「うつ病」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
うつ病とは、気分が強く落ち込むなどの精神的な症状の他、眠れない・身体がだるいなどの身体的な症状が現れる病気です。
生活への影響が非常に大きい病気であり、誰しも発症する可能性があります。悪化すればさらに精神的・身体的な症状が現れるケースもあるため、早期発見が大切です。
そのためにも、うつ病の初期症状を知り早期に治療を受けられるようにしておきましょう。
本記事では、うつ病の初期症状・進行した場合の症状・対処方法・病院での治療方法をご紹介します。
監修医師:
伊藤 直(医師)
著書:精神科医が教える3秒で部下に好かれる方法
目次 -INDEX-
うつ病の症状・原因
うつ病とはどんな病気ですか。
几帳面で責任感が強い方や、他人から信頼されるような真面目な方ほど、かかりやすい病気ともいわれています。これは、真面目で信頼される一方で、適切に力を抜いたり手抜きができなかったりするためです。責任を抱えてしまい、その重責感からなりやすいとも考えられています。
メランコリー親和型性格の方が、うつ病発症と密接に結びついていると考えられているため注意が必要です。メランコリー親和型性格とは、争いを嫌い自己主張よりも他者を配慮するタイプであり、集団における自分の立ち位置に敏感で完璧主義の傾向がある性格のことです。
また、気分の落ち込みだろうと考えがちですが、気の持ちようで解決できるような安易な病気ではありません。
うつ病は、脳内の神経伝達物質の働きが低下してしまい、それにより活力不足・憂鬱な気分になっている状態です。そのため、本人の努力のみで解決させることが難しいのです。自己判断での解決は悪化を止められないため、医療機関で治療することが大切になります。
うつ病の原因はなんですか。
- 精神的負担や強いストレス
- 日常的な小さなストレスの積み重なり
- 治療薬
精神的負担や強いストレスというのは、大きな環境の変化にあたるものです。例えば、病気・大切な方との離別や死別・転職・配属転換・引っ越しなどが挙げられます。これらの要素は、頻繁ではありませんが大きなストレスとなります。大きな環境の変化によって、精神的ストレスを感じるのです。
次に、日常的な小さなストレスの積み重なりも原因になると考えられています。例えば、仕事・学業・人間関係・孤独感などが挙げられます。大きなストレスではありませんが、日常的なストレスが積み重なって徐々に精神的負担が大きくなり、うつ病を発症することがあるのです。また、一部の内科治療薬などが原因でこの病気を発症する可能性もあります。
このように原因は多岐にわたるため、はっきりとは解明されていません。しかし、多岐にわたるからこそ誰しも発症のリスクがあることがわかります。
うつ病の初期にはどんな症状があらわれますか。
- 涙もろくなる
- 気分の落ち込みが続く
- 喜び・楽しみが感じられない
- 食欲がわかない
- 眠れない
全ての症状が現れるわけではありません。しかし、通常であれば回復するような気分の落ち込みなどが、時間が経過しても回復しないような状態が初期症状の特徴です。
涙もろくなる症状は、感情の高ぶりやストレスを感じた際に誰しもありますが、うつ病の初期症状として現れる際には少し違います。初期症状としての涙もろさは、心のバランスを保つ働きがあるセロトニンの機能が低下することで神経伝達物質の乱れ、感情のコントロールができなくなることで引き起こされます。これまで泣かなかったタイミングで涙が出るようなこともあるでしょう。
気分の落ち込みについても、通常であれば時間が経過することで落ちついて気持ちが軽くなります。しかし、初期症状として現れる気分の落ち込みは、時間が経過してもなかなか改善しないことが特徴です。落ち込んだ状態が2週間以上続くような場合や、何をやっても気分が晴れない状態が初期症状としての特徴に挙げられるでしょう。
喜び・楽しみが感じられないことも初期症状のひとつです。好きなことや普段なら楽しいと感じることでも、喜びを感じられずやる気がなくなってしまいます。
食欲がわかないことも症状のひとつに挙げられます。うつ病になると自律神経にも悪影響を及ぼし、自律神経と密接にかかわる胃・腸の働きが弱まるため、食欲がわかなくなってしまうのです。食欲不振・食事量の減少・食後の胸焼け・吐き気といった、さまざまな症状を引き起こします。
