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「大動脈解離の主な5つの症状」はご存知ですか?原因や予防法も医師が解説!

 公開日:2023/09/28
「大動脈解離の主な5つの症状」はご存知ですか?原因や予防法も医師が解説!

大動脈解離の症状とは?Medical DOC監修医が大動脈解離の症状・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

「大動脈解離」とは?

大動脈解離とは、3層構造になっている大動脈の壁が、何らかの原因で外側一枚の膜を残して裂けてしまう病気のことを指します。この病気の原因は、加齢現象や長期間の高血圧が負荷になって、大動脈に起こった慢性的な動脈硬化などがあります。また、生まれつき血管が脆い性質のある人でも起こりやすいことがわかっています。
発症のピークは70歳代で、男性に多く、近年増加傾向にあります。発生頻度は人口10万人あたり年間10人で急性心筋梗塞の1/4です。急性大動脈解離は急性心筋梗塞に次いで2番目に多い突然死の原因疾患となっています。

大動脈解離の症状

突然の強烈な痛み

突然に、今まで経験したことのない激しい痛みを胸や腹、背中に感じます。何をしている時に痛みが出たか明確に答えられるほど、突然症状が出現します。また痛みの程度は非常に強く、「人生で経験のない痛み」「痛みのあまり、のたうちまわる」ほどです。
大動脈解離が生じている場所によって、胸に痛みが出たり、背中や腹部に痛みが出るものに分かれます。ただし6%程度は痛みが出ないこともあり、注意が必要です。
ご自身やご家族ができることは、一刻も早い救急要請です。痛み止めで様子を見ようと考えないようにしてください。
基本的に医学において「突然発症」したものは重篤な病気である一つの指標ですので、突然に強烈な痛みを感じた際は、すぐに医療機関を受診してください。
専門科は心臓血管外科、循環器内科です。非常に緊急性が高いので救急車を必ず呼びましょう。

失神

突然意識を失ってしまうことを失神と言います。大動脈解離の中の9-20%程度は、特に痛みを感じることなく失神してしまうことがあります。心臓周囲に出血が溜まって、心臓自体から脳への血流が途絶えたり、痛みのあまり迷走神経反射を起こして、同じく脳血流が低下する、と考えられています。痛みがなく失神だけでも、大動脈解離を疑うきっかけになりますので注意しましょう。
緊急性や専門科は上記の通りです。

呼吸困難

胸のあたりが重苦しくなり、強い息苦しさを自覚することもあります。大動脈は心臓から胸、腹へと続く人体の中で最も太い動脈です。この胸の部分で大動脈解離が起こった場合、心臓を栄養する冠動脈への血流が低下してしまいます。その結果、心筋梗塞を発症することがあります。そのため心筋梗塞でよく見られる「胸痛」「呼吸困難」などの症状も見られます。
大動脈解離自体も致死率の高い疾患ですが、心筋梗塞も合併しているとなると、より緊急性は高くなります。非常に緊急性が高いので救急車を必ず呼ぶようにしてください。

意識障害

突然意識がおかしくなる状態を指します。具体的には、目を開けない、質問に答えられない、「手をあげてください」などの指示に沿った行動ができない、受け答えがはっきりしないといった症状が挙げられます。
これは、頸動脈や椎骨動脈といった脳への血流を担当する血管に、大動脈解離が及んでしまうことで起こります。脳の中の意識を司る部分の血流が低下したり、血栓が詰まってしまう(脳梗塞)と意識障害につながります。
もちろん意識障害を起こす病気は他にも数多くありますが、大動脈解離であるかどうかに関わらず、突然意識障害を起こすケースの多くは重症です。
様子を見ることなく、早急に救急要請してください。大動脈解離以外の他の病気の有無も候補に入るため、救命救急センターを受診しましょう。

両足の麻痺

突然両足が麻痺して動かせなくなる状態のことを指します。この症状は大動脈解離の約4%に起こるとされています。原因は大動脈解離によって脊髄を栄養する血管に障害が起こるためです。
腕や足につながる神経は脳から脊髄を通っていき、脊髄の上部から腕に、脊髄の下部から脚へ伸びています。脊髄の上部は、椎骨動脈という大動脈とは別の太い血管から栄養を受けているため、大動脈解離が起こってもあまり傷害されません。一方、脊髄の下部は大部分が大動脈からの栄養になるため、大動脈解離の影響を大きく受けます。
そのため両腕の麻痺ではなく、両足の麻痺が代表的な症状になります。これまでの症状と同じく危険な状態ですので早急に心臓血管外科や救命救急センターを受診しましょう。

大動脈解離の主な原因

高血圧

最初に述べたように、大動脈解離は大動脈の壁が外側一枚の膜を残して裂けてしまう病気です。そしてこの解離が起こる原因として、高血圧が考えられます。高血圧が長年、慢性的に続いているとその期間、大動脈の壁は常にダメージを受け続けることになります。これは大動脈解離を起こす原因となる大動脈瘤(血管にできたこぶ)の発生につながり、また大動脈瘤から解離を引き起こす原因にもなります。
すでに大動脈解離の指摘がある方は、かなり厳格に血圧を管理する必要がありますが、そうでない方も検診で引っかかったことがある方は、ご自身で測定してみましょう。1週間のうち半分以上、基準値を超えている場合は医療機関の受診を勧めます。
受診する診療科は一般内科です。血圧が高いだけでは緊急性はありませんので日中に受診してください。

