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「労作性狭心症」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/08/15
「労作性狭心症」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!

労作性狭心症とは?Medical DOC監修医が労作性狭心症・症状・原因・なりやすい人の特徴・平均余命・生存率・検査法・治療法などを解説します。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。

「労作性狭心症 (ろうさくせいきょうしんしょう)」とは?

心臓は血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。その心臓を動かすためには、心臓の筋肉に栄養や酸素を送るための血管(冠動脈)から血液を送る必要があります。
この心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の流れが悪くなってしまい、心臓を動かすのに障害が出るようになってしまうのが狭心症です。
狭心症にも種類がありますが、労作性狭心症は冠動脈内の動脈硬化が進むことで、血管内に脂質がたまったプラークが形成され、血管内の血流が低下することで生じます。

労作性狭心症を発症すると心電図にどのような特徴が現れる?

心臓を動かすためには、心臓の筋肉を刺激伝導系という回路を通した電気刺激で刺激することが必要です。心電図は、この心臓の電気刺激を検知する検査です。
通常行われる心電図は、12誘導心電図と呼ばれ、12種類の心電図波形を評価します。
この検査では、複数の方向から心臓内の電気信号を評価し、異常が生じている部位を正確に評価することができます。
心電図の波形は主にP波、QRS波、T波という3つの波形からなります。
労作性の狭心症を発症して心筋細胞に障害が加わると、電気刺激の伝わり方に変化が生じ、心電図の波形に変化が生じます。典型的な労作性狭心症では、主に労作時などに血流障害が生じ、その際にはST部分が低下する変化が認められることが多いです。
ただ、安静時などの心臓の血流障害が生じていないときには、明らかな心電図変化は認めないことが多いです。

労作性狭心症の代表的な症状

労作性狭心症でどのような症状が生じるのか、解説します。

労作時(動いたとき)の胸痛

典型的な症状としては、坂道や階段歩行、重いものを持つ、運動など、労作時に胸痛を生じます。
胸痛は前胸部から左胸に生じることが多く、痛み方はギューッと締め付けるような痛み、重たいもので押し付けられるような重苦しさ、といった表現をされることが多いです。
痛みの範囲は指で指し示せるようなピンポイントではなく、一定の範囲で認め、持続時間も数分~20分前後持続することが多いです。刺すような痛みや、ずきずき・ピリピリした痛みは心臓の症状の可能性は低いです。
中には、胸だけでなく左顎・奥歯、首筋から肩にかけても痛みや苦しさが出現する、放散痛を生じることもあります。
これらの症状は労作時に出現し、安静時には無症状なことが多いです。

息切れ、呼吸苦

労作性狭心症では、心臓の血流障害により、痛み以外にも息切れや呼吸困難、呼吸苦症状などを生じることもあります。胸痛と同様、主に労作時に生じることが多く、安静時には無症状なことが多いです。

労作性狭心症の主な原因

労作性狭心症は、動脈硬化が進行・悪化することで生じます。
そのため、動脈硬化が強くなりやすい人で発症しやすくなります。
具体的には、生活習慣として喫煙、運動不足、肥満、不規則な生活をしている人、高血圧などの生活習慣病がある人などで起こりやすくなります。

生活習慣

労作性狭心症の主な原因としては、生活習慣が最も大きな要因となります。
気をつけるポイントは、次に示すようなポイントあります。
・塩分過多を避ける:1日の塩分量摂取量は6g以下を意識する
・カロリー過多を避ける:一般的な成人では、その人の年齢や日常的な活動量によって1800-2600kcal程度のカロリー摂取が推奨されます。
・バランスの良い食事:野菜・果物などを多くとる事、脂分が多い食品やカロリー、糖分が多い食品をとり過ぎないことが大切です。
・適正な体重を維持する:BMI(体重[kg]÷身長[m]2)25未満を心がける。
・運動の習慣をもつ:軽く息が上がる位の、ウォーキングなどの有酸素運動を1日60分程度行うことが推奨されます。
・お酒を飲みすぎない:エタノールに換算して、1日当たり男性20-30ml(日本酒1合、ビール中瓶2本、焼酎0.5合、ワイン2杯、ウイスキーダブル1杯に相当)、女性は約半分の10-20ml以下に抑えることが推奨されます。
・禁煙:喫煙は高血圧などの生活習慣病を引き起こし、心疾患の大きなリスク因子です。

