「ビオチンが多い食べ物」3選！”不足”によるリスクも管理栄養士が解説！

ビオチンとは？

水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。ビオチンは、カルボキシ化反応を触媒するカルボキシラーゼの補酵素として機能します。特に、ピルビン酸カルボキシラーゼの補酵素として糖新生、アセチルCoAカルボキシラーゼの補酵素として脂肪酸合成に重要な役割を果たします。生体内では、ほとんどがたんぱく質中のリシンと共有結合した形態で存在します。消化の過程でまずたんぱく質が分解され、ビオチニルペプチドやビオシチンとなります。これらが加水分解された後、最終的にビオチンが遊離し、主に空腸から吸収されます。空腹時に血糖値が下がったときと、反対に食後グルコースやアミノ酸が余った時に必要量が高まります。
食事から摂取する以外にも腸内細菌によって合成されますが、体が必要とする十分な量は維持できないといわれており、食事からの摂取が欠かせません。

ビオチンの一日の摂取量は？

必要なビオチンの1日の摂取量は、年齢や性別によって異なります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
(目安量）
成人男性（18~64歳）:50μg/日
成人女性（18~64歳）:50μg/日
妊婦:50μg/日
授乳婦:50μg/日
妊娠中はビオチンの必要量が増えると考えられていますが、胎児の発育に問題のない目安量を設定するのに十分なデータがないことから、非妊娠時の目安量が適用されています。

ビオチンの効果

皮膚・粘膜の健康維持

ビオチンは、皮膚や粘膜の細胞のターンオーバーに必要な酵素の働きを助けます。これにより、皮膚や粘膜の健康維持が期待できます。健康な角質層の形成を助け、皮膚のバリア機能維持にも関与しており、乾燥やかゆみ、炎症といった肌トラブルの予防につながる可能性があります。

アレルギー症状の緩和

ビオチンには、体内で抗炎症物質の生成を助ける働きがあり、この作用によってアレルギー症状を和らげる可能性があるとされています。詳しいメカニズムは明確ではありませんが、炎症やかゆみなどの症状を軽減する働きが示唆されており、アレルギー皮膚炎などへの関与が考えられています。

髪や爪の健康維持

髪や爪は、ケラチンというたんぱく質が主成分です。ビオチンはこのケラチンの生成に関与し、髪の毛の成長をサポートしたり、爪を強く割れにくくする効果などがあると考えられています。

ビオチンと掌蹠膿疱症の関係性は？

掌蹠膿疱症とは、手のひら（掌）や足の裏（蹠）に膿を持った小さな水ぶくれ（膿疱）が繰り返しできる病気です。膿疱内に細菌やウイルスなどの病原体は含まれないため、人に感染することはありません。手足以外に、すね・膝・肘・頭皮などへ症状が広がることや、爪の変形、骨・関節の痛みが生じることもあります。
掌蹠膿疱症の原因は明確には解明されておらず、喫煙、金属アレルギー、慢性扁桃炎などが関与すると考えられています。ビオチンに関しては、不足が症状に関与する可能性を示す報告もありますが、現時点では十分な科学的根拠が確立しているわけではありません。
こうした背景から、血中ビオチン濃度の改善を目的として「ビオチン療法（高容量ビオチン＋ビタミンC＋整腸剤）」が行われることがあります。ただし、特効薬ではなく、有効性も確実とはいえず、効果には個人差が大きい治療です。行う場合は中長期的な継続が必要とされています。
また、過剰なビオチン摂取は、ホルモン検査や腫瘍マーカーなど、多くの医療検査で用いられる「ビオチン化試薬」に干渉し、検査結果を誤って低値または高値に見せてしまう可能性が報告されています。これにより誤診につながる危険性があるため、厚生労働省も注意喚起を行っています。
ビオチン療法を希望する場合やサプリメントを高用量で使用する場合は、必ず医師の指導のもとで行い、自己判断で大量摂取しないようにしましょう。

ビオチンが多い食べ物ランキング

ビオチンが多い食べ物1位　にわとりレバー/生

100gあたり230.0μg含まれています。肉類の中でも、特に肝臓に多く含まれています。次いで豚スモークレバー130.0μg、豚レバー/生80.0μg、牛レバー/生76.0μgなどと続きます。

ビオチンが多い食べ物2位 落花生/いり

100gあたり110.0μg含まれています。次いでピーナッツバター79.0μg、ヘーゼルナッツ/フライ/味付け82.0μg、ひまわりの種/フライ/味付け80.1μg、アーモンド/フライ/味付け60.0μgなどと、ナッツ類に多く含まれています。