動脈硬化

大動脈解離を起こす原因として、動脈硬化が考えられます。動脈硬化は病名ではなく、状態のことを指します。高血圧や脂質異常症、糖尿病といった病気は、血管へ常にダメージを与えますが、血管は常にそのダメージを回復しようとします。その結果、動脈の壁はどんどん硬くなってしまい、柔軟性が失われどんどん血圧が上がったり、大動脈瘤・大動脈解離の原因になります。
動脈硬化自体では自覚症状はないため、検診やかかりつけ医での定期検査などで指摘されることが多いです。動脈硬化自体に緊急性はありませんが、大動脈解離や心筋梗塞、脳卒中といった重篤な病気につながりますので、早めに医療機関を受診しましょう。緊急性はありませんので日中に一般内科を受診してください。

Marfan(マルファン)症候群

この病気は「遺伝性大動脈疾患」に分類される病気です。遺伝子異常によって全身の結合組織がうまく作れない病気です。結合組織というのは全身の至るところで使用される組織ですが、特に心臓・血管・筋肉、そして眼の病変が特徴的です。
家族に同じ病気と診断された方がいたり、もしくは突然死された方がいる場合は、「家族歴がある」と表現され、この病気のリスクが上がります。また腕や指が長く関節が非常に柔らかい、漏斗胸(胸の中央部が大きく凹んでいる)といった身体的特徴もあり、これは診断の参考になります。
もし家族歴があったり、先述の身体的特徴がある場合には、一度医療機関を受診しましょう。
専門科は心臓血管外科です。特に症状がなければ緊急性はありませんので、出来るだけ早い日程で受診してください。

Ehlers-Danlos(エーラス・ダンロス)症候群

この病気も「遺伝性大動脈疾患」に分類される病気です。遺伝子異常によって本来正常に作られるはずのコラーゲン分子が出来ない病気です。分子生成レベルの異常なので、全身の至るところに影響があります。
特徴として、非常に薄く透明性のある皮膚で、すぐ出血しやすいといった所見があります。寿命も短く、腸管や子宮の突然の破裂や動脈からの出血による突然死という例も少なくありません。
そのため先述の家族歴の有無が非常に重要になります。
もしある場合は、速やかに医療機関を受診することを勧めます。専門科は循環器内科や心臓血管外科です。症状が何もなければ緊急性はありませんが、早めの日程で受診しましょう。

すぐに病院へ行くべき「大動脈解離の症状」

ここまでは大動脈解離の症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

胸や背中の激しい痛みや失神がある場合は、心臓血管外科へ

胸や背中に突然、激しい痛みを訴えられたり、失神(突然意識を失うこと)が見られた場合は、急性大動脈解離が疑われます。
これまでの紹介した大動脈解離に特徴的な症状のうち、激しい痛みと湿疹は大動脈の解離そのものによって生じています。一方、呼吸困難や意識障害、両足の麻痺などは、大動脈解離の合併症にあたります。どちらにせよ、緊急性は高くどれかひとつでも緊急性は高いです。本人はあまりにも激しい痛みや失神のため、自力で救急要請することはまず不可能ですので、周囲のかたが気づいたら即、救急車を呼んでください。
専門科は心臓血管外科です。大動脈解離を治療できる医療機関は限られますので、出来るだけ早く受け入れてもらえて、かつ迅速に治療開始できる病院に行くことが重要になります。ご自宅からの近さや通院歴などは一旦考慮せず、まず最短で治療に当たることを重視してください。

受診・予防の目安となる「大動脈解離の症状」のセルフチェック法

  • ・激しい背部痛がある場合
  • ・失神がある場合
  • ・両足の麻痺症状がある場合

大動脈解離の症状を予防する方法

定期的な検診を受ける、生活習慣を見直す

まずは動脈硬化につながる習慣を止めることです。
高血圧、糖尿病、脂質異常症といった疾患がないか定期的な検診を受けてください。
何か指摘された場合はすぐにその治療に取り掛かりましょう。
一般的には高血圧は塩分量の減量、糖尿病は糖質の減量、脂質異常症は脂質の減量、というように意識することが重要です。これらの生活習慣病では、日々の食事の改善が最も重要になります。ぜひ一度、普段の食事から取り入れてください。
また睡眠不足や運動不足も動脈硬化につながります。十分な時間の休養と、定期的な運動習慣をつけるようにしましょう。

「大動脈解離の症状」についてよくある質問

ここまで大動脈解離の症状などを紹介しました。ここでは「大動脈解離の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大動脈解離の症状にはどんな痛みが多いですか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

胸や背中、腹部に、「鋭い、激しい痛み」が典型的な症状です。

大動脈解離を発症しやすい人の特徴を教えて下さい。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

高血圧、動脈硬化に対して治療を適切に行っていない方、また家族歴のある方は発症しやすいといえます。

編集部まとめ

大動脈解離の症状や原因、予防法についてまとめました。最後にお伝えしたいことは、とにかく疑ったら早く受診することです。非常に致死率の高い疾患ですので、感じたことのない痛みなどを感じた際はためらわず救急要請してください。

「大動脈解離の症状」と関連する病気

「大動脈解離の症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

「大動脈解離の症状」と関連する症状

「大動脈解離の症状」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

これらの症状がある場合も大動脈解離の可能性が考えられます。複数当てはまる場合は早急に医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師