「心筋梗塞の生存率」はご存知ですか?ICU治療室に入った場合の生存率も解説!

急性心筋炎とは?メディカルドック監修医が急性心筋炎の症状・原因・なりやすい人の特徴・治療法などを解説します。

監修医師:
大沼 善正(医師)
目次 -INDEX-
「心筋梗塞」とは?
冠動脈(心臓に酸素や栄養を供給している動脈)の内壁に付着していたコレステロールが破綻し、血栓が形成されることで、血管が詰まり心筋が壊死する病気です。心筋梗塞を発症すると胸痛、胸部圧迫感・絞扼感などの症状を起こし、不整脈や心不全などの合併症も引き起こすため、速やかな治療が必要となります。
心筋梗塞の平均生存率
全国28施設が参加した多施設共同前向き観察研究(J-MINUET 研究)によりますと、入院中に心筋梗塞で亡くなる可能性は約7%とされています。また発症後3年までの生存率は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で、約19%、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)で約33%とされています。
上記をふまえると心筋梗塞治療後も治療して終了ということはなく、完治という診断をすることは難しいと考えられます。しかし、薬物療法、生活習慣病改善により、再発のリスクを低下させることが出来ます。
心筋梗塞でICU治療室に入った場合の生存率
東京CCUネットワークのデータによると入院中の死亡率は7%程度とされています。
米国の研究では1)、ICU入院で30日死亡率が低下するとされています。そのため、心筋梗塞の治療ではICU/CCUでの入院治療が必要です。
日本において心臓カテーテル治療後は、ほぼ全員がICU/CCU治療室に入るため、生存率に関しても上記J-MINUET 研究と同様と考えられます。
心筋梗塞は治療して終了するものではなく、発症したら生涯付き合っていく病気と言えます。
心筋梗塞の5年生存率
日本における報告では、5年死亡率は18〜19.1%とされています。
完治することは難しいため、治療後も内服治療を中断することなく、生涯続けていくことが必要となります。
心筋梗塞を早期発見できた場合の生存率
心筋梗塞の症状が発症してから、2時間以内に病院に到着すること、3時間以内に心臓カテーテル治療を行い詰まった血管が流れるようになることが、余命・生存率改善につながるとされています3)。
上記の通り、完治することは難しいため継続的な治療が必要となります。
心筋梗塞になりやすい人の特徴
肥満
BMI(Body Mass Indexの略で、肥満の度合いを示す。 体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値)≧27 kg/mで心血管リスクが上昇します。基準値は18.5〜25未満です。
肥満症の改善には、まず食事の見直し、定期的な運動が必要となります。現体重から3〜6か月の間に3%の体重減少でも効果が期待できるため、出来るところから少しずつ始めるのがよいと思われます。
運動不足
座っている時間やデスクワークの増加は、心疾患リスクの上昇につながります。歩行や家事程度の運動でも充分に効果があります。一日10分程度の歩行を追加することから始めるとよいでしょう。
喫煙
喫煙は心疾患リスクの主な原因の一つです。喫煙本数が増えるごとに、心血管リスクも増加していきます。タバコ1本/日だけでも、吸わないときと比較すると心血管リスクは1.65倍になると言われています。
完全な禁煙が出来れば、最初の5年ほどで心血管リスクは4〜5割も減少します。
そのため、禁煙が心筋梗塞の予防に非常に重要と言えます。
心筋梗塞の代表的な症状
胸痛、胸の圧迫感
運動や安静に関わらず、強い胸の痛みや圧迫感を起こします。狭心症の場合は休んでいるだけで5〜10分程度で改善しますが、心筋梗塞の場合は症状が持続することが特徴です。突然の激しい胸痛、胸の圧迫感、15分以上続く胸部症状がある時には救急外来、循環器科を速やかに受診しましょう。
心窩部の痛み
心窩部(みぞおち)での痛み、ムカつきや吐き気などを感じることがあります。
高齢者、女性、糖尿病の人は、胸痛ではなく、むしろ心窩部の痛みのような胸痛以外の症状を感じることが多いとされています。そのような方で、高血圧、脂質異常症、喫煙者、ご家族で心筋梗塞の既往があるなど動脈硬化リスクが高い人は、注意が必要です。消化器科を受診しても改善しない上記のような症状は、循環器科での精査をお勧めします。
左腕、肩、のど、あごの痛み
