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認知症の人はなぜ徘徊するのか 原因と対策を介護福祉士に聞く

 更新日:2023/04/12
認知症の人はなぜ徘徊するのか 原因と対策を介護福祉士に聞く

認知症を発症した人のなかには、「徘徊」という外をあてもなくうろつく行動をすることがあります。しかし、“認知機能が低下すること”と“徘徊をすること”の相互関係があるようには思えません。なぜ認知症の方は徘徊をしてしまうのでしょうか。認知症の人とどうやって関わっていけばいいのかも気になるところです。そこで今回は、徘徊をしてしまう原因や対策、付き合い方について、介護福祉士の若井さんにお話を伺いました。

若井 由加

監修介護福祉士
若井 由加(介護福祉士)

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名古屋市の老人保健施設で5年の実務経験後、介護福祉士資格取得。老人保健施設以外の施設介護を経験するため、有料老人ホームへ転職。15年間有料老人ホームで管理職を経験後、現在は家族の経営する会社で地域の在宅支援センターと連携しながら、地域の高齢者サポート活動をおこなう。

認知症の方が徘徊してしまう原因・理由とは?

認知症の方が徘徊してしまう原因・理由とは?

編集部編集部

はじめに、徘徊とはどのようなことか教えてください。

若井 由加さん若井さん

徘徊は「目的もなく歩き回る」「床などの上で這い回る」といった行動のことを指します。認知症の周辺症状の一つに分類され、転倒や脱水症状、低体温症など、様々な危険が伴います。

編集部編集部

周辺症状とはなんでしょうか?

若井 由加さん若井さん

周辺症状」は「中核症状」の二次的に起こるものを言います。中核症状は記憶障害や判断力の低下、実行機能障害など脳の機能低下によって直接的に起こる症状であり、この中核症状によって二次的に起こるものが周辺症状にあたります。徘徊のほかにうつや暴言、幻視・幻聴などの症状があります。

編集部編集部

なぜ認知症の人は徘徊をしてしまうのでしょうか?

若井 由加さん若井さん

理由は、一人ひとり様々です。
トイレを探している
家に帰りたい
今いるところが怖くて逃げだした(一人でいる寂しさや不安)
子供を探している(愛情)
習慣(買いものに行く時間など)

上記のような理由が主で、その人の生活習慣や、強く記憶に残っている出来事に関係していることが多いですね。

徘徊の対策・予防策について解説 介護者が気を付けるべきこととは

徘徊の対策・予防策について解説 介護者が気を付けるべきこととは

編集部編集部

徘徊に予防策はあるのでしょうか?

若井 由加さん若井さん

徘徊を未然に防ぐ方法はいくつかあります。「徘徊=一人でうろうろ歩き回る」状態にさせないことなので、「介護サービスを使う」「玄関や窓にセンサーを設置する」「定期的に外出や運動を家族と一緒に行う」などが挙げられます。

編集部編集部

それぞれどのような特徴があるのか、簡単に教えてください。

若井 由加さん若井さん

まず「介護サービスを使う」ですが、目が行き届かない時間帯に介護士に依頼をすると、付き添ってもらえるため、認知症の方も安全ですし家族の負担も減ります。次に「玄関や窓にセンサーを設置する」ことで、家を出たことが家族にわかるようになります。すぐに追いかけて徘徊を防ぐことができますね。また、「定期的に外出や運動を家族と一緒に行う」ことで、必ず結果が出るわけではありませんが、運動による満足感や疲労感で徘徊を減らすことが期待できます。

編集部編集部

徘徊が起こってしまったときは何をすればよいのでしょうか?

若井 由加さん若井さん

実際に効果を出しているのが“GPSによる追跡”です。これには、事前準備が必要で、GPS機能のついた携帯や端末を購入もしくはレンタルをします。最近は携帯だけではなく、GPSの付いた靴や帽子、服に縫い付けるものなど種類も豊富です。徘徊がおこってしまったら、すぐに通信業者へ追跡依頼をします。その他、服に名前と住所、電話番号やメールアドレスを記入したものを縫い付け、発見を早めることが期待できます。

要介護者が徘徊してしまったら 正しい対処法を介護福祉士に聞く

要介護者が徘徊してしまったら 正しい対処法を介護福祉士に聞く

編集部編集部

徘徊してしまったとき、認知症の方にどのように接すればいいのでしょう?

若井 由加さん若井さん

徘徊がはじまった時は、徘徊を無理にやめさせようとしたり、感情的に接したりするのは悪循環です。認知症の方の不安やパニックを悪化させてしまいます。可能な限り同行するようにしてください。同行時には、事故やケガに注意しましょう。

編集部編集部

徘徊がおこってしまった時の対処法についても教えてください。

若井 由加さん若井さん

徘徊がおこってしまったときは、すでに認知症の方がどこにいるのかわからない状況です。よく見られるのが、いなくなった時自分もしくは自分達だけで探すことです。探して見つからなくて警察に連絡するのは遅すぎます。認知症の方は目的をもって歩いているので、どんどん遠くへ行く傾向にあります。時間が経った分、見つけにくくなります。いなくなった時点で警察に連絡をしてください。認知症の人の行方が分からなくなるのは、命に関わる深刻な状態です。

編集部編集部

徘徊について、ほかにやっておくことはありますか?

若井 由加さん若井さん

理由を見つけることが大切です。これは時間がかかる作業で、認知症の方は、本心を話したくても上手く説明できないことが良くあります。徘徊のきっかけになった出来事や環境、理由を日々のかかわりの中から見つける作業が重要です。場合によっては、理由を解決することで徘徊がなくなることもあります。徘徊の同行や、普段の会話の中に理由が隠れていることもあります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

若井 由加さん若井さん

認知症の人の徘徊は「自己表現の一つ」です。何か理由や想いがあって徘徊しているということを理解しておく必要があります。認知症だから仕方がないのは事実ですが、そこに理由があるのだと思って接すると、介護者の気持ちをほんの少しかもしれませんが軽くしてくれるはずです。

編集部まとめ

認知症による徘徊は、介護ケアの中でも認知症の本人も介護者も負担の大きいとされているケアの一つと言われています。認知症や徘徊を知ることは大切ですが、無理をせず、在宅支援センターなど専門知識のある人へ相談してください。家族や個人で悩まず、地域や多くの人に守られながらケアをしていくこともできるということを知っておいて欲しいと思います。

この記事の監修介護福祉士