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「エコノミークラス症候群」の前兆となる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 更新日:2023/03/27
「エコノミークラス症候群」の前兆となる症状・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

エコノミークラス症候群という病気をご存知でしょうか?

飛行機のフライトで長時間同じ姿勢で座っていることで起きやすい病気で知られています。震災のような災害時や避難所や車など狭い空間で寝泊まりした際に、多くの人が発症したことで深刻な問題となりました。

ではエコノミークラス症候群とは、どのようなことが原因で起こるのでしょうか?また予防方法はあるのでしょうか?

こちらの記事では、エコノミークラス症候群にならないための予防方法や、もしなってしまった時にどのように対処すればいいのか?など気になる疑問すべてにお答えします。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

エコノミークラス症候群の症状と原因

問診表を持った医師

エコノミークラス症候群はどんな病気ですか?

エコノミークラス症候群とは、飛行機のエコノミークラスのような窮屈な座席で、長時間同じ体勢でいることで発症しやすいことから「エコノミークラス症候群」と呼ばれる病気で、正式名称は静脈血栓塞栓症です。
長時間同じ姿勢でいることで、足の血流が悪くなり静脈に血栓(血のかたまり)ができることを深部静脈血栓症といいます。その静脈血栓が血流に乗り、肺の血管に詰まることを肺血栓塞栓症といいます。
深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症を併せた病気の症状がエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)といわれる病気です。飛行機だけでなく車で寝泊まりしている時のように長時間同じ姿勢でいることで発症する可能性があります。

エコノミークラス症候群の症状を教えてください。

深部静脈血栓症が起こると、ふくらはぎや太ももの痛みや腫れ・むくみが生じます。血栓が肺まで到達し、肺血栓塞栓症が起こると、胸の痛みや息切れなどの症状が出始めるのが特徴です。血栓が大きく重症の場合は、激しい胸の痛みや呼吸困難・冷や汗・意識障害など生命に危険が及ぶこともあります。

エコノミークラス症候群の原因はなんですか?

水分を十分に摂取していないことや、アルコールなどの利尿作用が高いものを摂取することで体が脱水状態になり、血液の粘度が上がりやすくなります。そのような状態で長時間同じ体勢でいることで、さらに血液の流れが悪くなり、足に血栓が生じやすくなります。また、飛行機の機内など乾燥しやすい環境にいることで体内の水分が不足し、脱水症状が起こりやすくなることも原因のひとつです。

エコノミークラス症候群になる時間の目安はどれくらいですか?

4時間以上同じ体勢で座っていると血栓ができる可能性が高まります。2~3時間おきに体を動かすことが大切です。

エコノミークラス症候群はどんな人がなりやすいのですか?

エコノミークラス症候群になりやすい人をまとめました。いずれも血管が詰まりやすい体質・生活習慣・生活背景である人がなりやすいです。

  • 生活習慣病の人(高血圧、高血糖、高コレステロール)
    生活習慣病の人は、血液がドロドロしていて血栓ができやすい状態なので注意が必要です。
  • 血管に傷がある
    外傷や骨折、手術後などで血管に傷ができていると、血液が固まりやすく、血栓ができやすい状態になっています。
    スポーツをしている人も、血管を損傷することが多く注意が必要です。
  • 喫煙している
    タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、血栓を作りやすく注意が必要です。
  • 血が固まりやすい状態の人
    妊娠・出産後や避妊用ピルを服用されている方はホルモンバランスが影響し、血が固まりやすい傾向にあります。
    また、凝固性疾患を患っている人・がんを患っている人や、過去に深部静脈血栓症・心筋梗塞・脳梗塞などを起こしたことがある人は、血栓ができやすい体質なので注意が必要です。

エコノミークラス症候群の診断方法や治療方法

リハビリ・治療

エコノミークラス症候群はどのように診断しますか?

