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「卵巣がん」になると現れる初期症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!

 更新日:2023/03/27
「卵巣がん」になると現れる初期症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!

卵巣がんの全国の患者数は2016年で13,388人で、1980年の2,842人に比べると約5倍となっており、年々増加傾向です。

出産は卵巣がんのリスクから女性を守ってくれていますが、少子化の影響で出産経験が少ない女性が増えていることも患者の増加に拍車を掛けています。

卵巣がんは自覚症状がありませんが、検査を受けて早期発見すれば完治が可能です。本記事では、卵巣がんの症状やなりやすい人・治療方法などをご紹介していきます。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

卵巣がんの症状と原因

顔に手を当てる女性

卵巣がんとはどのような病気でしょうか?

卵巣の腫瘍には良性・境界悪性・悪性の種類があり、発生細胞によって様々な種類があります。その中でも悪性の腫瘍が卵巣がんです。
卵巣に発生する腫瘍は卵巣腫瘍と呼ばれ、卵巣腫瘍が発生する卵巣内の細胞によって4つに大別されます。

  • 表層上皮性腫瘍・間質性腫瘍(卵巣の表皮を覆っている細胞)
  • 性索間質性腫瘍(性ホルモンを生産する細胞)
  • 胚細胞腫瘍(卵子を作り出す細胞)
  • その他

卵巣腫瘍の内、最も多くみられるのが卵巣の表皮を覆っている細胞に腫瘍が出来る、表層上皮性腫瘍・間質性腫瘍で上皮性卵巣腫瘍とも呼ばれ、卵巣腫瘍のうち約90%が上皮性卵巣腫瘍です。
更に、卵巣腫瘍は良性・悪性・境界悪性(良性と悪性の中間)の3つの種類に分かれており、卵巣腫瘍の約85%が良性で残りの約15%が悪性です。この15%の悪性腫瘍が卵巣がんといわれるものです。

どのような症状がみられますか?

初期は殆ど自覚症状がなく、進行してくると腫瘍が大きくなるためお腹が大きくなってきます。月経不順・腰痛・頻尿・不正出血・食欲不振等の症状もありますが、症状があってもダイエットや閉経の症状と似ているため中々がんであることに気が付きません。
無自覚のまま症状が出たころにはかなり悪化していることが多いため、注意が必要な病です。

卵巣がんの原因を教えてください。

卵巣がんは遺伝的な要素が大きい病気で、卵巣がんの10%は遺伝的要因であるとされています。
家族や親戚に卵巣がんまたは乳がんの人がいる場合は、そうでない人と比べると卵巣がんになる確率は8~60倍にあがります。
卵巣がんや乳がんの人はBRCA1・BRCA2という遺伝子が異変を起こしており、その変異遺伝子が子供に遺伝することにより卵巣がんの危険性があがります。
また、卵巣は排卵のたびに傷ついて修復することを毎月繰り返しているため遺伝子の情報伝達のミスが起こりやすく、がんになりやすい器官です。そのため、排卵が多ければ多いほどリスクにさらされているといえます。
妊娠出産の経験がない人は妊娠から母乳育児が終わるまでの無月経期間がないため、排卵をより多くしているので、卵巣がんになりやすくなります。

どのような人がなりやすいのでしょうか?

卵巣がんになりやすい人は以下の様な環境の人です。

  • 妊娠・出産経験が無い
  • 40代以降
  • 近しい親族に卵巣がんの人がいる
  • チョコレート嚢胞がある
  • 動物性脂肪の多い食事をしており肥満である

