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「慢性腎炎」とは?症状・原因・治療についても解説!

 更新日:2023/04/03
「慢性腎炎」とは?症状・原因・治療についても解説!

背中に左右一対あり、そら豆の形をしている腎臓は、尿を作って老廃物や水分を排出し、体の水分バランスを保っています。しかし、腎臓の糸球体と呼ばれる部分に炎症が起こることがあり、慢性化すると慢性腎炎と呼ばれる病気になり腎臓に負担をかけてしまうため、適切な治療が必要です。
今回は慢性腎炎とはどのような病気か、症状や原因、代表的な病気、治療法などを解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

慢性腎炎とは

慢性腎炎とはどのような病気ですか?

腎炎は正式名称を「糸球体腎炎」といい、慢性腎炎は正しくは「慢性糸球体腎炎」と呼びます。慢性腎炎とは糸球体腎炎が慢性化した状態で、腎臓の糸球体と呼ばれる部分に病変が起こるのが特徴です。

慢性腎炎は1つの病気ではなく、長い経過をたどる複数の腎炎の総称です。1年以上の長期にわたって病変が持続するものをまとめて慢性腎炎と呼んでいます。

代表的な慢性腎炎には「IgA腎症」があります。最近の研究によって、慢性腎炎の中にもいくつかのタイプがあり、症状が進行しにくいものがあることもわかってきました。

腎臓と糸球体の働き

腎臓と糸球体の働き

腎臓と糸球体はどのような働きをしているのですか?

腎臓は背中に左右1個ずつある、10cm程度の大きさの臓器です。腎臓の内部には糸球体と尿細管があり、その中で尿を作っています。腎臓によって作られた尿は尿管を通って膀胱内に貯められ体外へと排泄されます。

糸球体は腎臓に血液を送る動脈が徐々に細くなった先にあります。毛細血管が集合してできた球形の塊で、血液をろ過して尿を作る役割を担っています。

そのほかにも、腎臓は体の中で発生した老廃物と水分を尿に変換する役割があります。また、赤血球を作る量の調整、カリウム・カルシウムなどのイオンの調整、体内の酸性・アルカリ性の調整、ビタミンDの活性化による骨の調整など、たくさんの役割を担っているのです。

慢性腎炎の症状

慢性腎炎はどのような症状が現れますか?

慢性腎炎は病気の種類により症状が異なりますが、主に以下のような症状が現れます。
  • 血尿
  • タンパク尿
  • めまい
  • 肩こり
  • 頭痛
  • むくみ
  • 倦怠感、だるさ
  • 食欲不信
うち、血尿やタンパク尿は1年以上持続することが慢性腎炎の特徴で、診断基準になっています。
慢性腎炎が進行して腎臓の働きそのものが悪くなったり、タンパク尿が大量に出たりするとむくみやだるさ、食欲不振などが現れることもあります。

通常、慢性腎炎は緩やかに進行するため、学校や職場での尿検査でタンパク尿や血尿の指摘を受けて慢性腎炎が発見されることが多くあります。そのため、健診などでの尿検査が重要になります。

慢性腎炎の原因

慢性腎炎の原因を教えてください。

慢性腎炎の代表的な病気のIgA腎症の原因は、免疫反応の異常により起こるものが多いと考えられています。通常、私たちの体は細菌やウイルスなどの外敵から身を守る「免疫」によって守られており、免疫の中には免疫グロブリンと呼ばれる「IgA」「IgG」「IgM」があります。これらの免疫グロブリンは、細菌やウイルスなどが体の中に侵入してきたときに退治するのが特徴です。

しかし、何らかの異常によって免疫グロブリン自体が腎臓の糸球体にくっついてしまうことがあります。すると、糸球体が炎症を起こし組織を破壊してしまうのです。

慢性腎炎全体で見ると、原因は不明で、免疫の異常、細菌・ウイルス、遺伝的素因が考えられます。

慢性腎炎の代表的な病気

慢性腎炎の代表的な病気を教えてください。

慢性腎炎の代表的な病気には「IgA腎症」「膜性腎症」「紫斑病性腎炎」などがあります。このうち、IgA腎症が一番多い原因です。

IgA腎症

IgA腎症とはどのような病気ですか?

