「大動脈解離で急死」する前に現れる症状はご存知ですか?医師が徹底解説!

大動脈解離で急死する原因・急死する前の症状とは?Medical DOC監修医が大動脈解離で急死する原因・症状・なりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
大沼 善正(医師)
目次 -INDEX-
「大動脈解離」とは?
大動脈は、体の中で最も太い動脈です。心臓から出て頭側に向かい(上行大動脈)、次に弓状にカーブを描きながら背中側に回り(弓部大動脈)、その後は下に向かい(下行大動脈)、胸部、腹部へと続いています。
動脈はホースのような筒状をしており、外側から外膜、中膜、内膜で構成されています。何らかの原因で内膜が破れ、中膜に血液が流れ込むと、中膜が縦に2層に剥がれることがあります。それにより、もともとの血液の通り道(真腔)と、新しくできた通り道(偽腔)の2つの道が出来てしまいます。この病態を大動脈解離と言います。
大動脈解離で急死する原因
心タンポナーデ
心膜(心臓を包む膜)近くの上行大動脈で解離が起こると、解離した場所から心膜腔内(心臓を包んでいる膜の間)に血液が流れ込み、心臓の周りに血液が貯まることがあります。貯まった血液のせいで心臓が圧迫され、心臓が身動きを取れなくなり、血圧低下、ショックとなり、心停止を起こすことがあります。この状態を心タンポナーデと言います。
急死の原因として最も多いものが心タンポナーデです。
意識障害、血圧低下、呼吸困難などを起こし、緊急性が高い状態であるため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
胸腔内・腹腔内出血
大動脈解離が破裂した場合、胸腔(肺が収まっている周りの空間)や腹腔内(胃腸、肝臓などがあるお腹の空間)に大量出血が起こります。大動脈解離を起こした血管は中膜が剥がれ外膜のみとなっており、血管壁の強度が弱く、破裂しやすいことが原因です。
大量出血を起こした場合は、数秒から数分以内に血圧が低下するため緊急での処置が必要です。
臓器還流障害
急性大動脈解離で生じた偽腔には正常な血流が流れないため、大動脈から分岐する動脈が偽腔内にある場合には、その動脈が狭窄または閉塞を起こすことがあります。狭窄、閉塞を起こす場所により心筋梗塞、脳梗塞、腸管虚血(腸に行く血液がなくなり、壊死を起こす)などの様々な血流障害を引き起こします。
緊急処置を要するため、速やかに医療機関を受診する必要があります。
大動脈解離で急死する前に現れる症状
めまい、ふらつき、意識消失
心タンポナーデや胸腔内・腹腔内出血では、血圧が低下することによりめまい、ふらつきや意識消失が起こることがあります。
緊急を要するため、速やかに医療機関を受診しましょう。
顔面蒼白、冷や汗
心タンポナーデや出血により、ショックになることがあります。ショックとは、血圧が低下することにより重要な臓器への血流が低下し、細胞や臓器の障害が生じ、生命の危機が迫っている状態です。
ショックになると、顔面蒼白、冷や汗、倦怠感、呼吸回数が速くなるなどの症状が起こります。安静にした状態で、近隣の医療機関を受診しましょう。
大動脈解離になりやすい人の特徴
高血圧症
大動脈解離を発症した人の8割が、高血圧症を合併していたと報告されています。また高血圧症があると、大動脈解離のリスクが高まると言われています。そのため、高血圧の適切な治療が大動脈解離の予防に重要です。
睡眠障害
Stanford A型急性大動脈解離の半数に睡眠障害を認めると言われています。睡眠障害では高血圧症も起こしやすく、心血管病のリスクも高くなることが、大動脈解離を起こしやすい原因と考えられます。睡眠障害には睡眠時無呼吸症候群も含まれます。寝ている最中にいびきをかく、いびきが止まる、また睡眠時間は取れているのに眠気が多いなどの症状がある場合は、医療機関を受診し、睡眠時無呼吸症候群の検査を行うのが良いでしょう。
Marfan症候群
遺伝性大動脈疾患の一つです。全身の結合組織(細胞と細胞をつなぐ組織)が先天的に弱いことで、心血管の病気(大動脈解離、大動脈瘤、大動脈弁閉鎖不全症)、眼の病気(水晶体偏位、強い近視)、骨や筋肉の病気(高身長、細長い指、胸郭の変形)などを引き起こします。
ご家族で同じ病気の方がいる場合は、ご自身も定期的な病院受診を受けるようにしましょう。診断された場合には、過度な運動や心臓に負荷にかかるような行動は避ける必要があります。
