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「劇症型心筋炎」は”何の症状”から急激に悪化する?死亡率と原因を医師が解説!

 公開日:2026/04/03
「劇症型心筋炎」は”何の症状”から急激に悪化する?死亡率と原因を医師が解説!

劇症型心筋炎とは?メディカルドック監修医が劇症型心筋炎の症状・原因・なりやすい人の特徴・平均寿命・治療法などを解説します。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。

「劇症型心筋炎」とは?

心筋炎は、感染などが原因で心臓の筋肉に炎症を起こしてしまう疾患です。
最近では、コロナウイルス感染症の流行に伴い、合併症として心筋炎を発症するケースが度々報じられていたため、耳にしたことがある方も多いでしょう。
劇症型心筋炎は、心筋炎の中でも最も重症化してしまった状態であり、発症とともに急激に心機能の低下が進行することで全身の循環動態が破綻し、致命的になることもある非常に危険な疾患です。

劇症型心筋炎の代表的な症状

心筋炎では様々な症状が出現することがあります。代表的な症状としては以下のようなものがあります。

風邪症状

劇症型に限らず、多くの心筋炎は発症に先行したウイルス感染による風邪症状が出現することがあります。風邪症状は、発熱や咳、のどの痛み、鼻水や痰が増える、嘔吐や下痢など一般的な症状のため、特徴的な症状が出現するわけではありません。報告によって差がありますが、心筋炎を発症した方の36-89%で認めるとされています。

胸痛

劇症型心筋炎に限らず、心筋炎の症状としては前胸部痛を生じることが多く、風邪症状出現後1-4週間程度で生じ、90%程度で認めたとする報告もあります。心筋炎が心臓を覆う心膜まで及ぶと心膜炎を合併することもあり、その場合には鋭い胸やけのような痛みが出現し、吸気や咳で悪化する、座位の前経姿勢で軽減するような痛みが出現することがあります。
胸痛がある場合は、循環器内科を受診し、心電図や血液検査(心筋トロポニンなど)を受ける必要があります。

心不全症状(息切れ・だるさ)

急激に心機能が低下することに伴い、心臓の血液を送り出すポンプとしての機能が低下し、心不全状態となります。動いたときのだるさや息切れなどで認められることが多いですが、劇症型心筋炎などで急激に心機能低下が悪化すると、呼吸困難や全身の臓器の血流障害に伴う循環不全を発症し、一刻を争う事態となります。

不整脈症状(動悸・失神)

心臓に急激な負荷や炎症が加わることで、不整脈が出現しやすくなります。期外収縮や心房細動などの頻脈性不整脈による動悸や失神などを起こすことがあり、全体の6-25%で認めたとする報告もあります。劇症型心筋炎では命にかかわる危険な不整脈や突然死につながることもあるため、注意が必要です。

劇症型心筋炎の主な原因

劇症型心筋炎の原因となる心筋炎は、様々な原因で発症することがあり、主な原因としては下記のようなものがあります。

ウイルス・細菌感染

主な原因としてウイルス感染(パルボウイルスB19、ヒトヘルペスウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスなど)があります。頻度は少ないですが細菌感染も原因となります。また、新型コロナウイルス(COVID19)の感染に伴う心筋炎も報告されており、COVID19感染者では約0.01%程度の発症頻度であるとされています。

薬剤性・有害物質

抗がん剤(アントラサイクリン等)や、近年がん治療で使用されることが多い免疫チェックポイント阻害薬などによる薬剤性の症例も報告されています。COVID19ワクチンによる心筋炎も報告されていますが、100万回あたり2-3人(0.0002%程度)とされており、感染そのものによる頻度よりも非常に低いことが明らかになっています。

全身性疾患(膠原病など)

関節リウマチや強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原病や、サルコイドーシスなどの全身性疾患により、二次的に心筋炎を発症することがあります。これらの持病がある方で息切れや動悸を感じた場合は、速やかに主治医や循環器内科へ相談してください。

劇症型心筋炎になりやすい人の特徴

劇症型心筋炎は、心臓の筋肉の炎症により急激に心機能が落ち、血液の循環動態が破綻してしまう状態です。発症に関連しやすい要因としては、以下のようなものがあります。

発症時の心機能・不整脈の有無

発症した際に、すでに心臓の動きが悪く心機能が低下した状態である場合、死亡リスクに関連していると報告されています。また、発症時に正常の脈(洞調律)ではなく不整脈が認められる状態では死亡リスクを1.5倍程度にすることが報告されており、特に心室性頻拍や心室細動を発症早期に認めた場合にはさらに危険度が高まります。

