「ペースメーカー」はどんな病気に罹患すると必要になるの?必要な人の特徴も医師が解説!

ペースメーカーとは?Medical DOC監修医が種類・寿命・費用・日常生活での注意点などを解説します。

監修医師:
大沼 善正(医師)
目次 -INDEX-
「ペースメーカー」とは?

ペースメーカーとは、心拍数が遅くなりすぎてしまう人の脈を助けるための機械です。
本体とリード線で構成されています。
・リード線:血管を通じて心臓の中に挿入される
・本体:リード線につながった状態で、胸部の皮下に植え込まれる
心臓は、心筋に流れる微弱な電気信号によって動きがコントロールされています。
何らかの原因で電気信号が発生しなくなったり、電気信号の伝わりが滞ったりすると脈が遅くなります。
ペースメーカーが足りなくなった電気信号を補うことで、心拍数が遅くならないようにします。
ペースメーカーの種類

シングルチャンバ
リード線が1本のペースメーカーです。
心房または心室のどちらか一方のみにリード線が挿入されています。
洞不全症候群や徐脈性心房細動などで心拍数を保つために使用されます。
デュアルチャンバ
リード線が2本のペースメーカーです。
心房と心室の両方にリード線が挿入されています。
房室ブロックなどで、心房から心室への電気信号の伝わりが悪い、または途絶えている人に植え込まれることが多いペースメーカーです。
ペースメーカーの費用

保険適用の場合
日本では、公的医療保険の対象となります。費用に関しては以下の通りです。
・ペースメーカー本体とリード線:約100万円程度
・これに加えて:手術料、入院費
ただし、高額療養費制度を利用することで、自己負担額を減らすことができます。
高額療養費制度での自己負担上限額は、年齢や収入によって異なります。
一か月あたり約8~25万円程度が目安となります。
自費診療の場合
ペースメーカーを必要とする病気は保険が適用されるため、日本において自費でペースメーカーを植え込むケースはほとんどないと思われます。
万が一、自費で行う場合には、
・本体代
・リード線代
・手術料
・入院費
・術後管理費用
など、これらすべてが自己負担となり、総額で150〜200万円以上になることも十分考えられます。
どんな病気に罹患するとペースメーカーが必要になる?

