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「不飽和脂肪酸の効果」はご存知ですか?不飽和脂肪酸が不足すると現れる症状も解説!

 公開日:2025/01/18
「不飽和脂肪酸の効果」はご存知ですか?不飽和脂肪酸が不足すると現れる症状も解説!

不飽和脂肪酸の効果とは?Medical DOC監修医が不飽和脂肪酸の効果・一日の摂取量・不足すると現れる症状・多く含む食品・効果的な摂取方法などを解説します。

武井 香七

監修管理栄養士
武井 香七(管理栄養士)

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帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科卒業 横浜未来ヘルスケアシステム、戸塚共立第一病院3年7ヶ月勤務 株式会社コノヒカラ、障がい者グループホーム半年勤務 その後フリーランスを経て株式会社Wellness leadを設立。栄養士事業と健康事業を行なっている。

保有免許・資格
管理栄養士資格

「不飽和脂肪酸」とは?

「不飽和脂肪酸」とは?

不飽和脂肪酸は体内で合成できないため、食事で摂取する必要がある脂肪酸です。植物や魚の油に多く含まれています。

脂肪酸は分子構造の違いから、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。飽和脂肪酸は、肉類や乳製品などの動物性の物に含まれていることが多い脂肪酸です。

不飽和脂肪酸はさらに分けられ、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸になります。一価不飽和脂肪酸は、オリーブ油や動物性脂肪などに含まれており、多くがオレイン酸です。

飽和脂肪酸から体内で合成できるのも特徴です。多価不飽和脂肪酸には、n-3系・n-6系脂肪酸があります。

n-3系脂肪酸には、α‐リノレン酸・ドコサヘキサエン酸(DHA)・エイコサペンタエン酸(EPA)などがあります。

α‐リノレン酸は、えごま油やアブラナ油などの植物油、DHAやEPAはいわしや鯖などの魚介類が摂取源です。

n-6系脂肪酸には、リノール酸・アラキドン酸・γ-リノレン酸などがあります。アラキドン酸・γ-リノレン酸はリノール酸の代謝物で、主な摂取源はコーン油・ベニバナ油などの植物油になります。

n-6系脂肪酸も体内では合成できないため、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。

不飽和脂肪酸の一日の摂取量

不飽和脂肪酸の一日の摂取量

一日の摂取量の目安は、年齢・性別で異なります。n-6系脂肪酸では男性の場合、18〜29歳で11g、30〜64歳で10gが目安です。65〜74歳で9g、75歳以上で8gとされています。女性では18〜74歳で8g、75歳以上で7gです。妊婦は9g、授乳婦は10gとされています。次にn-3系脂肪酸の男性の目安量は、18〜49歳で2g、50〜74歳で2.2gです。女性では18〜49歳で1.6g、50〜64歳で1.9gと設定されています。65〜74歳で2.0g、75歳以上で1.8gです。妊婦は1.6g、授乳婦は1.8gです。ともに摂取量の目安は、摂取量の中央値を参考にして設定されています。

不飽和脂肪酸の効果

不飽和脂肪酸の効果

脳機能の維持

n-3系脂肪酸の摂取量が多い人は、少ない人に比べて認知症のリスクが低いとの報告があります。しかし、現時点では強固な因果関係が示されたエビデンスは不十分です。ただし、n-3系脂肪酸に多く含まれているDHAは脳機能の維持に欠かせません。DHAは、神経新生・シナプス形成・抗酸化作用などの働きがあります。体内で合成できないため、食事で摂取するようにしましょう。

うつ病のリスク低減

1日50gの魚、1.8g分のn-3系脂肪酸の摂取でうつ病のリスクが低減する可能性があります。うつ病に作用するメカニズムはわかっていません。ただし、n-3系脂肪酸の抗炎症作用・神経保護・免疫調整などの働きが、うつ病のリスクを低減させると考えられています。n-3系脂肪酸、特にEPAがうつ病のリスク低減に寄与する可能性があるとする研究もありますが、効果は個人差があるためすべてのケースに適用されるわけではありません。

糖尿病の予防

EPAやDHAの抗炎症作用が、糖尿病リスクの軽減に寄与する可能性はあります。ただし、直接的に血糖値を下げる効果については、エビデンスが限定的です。EPA・DHAの摂取で、細胞内にブドウ糖を取り込むための輸送体が細胞膜に現れるようになります。細胞内にブドウ糖を取り込みやすくなるため、血糖値が下がるでしょう。糖尿病ではインスリンを出す膵臓に炎症が認められるケースは少なくありません。血糖値が下がっている状態を保てると体の炎症も治まっていきます。膵臓の炎症が治まると、インスリンの分泌量も増えるため、血糖値も低下しやすくなるでしょう。

血圧の低下

α‐リノレン酸が血圧を低下させる可能性があります。α‐リノレン酸の摂取で、プロスタサイクリンや一酸化窒素などの血管拡張物質の増加につながり、血圧が低下すると考えられています。

不飽和脂肪酸が不足すると現れる症状

不飽和脂肪酸が不足すると現れる症状

皮膚障害

肌の表面には、バリア機能に必要なセラミドを生成するリノール酸が多く含まれています。そのため、不飽和脂肪酸の摂取量が不足すると、鱗状皮膚炎・結節性皮膚炎などの皮膚障害がみられる場合があります。不飽和脂肪酸の不足を予防するには、リノール酸は少なくとも総エネルギーの1%程は必要です。過度な脂肪の制限を行っていない限りは、多価不飽和脂肪酸の不足は起こりにくいでしょう。また、n-3系脂肪酸を摂取すると脳機能は回復に向かいます。不飽和脂肪酸の摂取が少なく、症状が現れたと感じる際には、魚や植物油を意識して摂るようにしましょう。

