レバーなどに含まれる「ビオチンの効果」とは？管理栄養士が徹底解説！

「ビオチン」とは？

水溶性ビタミンのビオチンは補酵素として糖新生※¹、脂肪酸合成※²に重要な役割を果たす。抗炎症物質※³を生成することによってアレルギー症状を緩和する作用がある。 ビオチンは体内で生成できないので、食品によって摂取が必要です。 ※¹血糖値が下がった時に最低限のグルコースを調達して、血糖値を上げる役割をする。 ※²エネルギーの貯蔵や細胞膜の構成に役立つ。 ※³炎症そのものは異物の侵入や組織の障害といった生体組織にとって好ましくない刺激が発生した時に 免疫 系が引き起こす局所的な防御反応であるが、生体にとっての非自己の排除を助ける一方で自己である生体そのものにも一定の損傷や苦痛を引き起こす性質も持つ。

ビオチンの一日の摂取量

目安量は男女同量 ・0〜5ヶ月 4μg/日 ・6〜11ヶ月 10μg/日 ・1〜5歳 20μg/日 ・6〜9歳 30μg/日 ・10〜11歳 40μg/日 ・12〜17歳、成人、高齢者、妊婦、授乳婦(目安量) 50μg/日

ビオチンの効果

ビオチンはビタミンB群の一種で、糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関わる補酵素として働きます。そのため、エネルギー産生や皮膚・粘膜の健康維持に重要な役割を果たします。

肌や毛髪、爪の健康

ビオチンは、皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあり、結果として爪や髪の毛の健康をサポートすると考えられています。ビオチンが関与する代謝反応は、体の細胞の修復や再生にも重要です。

エネルギー代謝のサポート

ビオチンは、糖質・脂質・たんぱく質の代謝に必要な酵素の補酵素として働きます。直接的な疲労回復効果があるとは言えませんが、体内のエネルギー産生を支える点で、日常の活力維持に貢献するとされています。

皮膚炎や口内炎の改善

ビオチンが不足すると、皮膚炎や口内炎などの症状が現れることがあります。これは、皮膚や粘膜の維持に関与するビオチンの役割が果たされなくなるためです。特に、長期的な偏食や特定の疾患による欠乏がある場合は注意が必要です。

ビオチンの摂取から効果が出るまでどれくらいかかる？

ビオチンは体内の代謝に関わるビタミンであり、摂取によって皮膚や粘膜の健康をサポートするとされています。ただし、薬のようにすぐに効果が現れるわけではなく、継続的な摂取が必要です。一部の報告では、ビオチンの補給によって掌蹠膿疱症やアトピー性皮膚炎、ニキビなどの皮膚症状が徐々に改善したケースもありますが、効果のあらわれ方には個人差があり、科学的根拠は十分に確立されていません。目に見える変化を感じるまでに数ヶ月〜1年程度かかることもありますが、自己判断で摂取を中止せず、必要に応じて医師や専門家に相談しながら継続の可否を判断することが大切です。

ビオチンが不足すると現れる症状

皮膚の乾燥や鱗屑（うろこ状のはがれ）

ビオチンが不足すると、皮膚が乾燥し、フケのような鱗屑（うろこ状の皮膚のはがれ）が生じることがあります。特に、顔や頭皮、手足などに皮膚炎を起こすことがあり、かゆみや赤みを伴う場合もあります。 一般的なスキンケアや保湿でも改善しない場合は、ビオチン不足の可能性も考慮し、医師や管理栄養士に相談しましょう。

萎縮性舌炎

ビオチンが不足すると、舌の表面にある小さな突起（舌乳頭）が萎縮し、舌の表面が平らで滑らかになります。その結果、舌の上皮が薄くなり、暗赤色に見えるのが特徴です。痛みや灼熱感を伴うこともあり、栄養素の欠乏による兆候の一つとされています。

食欲不振

ビオチンが不足すると、体内の代謝機能が低下し、消化器の働きにも影響を及ぼすことがあります。その結果、食欲が落ちる、食事が進まないといった「食欲不振」が見られることがあります。ビオチンは糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わる補酵素として働いており、この代謝がうまく機能しないと、体が必要なエネルギーを適切に得られず、空腹感が鈍くなることがあります。また、ビオチン欠乏によって口内炎や舌の違和感といった口腔内の不調が現れると、食事の際に痛みや不快感が伴い、それがさらに食欲を低下させる原因にもなります。

むかつき

ビオチンが不足すると、消化機能に不調をきたすことがあり、その一つとして「むかつき（胃の不快感）」が現れる場合があります。ビオチンは体内の代謝を助ける補酵素として働いており、その欠乏によりエネルギー代謝がうまく行われなくなると、消化器系の機能にも影響が及ぶ可能性があります。

吐き気

ビオチンが不足すると、消化器系の働きが乱れ、吐き気を感じることがあります。ビオチンはエネルギー代謝を助ける補酵素として重要な役割を担っており、その欠乏によって胃腸の機能が低下し、消化不良や胃もたれ、さらには吐き気などの不快な症状が生じることがあります。

憂うつ感

ビオチンは脳や神経の働きにも関与している栄養素のひとつであり、不足すると精神的な不調が現れることがあります。その一例として、「憂うつ感」が挙げられます。これは気分が沈んだり、やる気が出なかったり、興味や関心を持てなくなったりする状態を指します。 ビオチンは神経伝達物質の合成や代謝にも関わっており、欠乏することで脳の機能が低下し、気分の安定が保ちにくくなる可能性があります。また、ビオチン不足によって体の不調が続くと、その影響が心理面にも及び、慢性的な疲労感やストレスとあいまって、憂うつな気分を引き起こすこともあります。