洞不全症候群
心臓の中にある「洞結節(生理的なペースメーカー)」という場所の働きが弱くなる病気です。脈が遅くなることで、脳への血流が少なくなり、めまい・ふらつき・失神などを起こします。
脈が遅くなることによる症状がある場合には、ペースメーカー治療が選択されます。
ただし、薬剤など一時的な原因によるものと診断された場合には、
・ペースメーカーを入れずに経過観察
・原因に対する治療
などで対応することもあります。
治療は循環器内科で行います。
心臓そのものの収縮力は保たれているため、通常、補助人工心臓が必要となることはないと考えられます。
房室ブロック
心房から心室へ伝わる電気信号が滞ってしまう病気です。
Ⅰ度〜Ⅲ度までの段階があり、Ⅲ度房室ブロック(完全房室ブロック)では、心房と心室の電気信号が完全に途絶えている状態です。
Ⅰ度房室ブロックでは症状が出ることはほとんどありませんが、Ⅱ度以上に進行すると、洞不全症候群と同じように、
・めまい
・ふらつき
・失神
を起こすことがあります。
また、脈が遅い状態が長く続くと心不全を発症し、
・息切れ
・むくみ
などの症状が出ることがあります。
治療は循環器内科で行います。
脈が遅いことによる症状がある場合には、ペースメーカー植え込み術を行います。
また、心機能が低下し、心不全の状態が重症である場合には、補助人工心臓が必要になる可能性も考えられます。
2枝および3枝ブロック
心臓内の電気信号は、洞結節 → 心房 → 房室結節 → His(ヒス)束 → 心室という順番で伝わっていきます。
His(ヒス)束から心室に伝わる電気信号は2本(右脚、左脚)に分かれており、さらに左脚は2本(前枝、後枝)に分かれます。
つまり、心室へ行く通り道は、
・右心室へ向かう1本(右脚)
・左心室へ向かう2本(左脚前枝、左脚後枝)
の合計3本があります。
この3本のうち
・2本が障害されていれば「2枝ブロック」
・3本とも障害されていれば「3枝ブロック」
と診断されます。
治療は循環器内科で行います。
通常、補助人工心臓が必要となることはありません。
徐脈性心房細動
心房細動は心房が細かく震えるようになり、脈が常に乱れる病気です。
一般的には脈が速くなることが多いのですが、心房から心室へ電気が伝わる経路に障害がある場合、逆に脈が遅くなることがあります。
心房細動でありながら、
・脈が遅い(例:1分間に50回未満など)
・そのため症状(めまい・失神など)がある
という場合に、ペースメーカーが植え込まれます。
治療は循環器内科で行います。
通常、補助人工心臓が必要となることはありません。
過敏性頸動脈洞症候群・反射性失神
過敏性頸動脈洞症候群(かびんせいけいどうみゃくどうしょうこうぐん)とは、
・首のところにある「頸動脈洞」という場所が、
・首をひねる、後ろに曲げるなどのちょっとした刺激で過剰に反応してしまい、
・脈拍や血圧が下がりすぎて失神してしまう
という病気です。
反射性失神とは、
・心臓自体の働きは保たれているのに、
・自律神経反射の影響で一時的に脈拍や血圧が下がり、
・脳血流が落ちて気を失う
タイプの失神です。
このように自律神経の影響による失神のため、通常はペースメーカーを植え込むことはありませんが、
・40歳以上で、
・徐脈を伴う失神を繰り返す場合
には、ペースメーカーの植え込みを行うことがあります。
治療は循環器内科で行います。
通常、補助人工心臓が必要となることはありません。
閉塞性肥大型心筋症
肥大型心筋症とは、左心室の筋肉が通常より厚くなりすぎる病気です。
そのなかで、
・左心室から全身へ血液を送り出す場所(左室流出路)が狭くなり、
・血液の出口がふさがれたような状態になる
タイプを閉塞性肥大型心筋症といいます。
ペースメーカーは通常、脈が足りない人に対して行う治療ですが、閉塞性肥大型心筋症では、ペースメーカーを使って心室の収縮のタイミングを調整することで、
・左室流出路の狭さを和らげる
ことが目的になります。
治療は循環器内科で行います。
通常、補助人工心臓が必要となることはありません。
ペースメーカーが必要な人の特徴

失神、けいれん、眼前暗黒感、めまい
洞不全症候群や房室ブロックのために脈が遅くなると、脳への血流が少なくなり、めまい、ふらつき、失神を起こすことがあります。
失神して、転倒すると頭部外傷など重大なケガを引き起こすことがあるため、このような症状のある人はペースメーカーが検討されます。
息切れ、むくみ、疲れやすさ
脈が遅い状態が長く続くと、心臓から全身に送り出す血液量が少なくなり、全身の血液循環がうまくいかなくなった結果、心不全を発症することがあります。
症状としては、息切れ、むくみ、疲れやすさなどがあります。
ペースメーカーを植え込むことで脈拍を正常な範囲に戻し、心不全の改善を図ります。
医師はどのような基準でペースメーカーを装着するのか

脈が遅くなった人に対してペースメーカーの植え込みを行います。
ただし、脈が遅い人全員に植え込むわけではありません。
ポイントは、脈が遅くなっていることに加え、
・その遅さの影響で、症状(めまい・失神など)が出ているか
・日常生活にどの程度の支障が出ているか
といった点です。
これらを総合的に見て、医師がペースメーカーの必要性を判断します。
ペースメーカー装着後の寿命はどれくらい?

ペースメーカー本体の寿命は、使用状況によりますが、平均7~8年程度とされています。
ほとんどペーシングを必要としない人では、10年程度持つこともあります。
一方、リード線については、明確に定められた耐久年数はありません。
・リード線が断線したり、電気信号をうまく伝えられなくなったりした場合には
・リード線を追加したり、交換したりする
ことがあります。
ペースメーカー装着者がスマホを使用する際の注意点

スマホを使用する際は、
・ペースメーカー本体から約15cm離して使用する
ことが推奨されています。
また、スマホのカバーにマグネットが使われている場合には、磁石の影響が出ることがあるため、
・マグネット部分を本体から「こぶし1個分」程度離して使用しましょう。
ペースメーカー装着後の注意点

