胃腸の調子が悪いと「下痢」になるのはどうして? 下痢の原因について詳しく教えて!
便の硬さは消化器内の通過時間に比例しているそうです。便秘で便が硬くなるのも、腸内に居座り続けているからなのでしょう。だとすれば、下痢は「通過スピードが早くなりすぎてしまった結果」なのでしょうか。下痢の謎について、「千住・胃と腸のクリニック」の早坂先生が解説します。
監修医師:
早坂 健司(千住・胃と腸のクリニック 院長)
防衛医科大学校卒業。2020年、東京都足立区に「千住・胃と腸のクリニック」開院。胃と腸の診療を中心とし、高度医療機関との綿密な連携に努めている。日本消化器内視鏡学会認定専門医・指導医、日本消化器病学会認定専門医、日本内科学会認定医・総合内科専門医。日本胆道学会、日本膵臓学会、日本門脈圧亢進症学会、日本肝臓学会の各会員。
胃腸ではなく腸にある下痢の原因
編集部
そもそも、下痢はどうして起こるのでしょうか?
早坂先生
なんらかの原因で、便の水分量が多くなると下痢になります。水分量が80~90%で泥状便、90%以上で水様便になると言われています。ただし、下痢は腸の失調によって起きる症状です。実際は、今回のテーマである「胃腸の調子が悪いと下痢になる」わけではありません。
編集部
そうだとしても、下痢によっておなかが痛くなりますよね?
早坂先生
考えられるとしたら、むくんだ腸の壁によって食べ物が通過しにくくなり、そのしわ寄せを胃に与えていることでしょうか。腸がむくむ原因としては、ウイルス感染や薬剤、ストレス、冷えなど多彩です。イメージとしては、流しのパイプが詰まり気味になり、台所のシンクをゴボゴボさせている状態でしょうか。
編集部
そうなると、「なぜ、腸の水分量が増えるのか」が知りたいです。
早坂先生
理由は様々ですが、例えばウイルスや、生卵や生焼けの肉などに含まれる細菌が腸内にあって、それを水分で押し流そうとしている可能性もあります。つまり、消化物の水分を吸収しきれないのではなく、腸壁が水分と体にとって有害な物質を排出しているということです。
編集部
なるほど。下痢の原因は胃の失調によるものだと思っていました。
早坂先生
たしかに誤解されやすいですが、下痢は体の自浄作用なので基本的には薬で止めるべきではありません。仮に下痢が治まったとしても、体内にやっかいな悪者を残しかねないでしょう。
自覚はなくても、生活の中にリスクが隠れている
編集部
続けて、自覚は乏しいのに下痢だけが続く原因についてもお願いします。
早坂先生
自覚のない消化器系の病気といえば、初期の大腸がんが典型です。便に着目してみると、下痢と便秘を繰り返したり、便が細くなったり、下痢だけが続いたりします。便の状態がいつもと違っていたら、一度詳しく調べてみましょう。
編集部
下痢と便秘を繰り返すって、不思議ですね。
早坂先生
腸の一部が細くなると水分は流れる一方、固形物を通しにくくなります。前者が下痢で、後者が便秘です。下痢が続いているのにおなかは張っているとしたら、このような異常を疑ってみましょう。総じて、便の状態がいつもと変わってきたら、病気のサインと受け取ってください。
編集部
食べ物が新鮮でも、ものによっては下痢を起こすことはありますか?
早坂先生
はい。例えば、ノロウイルスは牡蠣の体中に生息し、新鮮であっても生で摂取することにより感染性下痢を起こします。また、辛い食べ物をはじめとする刺激物や、アルコール摂取によっても下痢をきたすことがあります。
看過できない、危険な下痢の可能性
編集部
最後は、命に関わる下痢です。
早坂先生
発熱を伴い、嘔吐・下痢をきたし、水分摂取もできないような場合は受診を推奨します。とくに小児や高齢者は重症化することがあるので要注意です。総じて、「下痢が長引く」、「便秘を伴う」、「血便が出る」、「便に血が付く」などの場合は、大腸がんの可能性があります。早々に検査を受けましょう。
編集部
そう聞くと、「下痢だけを理由に受診する機会」って、そんなになさそうですね。
早坂先生
下痢の多くはウイルスが原因なので、自然に治っていくことがほとんどです。ただし、症状が1カ月以上続く場合は、炎症性腸疾患やがんの可能性も考えられます。1カ月を待たず、早めにご相談いただいて、早期発見に努めてみてはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
早坂先生
「下痢は腸で起きている」ということが、ご理解いただけたでしょうか。結果として胃に違和感を覚えるかもしれませんが、まずアプローチすべきは腸です。消化器系のクリニックを受診していただければ、食べ物や飲み物の摂り方についてもアドバイスいたします。
編集部まとめ
台所のシンクがゴボゴボいっている原因は、その先のパイプにあるのでした。言われてみれば、当たり前の話です。しかし、見たり掃除したりすることのできない消化器の場合、コボコボしている箇所に原因があると考えてしまいます。今まで、誤った対策を続けてきた人もいるのではないでしょうか。加えて、「出さないといけない下痢」があることも知っておきましょう。
医院情報
所在地 | 〒120-0034 東京都足立区千住1-11-2 北千住Vビルディング1階 |
アクセス | JR、東京メトロ、つくばエクスプレス「北千住駅」 徒歩7分 |
診療科目 | 胃腸科、消化器内科、内視鏡内科、肛門内科 |