生活習慣病

労作性狭心症は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病により、動脈硬化が進行することで引き起こされます。
これらの生活習慣病は血管内膜や内皮の細胞に障害を加え、血管内にプラークを形成し、心臓の血流障害を引き起こします。
健診や人間ドックなどで、高血圧や脂質異常、血糖高値などの異常が指摘された場合には、しっかり病院を受診して評価し、必要に応じて生活改善や治療を検討する事が重要です。

労作性狭心症になりやすい人の特徴

労作性狭心症は、動脈硬化に伴うプラークの形成などによって、物理的に血管内の流れが阻害されることで生じます。労作性狭心症を起こしやすい人の特徴としては、以下のようなものがあります。

中高年男性

一般的に、労作性狭心症は生活習慣病などによって動脈硬化が進んだ状態が原因となるため、特に中年~高齢の男性に多い疾患です。
しかし、近年では食生活の欧米化などに伴って、女性や若年者でも生じることがあります。

喫煙者

喫煙は動脈硬化の主な原因の一つです。
喫煙によって血管内皮細胞が障害をうけ、血管を拡張する成分の分泌低下や交感神経刺激により血管収縮を起こしやすくなることで動脈硬化が進行し、労作性狭心症を引き起こします。

生活が不規則な方

不規則な生活リズムなどのため、夜遅くの食事、外食や食事バランスが悪くなる、精神的・肉体的なストレス、疲労などによって高血圧などの生活習慣病が引き起こされやすくなり、それによって動脈硬化が進行し、労作性狭心症を発症するリスクが高まります。

労作性狭心症の平均余命・生存率

労作性狭心症の状態でも、病状によって危険率は様々であり、合併症の有無、患者さんの状態・年齢などにもよるため、一概に余命や生存率を述べることはできません。
通常であれば、労作性狭心症の段階であれば待機的にカテーテル治療を行い、適切な内服管理・生活習慣の改善、定期的な通院管理を行うことができていれば、一般の方とほとんど変わらない余命が期待できます。
ただ一方で、重度の動脈硬化によって複数の冠動脈に病変が生じているような、重度の労作性狭心症の場合には、複数回のカテーテル治療や冠動脈バイパス術が必要となったり、他の心血管疾患の合併も増加するため、一般の方よりもリスクは高くなります。

労作性狭心症の検査法

労作性狭心症の診断のためには、下記のような検査が行われることがあります。

心電図

正式名称は12誘導心電図と呼ばれ、心臓の筋肉を動かすための電気刺激を、12カ所の電極により計測する検査です。両手首、両足首の電極で評価した6つの波形と、胸部の6つの電極で計測した6つの波形の、合わせて12種類の波形が記録できます。
多くの病院・診療所で一般的に行われる検査であり、最も簡便に心臓の異常を評価することができる検査です。
労作性狭心症では労作時の症状出現時に合わせて、心電図上のST部分の低下などの所見が現れることが多いです。

胸部レントゲン検査

電磁波であるX線を用い、胸部の状態、心臓や肺の異常の有無を評価する画像検査です。
労作性狭心症を起こすような方では、心臓に負荷がかかり心臓が大きくなることや、心不全を合併すると肺に水が溜まるなどの異常が出現することがあります。

血液検査

労作性狭心症の評価に用いる項目としては、心臓の強い血流障害で上昇するトロポニンTやクレアチニンキナーゼ(CK)などの項目があります。
労作性狭心症の影響による変化だけでなく、原因となるような病気の有無、全身状態の評価を行う上でも非常に重要な検査で、多くの病院で実施ができる一般的な検査です。

心臓超音波

超音波を利用して、心臓の動きを評価する事ができる検査です。
心臓の動き具合、形態の異常、心臓内部の弁の異常など、心臓の病気を評価するうえで非常に重要な情報を得ることができます。
特に労作性狭心症などの心臓への血流障害の影響で、心臓の筋肉の動きが部分的に低下している所見が出現することもあります。
針を刺したりせず行えるため簡便で安全性が高く、心臓の病気を評価する上で必須の検査です。