磁気を帯びたもの
ペースメーカー本体は磁石の影響を受けることがあります。
身近なものでは、
・マッサージチェア
・全自動麻雀卓
・金属探知機
・アマチュア無線機
などで、電磁界の影響を受ける可能性があるため、使用は控えましょう。
また、強力な磁石では、
・ペースメーカー本体の約15cm以内に近づけると影響が出る
とされているため、磁石類をペースメーカー本体に近づけ過ぎないように注意が必要です。
家電製品はほとんど使用可能ですが、
・スマホ:本体から約15cm離す
・IH調理器など:本体から約60cm離す
ことが推奨されています。
電流が流れるもの
体にごくわずかな電流が流れても、ペースメーカー本体に影響を及ぼすことがあります。
使わない方がよいものの例
・体脂肪計
・低周波・高周波治療器
・電気風呂
通常は使用可能とされるもの
・ホットカーペット
・電気毛布
・電気こたつ
・電動工具類
これらは体に電流を流すわけではないため、通常は使用してかまいませんが、念のため、取扱説明書や主治医の指示に従うようにしましょう。
電波を発射する機器
スマホやモバイル回線など、電波を発する機器は日常生活の中に多くあります。
・スマホ:ペースメーカー本体から約15cm以上離して使う
・スピーカー内蔵のノートパソコン:本体からこぶし1個分程度離して使う
ようにしましょう。
また、
・ワイヤレスカードシステム(駅改札の電子マネー決済など)の読み取り部
・RFID読み取り機器のアンテナ部
からは、約12cm以上離すようにします。
電子商品監視(EAS)機器やゲートタイプRFID機器(お店の出入口のゲートなど)は、
・立ち止まらず
・できるだけ中央を通って通過
するようにしましょう。
詳細は、
・総務省
・日本不整脈心電学会
などのホームページにある以下の文章にて確認できます。
・『知っていますか?「植え込み型医療機器」をより安心して使用するためにできること』(総務省)
・『心臓植込み型電気デバイス(ペースメーカ、植込み型除細動器)日常使用する携帯機器における注意事項(患者様用)』(日本不整脈心電学会)
「ペースメーカー」についてよくある質問

ここまでペースメーカーを紹介しました。ここでは「ペースメーカー」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ペースメーカーを入れると身体障害何級になりますか?
大沼 善正 医師
身体障害者手帳の等級は、一律に決まっているわけではなく、1級・3級・4級のいずれかで判定されます。
判定の基準は、
・心臓の働き(心機能)
・ペースメーカーへの依存度
・日常生活でどの程度活動が制限されているか
などがあります。
ペースメーカーを植え込んだあとは、原則として植え込みから3年以内に再認定が行われます。
その時点の身体活動能力に応じて等級が見直されます。
なお、
・先天性心疾患が原因
・若い時期からペースメーカーを植え込んでいる
といった場合など、条件によっては1級と認定されることもあります。
編集部まとめ
ペースメーカーは主に、脈が遅くなることでめまい・ふらつき・失神・息切れなどの症状があり、生活に支障が出ている人に使用されます。脈が遅いというだけでは、必ずしもペースメーカーが必要となることはありません。またペースメーカーが必要となり植え込まれた後も、ほとんどの場合、植え込む前と同じように過ごすことができます。
ただし、職種や使用する機器によっては注意が必要な場合もあるため、具体的な制限については主治医と相談することが大切です。
めまい、ふらつき、失神、息切れがある場合や、脈が遅いと感じて気になるときには、医療機関を受診するようにしましょう。
「ペースメーカー」と関連する病気
「ペースメーカー」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ペースメーカーが必要な疾患の多くは心疾患が原因です。徐脈による症状がある場合には循環器内科を受診しましょう。
「ペースメーカー」と関連する症状
「ペースメーカー」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
徐脈性不整脈は、めまい、ふらつき、けいれん、失神など脳虚血症状を起こすことが多く、循環器疾患として診断されにくいことがあります。「いままでとは違うめまいがある」、「何度も倒れそうになる」など、疑わしい症状がある場合には、早めに医療機関を受診して心電図やホルター心電図などの検査を受けることをお勧めします。
参考文献




