「直腸がん」になると現れる初期症状や原因はご存知ですか?ステージについても解説!
日本人の2人に1人ががんにかかるといわれている近年、中でも直腸がんを含む大腸がんは男女問わず発症率の高いがんの1つです。
このページをご覧になっている方は、もしかすると「直腸がんかもしれない」「直腸がんと診断された」と不安になっているのかもしれません。
こちらでは直腸がんの初期症状から治療法、予後や再発についてもわかりやすくまとめましたのでご紹介致します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
直腸がんの初期症状と原因
直腸がんはどんな病気ですか。
直腸がんのステージ分類は、国際的に用いられている「TNM分類」・国内で用いられている「大腸癌取扱い規約」を利用して決定します。2つは共通点が多く、こちらでは「大腸癌取扱い規約」に準じた3つの因子をご説明致します。
- がんの壁深達度(T因子):癌が大腸の壁に入り込んだ深さ
- リンパ節転移の有無(N因子):リンパ節への転移の有無
- 遠隔臓器転移の有無(M因子):肝臓・肺などの大腸以外の臓器・腹膜への転移の有無
ステージの分類は以下のとおりです。なお各ステージは原発腫瘍・領域リンパ節・遠隔転移を総合的にみて判断されます。
- ステージ0:癌が粘膜の内にとどまっている。
- ステージⅠ:癌が粘膜下層・固有筋層に浸潤している。
- ステージⅡ:漿膜下層・臓側腹膜を貫通、もしくは他臓器に浸潤している。
- ステージⅢ:リンパ節転移がある。
- ステージⅣ:血行性転移(肝転移・肺転移)または腹膜播種がある。
直腸がんの初期症状を教えてください。
進行するとどうなりますか?
直腸がんの原因はなんですか。
「食生活と生活習慣の影響」としては、赤肉(牛肉・豚肉・羊肉など)や加工肉(ベーコン・ハム・ソーセージなど)の摂取が増えた食事の欧米化・喫煙・飲酒・肥満も発生のリスクが高い原因です。
好発年齢はありますか。
男女ともに30代後半~40代になると徐々に増え始め、50〜60代を過ぎるとさらに急激に増えています。とはいえ、若い方でも直腸がんになってしまうケースもあります。
直腸がんの検査方法・治療法
直腸がんではどんな検査を実施しますか。
- 便検査:便潜血の有無を確かめる
- 直腸診:肛門から直腸内を指診して異常がないか調べる
- 注腸造影検査:がんの場所やサイズ・形・腸が狭さなどがわかる
- 大腸内視鏡検査:肛門から大腸カメラを挿入して病理組織検査を行う
- カプセル内視鏡検査:カプセル型内視鏡を飲み込み、小型カメラで腸管内を撮影し、コンピューター解析する(2020年3月現在で、術後の癒着や、重症高血圧・心不全・肺気腫・高度肥満などの身体的理由で大腸内視鏡検査が困難な方に保険適応)
- 大腸CT検査:CT検査により得られた画像情報から大腸内視鏡検査に類似した画像を作り出す
- CTやMRI、PET検査:がんの広がりや転移を調べる
- 腫瘍マーカー:術後の再発チェックや薬物療法の効果判定補助のために行う血液検査(大腸がんの腫瘍マーカーはCEA、CA19-9、p53抗体)
どんな治療を行いますか。
CT検査によりがんが一度に取れるサイズと場所にある場合は、肛門からスコープ(カメラ)を通し器具を挿入してがんを切除する大腸内視鏡治療が行われ、それが困難な場合は手術の適応です。
放射線治療は、手術前にがんを小さくする目的や手術ができない方の痛みを抑える目的などに行い、抗がん剤治療は、転移などで手術ができない場合や手術後の再発予防のために継続的に行います。
手術が必要なのはどんなケースですか。
- 腹腔鏡下手術:内視鏡(腹腔鏡)で観察しながら行う方法(術創が小さいため、術後の痛みも少なく回復が早いというメリットがある一方、開腹より手術時間が長い・手術費用もやや高い・体格や既往により難しさが左右されるというデメリットもある)
- 直腸局所切除術:転移していない早期がんや肛門に近い場所にあるがんを切除する方法
- 前方切除術:がんが肛門から離れた位置にある場合に肛門の機能を残すことができる方法
- 直腸切断術:がんが肛門から近く、肛門の機能を残せない場合に直腸・周囲のリンパ節・肛門をまとめて切除して人工肛門(ストーマ)を造設する方法
- 括約筋間直腸切除術(ISR):肛門に近いがんで術後に肛門の機能が保てる可能性がある場合に行う肛門を温存して人工肛門を造設しない方法
直腸を取るとどうなりますか。
最も起こりやすいのは排便回数の増加で、術後は1日に5~6回、多い方では10回以上になることもあります。排便の1回量減少・残便感・頻回な便意・便失禁などの症状が現れます。
これらの症状は数ヶ月から数年かけて徐々に改善することがほとんどです。しかし、中には改善せずに続く方もいます。
直腸がんの予後と再発
直腸がんの予後を知りたいです。
- ステージⅠ:3年生存率89.7%、5年生存率84.1%
- ステージⅡ:3年生存率84.5%、5年生存率76.8%
- ステージⅢ:3年生存率79.8%、5年生存率68.6%
- ステージⅣ:3年生存率33.7%、5年生存率20.8%
このデータからわかるように、がんが進行すればするほどその予後が悪くなっています。
直腸がんは再発しますか。
- 局所再発:最初のがんがあった場所もしくは近くに発生する
- 遠隔再発(転移):リンパ液や血液の流れに乗り、最初のがんがあった場所から離れている臓器に転移する
再発する方の約80%は術後3年以内に、95%以上は5年以内に発見されています。がんが進行していくにつれて再発のリスクは高くなり、その再発部位は、肺・肝臓・局所(がんがあった場所の周辺)・リンパ節・腹膜・吻合部(切除後に縫合した場所)です。
再発の予防方法を教えてください。
また、予防と同じように大切なのが検診です。がん検診の目的はがんを早期発見することにあります。年に1回の健康診断とがん検診を行うことで、早期発見・早期治療に繋がります。特に40歳以上は男性・女性ともに大腸がん検診を受けましょう。
そして、毎日の習慣としては、便の状態に注意することも大切な予防法ですので、しっかりと覚えておきましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
少しでも気になることがある時には放置したり自己判断したりせずに、気軽に医療機関を受診してください。定期的な検診、生活習慣を見直すことで予防と早期発見に努めましょう。
編集部まとめ
身近な病気の1つである直腸がんについて詳しくまとめてみました。探していた情報は見つかりましたか。
直腸がんは、生活習慣を見直すことで予防が期待できる病気です。自覚症状がわかりにくいからこそ、定期的な検診が大切であり、それが早期発見と早期治療に繋がります。
この記事が今後の生活のお役に立てば幸いです。