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「掌蹠膿疱症」を発症しやすい人の特徴・予防法はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/02/16
「掌蹠膿疱症」を発症しやすい人の特徴・予防法はご存知ですか?医師が監修!

掌蹠膿疱症という病気をご存じない人もいるのではないでしょうか。掌蹠膿疱症とは手のひらや足の裏などに膿疱ができる比較的稀な病気です。

明確な原因は分かっていませんが、喫煙者で中年の女性が特に発症しやすく、基本的に対症療法での治療となるため長期的に病気と付き合っていく必要があります。

症状が水足と似ており自分自身で症状を見分けることが難しいので、自己判断せず皮膚科へ早めに受診することが大切です。

本記事では、稀な病気である掌蹠膿疱症の病態・症状・治療法・予防法について解説するので、参考にしてください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

掌蹠膿疱症の症状

てのひら

掌蹠膿疱症とはどのような病気ですか?

掌蹠膿疱症は、膿が溜まった膿疱という皮疹が手のひらや足の裏に数多くできる病気です。
この膿疱は、白血球の一種で炎症反応に関係する好中球が角層に溜まった状態です。掌蹠膿疱症は慢性的に経過し、周期的に症状がぶり返します。
皮疹は最初は小さな水疱ですが、徐々に黄色い膿疱に変化します。その後、かさぶたとなって剥がれ落ちるというサイクルを繰り返すのが特徴です。皮疹の中の液体からウイルスや細菌が発見されていないことから、免疫が関係している病気ではないかといわれています。
掌蹠膿疱症は稀な病気で、比較的中年以降の人が発症します。

手足以外の部位にも感染が広がることはありますか?

掌蹠膿疱症は主に手のひらと足の裏に症状が出現しますが、そのほかにもすね・膝・肘・頭などに症状が出ることがあります。すね・膝・手のひら・足の裏以外に紅斑や膿疱ができる状態を、掌蹠外病変といいます。
また爪が変形したり骨や関節が痛んだりすることもあり、症状は多様です。爪に症状が出ると変形するだけでなく爪の下に膿疱や凹みができたり、爪が剥がれて浮き上がってきたり、爪の下が厚くなって盛り上がったりします。
ほかにも重要な合併症として掌蹠膿疱症性骨関節炎という病気を併発することもあります。骨や関節に炎症が起きることで痛みを伴いますが、この痛みは非常に強く日常生活が困難になる場合があり注意が必要です。
放置すると関節が変形することもあるので、適切な治療を受けなければなりません。

痛みや痒みはありますか?

掌蹠膿疱症の特徴的な症状は小さな水疱からできる膿疱で、初期の段階で痒みを伴うことがあります。しばらくすると膿疱が乾いて茶色のようなかさぶたとなって剥がれ落ち、周りの皮膚にも影響が及ぶことで紅斑・鱗屑などの症状が出ます。
そうして角層が積み重なって厚くなると歩くたびにひび割れが生じて痛みを感じるので、歩行が苦痛に感じる人も多いです。
膿疱の出方には個人差があり、次々に出る場合と周期的に出る場合があります。疲労が蓄積した時・風邪を引いた時など、どのような時に症状が出現しやすいのか自分で把握することは治療方針を決める上で重要なことです。

発症しやすい人の特徴を教えてください。

掌蹠膿疱症は男女比が大体1:2で、30〜50代の発症が多いですが全年齢層にみられます。
厚生労働省の調査では2015年時点で約13万6,000人の人が掌蹠膿疱症を発症しているとの推測がされています。小児での発症は稀です。
ほかにも習慣的に喫煙している人や扁桃腺が弱い人なども発症しやすいといわれています。

掌蹠膿疱症の治療方法

クリーム

基本的には外用療法を行うのですね。

掌蹠膿疱症は明確な原因が不明なので、外用療法を中心に個人に合わせた治療法を行います。因みに治療方法は外用療法以外に光線療法内服療法注射療法などがあります。
外用療法をする上で重要なのは、塗り薬をすりこむように塗布するのではなく、優しく伸ばすことです。擦るように強くすりこんでしまうと、刺激によって症状が悪化する可能性があります。またこまめに保湿するのも大切です。
手のひらや足の裏は毛穴がないため皮脂が少なく、乾燥しやすい状態です。角層が厚くなる上に乾燥状態のままだと、ひび割れが進行してしまうので常にしっとりとした保湿状態にすることを意識するようにしましょう。
また掌蹠膿疱症は症状が変化していくので、塗り薬の種類・強さ・塗布回数をその都度調整しなければなりません。
症状の変化・現在の状態を医師に伝えて適切な治療を受けてください。塗り薬の種類によっては、肌に合わず副作用が出る可能性もあります。使用中に少しでも気になる症状が出たら早めに医師に相談しましょう。

完治までにどのくらいの期間が必要ですか?