認知機能の低下

DHAは、神経新生・シナプス形成など脳機能を維持するための作用があるため、不足すると認知機能が低下する可能性があります。魚を継続的に摂取することで、アルツハイマー型認知症や軽度認知症害における認知機能の低下リスクを抑えることが期待されます。

脂肪肝

不飽和脂肪酸が不足すると、肝臓で中性脂肪やコレステロールの合成が促され、脂肪肝になる可能性があります。脂肪肝は、肝臓に過剰に脂肪が蓄積した状態です。α-リノレン酸は、DHA・EPAの前駆物質です。ただし、食事によるα‐リノレン酸からDHAへの変換率は1%以下とほとんどされないため、食事から不飽和脂肪酸を摂る必要があるでしょう。

男性不妊

不飽和脂肪酸の不足は、精子の量や質に影響を及ぼし、結果的に男性不妊のリスクを高める可能性があります。精子には多価不飽和脂肪酸が多く含まれており、DHAとパルミチン酸が主要な脂肪酸です。パルミチン酸は飽和脂肪酸でパーム油・牛脂・卵などに多く含まれています。食事の際にn-3系脂肪酸を含む食品を意識して食べることで、精子の質も改善するでしょう。

不飽和脂肪酸を多く含む食品

不飽和脂肪酸を多く含む食品

秋刀魚

秋を代表する魚です。DHA・EPA以外にもビタミン・カルシウム・鉄分が摂取できます。秋刀魚の塩焼きに大根おろしやレモン・かぼすなどをかけて食べると、多くの栄養素の吸収も望めるでしょう。揚げるとDHA・EPAは魚の身の外に溶け出し、揚げ油に流れ出てしまうため、焼いて食べるのがおすすめです。

青魚の代表です。秋刀魚同様にDHA・EPAが多く含まれており、秋から冬が旬で程よく脂がのります。刺身や寿司は生の魚を食べるため、DHA・EPAをそのまま摂取できます。ホイル焼きも魚から出た脂分を摂取できるため、おすすめです。

米油

米ぬかを原料としており、オレイン酸やリノール酸を含む油です。味は淡泊で酸化しにくいため、揚げ物やドレッシングなどでよく使われます。スナック食品やマヨネーズなどにも使われています。

クルミ

α-リノレン酸・たんぱく質を多く含んでいる食品です。種実類のなかでもナッツ類に分類されます。そのまま食べてもサラダと一緒に食べてもおいしくいただけます。

アボカド

含まれている脂質の8割以上はリノール酸、α‐リノレン酸、オレイン酸などでの不飽和脂肪酸です。ビタミンE・ミネラル・食物繊維なども含んでおり、栄養価に富んでいます。緑黄色野菜のサラダと一緒に食べたり、アボカドをディップにして野菜と食べたりするのがおすすめです。

不飽和脂肪酸の効果的な摂取方法

不飽和脂肪酸の効果的な摂取方法

不飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取

秋刀魚・にしん・はまち・鯖などの魚介類や菜種油・コーン油・ごま油などの植物油には多価不飽和脂肪酸を多く含んでいます。一価不飽和脂肪酸を含んでいるのは、オリーブ油・キャノーラ油・アーモンド・ピーナッツ・アボカドなどが挙げられます。

不飽和脂肪酸と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

脂溶性ビタミンやカロテノイドは油に溶けやすいため、不飽和脂肪酸を含む食品と一緒に摂取することで、その吸収率が向上します。脂溶性ビタミンはビタミンA・D・E・Kで、うなぎ・キャベツ・ナッツ・しじみなどが該当します。摂取し過ぎると脂質と同じように蓄積され、過剰症につながるため注意してください。カロテノイドは、緑黄色野菜・果物・海藻・甲殻類に含まれている色素成分です。にんじん・ピーマン・すいか・柿・ひじき・海老・蟹などが、カロテノイドを多く含んだ食品です。抗酸化作用があり、動脈硬化やがんの発生を抑制する効果があるとされています。

不飽和脂肪酸の効果を高める摂取タイミング

不飽和脂肪酸では、効果を高める摂取タイミングに大きな違いはないとされています。食事全体のバランスを考えて、摂取するように心がけましょう。

「不飽和脂肪酸の効果」についてよくある質問

「不飽和脂肪酸の効果」についてよくある質問 /></p>
<p class=ここまで不飽和脂肪酸の効果を紹介しました。ここでは「不飽和脂肪酸の効果」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

不飽和脂肪酸を摂取しすぎると、どのような症状が現れますか?

武井 香七武井 香七 医師

一価不飽和脂肪酸はエネルギーを作るため、摂取しすぎると冠動脈疾患や肥満の原因になる可能性があります。さまざまな脂肪酸をまんべんなく摂るように心がけましょう。

編集部まとめ

不飽和脂肪酸は、魚や植物に多く含まれている脂肪酸です。不飽和脂肪酸の摂取により、脳機能の維持や糖尿病の予防、血圧の低下などが期待できます。
ただし、摂取し過ぎると冠動脈疾患や肥満の原因になるため、バランスのよい食事を心がけましょう。

「不飽和脂肪酸」と関連する病気

「不飽和脂肪酸」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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「不飽和脂肪酸」と関連する症状

「不飽和脂肪酸」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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