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【闘病】コロナ禍に「混合性結合組織病」発覚 妊娠中に過ごした治療期間

 公開日:2023/12/26
【闘病】「混合性結合組織病」 コロナ禍に発覚した病 妊娠中に過ごした治療生活

27歳のときに混合性結合組織病(MCTD)と診断されたアリサさん。診断時、アリサさんは新婚1年目で、養護教諭の仕事をしていました。夫がこの病気を受け入れてくれるのだろうか、体調が万全ではない自分が子どもたちの健康を守れるのだろうかと葛藤もしたそうです。そんなアリサさんがどのようにしてその葛藤を乗り越えたのか、また、病気が判明した経緯や妊娠中である現在の様子(取材時)などについて、話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年8月取材。

アリサさん

体験者プロフィール
アリサさん(仮称)

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1993年生まれ、関西地方在住。夫との2人暮らし。診断時の職業は養護教諭。2020年12月に混合性結合組織病(MCTD)の診断を受ける。現在は投薬治療を行いながら、無理のない範囲で事務の仕事をしている。第一子妊娠中(2022年8月取材時)。

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

突然指先が真っ白になり血流が戻らなくなった

突然指先が真っ白になり血流が戻らなくなった

編集部編集部

まず初めに、「混合性結合組織病」とはどのような病気なのでしょうか?

アリサさんアリサさん

膠原病の代表的な疾患である全身性エリテマトーデスや全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎の症状が2つ以上混在し、抗U1-RNP抗体が陽性となる疾患で、自己免疫疾患です。

編集部編集部

具体的にどのような症状が現れるのでしょうか?

アリサさんアリサさん

私に現れた症状はレイノー症状、間質性肺炎、多発性筋炎、食道裂孔ヘルニア、逆流性食道炎、リンパ節腫脹、手指の腫脹、全身の倦怠感でした。特に顕著に現れた症状は、レイノー症状と多発性筋炎でした。

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

アリサさんアリサさん

2020年の10月ごろ、少し肌寒いなと感じる時期でした。指先が突然真っ白になり、手を擦り合わせて温めても血流が戻らない日が増えていきました。日に日に真っ白になる指が増え、しびれも出て感覚もなくなっていくのが怖くなり、内科を受診しました。指先の症状を見た先生が、すぐに血液検査をしてくださり、抗U1-RNP抗体が陽性だったことから、混合性結合組織病の可能性が高いと言われました。

編集部編集部

その内科で診断がついたわけではないのですね。

アリサさんアリサさん

はい。膠原病の専門医がいる総合病院を紹介してもらいました。そこで、血液検査・胸部CT・心電図・尿検査・肺機能検査・胃カメラの検査を行い、複数の症状を合併していることがわかり、混合性結合組織病と診断を受けました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

アリサさんアリサさん

当時の主症状であるレイノー症状の緩和をするために、防寒対策を徹底するように言われました。症状に合わせて服薬治療で様子を診ていくと言われました。また、心身へのストレスを減らすような生活を心がけてくださいと言われました。

編集部編集部

当時、なにかストレスを抱えていたのでしょうか?

アリサさんアリサさん

住む場所や勤務先が変わったので、環境の変化の要因はあったと思います。それよりも、睡眠不足が続いていたことが大きなストレスになっていたと感じます。朝は早い出勤で、帰りも遅かったため、睡眠時間が日に日に短くなっていきました。レイノー症状が発症する直前は、睡眠時間が3~4時間の日が続き、疲れが取れない日々でした。

仕事や結婚生活のことなど不安でいっぱいだった

仕事や結婚生活のことなど不安でいっぱいだった

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

アリサさんアリサさん

「自己免疫疾患」「難病」「治らない」というワードが頭の中からずっと離れませんでした。何十年も付き合っていかないといけないことがとても不安でしたし、当時は新婚1年目だったので、夫に受け入れてもらえるのかも不安でした。仕事についても、とても悩みました。診断時の仕事は、子どもたちの健康や安全を守る養護教諭の仕事をしていたので、手足のしびれや痛みが続くような状態で、子どもたちの健康が守れるのか、と葛藤していました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

アリサさんアリサさん

病気以前は養護教諭として、毎日朝から晩まで動き回って過ごしていました。診断後は半年して退職し、自分の身体を優先にするため、時短勤務の事務職に転職し、職場の理解も得ながら働くようになりました。多発性筋炎により、身体の痛みが強く出ることが多かったので、発症前は運動をしていましたが、激しい運動は控えることにしました。指先・手首の筋力が弱くなったので、ペットボトルは補助具を使って開けたり、重い荷物は周りの人に手伝ってもらったり、人や物に頼りながら生活するようになりました。