排卵回数が多ければ多いほど、発症のリスクが高まりますので、妊娠・出産経験がない人に多く発症する傾向があります。
また、年齢としては40代以降に発症率が高くなっています。先述のとおり、卵巣がんは遺伝的要因があり、卵巣がんの10%は遺伝的要因です。
親族の中で卵巣がんの人がいる場合はその遺伝子は性別関係なく遺伝されるため血縁関係がより近いほど遺伝の確立は高まります。大きなチョコレート嚢胞を持った人で、特に40代〜50代の人は卵巣がんのリスクが高まります。
もちろんチョコレート嚢胞がなくても癌化することも少なくありませんので、注意が必要です。子宮内膜症によって卵巣の中に血液の鉄分が溜まり、その鉄分が酸化ストレスによって内膜症細胞の遺伝子に変異を起こすことでがん化します。
チョコレート嚢胞から発症する卵巣がんは進行スピードは遅めですが、抗がん剤が効きにくく、治すのが難しいことが多いです。肥満の人で特に動物性脂肪を多く摂取している場合、卵巣がんになりやすいといわれています。
最近の研究では、脂肪細胞が卵巣がん細胞の増殖をサポートしているということがわかってきました。動物性脂肪の摂りすぎは卵巣がんだけでなく、肺がん・膵臓がん・腎臓がん・前立腺がん等、他の器官のがんとの関連性があることも注目すべきところです。
高脂質な食事は肥満という目に見えるリスクだけでなく、がんのリスクがあがることを忘れてはいけません。

受診を検討するべき初期症状はありますか?

初期症状はお腹の膨らみ・腹痛・下腹部痛・便秘がありますが、卵巣がんに特に特徴的な症状はお腹の膨らみ・しこりです。
便秘ではないのにお腹が出ている・仰向けになるとかたいしこりの様なものがある場合は早めに受診しましょう。

卵巣がんの診断と治療

検査中の女性

どのような検査で診断されるのでしょうか?

検査内容は内診・超音波検査・細胞診です。内診では、医師が膣に指を入れ、お腹を触ったり圧迫したりして痛みがあるか確認します。超音波検査は、膣から超音波検査機を入れ、身体の奥にある卵巣の大きさや状態を確認します。
また、細いチューブの様な機器を膣に入れ、子宮の入口の子宮内膜の細胞を採取してがん細胞があるかを確認するのが細胞診です。

治療方法を教えてください。

卵巣がんの治療方法は、各ステージでその状況にあった治療をしていきますので千差万別ですが、主だった治療方法をご紹介します。初回治療としてまずはどの程度進行しているかを判断するために出来るだけ最大限に腫瘍のある卵巣周辺の臓器を摘出する手術をします。
たとえば両側の卵巣・卵管・子宮・大網などが対象です。その後、進行期Ⅰ期〜Ⅳ期までの段階により、化学療法と摘出手術を併用して治療をしていきます。Ⅰ期はがんが卵巣だけにとどまっている状態です。両側の卵巣・卵管・子宮・大網を摘出する他、リンパ節郭清も摘出します。
卵巣周辺の臓器への転移の有無を調べるためと、再発の可能性の高い臓器をあらかじめ切除しておくことで再発のリスクを抑えます。Ⅱ期は腫瘍が子宮・骨盤腹膜・直腸などの周辺臓器に転移している状態です。
この状況になると、骨盤の腹膜を全て剥ぎ取る骨盤腹膜切除という手術を行い、子宮よりも更に広い範囲で卵巣がんの病巣を切除します。特殊な技術を要するため、手術時間は12時間にも及ぶこともあります。Ⅲ期は卵巣がんが骨盤内部だけでなく、骨盤の外側と後腹膜リンパ節に広がっている状態です。
がん細胞の広がった他の臓器も摘出してしまうと、身体の負担も大きいため、まずは抗がん剤治療でがんを小さくすることから始めます。卵巣がんは抗がん剤が効きやすいがんに分類されているため、どうしても摘出手術を行う場合も化学療法で腫瘍を可能な限り小さくしてから手術します。
Ⅳ期は、首や肺などの遠隔部位へ転移している状態です。この段階での治療法はⅢ期と同様に切除するのは身体の負担が大きくなるため、化学療法で腫瘍を小さくし、可能な場合は摘出します。
手術療法については妊よう性温存手術や腫瘍減量手術など、進行期で一概に決められない手術もあります。まずはドクターに相談するといいでしょう。

卵巣がんはどのような場所に転移しやすいのでしょうか?

