「エコノミークラス症候群」の前兆となる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?
エコノミークラス症候群という病気をご存知でしょうか?
飛行機のフライトで長時間同じ姿勢で座っていることで起きやすい病気で知られています。震災のような災害時や避難所や車など狭い空間で寝泊まりした際に、多くの人が発症したことで深刻な問題となりました。
ではエコノミークラス症候群とは、どのようなことが原因で起こるのでしょうか?また予防方法はあるのでしょうか?
こちらの記事では、エコノミークラス症候群にならないための予防方法や、もしなってしまった時にどのように対処すればいいのか?など気になる疑問すべてにお答えします。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
エコノミークラス症候群の症状と原因
エコノミークラス症候群はどんな病気ですか?
長時間同じ姿勢でいることで、足の血流が悪くなり静脈に血栓(血のかたまり)ができることを深部静脈血栓症といいます。その静脈血栓が血流に乗り、肺の血管に詰まることを肺血栓塞栓症といいます。
深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症を併せた病気の症状がエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)といわれる病気です。飛行機だけでなく車で寝泊まりしている時のように長時間同じ姿勢でいることで発症する可能性があります。
エコノミークラス症候群の症状を教えてください。
エコノミークラス症候群の原因はなんですか?
エコノミークラス症候群になる時間の目安はどれくらいですか?
エコノミークラス症候群はどんな人がなりやすいのですか?
- 生活習慣病の人(高血圧、高血糖、高コレステロール)
生活習慣病の人は、血液がドロドロしていて血栓ができやすい状態なので注意が必要です。 - 血管に傷がある
外傷や骨折、手術後などで血管に傷ができていると、血液が固まりやすく、血栓ができやすい状態になっています。
スポーツをしている人も、血管を損傷することが多く注意が必要です。 - 喫煙している
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、血栓を作りやすく注意が必要です。 - 血が固まりやすい状態の人
妊娠・出産後や避妊用ピルを服用されている方はホルモンバランスが影響し、血が固まりやすい傾向にあります。
また、凝固性疾患を患っている人・がんを患っている人や、過去に深部静脈血栓症・心筋梗塞・脳梗塞などを起こしたことがある人は、血栓ができやすい体質なので注意が必要です。
エコノミークラス症候群の診断方法や治療方法
エコノミークラス症候群はどのように診断しますか?
足に血栓ができることが多いので、足に腫れや痛み・変色などがないかも確認します。そして、エコノミークラス症候群が疑われるようであれば、詳しい検査の後、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)と診断されます。
検査方法を教えてください。
- 血液検査
血液内のDダイマーという物質は血栓が形成されていると高い数値を示します。またプロテインC・プロテインS・アンチトロンビンⅢは血液凝固を阻止する物質なので、欠落していないかを確認していくのです。 - 胸部X線検査
X線撮影で、肺に血栓や出血がないかを確認します。 - 心電図
肺血栓塞栓症を起こすと右心に負荷がかかるため、心臓の動きに異常がないかを確認します。 - 造影CT検査
造影剤を静脈に注射し、X線を使って体の断面を撮影する検査で、肺に血栓がないかを確認していくのです。 - 下肢静脈エコー
足に血栓ができている場合は、血管エコーで確認します。 - 肺血流シンチグラフィー
肺動脈にTc-MAA(テクネシウム・大凝集アルブミン)というRIを注射し、正面・背側・斜め方向から撮影し、血管につまりがないかを確認します。
どんな治療法がありますか?
- 抗凝固薬
軽度の場合、血液を固まりにくくする抗凝固薬を服用します。 - カテーテル治療・肺動脈血栓摘除術
血栓が多い人はカテーテルや手術で血栓を取り除いていく治療を行っていくのです。 - 補助的な治療
循環を保つことができない場合は、体外循環装置(ECMO、またはPCPS)を用いて、人工心肺装置で生命を維持するサポートをします。高度な出血のリスクがあり抗凝固療法が禁忌の場合などは、下肢動脈フィルターという網のようなものを留置し、血栓が肺に流れることを防ぎます。
すぐ病院に行けないときはどうしたらよいですか?
エコノミークラス症候群の予防方法や注意点
エコノミー症候群を予防するにはどうしたらいいですか?
- 同じ姿勢で長時間座らず、こまめに運動する
- 水分を十分に摂取する
- タバコを控える
- 服をしめつけないようにする
- 寝るときは足をあげる
- マッサージする
- 弾性ストッキングを着用する
また、厚生労働省のHPに予防のための足の運動方法が載っていますので、ぜひ参考にしてください。
エコノミークラス症候群の前兆症状を知りたいです。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
また、十分に水分補給をすることや、利尿作用が高いものを摂取しないように心がけることも大切です。長時間動けない状況の時には、早い段階から弾性ストッキングなどを利用してみるのもおすすめです。
編集部まとめ
今回の記事では、エコノミー症候群についてお伝えしました。
エコノミー症候群は、長時間の飛行機や車での移動時や災害時など、誰にでも起こりえる病気ですが、気を付ければ予防ができる病気でもあります。
できるだけ体を動かすことや水分補給をすること、マッサージをすることなどで必ず予防できるので、意識的に取り入れてみてください。
また、もしもエコノミー症候群が疑われるような症状があった場合は、放置すると命にかかわる注意が必要な病気です。
正しく治療すれば必ず治る病気でもあり、軽度であれば薬の服用だけで済む場合もあります。少しでも体に異変を感じた時には、できるだけ早く病院を受診することをおすすめいたします。