エコノミークラス症候群は、足に痛みや腫れが生じることが多いので、整形外科を受診する方が多いようですが、呼吸器科・循環器科・内科などを受診しましょう。まずは問診で、フライトや車中泊など長時間同じ姿勢で座るような状況があったかどうか・持病・生活習慣などの確認です。
足に血栓ができることが多いので、足に腫れや痛み・変色などがないかも確認します。そして、エコノミークラス症候群が疑われるようであれば、詳しい検査の後、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)と診断されます。

検査方法を教えてください。

検査方法は下記の通りです。

  • 血液検査
    血液内のDダイマーという物質は血栓が形成されていると高い数値を示します。またプロテインC・プロテインS・アンチトロンビンⅢは血液凝固を阻止する物質なので、欠落していないかを確認していくのです。
  • 胸部X線検査
    X線撮影で、肺に血栓や出血がないかを確認します。
  • 心電図
    肺血栓塞栓症を起こすと右心に負荷がかかるため、心臓の動きに異常がないかを確認します。
  • 造影CT検査
    造影剤を静脈に注射し、X線を使って体の断面を撮影する検査で、肺に血栓がないかを確認していくのです。
  • 下肢静脈エコー
    足に血栓ができている場合は、血管エコーで確認します。
  • 肺血流シンチグラフィー
    肺動脈にTc-MAA(テクネシウム・大凝集アルブミン)というRIを注射し、正面・背側・斜め方向から撮影し、血管につまりがないかを確認します。

どんな治療法がありますか?

治療方法は主に4種類あります。

  • 抗凝固薬
    軽度の場合、血液を固まりにくくする抗凝固薬を服用します。
  • カテーテル治療・肺動脈血栓摘除術
    血栓が多い人はカテーテルや手術で血栓を取り除いていく治療を行っていくのです。
  • 補助的な治療
    循環を保つことができない場合は、体外循環装置(ECMO、またはPCPS)を用いて、人工心肺装置で生命を維持するサポートをします。高度な出血のリスクがあり抗凝固療法が禁忌の場合などは、下肢動脈フィルターという網のようなものを留置し、血栓が肺に流れることを防ぎます。

すぐ病院に行けないときはどうしたらよいですか?

足の軽い痛みやむくみなど症状が軽かったとしても、いつ血栓が肺まで流れるかわかりません。肺の血管に血栓が詰まると、呼吸困難や意識障害・ショック状態など放置すれば命にかかわる危険もあります。体に異変を感じた時は、できるだけ早く病院を受診することをおすすめします。

エコノミークラス症候群の予防方法や注意点

説明する医師

エコノミー症候群を予防するにはどうしたらいいですか?

予防方法をまとめましたので、ぜひ取り入れてみてください。

  • 同じ姿勢で長時間座らず、こまめに運動する
  • 水分を十分に摂取する
  • タバコを控える
  • 服をしめつけないようにする
  • 寝るときは足をあげる
  • マッサージする
  • 弾性ストッキングを着用する

また、厚生労働省のHPに予防のための足の運動方法が載っていますので、ぜひ参考にしてください。

エコノミークラス症候群の前兆症状を知りたいです。

まずは足に血栓ができたことによる、足のむくみや痛み・しびれ・変色などがあります。その後、息苦しさや胸の痛み・動悸などの症状があらわれます。足のむくみを感じた時点で、足を動かす運動をする、水分補給するなど予防を心がけてみましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

エコノミークラス症候群は、予防できる病気です。長時間同じ姿勢で座るような状況になった時には、意識的に動くように心がけ、足を動かすストレッチや体操をすることで予防につながります。
また、十分に水分補給をすることや、利尿作用が高いものを摂取しないように心がけることも大切です。長時間動けない状況の時には、早い段階から弾性ストッキングなどを利用してみるのもおすすめです。

編集部まとめ

医療従事者たち
今回の記事では、エコノミー症候群についてお伝えしました。

エコノミー症候群は、長時間の飛行機や車での移動時や災害時など、誰にでも起こりえる病気ですが、気を付ければ予防ができる病気でもあります。

できるだけ体を動かすことや水分補給をすること、マッサージをすることなどで必ず予防できるので、意識的に取り入れてみてください。

また、もしもエコノミー症候群が疑われるような症状があった場合は、放置すると命にかかわる注意が必要な病気です。

正しく治療すれば必ず治る病気でもあり、軽度であれば薬の服用だけで済む場合もあります。少しでも体に異変を感じた時には、できるだけ早く病院を受診することをおすすめいたします。

この記事の監修医師