顔面蒼白

ビオチンが不足すると、全身の代謝バランスが乱れ、貧血のような症状があらわれることがあります。そのひとつが「顔面蒼白」です。顔面蒼白とは、顔の血色が悪くなり、青白く見える状態を指します。これは、血流の低下や酸素供給の不足によって起こるもので、体の代謝が低下した結果として現れることがあります。

前胸部の痛み

ビオチンが不足すると、神経や筋肉の機能に影響が及び、まれに前胸部に痛みや圧迫感を覚えることがあります。ビオチンは代謝を支えるビタミンB群の一種で、神経の正常な伝達や筋肉の働きにも関与しており、欠乏が進むことで、体の一部に違和感や痛みとして現れることがあります。

ビオチンを過剰摂取すると現れる症状

吐き気・下痢などの軽い消化器症状

ビオチンは水溶性ビタミンで、通常は余分な量が尿として排出されるため、過剰摂取による健康障害はまれです。ただし、サプリメントなどで高用量を長期間摂取した場合、吐き気や下痢などの軽い消化器症状が見られることがあります。これらは一過性であることが多いものの、体調に違和感を覚えた場合は摂取量を見直す必要があります。

皮膚のかゆみや不快感

一部の報告では、ビオチンの過剰摂取により皮膚のかゆみや発疹などの症状が出たとされるケースがあります。水溶性ビタミンは比較的安全とされていても、体質や摂取量によっては過敏に反応することもあり注意が必要です。肌に異常が見られた場合は、使用を中止し医師に相談することが推奨されます。

血液検査結果への影響による誤診リスク

ホルモン検査や心疾患のマーカーなど、一部の血液検査に影響を及ぼす可能性があります。特に高用量のビオチンを摂取している場合、検査値が偽陽性・偽陰性を示し、病気の有無が正確に判断できないことがあります。検査前には必ず医師にビオチンを摂取していることを伝えるようにしましょう。

ビオチンを多く含む食品

鶏レバー

100g当たり 230.0μg ・牛レバーや豚レバーと比べると、鶏レバーのカロリーが最も低く、豚や牛のレバーよりも癖がない鶏レバーは、レバーペースト（鶏レバーのパテ）や鶏レバーのコンフィ（オイル煮）などのレシピが人気です。 鶏レバーのPFCバランスはたんぱく質が多く、脂質は少なめで炭水化物はほぼ含まれていません。 鶏レバーの栄養は、ビタミンAとビタミンB12が特に多く、葉酸とビオチンも多い食品です。鶏レバーに不足する栄養は、ビタミンDとビタミンEが比較的少ないです。魚類やキノコ類、緑黄色野菜や豆類などを食べると不足する栄養を補いやすいです。

落花生(乾)

100g当たり 92.3μg ・ピーナッツの薄皮は取り除かずに食べることができますが、殻ごと塩茹でしてピーナッツを柔らかくする食べ方も人気です。 落花生はパンに塗って食べる甘いピーナッツバターや香ばしいバターピーナッツの原料になり、お菓子や料理の食材にも使われます。

豚レバー

100g当たり 80.0μg ・豚レバーにはビタミンAやビタミンDが多く含まれており、牛レバーより若干カロリーが低いです。豚レバーは、牛や鶏レバーと同様のレシピに使うことができます。 豚レバーは、地方ごとの特色ある料理にも使用されています。 豚レバーの下処理には、血抜きや臭みを取る工程が重要です。一般的には牛乳や水に漬けてしばらく置くことで、臭みを抑えることができます。これにより、料理の仕上がりがより良くなります。是非試してみてください。

牛レバー

100g当たり 76.0μg ・牛レバーは、タンパク質・脂質・炭水化物の順に三大栄養素の割合が高く、ビタミンA・ビタミンB2・ナイアシン・ヨウ素・パントテン酸・ビオチン・モリブデン・セレン・亜鉛・鉄などの栄養素が含まれます。 牛レバーは、豚レバーや鶏レバーと同じように、レバニラ炒め・焼肉・唐揚げといったレシピの材料に使われます。

食鶏卵(卵黄・生)

100g当たり 65.0μg ・卵の黄身は薄い卵黄膜におおわれています。 Lサイズの全卵1個の卵黄の重さは約17g程あり、三大栄養素の中では脂質の割合が多く、卵白よりも糖質の量が少ないです。 卵黄には、ビオチン・ビタミンA・ビタミンE・ビタミンK・ビタミンB1・B2・B6・B12・パントテン酸・葉酸・リン・鉄・ヨウ素・モリブデン・セレン・カルシウム・亜鉛などの栄養素が含まれます。 白飯との相性が良い卵黄の味噌漬けや醤油漬けなど、調味料を加える卵黄レシピはカロリーが高くなります。

ビオチンの効果的な摂取方法

セレンを多く含む食品の摂取

鰹節、あんこう（肝）、たらこ、カレイ、くろまぐろ、かつお（秋獲り、生）

ビオチンと一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

食品から効率的に摂取するなら、あわせてビタミンB1（豚ヒレ肉、うなぎ、大豆など）・B2（豚レバー、舞茸など）、葉酸（焼きのり、ほうれん草など）、パントテン酸（卵黄、納豆など）など、他のビタミン群と一緒に摂るのがおすすめです。

ビオチンの効果を高める摂取タイミング

ビオチンは食事以外にサプリメントから摂取可能です。サプリメントを服用すれば、1日に必要なビオチンを錠剤で満たせます。偏食や食事制限中でビオチンを必要摂取するのが難しい方は、サプリメントの服用をおすすめします。 ビオチン単体のサプリメントと、他のビタミンやミネラルを含むマルチサプリメントがあります。特定の効果を期待する場合は、目的に合った成分が含まれているか確認しましょう。ビオチンは水溶性ビタミンであり、食後に摂取することで吸収率が高まります。