「認知症」とは?症状・原因についても解説します!
更新日:2023/03/27
認知症を発症すると記憶障害等が起こり、日常生活に支障をきたします。老化による「物忘れ」と混同されがちですが、認知症は老化ではなく病気なのです。
年齢が高くなるほど発症の可能性が高くなり、65歳以上では7人に1人の割合で発症しています。近い将来、5人に1人になると推察されています。
また、働き盛りの世代でも発症するリスクはあり、誰もがかかる可能性のある病気です。
ここでは、自分や家族が「認知症かも」と思った場合の対処法を紹介します。病気ですから、早期発見と治療が大切です。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
目次 -INDEX-
認知症とは?
認知症はどのような病気ですか?
- 認知症は特定の病名ではなく、脳の病気や障害によって認知機能や生活機能が低下した状態を指します。認知機能の低下により、日常生活や仕事に支障をきたしている状態のことです。
- 人間は歳をとれば、物忘れや物覚えが悪くなる傾向があります。これは脳の老化によるものです。対して認知症は、脳の神経細胞が壊れるなどの原因から起こるもので、老化とは違います。
- 物忘れや物覚えが悪くなるだけでなく、被害妄想や徘徊を引き起こすこともあります。
認知症の具体的な症状は?
- 認知症の具体的な症状としては、次のようなものがあります。老化と見分けがつかないこともあり、早期では見逃される可能性も大きいです。
- 物忘れが激しい
- 時間や場所が判らない
- 判断力の低下
- 身の回りのことができない
- これらの中核症状の他、怒りっぽくなる・ふさぎ込む・誰かに自分のモノを盗られたと思い込むなど、心理的な症状も見られます。
認知症になる原因は何でしょうか?
- 認知症になる主な原因は、脳神経が壊れることといわれています。
- 認知症にはいくつもの種類があり、その中でもアルツハイマー型認知症が有名です。そのアルツハイマー型認知症は、脳神経の変形による脳の委縮が原因で発症するといわれています。
- なぜ脳神経が変形するかというと、解明されていないのが現状です。しかし、高血圧などの生活習慣病が関わっていると考えられています。
- また、脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血によって、神経細胞が損傷することで発症します。このように、認知症の原因はさまざまです。
高齢者になると必ず発症しますか?
- 認知症は年を重ねるほどにかかりやすくなります。しかし、高齢者が必ず認知症になるわけではありません。
- 日本において、65歳以上の認知症の方は約600万人と推計されています。将来的には700万人を越えると予測されており、これは65歳以上の方の5人に1人の計算となります。つまり高齢者でも、5人に4人は認知症にならないということです。
- 反対に、若い方でも認知症になるリスクはあります。65歳未満の認知症を若年性認知症と呼びます。平均発症年齢は50歳前後です。
若年性認知症になる人が増えていると聞きます。
- 若年性認知症とは、65歳未満の方の認知症の総称です。
- 若年性認知症は原因はさまざまですが、アルツハイマー型認知症が最も多いと報告されています。高齢者の認知症と比較すると、前頭側頭型認知症・脳血管性認知症・アルコール性認知症の割合が高いのが特徴です。
- 若年性認知症の発症する割合は、少なからず増えていると報告されていますが、有病者数は減少しています。これは、若い世代の人口が減少しているからです。
物忘れやアルツハイマーとの違い
物忘れと認知症はどう違うのですか?
- 誰しも、年を取ると物忘れを起こすようになります。これは、記憶を再生する能力が衰えるからです。しかし物忘れに対する自覚はあります。そして忘れていたことも、ヒントがあると思い出すことが可能です。
- 対して認知症では、記憶する機能が壊れていきます。そのため、新しいことを記憶することが困難になります。記憶されていないため、ヒントがあっても思い出すことはありません。
- また認知症の場合は「忘れている・記憶していない」ということに対する自覚は皆無です。
認知症=アルツハイマーだと思っていました。
- アルツハイマー病は、正式にはアルツハイマー型認知症といいます。
- アルツハイマーは認知症の中の1つ、最も多い認知症です。認知症の約60%がアルツハイマー型と報告されています。
- 脳の委縮から引き起こされるといわれ、物忘れが代表的な症状です。はっきりとした原因は解明されていませんが、生活習慣病・喫煙・飲酒・ストレスなどに関係していると考えられています。しかし、治ることは期待できません。
認知症にはアルツハイマー以外の種類もあるのですね。
- アルツハイマー型認知症以外には、脳血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症が代表的な認知症です。
- 脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血によって、神経細胞や神経ネットワークが損傷することで発症します。アルツハイマーよりも歩行障害が多いのが特徴です。
- レビー小体型認知症では幻視や筋肉のこわばりがあることが特徴です。
- 前頭側頭型認知症では人格が変わり社会性が欠如するという症状が現れます。
- それぞれ症状が異なるため、治療や介護のためにも専門医に診断してもらう必要があります。
自分や家族が「認知症かも」と思ったときはどうする?
認知症は自分で気づくことができますか?
- 高齢になって物忘れがひどくなると「認知症かも」と気付く方も少なくありません。しかし、自ら医療機関を訪れる方は少ないのが現状です。
- また頑として、認知症であることを認めない方もいます。そもそも、自分が物忘れをした事実を忘れているのですから、認めないのも仕方ありません。認知症に対する偏見があるのも事実です。
- ネットでは「認知症のチェックリスト」が公開されています。医療機関に行きにくい方は、まずはセルフチェックをしてみましょう。
家族に認知症の疑いがあるときはどうすればいいですか?
- 家族に認知症の疑いがあるときには、まずは専門医に相談しましょう。認知症に症状が似た、他の病気という可能性もあります。適切な治療や介護を受けるためにも、アルツハイマー型か、他の認知症かの診断は必要なのです。
- 一口に認知症といっても、種類によって症状が異なり、介護の内容も変わってくると考えられています。本人も家族も快適に過ごすためには、認知症の種類と特徴を知ることが大切です。
認知症は早期発見・治療が大切なのですね。
- 老化による物忘れは病気ではありませんが、認知症は脳の障害によって引き起こされる病気です。そのため、早期発見・治療がとても大切になってきます。早期発見によって、認知機能のトレーニングや生活習慣の見直しを早く始めることができるからです。早く始めれば、それだけ自立した時間を長く過ごすことが可能になると考えられています。
- また、早期治療することで、治る可能性のある認知症もあります。慢性硬膜下血腫・甲状腺機能低下症・脳炎といったことが原因で起こる認知症は、元の疾患を治療することで完治が可能です。
- 特に、特発性正常圧水頭症は「治る認知症」として知られています。特発性正常圧水頭症は高齢者に多くみられる疾患で、認知障害や歩行障害を引き起こします。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
- 認知症は早期発見・治療することで、その後の人生を楽に暮らせると考えられています。日常生活での変化を見逃さず、気になることがあれば医療機関で受診しましょう。
- また、認知症はアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が大半を占めますが、他の認知症の場合も多くあります。そのため、受診する場合は、認知症の専門医に診てもらいましょう。
編集部まとめ
高齢社会の日本では、認知症の人の数は年々増えると推察されています。
認知症の予防のためには、高血圧・糖尿病・肥満などの生活習慣病を治療することが大切です。適度な運動やバランスの良い食生活、良質な睡眠を心掛けましょう。
気になることがあれば、すぐに専門医で受診することをおすすめします。
参考文献