「心筋炎の原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も医師が徹底解説!
心筋炎の原因とは?Medical DOC監修医が急性心不全の原因・症状・なりやすい人の特徴・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
目次 -INDEX-
「心筋炎」とは?
心筋炎は、心臓の筋肉であり心筋に炎症を起こした疾患です。感染や薬物、全身性の疾患などさまざまな原因で引き起こされることが知られており、急激な経過のものから、慢性的に円障害が持続するタイプまでさまざまなものがあります。
心筋炎の主な原因
心筋炎の主な原因としては、以下のようなものがあります。
感染性
心筋炎の感染性の原因としては、ウイルス、真菌、細菌、寄生虫、原虫などさまざまなものがあります。
心筋炎の原因の中で最も多いのが感染性であり、その中でもウイルス性が最多の原因であり、パルボウイルスB19やヒトヘルペスウイルス、アデノウイルスなどが原因となることが多いです。
最近ではCOVID19ウイルス(コロナウイルス)感染症に伴う発症も報告されています。
非感染性
感染以外の原因として、非感染性の原因も多くみられます。
非感染性の原因としては、薬剤、ワクチンなどの化学物質、過敏性反応、全身性疾患(膠原病、川崎病、サルコイドーシスなど)、放射線、熱射病、特発性(原因がはっきりしないもの)等があります。
最近ではCOVID19ウイルス(コロナウイルス)のワクチンによる症例の報告もされています。
ストレスや疲労などが単独で原因となることはありませんが、それによって体の抵抗力が下がり、感染症などに罹ってしまうことで、間接的な原因となることはありえます。
心筋炎の主な症状
心筋炎の症状は非常に多彩であり、心筋炎だけに見られるような症状はありません。
診断のためにはそれぞれの症状の経過、検査所見などから総合的に判断する必要があります。
感染症による風邪症状
心筋炎を引き起こすようなウイルスの感染によって、初期症状として風邪症状を認めることが多いです。具体的には、悪寒や発熱、頭痛、関節痛、咳、のどの痛み、嘔吐や下痢などの症状があります。
このような風邪症状のあと、数日~数週間の経過で心臓の症状が出現することがあります。
心筋炎症例の中で、報告にもよりますが36-89%で先行する風邪症状があったとする報告もあります。
胸痛
旨の苦しさを訴えることが多く、前述のような風邪症状の後1-4週間以内に生じ、その頻度は報告にもよりますが90%程度の症例で認められるとも言われています。
狭心症や心筋梗塞との鑑別が必要となることもある、心筋炎の代表的な症状です。
心不全症状
心筋炎を発症すると、心臓の機能が低下することで、強いだるさ、運動時の息切れなどが出現することがあります。さらに進行すると、呼吸困難や臓器の障害などより重症化することもあります。
不整脈による症状
心筋の炎症に伴い、心臓内の異常な電気興奮が出現してしまい不整脈が引き起こされることがあります。それに伴って、動悸や頻脈などを生じ、危険なタイプの不整脈が生じると失神や突然死に至ってしまう可能性もあります。
突然死の発症は、高齢者よりも若年者の方が高いとする報告もあります。
心筋炎になりやすい人の特徴
心筋炎は、病気の原因や経過などがさまざまであり、心筋炎に特異的な症状や検査もないことから、学術的な疫学研究が困難であり、発症しやすい要因などに付いてはまだ明らかになっていないことが多いです。動脈硬化などが原因とはならないため、若年者でも見られやすい疾患です。
現状で明らかとなっている点としては、以下のようなものがあります。
風邪症状が先行する
発症前に、原因となるウイルス感染による風邪症状が先行して見られることが多いです。
風邪症状の後、多くは1-4週間程度で胸痛や息切れなどの心臓の症状を認めることが多いため、このような経過の場合には速やかに循環器科の受診が必要です。
全身性疾患(炎症性疾患や自己免疫性疾患)の病歴がある
膠原病、川崎病、サルコイドーシスなどの全身性の疾患の病歴がある方では、それらの病気からくる炎症が心筋に生じて、心筋炎を発症することがあります。