掌蹠膿疱症の治療法は主に対症療法ですが、発症したほとんどの人が平均3〜7年で完治したというデータがあります。
掌蹠膿疱症を発症した人の2〜3割は、病巣感染金属アレルギーなどが原因だと分かっており、積極的に検査して治療すれば平均年数よりも短い間に完治する可能性があります。
しかし7〜8割の人は原因不明なことが多いので、対症療法を行いながら日常生活に支障が出ないようコントロールすることが重要です。

乾燥させてはいけないのでしょうか。

手のひらや足の裏には毛穴がないので、皮脂が少なく乾燥しやすい状態です。さらに角層が厚くなってより乾燥しやすい状態なのでこまめに保湿する必要があります。こまめに保湿をしないとひび割れが生じて、歩くことや手を使うことも困難になりやすいです。
また保湿剤を塗る時も、刺激を与えてすりこんでしまうと悪化する性質(ケブネル現象)があるため、優しく伸ばすように塗るよう心がけてください。
保湿剤を塗った後に伸縮性のチューブ型包帯を手のひらや足の裏に装着すると、より保湿効果が高まります。

食生活の改善も重要なのですね。

掌蹠膿疱症の人は食生活に偏りがあることが多いです。特に糖尿病や脂質異常症を患っている人は注意が必要です。
また下痢と便秘を繰り返す過敏性腸症候群や、頑固な便秘を併発する人もいます。腸内環境を整えることが大事なので和食中心で食物繊維を意識して摂取するようにしましょう。
また動物性脂肪や砂糖などを多く摂りすぎてしまうと体の中に余分な水分が溜まり、体内で熱がこもりやすくなる(湿熱)ことで炎症を助長する可能性もあります。特に炎症が酷い時期は、食事内容に気をつけると良いでしょう。

掌蹠膿疱症の予防方法

電子タバコを吸う女性

掌蹠膿疱症のやってはいけないことを教えてください。

掌蹠膿疱症で気を付けていただきたいのは、カサカサした皮膚を自分で剥がさないことです。
生活するうえで皮膚がめくれ上がった状態だと衣類や布団に引っかかって動きづらいかもしれませんが、自分で剥がしてしまうと症状が悪化してしまう可能性があり、これをケブネル現象といいます。
また手のひらや足の裏に膿疱があると潰したくなるかもしれませんが、潰してしまうとさらに炎症がひどくなり、腫れや痛みを伴うこともあります。
潰れても膿疱の中に細菌やウイルスはいないので他の人へ移す心配はありませんが、清潔な状態を保つためにも日頃から保湿は心がけるようにしてください。

具体的な予防方法を教えてください。

掌蹠膿疱症の悪化因子の1つが喫煙です。発症している人の約80%は喫煙者で、禁煙することで症状の緩和が期待できます。
喫煙は掌蹠膿疱症だけでなく歯周病の悪化因子でもあるので、禁煙外来を上手く利用して禁煙にチャレンジするのも良いでしょう。また、掌蹠膿疱症は自覚症状のない歯周炎や歯槽膿漏のような歯周病扁桃炎副鼻腔炎などを治療することで症状が改善されたり、治癒したりすることがあります。
毎日の口腔ケアだけでなく定期的な歯科検診も行い、歯を清潔に保つ意識が大事です。また元々扁桃炎や副鼻腔炎になりやすい人は、早めに医師へ伝えてください。
ほかにもストレスを溜め込むのはよくないので規則正しい生活を送り、過度の飲酒を控えましょう。骨関節炎を引き起こしている時は炎症部位を安静にすることも大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

掌蹠膿疱症は原因が分からないことが多い病気で、他人へ感染することはありませんが日常生活に大きな支障を及ぼします。
原因が分からない場合は対症療法を続けるしかないので、医師の指示通りに外用薬を使用し、こまめに保湿することがとても重要です。また喫煙は大きなリスク因子なので、喫煙している人は発症を機に禁煙してみると良いでしょう。
ほかにも食生活の偏りが、炎症を悪化させる要因になる可能性もあります。過敏性腸症候群や便秘を併発しないためにも和食を中心とした、栄養バランスの良い食事を意識しましょう。症状に変化があったり、気になることがあったりした場合はすぐ医師へ相談してください。
適切な治療を受けることで、症状が緩和し日常生活を送りやすくなります。

編集部まとめ

医療スタッフの女性
掌蹠膿疱症は比較的稀な病気なので発症した人は困惑するかもしれませんが、適切な治療を行えば症状は緩和されます。

自然に完治することが多いですが完治までの期間は長いので、症状と上手く付き合いながら日常生活を送らなければなりません。

発症する人の多くは喫煙者であることから、禁煙するのも症状改善の1つの手段です。禁煙が1人だと難しいようであれば禁煙外来を利用しましょう。

掌蹠膿疱症に関する正しい知識を身につけて、安心して日常生活を過ごせるようにしてください。

この記事の監修医師