左腕、肩、のど、あご、または歯に痛みを感じることがあります。見た目でわかるような異常がないのに、上記の痛みを繰り返し感じる場合には、放散痛(関連痛)の可能性があります。放散痛は、心臓が原因でもその周辺の皮膚や筋肉の痛みを心臓の痛みであると、脳が誤認識してしまう症状です。痛みを繰り返す場合には、循環器科を受診しましょう。
心筋梗塞の主な原因
高血圧症
高血圧が続くと血管内皮機能に障害が起こり、動脈硬化が進行します。高血圧は初期の段階では無症状ですが、血圧の高い状態が続くと、めまい、ふらつきなどの症状を起こすことがあります。
そのため症状が出る前の段階で治療を行うことで、動脈硬化進展を予防できます。内科にて治療を行いましょう。
脂質異常症
不規則な食生活、糖分や脂質の摂取過多、運動不足などにより生じます。症状がないため放置されることも多い病気ですが、放置すると動脈硬化が進行してしまいます。健診で指摘された場合は内科を受診し、必要に応じて適切な薬物療法を行うようにしましょう。
糖尿病
インスリン分泌細胞そのものの影響でインスリン(血糖値を下げるホルモン)が出なくなる1型糖尿病、インスリンの相対的不足、感受性不足によって起こる2型糖尿病があります。症状としては喉の渇き、水分を多くとりたくなる、頻尿、倦怠感などがあります。1型糖尿病の場合はインスリン注射が必要です。2型糖尿病の場合はまず食事、運動を見直す必要があります。内科、糖尿病内科にて治療を行います。
心筋梗塞の予防法
食事療法
高血圧症、糖尿病、脂質異常症の改善は動脈硬化進展を予防するため、まずは食事療法を行い、上記疾患を改善させることが重要です。
食べすぎに注意し、適正な体重を維持する、減塩をする(6g/日程度が理想)、飽和脂肪酸(肉、牛脂、ラード、乳、バター、ココナツオイルなど)とコレステロールの摂取を減らす、食物繊維の摂取を増やすことが心筋梗塞予防に重要です。
またトランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング、ファストブレッドなど)を控えましょう。ビタミンの取りすぎによる健康障害も報告されているため、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンC の過剰摂取に注意しましょう。
運動療法
運動療法により、血圧を下げる効果、糖代謝改善効果、脂質異常改善効果が示されています。また、心血管リスク低下には、家事や職場での歩行でも効果があるとされています。有酸素運動を含む運動の増加は心血管リスクを低下させ、動脈硬化を予防します。
今まで運動したことがないのであれば、運動時間を10分加えることから始めることがよいでしょう。歩行、ゆっ くりしたジョギング、サイクリング、水中運動などを週3回、30分程度行うことが理想的です。
「心筋梗塞の生存率」についてよくある質問
ここまで心筋梗塞の生存率などを紹介しました。ここでは「心筋梗塞の生存率」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
心筋梗塞で亡くなる確率は高いのでしょうか?
大沼 善正 医師
心筋梗塞で入院中に亡くなる可能性はおよそ7%とされています。退院した人の中で、退院後2年以内に亡くなる可能性は心筋梗塞のタイプによりますが、5〜7%とされています。
治療方法の進歩により、ほとんどの方が問題なく退院しますが、再発することもあるため継続的な治療を行うことが重要です。
編集部まとめ
心臓カテーテル治療の技術、デバイス(使用されるバルーンやステント)により心筋梗塞の死亡率は改善しています。しかし、心筋梗塞の重症度、高齢化などの影響から、早期に発見、治療しても残念ながら亡くなってしまう方もいます。
そのため、まずは心筋梗塞にならないように予防すること、そして発症した場合の早期発見・治療が重要です。
「心筋梗塞の生存率」と関連する病気
「心筋梗塞の生存率」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
心筋梗塞の治療は、まずはならないための予防が大切です。また発症した後も生活習慣病の改善で再発も予防できるため、普段の生活から気を付けるようにしましょう。
「心筋梗塞の生存率」と関連する症状
「心筋梗塞の生存率」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
心筋梗塞の症状は胸の症状以外も、おなか、腕、肩、歯など多岐にわたります。疑わしい症状の時は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。




