「冠攣縮性狭心症」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!
冠攣縮性狭心症とは?Medical DOC監修医が冠攣縮性狭心症・症状・原因・なりやすい人の特徴・突然死・平均余命・生存率・治療法などを解説します。
監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
「冠攣縮性狭心症(かんれいしゅくせいきょうしんしょう)」とは?
胸痛を生じる原因として、心臓の血流の障害が原因となる狭心症という病気はよく耳にすることがあると思います。
この「狭心症」という病気は、病態によって2種類に分類されます。
動脈硬化の進行に伴って、血管内にコレステロールなどの成分が溜まってしまい、物理的に血管の流れが悪くなる「器質性狭心症」と、物理的な狭窄はなくても血管を覆う筋肉が一時的にけいれん(難しい言い方では攣縮とよびます)を起こすことで一時的な血流障害を生じる「冠攣縮性狭心症」があります。最近の研究では狭心症症状を生じる患者さんの5-6割に冠攣縮が関与しているとする報告もあります。
今回は、この冠攣縮性狭心症がどのような病気なのかを詳しく解説していきます。
冠攣縮性狭心症の代表的な症状
冠攣縮性狭心症では、冠動脈の血流が低下してしまうことで胸痛を生じます。典型的な心臓の血流障害の症状としては、胸の中心~左側の締め付けられる様な、押しつぶされるような強い胸痛であり、冷や汗を伴うような強い症状や、左肩~顎や奥歯まで苦しくなる放散痛を伴う事も多いです。
器質性狭心症では動いたときに胸が締め付けられるような胸痛を生じることが典型的ですが、冠攣縮性狭心症では主に安静時、特に就寝中や朝方の胸痛が典型的とされています。
冠攣縮性狭心症の主な原因
冠攣縮性狭心症は、器質性狭心症のような動脈硬化による血管の狭窄が原因となる病態ではありません(合併する場合もありますが)。
血管を覆う筋肉が一過性に痙攣を起こし、血管が狭くなることで生じます。
その血管の痙攣を起こしやすくする要因としては、以下のようなものがあります。
喫煙
喫煙は血管の筋肉を痙攣しやすくする主な要因の一つです。ニコチンによる血管収縮作用、一酸化窒素による酸素不足、血管内皮への障害などによって、冠攣縮が引き起こされます。
ストレス
精神的なストレスや、睡眠不足や不規則な生活、多忙などによる肉体的なストレスが、冠攣縮の主要因の一つです。
ストレスによる自律神経機能の異常により血管が痙攣を起こしやすくなるとされています。
飲酒
過度の飲酒も、血管攣縮を引き起こします。
生活習慣病
高血圧などの生活習慣病による動脈硬化も、血管内皮細胞の機能障害を引き起こし、血管の攣縮の原因となることが知られています。
冠攣縮性狭心症になりやすい人の特徴
冠攣縮性狭心症は、器質性狭心症とは異なる病態の疾患であり、起こりやすい特徴も異なります。冠攣縮性狭心症を起こしやすい人の特徴としては、以下のようなものがあります。
中年女性
器質性狭心症は、動脈硬化が進行した高齢男性に多い疾患ですが、冠攣縮性狭心症では中年の女性にも多く、若年者でも発症することがあります。
喫煙者
喫煙は冠攣縮を発症する大きな要因の一つです。
喫煙による血管内皮の細胞障害、交感神経刺激による血管の痙攣を起こしやすくすることで、冠攣縮性狭心症を引き起こします。
生活が不規則な方
ストレスが大きな要因となるため、睡眠不足や過度の疲労、身体的・精神的なストレスが、交感神経を活性化し、血管を痙攣しやすくなり、冠攣縮性狭心症を起こしやすくなります。
精神的に緊張しやすい方、不安障害などがある方
一般的に、緊張しやすい体質、不安障害など精神的な疾患がある方では、冠攣縮性狭心症を起こしやすいことが知られています。
冠攣縮性狭心症で突然死することはある?
