「ペースメーカーを入れた人の寿命」はどれくらいかご存知ですか?【医師解説】

ペースメーカーを入れた人の寿命とは?Medical DOC監修医が種類・寿命・費用・日常生活での注意点などを解説します。

監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
「ペースメーカー」とは?
ペースメーカーは、脈が遅くなる病気(不整脈)を治療するために体の中に埋め込む小さな機械です。
通常、胸の皮膚の下に本体を入れ、そこから伸びる細い線(リード)を心臓につなぎます(最近では心臓の中に直接埋め込むタイプもあります)。この機械は24時間休まず心臓を見守り、脈が遅くなりすぎたり止まりそうになったりした時に、電気の刺激を送って心臓を正しいリズムで動かします。
これにより、血液が全身にうまく回らないことで起こるめまいや失神、息切れなどを防ぎ、健康な人と変わらない生活を送れるように助けてくれます。
ペースメーカーの種類
ペースメーカーには、心臓につなぐ電線(リード)の本数や機能によって、主に以下の種類があります。
シングルチャンバ
リードが1本のタイプです。心臓の上の部屋(心房)か下の部屋(心室)のどちらか一方だけを刺激します。
デュアルチャンバ
リードが2本のタイプです。心房と心室の両方を見守り、タイミングよく刺激することで、心臓の自然な動きに近づけます。
リードレスペースメーカー
カプセル型の最新タイプです。電線を使わず、カテーテルで心臓の中に直接埋め込みます。胸を切開しないため傷が小さく、リードの植込みも不要なため、ばい菌が入るリスクが低いのが特徴です。
ペースメーカーを入れた人の寿命はどれくらい?
ペースメーカーを入れたからといって、それだけで寿命が短くなることは基本的にはありません。
この機械は、遅くなった脈を正常に戻すためのものです。治療によって症状がなくなれば、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることができ、寿命も同世代の人と大きく変わらないことが期待できます。ただし、実際にどれくらい長生きできるかは、もともとの心臓の病気の重さや年齢、他に病気があるかどうかによって一人ひとり違います。
ペースメーカーの寿命はどれくらい?
ペースメーカーは電池で動いているため、機械本体には寿命があります。一般的なペースメーカーの電池の持ちは、およそ5年から10年程度といわれています。最新のカプセル型(リードレスペースメーカー)では、12年程度持つものもあります。
電池が減ってきても突然止まることはなく、定期的な検診で電池の残量をチェックできるため安心です。交換の時期が来たら、ペースメーカーのバッテリーが入っている本体部分を簡単な手術で新しいものに取り替えます。これにより、長く安心して生活を続けることができます。
ペースメーカーの費用
手術の費用は、保険証を使って3割負担の場合、およそ70万円かかるといわれています。
ただ、これはとても高い金額なので、多くの場合は「高額療養費制度」という仕組みを利用できます。これを使うと、収入に応じて毎月の支払いに上限が設けられるため、実際の負担額はもっと少なくなります(非課税世帯では約3万5千、年収370-770万円では約8万円、年収770-1160万円では約17万円、それ以上では約25万円。個室代などは別途)。
また、ペースメーカーを入れると「身体障害者手帳」が交付されることがあり、これによって医療費の助成を受けられる場合もあります。具体的な金額は年齢や収入によって変わるため、病院での確認が必要です。
どんな病気に罹患するとペースメーカーが必要になる?
