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「ノロウイルス」の症状・潜伏期間はご存知ですか?感染しやすい食べ物も解説!

 更新日:2023/03/27
「ノロウイルス」の症状・潜伏期間はご存知ですか?感染しやすい食べ物も解説!

人の腸内で活性するノロウイルスはインフルエンザウイルスの約1/3以下と小さく、胃腸炎を引き起こす原因の多くがこのウイルスです。

特に冬は様々なウイルスが流行しやすい季節です。ノロウイルスの流行も毎年冬ですが、実は1年通して発生しています。

外出先でもアルコール消毒が習慣化していますが、ノロウイルスにもアルコール消毒は効果があるのでしょうか?効果的な予防法・感染後の対策もご紹介します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

ノロウイルスとはどんな病気?

吐き気

ノロウイルスとはどのような病気なのでしょうか?

ノロウイルスは人の手指や食品などを介して経口感染し、腸内でウイルスが増殖します。嘔吐・下痢・微熱・腹痛などの急性胃腸炎症状が起き、数日間で自然に回復することが多いです。
主に11~2月にかけて発生しやすく、この時期の感染性胃腸炎の集団発生は、原因の多くがノロウイルスによるものです。生牡蠣を食べることにより発生する食中毒としてよく知られていますが、感染力が大変強く大規模な食中毒など集団感染を起こしやすい病気でもあります。

ノロウイルスは何が原因で発症しますか?

ウイルスに汚染された食品を加熱不十分なまま食することや、感染した方から人への接触・飛沫から経口感染することが主な原因です。
原因の1つである牡蠣についてですが、ウイルスを全く含まない生牡蠣を提供する技術は現在ありません。川から河口へ流れてくる生活用水に含まれたウイルスを牡蠣が体内で蓄積・濃縮し、その牡蠣を食べることで感染します。
生食用の牡蠣のウイルスを排出させるために浄化作業を行いますが、特に冬はこのウイルスの排出が鈍いといわれています。

ノロウイルス発症時にみられる症状を教えて下さい。

感染した場合約24~48時間で微熱・吐き気・嘔吐・腹痛・激しい下痢・悪寒などの症状がみられます。これらの症状が1〜2日間続いた後は比較的短期間で落ち着き、後遺症もなく治癒します。子供では嘔吐、成人では下痢が多いことも特徴です。
嘔吐・下痢は1日数回~10回以上とひどい症状の時もありますし、体力・免疫力のある方は感染しても発症しない場合や、軽度の風邪のような症状の場合があります。高齢者や乳幼児など、体力が備わっていない方や持病がある方は脱水症状を起こしやすく重症化することもありますので注意が必要です。

ノロウイルスの潜伏期間を教えて下さい。

潜伏期間は数時間~約24時間(平均1~2日)です。基本的には短期間で発症します。特徴として潜伏期間には痛みや発熱などの症状はなく、突然発症するため他の疾患に比べて発症までの時間が速いです。
また、感染しても発症しない場合や風邪の症状程度で軽快する場合もあります。

ノロウイルスの主な感染経路を教えて下さい。

感染経路はほとんどが経口感染です。主な感染経路は以下になります。

  • ウイルスに汚染された食品を生または十分加熱せずに食べた場合
  • ウイルスが付着したまな板・包丁などの調理器具を介して食事をした場合
  • 感染している方の嘔吐物や糞便に触れ、手指を介して感染する場合
  • 感染している方が普段接触するドアノブや共用タオルなどの物を介してウイルスが口から入った場合
  • 感染した方の嘔吐物に含まれるウイルスが、処理が不十分で乾燥により空気中に舞い口から入った場合
  • ウイルスに汚染された井戸水や簡易水道水を消毒不十分なまま摂取した場合

ノロウイルスは冬に発症する場合が多いと聞いたのですが…

ノロウイルスによる食中毒は1年を通して発生しています。特に冬場は発症率が高まる傾向にあり、過去5年間(2017~2021年)における月別の発生件数のデータによると、11月から増え始め12~翌年1月に多発しています。
冬以外の季節に罹患される方もいらっしゃいますのでウイルスの原因になりやすい食品を扱う場合は、調理の際気を付けると良いでしょう。

通常の胃腸炎との違いや見分け方はあるのでしょうか?

細菌性食中毒(サルモネラ・O157など)による胃腸炎との大きな違いの1つは発生時期です。細菌性食中毒の流行は主に夏場が多いのですが、ウイルスが原因の胃腸炎は冬場に発生する傾向があります。
2つ目の違いとして症状持続期間があげられます。例えばロタウイルスだと平均5~6日、その他の種類の胃腸炎で10日以上など長期にわたるものがあるのに対しノロウイルスは10数時間~数日(平均1~2日)と短期間です。
ウイルス性胃腸炎は発端が食中毒であったとしても、施設や病院などに持ち込まれると、その強力な感染力で爆発的に流行することがあります。

ノロウイルスのリスクや診断方法

体温計と聴診器

ノロウイルスは命の危険に陥ることはあるのでしょうか?