ビオチンが多い食べ物3位　卵黄/生

100gあたり65.0μg含まれています。次いで卵黄/ゆで54.0μg、目玉焼き27.0μg、全卵/生24.0μgなどと続きます。
卵類の中では、特に卵黄の部分に多く含まれています。一方、生卵白を大量摂取すると、生卵白に含まれるたんぱく質アビジンがビオチンと強く結合し、吸収が阻害され、欠乏症がみられることがあります。アビジンは加熱により変性し、その影響を抑えることができるため、加熱した卵では心配ありません。

紹介した食べ物以外にも、魚介類、きのこ類、豆類などに多く含まれています。

ビオチンが多く亜鉛も含む食べ物は？

ビオチン及び亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。亜鉛は、ミネラルの一種で、髪の主成分であるケラチンの合成を助けます。ビオチンは髪や頭皮の代謝を促すと考えられています。この組み合わせにより、薄毛の予防や、髪のハリツヤが良くなるなどの効果が期待されています。

ぶた肝臓/生

100gあたり、ビオチン80.0μg、亜鉛6.9mgが含まれています。ビオチンは水溶性ビタミンで、調理中に煮汁へ溶け出しやすい性質があります。亜鉛も加熱時に多少流出することがあるため、レバニラ炒めなど汁を捨てない炒め物の調理法にすると、両方の栄養素を効率よく摂取できます。

卵黄

100gあたり、卵黄/生にはビオチン65.0μg、亜鉛3.6mgが、卵黄/ゆでには、ビオチン54.0μg、亜鉛3.3mgが含まれています。全卵/いりには、ビオチン26.0μg、亜鉛1.4mg含まれています。卵白または全卵を摂取する場合は、加熱することでビオチンの吸収を阻害するアビジンが不活性化し、吸収がよくなります。

きな粉/黄大豆

100gあたり、ビオチン33.0μg、亜鉛4.0mgが含まれています。
きな粉は牛乳や豆乳、スムージーなどの飲み物に混ぜたり、ヨーグルトにかけたり、バタートーストにはちみつと一緒にかけるなど、毎日の食事に手軽に取り入れやすい食べ物です。

ビオチンが不足すると現れる症状は？

ビオチンはいろいろな食品に含まれています。腸内細菌によっても合成されるため、通常の食生活では不足することはないと考えられています。不足する原因としては生卵の大量摂取、長期間の抗生物質の使用、偏食、喫煙、妊婦、過度の飲酒、特定の薬剤、先天性異常などが挙げられます。

皮膚炎や脱毛などの皮膚障害

ビオチンは皮膚や粘膜の健康維持に欠かせません。不足すると、乾いた鱗状の皮膚炎や、アトピー性皮膚炎、ニキビの悪化などが起こる可能性があります。
またビオチンは、髪の主要なたんぱく質であるケラチンの生成を助けています。不足すると髪が細く弱くなる、切れやすくなる、抜け毛が増えることがあります。ただし、抜け毛や薄毛には遺伝やホルモンバランス、ストレス、生活習慣など様々な要因が関わっているため、抜け毛が気になるからといって、必ずしもビオチン不足とは限りません。

萎縮性舌炎

ビオチンは粘膜の健康にも関わっています。不足によって、萎縮性舌炎（舌の表面の突起が萎縮、舌の上皮が薄く暗赤色になる）や、口角炎などの口内トラブルが起こりやすくなる可能性があります。

食欲不振

ビオチンは補酵素として、糖質や脂肪酸、アミノ酸の代謝や、エネルギーの産生に関わっています。不足すると代謝がうまくいかなくなり、体が必要なエネルギーを得にくく、空腹感が鈍くなることがあります。また口腔内の不調も重なり、食欲不振を引き起こす可能性があります。

ビオチンを効率的に摂取する方法は？

こまめに摂取する

ビオチンは水溶性のため、体内に蓄積されにくく、過剰に摂取しても余った分は尿として排泄されます。毎食ごとに、こまめに摂取するよう心がけましょう。

汁ごと食べる

ビオチンには、水に溶け出しやすい性質があります。茹でる場合はスープなど、汁ごと食べる調理法にすると無駄なく効率的に摂取できます。ビタミンB群の中では比較的熱に強いため、蒸す、炒めるといった調理法もおすすめです。

他のビタミンB群と一緒に摂る

ビタミンB群は互いに助け合って働きます。効率的に摂取するためには、他のビタミンB群（ビタミンB1、B2、葉酸、パントテン酸など）と一緒に摂るとよいと考えられています。