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【闘病】「肺がん」 会社の健診で要精密検査 →2年の経過観察を経て発覚

 公開日:2024/09/27
【闘病】「肺がん」 会社の健康診断で要精密検査 → 2年の経過観察後に発覚

会社の定期健診で「要精密検査」の結果が出たとき、その後きちんと医療機関を受診していますか? 話を聞いたミカさん(仮称)は、会社の定期健診で「要精密検査」と診断され、定期的に経過観察に通った結果、肺がんと診断を受けました。そこまでの経緯や、病気への向き合い方について、話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

ミカさん

体験者プロフィール
ミカ(仮称)

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1986年生まれ。静岡県在住。家族構成は娘2人。診断時の職業は会社員(事務)。2021年7月に肺がんが発覚し、手術を受ける。診断時は35歳。幸い現在は経過観察となり、半年ごとの診察を受けながら発症前と変わらない状況で仕事ができている。

高宮 新之介

記事監修医師
高宮 新之介(昭和大学横浜市北部病院 呼吸器センター外科助教)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

最後の経過観察で、専門の医療機関で受診するよう言われた

最後の経過観察で、専門の医療機関で受診するよう言われた

編集部編集部

まず初めに、ミカさんが抱えていらっしゃる疾患について教えてください。

ミカさんミカさん

2021年の夏に右上葉に肺がんが見つかりました。

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

ミカさんミカさん

2019年に受けた会社の定期健診で、レントゲン検査に引っ掛かり「要精密検査」という結果が出ました。その後、近くの提携医療機関を受診したのですが、よくある肺炎の傷跡だと思うということで、3カ月ごとのCT撮影経過観察となりました。このときの診断名は、「右上葉すりガラス影」という診断でした。この所見は、肺炎などで炎症が起きた際の跡(かさぶたのようなイメージ)で、私と同じくらいの年齢の方は多くの人が経過観察とともに影がなくなっていくそうです。ですが、私の場合はこの影から変化が見られたのです。これが判明したのが、「最後にもう1度だけ経過観察をして卒業にしよう」と言われていた2021年7月の診察のときでした。すぐに専門の医療機関を受診するよう言われ、紹介状をもらってがんセンターを受診する運びとなりました。

編集部編集部

最後の予定だった経過観察で発覚したのですね。

ミカさんミカさん

はい。翌週月曜日の受診を指定され、まずは呼吸器内科の先生と話しました。そして、「おそらく肺腺がんでしょう」と伝えられました。すでに呼吸器外科の予約もしてくださっていて、その日に主治医となる先生の診察を受けました。肺野部(肺門以外の部分)のため事前の検査はできないが、自分たちの経験からもがんの可能性が高いということで、すぐに手術をするという話になりました。

編集部編集部

結局、肺腺がんで正しかったのですか?

ミカさんミカさん

はい。確定診断時にはすでに手術後で、転移もありませんでした。専門の医療機関を受診してから確定診断まで、約1.5カ月という短さでした。ありがたいことです。

編集部編集部

自覚症状などはあったのでしょうか?

ミカさんミカさん

まったくありませんでした。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

ミカさんミカさん

私の病状を、図を用いながら分かりやすく教えていただきました。そのため、手術ができる状況はありがたいこと、今の私の置かれている状況では手術を受けることがまずは第一ステップであることを理解できました。家族を同伴した際にもまったく同じ説明をその都度してくださったので、家族全員が納得できたと思います。私がすぐに手術を受けることができたのは、経過観察で定期的にCT写真を撮影していたからでした。CT撮影は費用がかかるので悩まれる方も多いと思いますが、医師の指示がある場合は撮影していただきたいです。

入院時に知り合った方たちの明るさが支えに

入院時に知り合った方たちの明るさが支えに

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

ミカさんミカさん

まずは要精密検査になった際に、すごく驚きました。自分の年齢的にも、「青天の霹靂とはまさにこのこと」といった感じでした。自覚症状がなかったので、「大丈夫だろう」という思いもありました。しかし、紹介状を書かれたとき、紹介先が「がんセンター」だったので、「私はがんなのか……」と思いながら病院に行ったため、可能性が高いと言われた時もさほど動揺はありませんでした。

編集部編集部

ご家族には伝えていたのですか?

