目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「胸腺がん」を疑う症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

「胸腺がん」を疑う症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 公開日:2023/03/30
「胸腺がん」を疑う症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

胸腺がんとは、肋骨の裏にある胸腺と呼ばれる組織から腫瘍が発生する病気です。非常に稀ではありますが、早期治療が求められます。

あまり聞き慣れないがんであるため、原因・検査方法・治療方法などを詳しく把握したいと考える方も多いでしょう。

そこで本記事では、胸腺がんの主な症状をご紹介します。胸腺がんの原因・検査方法・治療方法についても詳しく解説するので参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

胸腺がんの症状について

胸を押さえる男性

胸腺がんの主な症状を教えてください。

胸腺がんは、周囲の組織に影響を与えるほど大きくならなければ無症状であることが多いです。しかし、悪化して大きくなると次のような症状が現れ始めます。

  • 呼吸困難
  • 胸部の痛み
  • 肩こり
  • 腕の痺れ

症状としては、呼吸困難が挙げられます。初期の段階では咳が長引く程度ですが、がんが次第に気管や肺を圧迫するようになると呼吸困難となる可能性があるのです。
また、胸部の痛みが現れることもあります。この痛みも、がんによる圧迫が原因となって引き起こされます。
肩こり腕の痺れは、がんによる圧迫が神経にまで達した時に起こる症状です。その他にも、個人差はありますが食欲不振やそれに伴う体重の減少なども現れることがあります。
症例が稀であるため明確な症状は少ないですが、良性の場合は無症状で、悪性の場合に症状が出やすい傾向です。

胸腺がんは基本的には合併症は伴わないのでしょうか。

胸腺がんは基本的に合併症は伴わないといわれています。胸腺がんと同様の症状がみられる胸腺腫と呼ばれる病気の場合は、重症筋無力症などの合併症が起こる可能性があるといわれていますが、胸腺がんの場合は少ないです。
しかし、稀に下記のような合併症を伴うことがあるため注意が必要です。

  • 循環系の合併症
  • 内分泌系の合併症

循環器系の合併症としては、血栓症・心筋梗塞・脳卒中などが挙げられます。また、内分泌系の合併症としては甲状腺機能亢進症などの病気も引き起こす可能性があります。

胸腺がんは30歳以上の方に多く発症すると聞いたのですが…。

この病気は、30歳以上の方に発症するケースが多いです。特に40〜70歳の方に発症し、男女差はありません。
胸腺腫が人口10万人当たりで0.44〜0.68人の割合といわれており、胸腺がんは胸腺腫よりもさらに稀といわれているため、症例数は非常に少ないです。

胸腺がんは転移することはないのでしょうか。

胸腺がんも転移をすることがあります。この病気は、胸郭の内部で発生することが多いので、初期の段階では胸の中での転移が高頻度で見られます。
しかし、悪化すると他の臓器やリンパ節へ転移する可能性が高いです。転移してしまうと、他臓器においても様々な症状が引き起こされるでしょう。
また、治療の内容や治療期間にも大きく影響するため、転移前の治療が重要です。他臓器へ転移するような状態にならないためにも、定期的な健診を受けて早期に発見することが大切です。

胸腺がんの原因と検査について

白衣の男性医師

胸腺がんの主な原因を教えてください。

胸腺がんの原因については、はっきりとは解明されていません。
しかし、次のような要因が関係しているのではないかと考えられています。

  • 遺伝子の異常
  • 自己免疫系の異常
  • 放射線

原因の1つが遺伝子の異常です。遺伝子が変異していたり欠損していたりすることで、がん細胞が増殖するのではないかと考えられています。
2つ目の原因としては、自己免疫系の異常です。胸腺には自己免疫能力を司る機能があります。未熟なウイルスやがん細胞を攻撃する細胞や他のリンパ球の働きを助ける細胞を、正常に働くように補助する役割があるのです。
そのため、これらの機能に異常をきたすと正常な細胞を攻撃したり、がん細胞を攻撃しなかったりしてしまいます。その結果、胸腺がんを引き起こしてしまうと考えられているのです。
さらに、原因の1つとしては放射線も挙げられます。放射線を浴びることで細胞が、がん化してしまうために引き起こされると考えられています。