すぐに病院へ行くべき「大動脈解離で急死」
ここまでは大動脈解離での急死について紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
胸部、背部の突然の痛み、意識消失がある場合は、循環器内科へ
多くの場合、急性大動脈解離を発症した時に胸部、背部の激痛が起こります。今まで経験したことがないほどの激しい痛みであることが多く、突然発症することが特徴です。また解離の場所が先に進むことがあり、進行すると痛みも移動することがあります。10~20%の方では、意識消失を起こします。これは解離のために脳への血流が行かなくなる、ショックで血圧が低下するなどが原因です。
胸部、背部の突然の痛み、意識消失がある場合には、夜間であっても速やかに医療機関を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「大動脈解離で急死」のセルフチェック法
・突然の胸痛がある場合
・突然の背部痛がある場合
・移動する胸部・背部痛がある場合
・顔面蒼白、冷や汗がある場合
・意識消失がある場合
大動脈解離を予防する方法
食事・運動療法
高血圧症は大動脈解離の原因となりえるため、予防、治療することが大切です。まずは減塩(理想は6g/日)を心がけましょう。また有酸素運動により、減量、血圧改善が見込まれるため、食事に加えて、運動も合わせるとより望ましいでしょう。
禁煙
タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素により血管収縮、血圧上昇、心拍数上昇を引き起こし、血管内皮機能にも障害を来します。そのため、禁煙を行うことで血圧、血管内皮機能を改善させることができます。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠障害は大動脈解離のリスクであるため、睡眠時無呼吸症候群があれば治療することが重要です。睡眠時無呼吸症候群の検査としては、外来でも可能な簡易検査(アプノモニター)や、一泊入院して脳波や血中酸素飽和度を検査する終夜睡眠ポリグラフ検査があります。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、必要に応じてCPAP(持続陽圧呼吸療法。就寝中に鼻に酸素マスクを取り付け、無呼吸にならないように持続的に圧力をかけて酸素を送り込む治療法)を行います。
「大動脈解離で急死」についてよくある質問
ここまで大動脈解離での急死などを紹介しました。ここでは「大動脈解離で急死」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大動脈解離を発症してから、どれくらいで亡くなることが多いですか?
大沼 善正 医師
急性大動脈解離は、病院に到着前に半数以上が急死するほどの重大な病気です。亡くなってしまう方は、発症後24時間以内がほとんどとされています。手術死亡率は9.6%と治療成績は向上しているため、予防、早期発見・早期治療が非常に重要です。
編集部まとめ
大動脈解離は重大な病気であり、発症後すぐに状態が悪化することが多い病気です。そのため、高血圧管理、睡眠障害の治療、禁煙で予防を行うことや、今までにない突然の胸痛、背部痛、意識消失などが出現した場合には、夜間であっても緊急で医療機関を受診するなど、早期発見・早期治療が重要です。
「大動脈解離」と関連する病気
「大動脈解離」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大動脈解離の主な症状は胸部、背部の痛みですが、似たような症状を示す病気は上記に挙げたようにたくさんあります。ただし、その痛みが急な激痛となって出現しており、どのような体勢をとっても全く改善しない場合には、大動脈解離を疑うきっかけとなります。
「大動脈解離」と関連する症状
「大動脈解離」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大動脈解離では突然の胸痛、背部痛、移動する痛み、意識消失を認めます。ショックになると血圧低下により顔面蒼白、冷や汗、倦怠感があらわれることがあります。そのような症状がある場合には、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。