眠れないといったものも代表的な初期症状です。不眠症状は、うつ病発症者の約8割の方が悩まされている症状です。眠れない症状といっても、入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などさまざまなタイプがあります。中でも、入眠困難な症状が現れる方が多く、入眠に30分以上かかる場合は注意が必要です。
うつ病が進行するとどうなりますか。
- 自殺を考えてしまう
- 引きこもりになってしまう
うつ病によって自殺を考えてしまうケースは少なくありません。気分の落ち込みなどから、常に自殺のことを考えてしまうような危険な状態にあることがあるのです。
また、引きこもりになるケースもあります。現実から目をそむけたくなることで、引きこもりになってしまうのです。しかし、うつ病が改善したからといって、引きこもりから抜け出せるとは限りません。そのため、一度引きこもりになると非常に大変な状態になってしまいます。
うつ病の対処方法
うつ病になりかけたときの対処方法を教えてください。
また、健康的な生活を心がけることも大切です。食事をきちんと3食とるようにしましょう。この際に、過度な飲酒は避けることが大切です。飲酒は睡眠を浅くする作用があるため、うつ病を悪化させる可能性があります。
また、適度な運動も重要です。体力をつけることに加え、気分転換の効果もあります。汗ばむ程度で良いので、1週間に3回以上は運動するようにしましょう。
睡眠時間は6時間~8時間程度をとるようにしましょう。
さらに、趣味など自分が楽しめる時間やリラックスできる時間を大切にすることが重要です。疲れが残らない範囲であれば、何をしても問題ありません。飲食・スポーツ・おしゃべり・旅行など、さまざまな方法でくつろげる時間を作りましょう。
うつ症状がひどい場合はどうしたらいいですか。
症状によっても異なりますが、仕事量を減らしたり仕事を休んだりすることで休息をとることができます。
また、同時に治療を早期に始めることが大切です。適切な薬の服用が、症状の改善や精神的・身体的な負担軽減につながる可能性があります。
うつ病の病院での診断方法・治療方法
うつ病が疑われるときは何科を受診すればよいですか。
また、軽いうつ病の症状であれば、身近な内科でも対応してくれる所もあるでしょう。
うつ病はどうやって診断されますか。
治療方法を教えてください。
- 薬物療法
- 精神療法
- その他の治療法
薬物療法としては、主な治療薬は抗うつ薬です。服用後すぐに効果が表れるものではありませんが、継続して服用することで不安を和らげたり、筋肉の緊張をほぐしてくれたりといった効果が見込めます。この時、自己判断で薬の量を増やしたり減らしたりしないようにしましょう。
精神療法には、支持的精神療法・認知行動療法・対人関係療法などがあります。支持的精神療法とは、悩みや辛いと思っていることを医師が聞き、アドバイスや手助けをする治療方法です。認知行動療法とは、出来事に対して考えたことや行動などの変えやすい部分から少しずつ変えていき、問題の解決を目指す治療方法です。対人関係療法は、他者との関係を見直して、再構築をするなかで治療を進めます。
その他の治療方法としては、高照度光療法・修正型電気けいれん療法といった専門的治療を行うケースもあります。また、近年では経頭蓋磁気刺激療法も保険適応となりました。
うつ病はどれくらいで治りますか。
しかし、重度の場合であればそれ以上の期間を必要とする場合もあります。1年などの長期にわたって、先述したような治療方法を段階的に進める場合もあるため注意が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
しかし、時間が経過すると悪化する可能性があり、重症の場合には自殺や引きこもりなどに発展するケースも少なくありません。このような重症化をさせないためにも、少しでも異変を感じた場合には専門の医療機関に相談することが大切です。
編集部まとめ
うつ病は、精神的・身体的ストレスがかかることで発症する病気です。大きなストレスでなくても、小さなストレスが日々重なることで発症する可能性もあります。
そのため、自分では気づかないうちにうつ病を発症しているケースもあります。自覚症状が少ないあまりに、受診・治療が遅れるケースもあるでしょう。
少しでも異変を感じた場合には医療機関に相談しましょう。受診に抵抗などを感じる必要はなく、まずは気軽に相談することが悪化を防ぐことにつながります。