胸腺がんになりやすい人の特徴が知りたいです。

胸腺がんになりやすい方の特徴としては、次の通りです。

  • 家族に胸腺腫や胸腺がんを患った方がいる
  • 免疫系疾患を患っている方
  • 放射線治療を受けている方
  • 喫煙している方

胸腺がんになりやすい方の特徴の1つが、家族に胸腺腫や胸腺がんを患った方がいる点です。がんは遺伝的な要因が考えられるため、過去に発症した方が家族にいる場合にはご自分も発症する可能性があります。
次に免疫系疾患を患っている方も特徴の1つです。先述したように胸腺は免疫系の機能を持つことから、過去に免疫系疾患を発症したことがある場合は、胸腺がん発症の可能性が考えられます。
また、放射線治療を受けている方もなりやすいと考えられるでしょう。放射線はがん発症の原因の1つです。そのため、放射線治療を受けていない方よりは発症しやすいと考えられます。
さらに、喫煙している方も特徴の1つです。タバコはがん発症のリスクを高める要因といわれているため、喫煙をしている方や周りに重度の喫煙者がいる場合には、発症する可能性があります。

胸腺がんの検査方法はいくつかあるのでしょうか。

この病気の検査方法には次のようなものが挙げられます。

  • X線検査
  • CT検査
  • MRI検査
  • PET検査

1つ目のX線検査とは、X線を使って胸部の撮影を行ってがんの有無・大きさ・形状を確認する方法です。胸腺が骨と重なっているため、ある程度腫瘍が大きくないとこの検査方法では確認できない可能性があります。
2つ目のCT検査では、X線を使用して身体の詳細な断面画像を作り、がんの詳細を評価します。
3つ目のMRI検査は、がんの状態を確認するとともに、血管・心臓・骨との関係を評価するために用いる方法です。
4つ目のPET検査では、放射性物質を静脈に注射してがんに集まる様子を確認します。がんの有無・位置・どの程度まで進行しているかのステージ把握にも有効です。

胸腺がんの治療方法と再発の可能性

診察をする医師

胸腺がんの主な治療方法を教えてください。

この病気の主な治療方法には、次のようなものが挙げられます。

  • 放射線療法
  • 手術
  • 化学療法
  • ホルモン療法

治療方法の最も一般的なものが手術です。特に、早期発見できた場合には手術によって摘出することで完治を目指せます。
また、放射線療法も治療方法の1つに挙げられます。手術が受けられない場合や手術後の補助療法として使われることが多く、がん細胞を破壊するために用いる方法です。
化学療法とは、がん細胞を破壊するための抗がん剤などを用いる方法です。さらに、ホルモン療法では、がん細胞の増殖を防ぐ効果に期待できるホルモン剤を投与します。
このような様々な治療方法を、がんの状態や年齢などに応じて組み合わせて行います。

胸腺がんは再発の可能性はありますか?

胸腺がんが再発する可能性はあります。発見が早く手術によって全摘出できれば、がん細胞が完全に体内からなくなるため再発のリスクはかなり下げられるでしょう。
しかし、がんの進行度合いによっては病巣が広がっていたり転移していたりすることもあります。その場合、全摘出はできずにがん細胞が体内に残り再発する可能性もあります。
再発を予防するためには、定期的な健診を受けながらすぐに発見できるようにすることが大切です。

胸腺がんの早期発見の重要性を教えてください。

早期発見は、治療成功率が高いことや治療方法の選択肢が広がるため非常に重要です。この病気は、初期段階においては症状が少ないため気づきづらく、気づいた時には症状が進行していることがあります。
がんが悪化して転移してからでは、治療が困難となり完治は難しくなってしまいます。早期に発見して手術によって摘出できれば、一度の手術で完治させられる可能性もあるでしょう。
しかし、発見が遅れてがんが大きくなっていたり転移していたりすると、手術が不可能な場合もあります。手術や放射線治療を組み合わせて、長期にわたって治療が必要となるかもしれません。
このように、治療の成功率の低下・治療の長期化・手術だけでは済まなくなるなどのリスクがあるため、早期発見が非常に大切なのです。

編集部まとめ

医療器具
胸腺がんは、胸の中にできる非常にまれながんです。症例が少なく、はっきりとした原因なども解明されていません。

しかし初期の頃は症状がほとんどなく、ある程度症状が現れてからの発見となるため、気づいた時には腫瘍が大きくなっているケースも少なくありません。

発見が遅れると他のがん同様に転移の可能性があり、手術だけでは治療できない場合もあります。そのため、早期発見と早期治療が大切です。

がんについて不安なことがある場合は医師に相談し、可能であれば定期的な健診を受けて早期発見できるようにしておきましょう。

この記事の監修医師