心臓CT/MRI検査

心臓の血管の評価や、心筋の動きや状態の評価を行う事ができる検査です。
労作性狭心症では、特にCTの検査で冠動脈の狭窄の有無を評価することができるため、重要な検査です。専門的な病院でないと実施ができないため、どこでも実施できる検査ではありません。

心臓カテーテル検査

心臓の血管の流れ具合の評価や心臓の筋肉の動き具合の評価、心臓内の圧の測定をすることで心不全や弁膜症の状態・重症度の評価などをすることができる検査です。
手足の太い血管から、柔らかいプラスチック製のカテーテルという管を心臓まで入れて検査を行うため、数日程度の入院で実施することが多いです。
出血や血管を傷つけてしまうなど、合併症のリスクも少ないながらあります。
ただ、詳細な心臓の評価ができるため、労作性狭心症の最終的な評価を行う、非常に重要な検査です。

労作性狭心症の治療法

労作性狭心症は、物理的に血管内が狭くなることが原因となるため、リスク管理のための内服治療だけでなく、カテーテル治療や外科治療などの手術が必要となることが多いです。

薬物治療

労作性狭心症では、胸痛発作出現時にはニトロなどの血管拡張剤を、症状改善目的に屯用で使用します。症状が明確、頻回などの場合には定期的に硝酸剤などの血管拡張剤を使用します。
それ以外にも、原因となるような高血圧などの生活習慣病の治療、コレステロールの厳格な管理も重要です。
心臓カテーテル治療後には、抗血小板薬という血栓ができにくくする薬剤も必要となります。この抗血小板薬は、基本的には一生内服する薬剤となります。

心臓カテーテル治療

動脈硬化に伴う労作性狭心症では、血管内の動脈硬化によって狭くなったした部分を、カテーテルを用いて特殊な風船(バルーン)や金属の筒(ステント)を用いて広げる治療を行うこともあります。

冠動脈バイパス術

カテーテル治療が困難な病変の場合には、冠動脈バイパス術が行われることがあります。
この治療は、狭くなった血管の先に新しい血管をつなげ、血流の迂回路(バイパス)を作る手術です。胸を切って行う開胸手術のため、全身麻酔下で行う治療です。
カテーテル治療に比べると体にかかる負担も大きく、入院期間も長くなります。

「労作性狭心症」についてよくある質問

ここまで労作性狭心症について紹介しました。ここでは「労作性狭心症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

労作性狭心症と心筋梗塞の違いについて教えてください。

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

労作性狭心症は、冠動脈が動脈硬化によって狭くなりますが、血流の流れはある状態です。一方で、心筋梗塞では冠動脈が完全に詰まった状態であり、その先の心筋に血流が届かず、心筋細胞が大きなダメージを受け、壊死してしまいます。
そのため、基本的には労作性狭心症よりも心筋梗塞の方が重症化しやすいです。
心筋梗塞では急激な心機能の低下と、全身の循環障害、致死的不整脈が出現しやすくなることによって、死亡することも少なくありません。

ストレスが原因で労作性狭心症を発症することはありますか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

ストレスだけが原因で発症することは基本的にはありません。
しかし、ストレスによって生活習慣が乱れて生活習慣病を引き起こし、動脈硬化が進行することで労作性狭心症を発症しやすくなることはあり得ます。
また、元々ある程度動脈硬化がある血管が、ストレスが誘因となり血管の筋肉が一過性の収縮を起こし、血流障害が増強する冠攣縮性狭心症を合併することがあります。

編集部まとめ

労作性狭心症は心筋梗塞のような緊急性は高くはありませんが、放置することで高度の血流低下を生じ重症化することや、心筋梗塞を発症して命に関わることもあります。
今回紹介したような症状を自覚するようなときには、速やかに循環器科を受診すること、普段から生活習慣に気を付けることが大切です。

「労作性狭心症」と関連する病気

「労作性狭心症」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「労作性狭心症」と関連する症状

「労作性狭心症」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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