このような病歴がある方で、突然胸痛や呼吸困難などが出現した際には速やかに循環器科受診が必要です。
特殊な薬物摂取
原因として薬剤を含む化学物質も知られており、特に免疫チェックポイント阻害薬を含む抗がん剤などでは、体に強い反応が引き起こされるため、心筋炎を発症するリスクがあるとされています。それ以外にも、ワクチン接種や有害物(麻薬など)の摂取も原因となるため、特殊な治療や薬物摂取歴がある方は注意が必要です。
心筋炎の治療法
心筋炎には特効薬はないため、心筋炎による心不全や不整脈などの症状に対する治療を行います。
心不全症状の治療
利尿剤や強心剤、心臓を保護する薬剤(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬やβ遮断薬など)を投与して治療を行います。
軽症であれば内服薬を使用しますが、重症度が高い場合には注射や点滴で投与を行います。
呼吸管理
心筋炎の経過が急激な場合や、心不全症状が強くなると、肺に水が溜まってしまうことによる呼吸障害が強くなってしまいます。そのため、呼吸をサポートする治療が必要となり、酸素の吸入や陽圧をかけるマスクを装着した治療、より重症となると人工呼吸器を装着した高度な治療が必要となります。
循環管理
心筋の炎症によって心機能が大きく低下し、全身に血液が送れなくなってしまった場合には、血液の循環をサポートするために血管の中にカテーテルを用いて風船(バルーン)を入れ、心臓の動きに合わせてバルーンを拡張・収縮させることで心臓の働きをサポートする大動脈内バルーンパンピング(IABP)や、心臓の代わりに体外のポンプから酸素化した血液を送り込む人工心肺などの補助循環装置を使用することもあります。
「心筋炎の原因」についてよくある質問
ここまで心筋炎の原因などを紹介しました。ここでは「心筋炎の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
心筋炎の前兆となる初期症状について教えてください。
小鷹 悠二 医師
心筋炎にだけみられる症状ではありませんが、最も多いウイルス感染が原因となる心筋炎では、発症前に風邪症状が先行している場合が多いです。
熱や咳、のど症状など一般的な風邪症状の後1-4週程度で、胸痛や息切れ、動悸等が出現してきた際には、早期に循環器科の受診が必要です。
心筋炎の治療期間や完治するまで、どれくらいの期間を要しますか?
小鷹 悠二 医師
心筋炎の原因、それによる心臓機能への障害の程度、合併症の有無、年齢、体力などさまざまな要因で治療経過が変わるため、一概に述べることはできません。
軽症な場合には1-2週程度、重症例では数か月の入院が必要となることもあります。重症例では落ちた体力の回復のためリハビリが必要になると、より長期の入院が必要となることもあります。
編集部まとめ
心筋炎は原因が多彩であり、心筋炎だけに特徴的な症状がないため、気づくことが難しい疾患です。
ただ、風邪などの症状の後から胸痛や息切れ、動悸等の胸の症状が出現した際には注意が必要であり、中には急激に進行して命に関わることもあります。
そのため、上記のような経過、症状がある際には決して放置せず、早期に循環器科を受診することが大切です。
「心筋炎の原因」と関連する病気
「心筋炎の原因」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
- ウイルス感染
- 全身性疾患(膠原病、川崎病、サルコイドーシス)
- 悪性腫瘍(抗がん剤や放射線治療)
心筋炎の原因として、幅広い病気・病態が考えられます。最も多いのは、ウイルス感染によるものと言われています。
「心筋炎の原因」と関連する症状
「心筋炎の原因」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 風邪症状
- 胸痛
- 息切れ、呼吸困難
- 動悸
- 失神
- 突然死
動脈硬化などの加齢に伴う病態とは関係なく心筋炎は起こるため、若年者でも起こりうる病気です。気になる症状があれば早めに医療機関へ受診することをお勧めします。