ミカさんミカさん

伝えていませんでした。家族にも誰にも相談せず、どれが最適な治療なのかをひたすら自分で検索していたように記憶しています。また、私はシングルマザーであることから、そういった病院では珍しく一人で受診していました(もちろん、誰かを同伴しなければならない診察もありました)。呼吸器内科受診後に、呼吸器内科の看護師さんが来てくださり、私の年齢や家庭環境を考えて心配してくださいました。自分を気にしてくださる方がいることに涙が流れました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

ミカさんミカさん

物理的に右肺の一部を摘出したので、術後すぐは咳が続いたり息苦しさを感じたりといった状況が続きました。ちょうどコロナ禍だったので、咳を我慢することができず、極力外出しないようにしていました。会社については、入院が決まった時点ですぐに休みが取れるよう配慮していただき、2週間後には休みに入り、約2カ月ほど休みをいただきました。術後は9日で退院しました。咳がなければ1カ月くらいで職場復帰もできたかも知れません。今の手術の技術はすごいなと感心しました。

編集部編集部

がんに向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

ミカさんミカさん

私が心持ちを前向きにできている一つとして、入院時に知り合った方々の影響が大きかったと思います。入院病棟は呼吸器および神経の患者さんがメインのフロアで、入院患者は私の2倍くらいのご年齢の方が大半だったのですが、みなさんがとても明るかったのです。私よりも病状は悪かったと思うのですが、明るく前向きで「一緒に散歩にいこう」と誘ってくださったこともありました。コロナ禍で、家族や友人などがお見舞いに来られない状況下で明るい会話をできたことは本当にありがたく、感謝してもしきれません。また、ネットの記事やブログにもとても支えられました。「自分だけじゃない」とふさぎこむことなく、誰かと会話すること・共感できる状況を作ることはとても大事だと思いました。

周囲の人から“いつも通り接してもらえること”が何よりの支えになる

周囲の人から“いつも通り接してもらえること”が何よりの支えになる

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

ミカさんミカさん

現在(取材時)は手術も終えていて、経過観察で通院を続けています。再発もなく、以前と変わらない生活を取り戻しています。肺を切除しましたが、激しい運動でなければ支障はありませんし、休み休みであれば階段なども問題ありません。消化器ではないので、食べ物なども以前と変わらない生活です。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

ミカさんミカさん

外見だけだと、私ががん患者であったことに気づくことはないと思います。だからこそ、どんな人にも広い視点で接するように少しずつ心持ちを変えていただけると嬉しいです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

ミカさんミカさん

医療従事者のみなさまには感謝の気持ちでいっぱいです。私の病状は初期だったので、病院内では良い方だったかも知れませんが、1つ伝えたいことがあるとすれば、1歩外に出た時の不利益や不安というのは、病状の大きさに関係なく訪れるので、そういった方々のサポート体制が整うと、さらに優しい社会が実現するのではないかなと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

ミカさんミカさん

こういった記事を見られている方の中には、ご自身が罹患されている方だけではなくパートナー、ご家族、友人など、その方の周りにいる方が罹患されているといった方も多いのではないかと思います。私は罹患したときに、自分以上に周りの人たちが心配し悩んでくれる姿を見てきました。こういった気持ちは必ず罹患されている本人に伝わります。もちろん心配してくれることへのありがたい気持ちもあるのですが、一方で不安を助長してしまうこともあると感じました。1番の支えは、”今までと変わらない環境”なので、いつも通り接していただければと思います。現在闘病されている方、経過観察で不安を抱えている方、一緒にがんばりましょう。

編集部まとめ

現在は、以前と変わらない生活を遅れているとのことですが、それはミカさんがきちんと経過観察の受診をし、医師の指示通りCT撮影を受けていたからではないでしょうか。忙しい毎日を送っていると、つい経過観察を怠ってしまいがちですが、ミカさんのお話を聞いて、定期的に経過観察へ行くことの大切さを感じました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師