卵巣がんはまず位置的に近くの骨盤内の臓器(卵管・子宮・直腸・膀胱などの卵巣に近い臓器)に転移しやすいです。骨盤リンパ節・傍大動脈・リンパ節は特に転移しやすい部位です。
また、進行が進むにつれてお腹の方に広がって行きます。

卵巣がんのステージについて教えてください。

治療方法の解説でも触れましたが、卵巣がんのステージにはⅠ~Ⅳに分かれます。Ⅰ期は卵巣がんが卵巣または卵管にとどまっている状態です。
Ⅱ期は腫瘍が卵巣の一部または両方にあり、骨盤内の卵管・子宮・直腸・膀胱などの卵巣の周辺の臓器に転移している状態です。Ⅲ期は両方の卵巣または卵管に転移しており、更に骨盤外の腹膜または後腹膜リンパ節まで広がっている状態を指します。
Ⅳ期は腹腔外の遠隔部位(肺や肝臓など)に転移している状態です。Ⅲ期とⅣ期は手術による除去が出来ないため、進行がんと呼ばれています。

卵巣がんの予後

ベッドに居る女性

卵巣がんの余命や生存率について教えてください。

2009~2011年の統計によると、卵巣がん患者全体の5年後の生存率は60%です。1993年〜1995年のステージ別に5年後の生存率をおおよそで見るとⅠ期が80.0〜89.9%、Ⅱ期が58.5〜63.7%、Ⅲ期は28.7~58.5、Ⅳ期は16.8%です。
この生存率は過去の数値であり、医療の技術の進歩により近年では数値が上昇傾向に変動しているので、生存率はあくまでも参考値として捉えましょう。

卵巣がんは再発するのでしょうか?

卵巣がんは再発しやすい病気で、特にⅢ期以降の進行がんは再発率が高めです。Ⅲ期以降の卵巣がんの再発は、2年以内で55%、5年以内で70%程度起こっているのが現状です。
つまり進行がんの患者のうち、約半数以上に再発リスクがあることが分かります。再発後は化学療法が取り入れられます。
再発の早期発見のためにも卵巣がんの予後は定期的に検査を行いましょう。定期検査の頻度は、1~2年目までは1~3ヶ月に一度程度・3~5年目までは3~6ヶ月ごと・6年目以降は1年おきが目安となっています。

早期発見のためにできることを教えてください。

体内の奥に位置している卵巣がんの発見のためには、超音波検査と内診などの精密検査を受けることが大切です。触診と子宮内膜の細胞の採取だけではなかなか見つけることは難しくなります。
子宮がんや乳がんの集団検診や職場の検診を利用しながら、追加で超音波検査と内診を受けられる診療所を選ぶことがポイントです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

卵巣がんは進行が早い割に自覚症状がないため、サイレントキラーといわれています。気が付いたころには完治しない状態になっていることが多いため、早期発見が出来る様に積極的に検査を受けましょう。
また、動物性脂肪を多くとりすぎた食生活もがんと関係しているため、バランスのよい食生活を意識することも大切です。
がんの予防だけでなく、心や身体全体の健康を維持するようにすることこそが、人間が生きる力の根幹をなすものであるといえます。

編集部まとめ

ハート
女性の社会進出が加速する中、女性は仕事と家庭を守るという両方の責任に追われるようになりました。

その結果ファーストフードなどの外食に頼らざるを得ないことも多く、食生活の乱れや仕事に追われることで、心のバランスを崩すことも多くなりました。

健康な食事を心がけること、出産をして子供を授かることが卵巣がんの予防に効果があります。

つまり自然の摂理に沿った充実した社会生活は、卵巣がんの予防と表裏一体であるといえます。

卵巣がんは定期的な検査が、無症状状態での早期発見へと繋がる最も有効な手段です。日頃から、身体に負担の少ない生活を心がけ、卵巣がんの検査を受けることで早期発見を心がけましょう。

この記事の監修医師