通常は命に関わることは少ないですが高齢者や乳幼児では重症化することがあります。施設でノロウイルス集団発生中に死亡例がありますが、この場合、誤嚥性肺炎など必ずしも死因がウイルスとは限らないため原因の特定は困難です。

ノロウイルスはどのように診断されるのでしょう?

周囲の感染状況や症状から推測し、ノロウイルスと診断されることが多いです。糞便中のウイルスを抗原検査キットで検出する診断方法がありますが、現在健康保険では3歳未満や65歳以上の高齢者や免疫を抑制する治療などを受けている方に限られて適応があり、それ以外の患者はこの検査をすると自費での診療(処方を含め)になり注意が必要です。
患者の嘔吐物や糞便を用いて電子顕微鏡法・リアルタイムPCR法・RT-PCR法など遺伝子を検出する方法によりウイルスの検出や正確な診断が可能となります。このような検査は民間の病院でなく行政機関 により行われており、糞便には大量のウイルスが排泄されるためウイルスの検出が簡単 にできることから、食中毒や集団感染が発生した際の原因解明のために使われています。

ノロウイルスの治療方法や過ごし方

よく手を洗う

ノロウイルスには特効薬はないと聞いたのですが…

現在、ノロウイルスに対する特効薬はありません。脱水症状や体力を消耗しないよう水分と栄養の補給を十分にするなど対症療法を行うことが大切です。
症状に度合に応じて点滴が必要になる場合もありますが、下痢止めはウイルスが体内から排出される時間が長くなります。治癒までの回復が遅くなる可能性があるため、自己判断で服用しないようにしましょう。

ではノロウイルスはどのように治療を行うのでしょう?

抗生物質は効きませんので特別な治療法はありませんが、脱水症状にならないよう水分補給を十分に行うようにします。嘔吐・下痢がひどく脱水症状を起こしている場合は病院で点滴を行う必要があり、一般的に対症療法として制吐剤や整腸剤投与を行います。

ノロウイルスに家族が感染した場合、どのようなことに注意したら良いですか?

手に触れる共用の物は注意が必要です。特に以下のような項目は徹底されることをおすすめします。

  • トイレの後の手洗いは石鹸を使い厳重に行なって下さい。
  • 体液(血液・体液・尿・便)の処理は使い捨てマスクと手袋着用は必須です。
  • 処理後は流水・石鹸による手洗いを徹底して下さい。
  • 次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)でふき取り消毒して下さい。
  • 2次感染防止のため1週間程度は消毒を徹底して下さい。

ふき取りの際は、家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤でも代用できます。濃度を間違えると健康被害をきたすことがありますので、使用にあたっては「使用上の注意」を確認しましょう。
2次感染防止に関しては、症状の消失後も3〜7日間程度患者の便中にウイルスが排出されますので、油断せず感染対策を続けて下さい。

ノロウイルスに感染した際のおすすめの食べ物や、感染しやすい食べ物を教えて下さい。

感染したら脱水症状を防ぐために水分補給を行うことが大切です。食欲がなければ無理に食べる必要はありません。胃腸になるべく負担がかからない消化に良い以下のような食べ物がおすすめです。

  • お粥
  • 煮込みうどん
  • 味噌汁・野菜スープ

具は柔らかく煮た大根・キャベツなどがおすすめです。大根にはアミラーゼという消化酵素が含まれており、キャベツには胃の粘膜を修復するビタミンUが含まれています。
また、感染しやすい代表的な食べ物として、牡蠣などウイルスを含む2枚貝があげられます。生食や加熱せずに食べた場合に起こりやすいので、体調が万全でない時はなるべく控えましょう。十分に加熱して召し上がることをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

2枚貝などノロウイルス汚染の可能性がある食品の場合、ウイルスを不活化させるためには食品の中心部を85~90℃で90秒以上の加熱をすることが必要です。
調理台や調理器具も使用後すばやく洗い熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱消毒が有効ですので是非、食品からの感染を防ぐためにいつも清潔に保っていきましょう。

編集部まとめ

手の消毒
ノロウイルスは目に見えない大きさですが非常に強い感染力を持っています。乾燥している環境は空気中に舞いやすく、特に冬場は乾燥対策が必要です。

同居しているご家族がいる場合も、洗濯物は分けたり衣類やドアノブも次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200 ppm)でしっかり消毒したりと感染者が増えないようにしていきましょう。

この記事の監修医師