年齢(高齢者および特定の若年層)

発症時の年齢が高いことが死亡率に関連しているとされ、10歳上がるごとにリスクが1.45倍になるとする報告もあります。一方で若年者での発症も知られており、突然死した若年者の6-10%に心筋炎を認めたとする報告もあります。

先行する感染症や基礎疾患

重い風邪症状や胃腸炎症状が先行している場合、その後の急激な体調悪化には注意が必要です。また、心臓への負担がかかりやすい生活習慣や、免疫系に関わる基礎疾患を持っている方も、重症化のリスクを念頭に置く必要があります。

劇症型心筋炎の予後平均寿命

心筋炎は臨床像が様々であり、死亡率や平均生存期間についてはまだわからない点も多いです。報告にもよりますが、劇症型心筋炎のような危険な状態となってしまった場合には、死亡率は20-60%程度とかなり高いとする報告もあります。2022年の日本の報告では、発症3か月で30%が死亡するとされています。

劇症型心筋炎の治療法

劇症型心筋炎には、特効薬はなく、全身の循環動態を保つための治療を行うことになります。

薬物治療

通常の急性心不全治療と同様、利尿薬や血管拡張薬、強心薬などを投与します。軽症であれば内服薬を使用しますが、劇症型心筋炎のように重症度が高い場合には、集中治療室(ICU)等での注射や点滴による投与が基本となります。

循環管理(補助循環装置)

心臓の機能が急激に低下し、全身の血流が悪化した場合には補助循環装置を使用します。

  • 大動脈内バルーンパンピング(IABP)/ IMPELLA:カテーテルを挿入し、心臓の働きをサポートしたり血流を維持したりします。
  • 経皮的心肺補助装置(PCPS/ECMO):心臓の代わりに体外のポンプから酸素化した血液を送り込みます。
  • 左室補助人工心臓(LVAD)/ 心臓移植:心機能が改善せず遷延してしまう場合、検討されることがあります。

呼吸管理

心不全により肺に水が溜まる(胸水)と呼吸障害が強くなります。酸素吸入や陽圧マスク、より重症な場合には人工呼吸器を装着した高度な呼吸補助治療が行われます。通常、数週間から数ヶ月の入院期間を要し、状態が安定した後はリハビリテーション科による段階的な身体機能の回復訓練が必要となります。

「劇症型心筋炎」についてよくある質問

ここまで劇症型心筋炎について紹介しました。ここでは「劇症型心筋炎」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

劇症型心筋炎の生存率はどれくらいでしょうか?

医師メディカルドック監修医

心筋炎は様々な病態があり、生存期間については不明な点も多いです。劇症型心筋炎は急激な循環状態の悪化により死亡率も高い危険な状態であり、報告にもよりますが、発症3か月で30%が死亡するとした2022年の日本国内での研究報告があります。

劇症型心筋炎を発症しやすい年齢層を教えてください。

医師メディカルドック監修医

様々な原因疾患があること、患者数が少ないことなどから、十分なエビデンスのある疫学研究ができていないため、不明な点が多いです。2022年の日本からの報告では、劇症型心筋炎344症例の平均年齢は54歳であったとされています。患者数は多くはないですが、若い方での発症も報告されており、若年者の突然死の原因となることもあります。

まとめ

劇症型心筋炎の頻度は多くありませんが、発症すると死亡リスクも高い危険な疾患です。
若年者でも発症する危険があるため、どのような病気なのか、どのような特徴があるのかといった事を正しく知っていただければと思います。

「劇症型心筋炎」に関連する病気

「劇症型心筋炎」から医師が考えられる病気は3個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の疾患

一言:劇症型心筋炎は発症とともに急激に心機能の低下が進行する病気であり、発症した場合には死亡率は高く、20-60%程度と言われています。

「劇症型心筋炎」に関連する症状

「劇症型心筋炎」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

劇症型心筋炎のサイン

一言:心筋炎ではさまざまな症状が出現しますが、劇症型の場合には急激に症状が悪化するため、何らかの症状が進行性に悪化する場合にはすぐに病院を受診するようにしましょう。

参考文献

この記事の監修医師