IgA腎症は、糸球体腎炎の原因の中で最も頻度の高い病気です。子どもから大人まで幅広く発症し、比較的若い方に多く見られますが幅広い年代に起こります。

IgA腎症のはっきりとした原因はわかっていませんが、腎臓の糸球体に免疫グロブリンである「IgA」が沈着して炎症を起こすためではないかと考えられています。

IgA腎症は、基本的には無症状で、学校や職場での尿検査で異常を指摘され見つかることがほとんどです。中には上気道炎、扁桃炎や腹痛、下痢などを引き起こす腸炎にかかったあとに、血尿の症状が見られ医療機関を受診してこの病気がわかる人もいます。

膜性腎症

膜性腎症とはどのような病気ですか?

膜性腎症は、タンパク尿が多く出るネフローゼ症候群のひとつです。ネフローゼ症候群は「1日3.5g以上の蛋白尿、血液中のアルブミン濃度が3.0g/dL以下の場合」と定義されています。

膜性腎症の原因には、感染症や膠原病、がんがあります。

中年以降の年代で多く発症する病気で、タンパク尿が多く出て尿が泡立つ、むくみ、高血圧などの症状が見られます。血液検査では、低アルブミン血症やコレステロール値の上昇を認めます。

紫斑病性腎炎

紫斑病性腎炎とはどのような病気ですか?

紫斑病性腎炎は、下肢に赤紫色の点状出血が多発し、腹痛や関節の痛みなどにより腎臓の炎症が起こる病気です。免疫グロブリンの「IgA」が、炎症を起こしている臓器の小血管などに沈着することで起こります。

子どもによく見られる病気ですが、成人でも発症します。腎臓に炎症が起こると、タンパク尿や血尿などの症状が現れ、重症になると急激に腎機能が悪化することもあります。

慢性腎炎の受診科目

気になる症状があれば何科を受診すれば良いですか?

尿のニオイや色、体調不良などの気になる症状があれば、まずは内科を受診しましょう。健康診断などでタンパク尿や血尿を指摘された場合は、腎臓内科を受診してください。

慢性腎炎の検査

慢性腎炎の検査

慢性腎炎ではどのような検査を行いますか?

慢性腎炎では、尿検査、血液検査、画像検査、腎生検などの詳しい検査を行います。正確に診断するためには、腎生検が最も有用な検査です。腎生検では、腎臓の組織の一部を採取して、顕微鏡で検体を確認して腎臓の異常を調べます。

慢性腎炎の性差・年齢差

慢性腎炎に性差・年齢差はありますか?

慢性腎炎は、海外では男性に多い病気とされていますが、日本でははっきりとした性差はありません

年齢差は、IgA腎症は比較的若い方に多く見られますが、あらゆる年代に起こります。膜性腎症は中年以降の年代で多く発症することがわかっています。紫斑病性腎炎は小児期によくみられますが、成人でも発症するのが特徴です。

慢性腎炎の治療法

慢性腎炎の治療法

慢性腎炎ではどのような治療を行いますか?

慢性腎炎は食事療法や薬物療法を行います。食事療法では、塩分の摂り過ぎに気を付け、バランスの取れた食事を意識することが大切です。

薬物療法では血圧を抑えるための降圧剤や、炎症を抑えるためのステロイドを使用します。むくみが強い場合は、利尿剤を使用して血液中の塩分や水分の排泄を促します。

日常生活では禁煙や血圧の維持も重要です。激しい運動や過労は症状を悪化させることもあるため、避けるようにしましょう。

IgA腎症では、扁桃腺摘出後に、免疫や炎症を抑える「ステロイドパルス療法」と呼ばれる治療を行います。腎機能は正常ですが、蛋白尿や血尿が多く見られ、腎生検などの詳しい検査で活動性の病変の多い方や若者などがこの治療の適用です。

編集部まとめ

慢性腎炎は、糸球体腎炎が慢性化した状態で、腎臓の糸球体と呼ばれる部分に病変が起こるのが特徴です。1年以上にわたりタンパク尿や血尿が現れる病気を総称して慢性腎炎と呼びます。
原因は、免疫反応の異常により起こるものが多いと考えられており、学校や職場での尿検査で異常を指摘され発見されることが多い病気です。
治療の基本は食事療法と薬物療法です。気になる症状があれば内科や腎臓内科を受診しましょう。

この記事の監修医師