冠攣縮性狭心症でも、強い血管攣縮を起こしてしまうと血管の血流が途絶してしまい急性心筋梗塞を引き起こし、危険な不整脈を発生させてしまうことがあるため、突然死の原因となることがあります。
冠攣縮性狭心症の平均余命・生存率
冠攣縮性狭心症は、基本的には予後良好な疾患であり、適切に投薬治療を受け、生活習慣を改善することができていれば、3年間の死亡率も約3%前後とされています。
ただ、心筋梗塞や、心不全、糖尿病・高血圧などの病歴があると、リスクは高くなるため注意が必要です。
冠攣縮性狭心症の治療法
器質性狭心症では血管内の狭くなった部分を広げる、心臓カテーテル治療が行われることが多いです。一方、冠攣縮性狭心症では基本的には手術は不要であり(器質性との合併では必要となることもありますが)、内服治療を行うことが多いです。
主な治療としては以下のようなものがあります。
血管拡張剤の投与
血管の筋肉が痙攣してしまうことで血管が細くなり、血流障害が出現してしまうため、血管を広げる作用のある血管拡張剤を使用することで、冠攣縮を起こしにくくなります。
カルシウム拮抗薬や硝酸剤、ニコランジルなどの内服薬が処方されることが多く、症状が強い場合には併用することもあります。
心臓カテーテル治療
基本的には冠攣縮性狭心症単独では薬物治療のみで治療することが標準的です。
しかし、器質性狭心症と合併している場合には、動脈硬化で狭くなった血管を、カテーテルという管を用い、特殊な風船(バルーン)や金属の筒(ステント)を用いて広げる治療を行うこともあります。
「冠攣縮性狭心症」についてよくある質問
ここまで冠攣縮性狭心症について紹介しました。ここでは「冠攣縮性狭心症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
女性が冠攣縮性狭心症を発症すると、どんな症状が現れますか?
小鷹 悠二 医師
基本的に、性別による症状の差はありませんので、前述のような胸痛が出現します。典型的な症状としては、夜間や早朝などの安静時に、胸部の締め付けるような強い胸痛が出現することが多いです。
ストレスが原因で冠攣縮性狭心症を発症することはありますか?
小鷹 悠二 医師
ストレスは冠攣縮性狭心症を引き起こす主な原因の一つです。自律神経の機能障害などによって血管の痙攣を引き起こします。
冠攣縮性狭心症を発症したら、どのようなことに気をつけた方がいいですか?
小鷹 悠二 医師
ストレスや喫煙、飲酒などが原因となることが多いため、禁煙、過度の飲酒を避ける、十分な睡眠と規則的な食事、規則的な生活を意識することが重要です。
生活習慣病の管理が悪いことも発症の要因となるため、治療している生活習慣病をしっかり管理することが大切です。
編集部まとめ
冠攣縮性狭心症は器質性狭心症と同じように胸痛を引き起こす疾患ですが、動脈硬化リスクが低い中年女性や、より若い年代の胸痛を引き起こすこともあります。
重度の冠攣縮では心筋梗塞のような状態を引き起こし、突然死の要因になる可能性もありますが、適切に治療を行うことができれば予後はよい疾患ですので、正しく理解していただければと思います。
「冠攣縮性狭心症」と関連する病気
「冠攣縮性狭心症」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
重度の冠攣縮では心筋梗塞に似た状態となり突然死を引き起こす可能性もありますが、適切な治療を行うことができれば予後はよい病気です。
「冠攣縮性狭心症」と関連する症状
「冠攣縮性狭心症」と関連している、似ている症状は1個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸痛
器質性狭心症と同じように主な症状は胸痛ですが、動脈硬化リスクが低い中年女性や、より若い年代にも発症する病気として知られています。ストレスや喫煙、飲酒などが原因となることが多いため、食習慣や睡眠時間の改善など生活習慣に気をつけることが重要です。