編集部編集部

病気に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

アリサさんアリサさん

夫です。この病気も含め私を受け止めてくれている存在は本当にありがたい。症状が強い日は動くのもやっとでしたが、優しい言葉をかけて励ましてくれて、「ゆっくり休んでね」の一言で心の底から安心できました。一人では挫けてしまっていたと思いますが、支えてくれる頼れる存在がいるというのは、いかに幸せなことか改めて実感しました。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

アリサさんアリサさん

我慢や無理をすることが日々当たり前になってしまっていると思うけど、少しでも身体の違和感があったら、早めに休養や病院受診をしてほしい。今までの違和感は全部つながっているように感じているので、無理をせず、自分の身体を労わってあげてほしいです。

闘病しながらのマタニティ生活

闘病しながらのマタニティ生活

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

アリサさんアリサさん

現在は妊娠中(取材時)ということもあり、服用する薬を減らしながら生活をしています。プラケニルという薬を隔日で1錠と2錠を交互に飲んでいます。そして、ステロイドのプレドニンを朝・晩服用しています。プラケニルを飲み始めてからは、冬場だけではなく、冷房が強いスーパーや室内でも出ていたレイノー症状が出なくなりました。また、プレドニンを飲み始めてから、多発性筋炎の頻度はだいぶ安定し、痛みが出ても長引くことがなくなり、軽度の痛みで済むようになりました。また、手指の腫れ(腫脹/しゅちょう)が明らかに引いたので、結婚指輪が窮屈になっていたのが、元に戻り安心しました。

編集部編集部

ご妊娠されている(取材時)とのことですが、闘病しながらのマタニティ生活について、どのような点に気をつけていらっしゃいますか?

アリサさんアリサさん

はじめは個人クリニックでの出産を希望していましたが、混合性結合組織病により母体と胎児へのリスクがあるということで、膠原病と産婦人科が併設されている総合病院で診てもらうことにしました。妊娠高血圧症候群になるリスクが高いそうで、朝・晩と血圧測定は欠かさず行っています。食生活も塩分・糖分・脂質の過剰摂取を控えるように、野菜多めの生活を心がけています。

編集部編集部

感染症対策にも留意されているそうですね。

アリサさんアリサさん

はい。ステロイドの服用していたことで、免疫力が落ちて感染症にかかりやすくなると医師に忠告されました。新型コロナウイルスが蔓延しているということもあり、手洗い・うがい・換気・消毒などのできる範囲の感染症対策と免疫を落とさないよう睡眠時間の確保などを徹底して過ごしています。また、抗SS-A抗体が陽性のため、胎児に不整脈や心筋炎のリスクがあるということで、胎児心エコー外来で、何度も様子を診てもらっています。検査しないと赤ちゃんの様子がわからないので、不安になることも多いですが、あまり考えすぎないように気をつけています。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

アリサさんアリサさん

この病気は見た目では目立った症状がないので分からず、症状も個人差があり、症状の辛さも本人にしか分からないので、周りから見ると「そんなに?」と思うかもしれません。ですが、勇気を出してしんどさを訴えているので、周囲の方が少しでも聴く耳をもってくれれば嬉しいです。前職の時に、倦怠感と全身の痛みから早退を上司に願い出たときに、「気持ちの問題かもしれないし、踏ん張り時だよ」と言われ、悲しくなりました。同じ病気の方が職場にいたら、少しでもサポートしていただけたらありがたいです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

アリサさんアリサさん

私は主治医に恵まれ、不安でいっぱいだった私の話を親身に聞いてもらいました。医師の方はお忙しくて大変だとは思いますが、できるだけ親身に寄り添った診察をしてくださるとありがたいです。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

アリサさんアリサさん

ずっと健康だと思っていた私が、できることがどんどん制限され、初めて自分の身体を一番に考えるようになりました。「身体が資本」と言います。今、無理して身体の訴えを無視していると、あとで身体が耐え切れなくなってしまうかもしれません。身体の違和感があったら早めに休養したり、病院受診したりしてほしいと願います。また、周りに病気を抱えている方がいたら、「私にできることはあるかな?」と聞いてくれる方が居るだけで、とても心強くなります。周囲の方への優しさを持つ方が増えてくれたら、いろんな大変さを抱えて過ごす人が、お互いに過ごしやすくなっていくのではないかと感じます。

編集部まとめ

闘病生活を通してアリサさんが読者に一番を伝えたいこととして、「元気でいるうちはなにも思わないけれど、いろいろなことができなくなってから後悔しないように、今から自分の身体を大切にしてください」というメッセージを寄せてくださいました。忙しい毎日を送っていると、自分のことは後回しにしてしまいがちですが、身体の変化に気づいたら休養を取ったり病院を受診したりすることが大切だと感じました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師