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「徐脈性不整脈」の症状・原因・なりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師解説】

 公開日:2025/09/30
「徐脈性不整脈」の症状・原因・なりやすい人の特徴はご存知ですか?【医師解説】

急性心筋炎とは?メディカルドック監修医が急性心筋炎の症状・原因・なりやすい人の特徴・治療法などを解説します。

大沼 善正

監修医師
大沼 善正(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、関東労災病院を経て、現在はイムス富士見総合病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、不整脈専門医、医学博士。

「徐脈性不整脈(じょみゃくふせいみゃく)」とは?

徐脈性不整脈とは脈が50回/分以下になる病気のことを言います。
洞結節(生理的なペースメーカ)の働きが弱くなる洞不全症候群、心房から心室への伝導が障害される房室ブロックの二つに分類されます。
脈が遅くなると脳に行く血流が少なくなり、めまい、息切れ、ふらつき、失神などの症状を生じます。

徐脈性不整脈の代表的な症状

めまい、ふらつき、失神

徐脈性不整脈のために心臓が一過性に停止すると、脳に行く血流が少なくなり、めまい、ふらつきという症状を起こします。さらに長い時間、脳に行く血流が阻害されると失神することもあります。まずは横になり楽な姿勢をとり、安静にしましょう。めまい、ふらつき、失神が横になっても改善しない場合、また同日中に繰り返す場合には救急外来を受診するようにしましょう。

息切れ、倦怠感

脈が遅い状態が持続すると、心拍出量が低下することで全身の血液循環が悪くなり、息切れ、倦怠感などの症状を起こします。少し動いただけでも息が切れる、階段を2階まで登れないなどの症状がある場合は、心不全を起こしている可能性があります。入院加療が必要なことがあるため、循環器科を受診するようにしましょう。

徐脈性不整脈で突然死することはある?

徐脈性不整脈は心臓突然死全体の10~20%を占めるとされています。脈が遅いためにそのまま心停止を起こし突然死をする他に、脈が遅いことに関連して心室頻拍・心室細動などの致死的な不整脈を誘発することで突然死することがあります。

徐脈性不整脈の主な原因

薬剤性

頻脈を抑えるための薬として、β遮断薬(カルベジロール、ビソプロロール等)、カルシウム拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム等)、抗不整脈(アミオダロン、ジギタリス等)があります。腎障害などで薬物の代謝が落ち、血中の薬物濃度が上昇すると、脈を抑える作用が強くなり、徐脈を起こすことがあります。
これらの薬を服用しているときに、徐脈性不整脈による症状を認めた場合は、まずは薬を処方しているかかりつけの病院を受診しましょう。

心筋梗塞、心筋症

心筋梗塞により、心臓の電気回路(刺激伝導系)に血流が行かなくなることで、心臓の電気の流れが障害され、徐脈性不整脈を発症します。また副交感神経亢進も関与しているとされています。心臓の筋肉に変性を来す病気(心筋症)であるアミロイドーシス、サルコイドーシス、ヘモクロマトーシス、ファブリー病などでも刺激伝導系に障害を来すことがあるため、徐脈性不整脈を発症します。心筋梗塞の場合は、胸の痛み、圧迫感、絞扼感などの症状がありますが、心筋症の場合は症状が出ないこともあるため、健康診断などで定期的な心電図検査が望ましいでしょう。胸部症状がある場合や心電図異常を指摘されたら、循環器科を早めに受診するようにしましょう。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンは新陳代謝、成長に必要なホルモンであり、交感神経を刺激する作用もあります。甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンが不足することで、倦怠感、むくみ、徐脈、便秘などを引き起こします。甲状腺機能低下症の症状の一つとして徐脈性不整脈が見つかることがあるかと思われます。倦怠感、むくみ、徐脈などがある場合は、内科を受診するようにしましょう。

徐脈性不整脈になりやすい人の特徴

高齢者

徐脈性不整脈の原因として特発性が最も多いとされており、特発性とは上記に挙げた明らかな原因がないことを言います。特発性では加齢による要素が大きく、一般に発症年齢は 70〜80 歳代とされており、男女差はありません。洞不全症候群の場合では、洞結節という生理的なペースメーカの細胞が加齢により変性し、機能低下することが原因として考えられています。

心房細動

心房細動は脈が不規則に乱れ、速くなる病気です。心房細動中の心房は一分間に300〜400回も興奮するとされています。心房細動が続くと、生理的なペースメーカである洞結節の働きを抑制させ、また心房細動そのものが心房を線維化させることで、洞結節の機能低下を起こし、洞不全症候群を合併することがあります。

睡眠時無呼吸症候群

夜間のみ徐脈性不整脈が起こる場合には、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。睡眠時無呼吸症候群と診断され、夜間に徐脈性不整脈を起こしている場合にはCPAP(持続的気道陽圧)治療のみで72〜89%改善したとされています。

家族歴

小児期に徐脈性不整脈を発症する場合は、多くは先天性疾患によるものです。一部で遺伝子異常による家族性の発症もあります。

徐脈性不整脈を発症すると心電図にどのような特徴が現れる?

