の中でも、後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症の2つは難病にも指定されている病気です。
軽度の場合には保存療法が一般的で、強い神経症状がみられれば難易度の高い手術が必要となります。
また、重症化した場合には症状が回復しにくくなる可能性があります。手足の感覚に違和感を感じることがあれば、できるだけ早めに専門機関へ受診することが大切です。