ペースメーカーの手術が必要になるのは、脈が極端に遅くなる「徐脈」という不整脈です。主に以下の2つの病気が代表的です。
洞不全症候群
洞不全症候群は、心臓を動かすための電気信号を出す「司令塔(洞結節)」の働きが弱くなってしまう病気です。
この司令塔がうまく働かないと、脈が極端に遅くなったり、一時的に止まってしまったりします。また、速い脈と遅い脈が交互に起きることもあります。
その結果、脳や体に十分な血液が届かなくなり、めまいや失神(気を失う)、息切れ、強い疲れなどの症状が出ます。症状が重い場合は、心臓のリズムを助けるペースメーカーの手術が必要になることがあります。
房室ブロック
房室ブロックは、心臓を動かすための「電気信号」が、心房(上の部屋)から心室(下の部屋)へうまく伝わらなくなる病気です,。
電気の通り道が途中で詰まってしまうため、脈が遅くなったり、飛んだりします。症状が軽い場合は経過観察で済みますが、重症になると脳や体に十分な血液が届かず、強いめまいや息切れ、失神を起こすことがあります,。
原因は加齢や心臓の病気などが多く、症状が重い場合には、電気信号を補う「ペースメーカー」という機械を植え込む手術が必要になります。
ペースメーカーが必要な人の特徴
ペースメーカーが必要となる、病的な脈の遅さを引き起こす不整脈の原因は、多くは加齢ですが、他の病気が引き金になることもあります。
心臓の病気がある人
主な原因となる心臓の病気としては、心臓の血流の障害(心筋梗塞や狭心症)、心臓の筋肉の病気(心筋症)、心臓の筋肉の炎症(心筋炎)、心臓の機能が低下した状態(心不全)があります。また、高血圧や、心臓サルコイドーシスなどの特殊な病気が原因になることもあります。生まれつきの心臓病(先天性心疾患)の手術後に起きることもあります。これらの病気が電気の通り道や司令塔を傷つけることで発症します。
高齢者
ペースメーカー植込みが必要となる洞不全症候群や房室ブロックは、加齢に伴い発症することがあります。また、高齢者では生活習慣病や心臓の病気などの合併症も多くなるため、必然的にペースメーカー植込みが必要となることが多いです。
ペースメーカー装着後の注意点
ペースメーカー植込みをした人は、手術後の回復期間を過ぎれば、旅行や運動を含め、健康な人とほぼ変わらない生活を送ることができます。ただし、機械が「電気」や「磁石」の影響を受けることがあるため注意が必要です。
定期的な診察・検査
機械が正常に動いているか、電池が残っているかを確認するために、定期的に病院を受診する必要があります(数ヶ月〜1年に1回程度)。最近では、自宅にいながら機械のデータを病院に送る「遠隔モニタリング」というシステムも普及しています。
電磁波への注意
強い磁気や電波はペースメーカーに影響を与えることがあります。
• 携帯電話: 装着部位から15cm程度離して使用します。
• IH調理器: 近づきすぎないように注意します。
• 店舗の防犯ゲート: 立ち止まらずに通過すれば問題ありません。
• MRI検査: 「MRI対応」の機種であれば検査可能ですが、事前の設定変更など条件があるため、医師や技師の確認が必要です。
車の運転と仕事
失神などの症状がなくなれば、自家用車の運転は基本的に可能です。仕事や学校生活への復帰も可能ですが、電磁波の強い環境や、胸に衝撃が加わるような激しいコンタクトスポーツは避ける必要があります。
公的制度の利用
ペースメーカーを植え込んだ人は「身体障害者手帳」の交付対象(心臓機能障害)となり、医療費の助成や税金の控除などが受けられる場合があります。等級は術後の生活能力に応じて決定され、数年後に見直しが行われることもあります。
「ペースメーカーを入れた人の寿命」についてよくある質問
ここまでペースメーカーを紹介しました。ここでは「ペースメーカー」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ペースメーカーを入れると身体障害手帳がもらえるのでしょうか?
小鷹 悠二 医師
ペースメーカーを入れると、原則として「心臓機能障害」として身体障害者手帳をもらうことができます。手術が必要な状態であれば、最初は一番重い「1級」に認定されることが一般的です。
ただし、これはずっとそのままではありません。手術から3年後に「見直し(再認定)」が行われます。その時の心臓の状態や、どれくらい運動ができるかによって、等級がそのまま1級になるか、3級や4級に変更されるかが決まります。
まとめ
高齢化に伴い、ペースメーカー植込みが必要となる方も増えています。
どのような病気が原因となるか、どのような治療なのかを正しく知っていただければと思います。
「ペースメーカー」と関連する病気
「ペースメーカー」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ペースメーカーの手術が必要になるのは、脈が極端に遅くなる不整脈(徐脈)をきたす病気がある場合ですが、その病気の種類には多くのものが挙げられます。
「ペースメーカー」と関連する症状
「ペースメーカー」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脈が極端に遅くなる不整脈(徐脈)に伴った症状が見られやすくなります。上記のような症状が何度も起こる場合には早めに医療機関を受診するようにしてください。
参考文献