洞不全症候群の場合には、まず心拍数が50回/分未満となります。進行すると心房の電気興奮を示すP波が脱落することがあります。心房細動などの頻脈と合併した場合には、頻脈が停止した後、3秒以上次の脈が出ないということが起こります。
房室ブロックの場合には、P波とQRS波(心室の電気興奮を表します)の間隔が延長します(200msec以上)。また正常ではP波とQRS波の間隔はほぼ一定ですが、房室ブロックでは徐々にP波とQRS波の間隔が延長し、P波の後にQRS波が続かなくなることがあります。また進行すると、心房と心室の伝導が完全に途絶えてしまうため、P波とQRS波がそれぞれバラバラに出現するようになります。

徐脈性不整脈を放置するとどうなる?

めまい、ふらつき、失神を繰り返し、転倒、頭部外傷などの重大な外傷を来すことがあります。また心停止を起こし、突然死のリスクも高くなります。徐脈が持続的に続くと、心拍出量の低下により心不全を発症することもあります。

徐脈性不整脈の治療法

薬物療法

緊急で徐脈を改善する必要があるときには、β刺激薬(イソプロテレノール)やアトロピン製剤(アトロピン硫酸塩水和物)などの薬物の静脈投与を行います。
また何らかの都合によりペースメーカ植え込み術が出来ない場合には、テオフィリン(気管支拡張薬)、シロスタゾール(抗血小板薬)という薬剤を使用します。これらの薬剤は本来の使用方法と違いますが、ホスホジエステラーゼ阻害作用があるため、それによる頻脈を期待して使用されます。これらの薬物療法は、徐脈性不整脈でも特に洞不全症候群の場合に使用されます。入院は不要で、循環器科の外来で行われます。

ペースメーカ植え込み術

循環器のある病院で行います。徐脈性不整脈に対する治療法としては、唯一確立されたものです。生命予後改善、生活の質の改善が期待できます。最近では心臓の中に直接植え込むタイプの、リードレスペースメーカという小型のものもあり、ご本人の状態に応じて選択されます。通常のペースメーカであれば、1週間程度の入院を必要とします。リードレスペースメーカの場合は3〜4日程度となります。心不全などの合併症がなければ、リハビリは不要であり、退院後もほぼ通常通りの生活を送ることが出来ます。

「徐脈性不整脈」についてよくある質問

ここまで徐脈性不整脈について紹介しました。ここでは「徐脈性不整脈」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

徐脈性不整脈を発症しやすい環境や状況について教えてください。

大沼 善正大沼 善正 医師

緊張や、過度のストレスなどにより血管迷走神経反射を起こすと、徐脈性不整脈が生じることがあります。また睡眠時無呼吸症候群の方では夜間に徐脈になることもあります。血管迷走神経反射による徐脈では、横になり安静にしていれば改善するため、ほとんどの場合治療は不要です。

編集部まとめ

徐脈性不整脈は、心臓の病気ですがめまい、ふらつき、失神などの脳貧血の症状として気づかれることも多い病気です。上記の症状を繰り返す場合や脳神経科などで異常がない場合には、循環器科を受診するようにしましょう。

「徐脈性不整脈」と関連する病気

「徐脈性不整脈」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

呼吸器科の病気

内分泌代謝内科の病気

徐脈性不整脈の原因となる病気は多くは心疾患が原因ですが、それ以外にも睡眠時無呼吸症候群や甲状腺機能低下症などがあるため、徐脈による症状がある場合には循環器科を受診しましょう。

「徐脈性不整脈」と関連する症状

「徐脈性不整脈」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

徐脈性不整脈は、めまい、ふらつき、失神など脳虚血症状を認めることが多く循環器の病気として見逃されやすい病気です。疑わしい症状がある場合には、早めに医療機関を受診して検査を受けることをお勧めします。

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