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「食道がん」を発症すると「胸にどんな痛み」を感じる?痛みを感じる場所も医師が解説!

 公開日:2025/09/05
「食道がん」を発症すると「胸にどんな痛み」を感じる?痛みを感じる場所も医師が解説!

食道がんを発症すると胸にどんな痛みを感じる?メディカルドック監修医が胸のどこに痛みを感じるか・初期症状・原因・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

「食道がん」とは?

食道は、喉と胃をつなぐ管状の臓器で、長さ約25cmほどです。口から摂取した食べ物を胃へと送り届ける、消化管の一部です。食道がんは、この食道の粘膜から発生する悪性腫瘍を指します。日本人に発生する食道がんの90%以上は「扁平上皮がん」という種類で、アルコールと喫煙が原因として多いです。一方、欧米では胃酸の逆流によって起こる「逆流性食道炎」が長期間続くことで発生する「腺がん」が増加傾向にあります。食道がんの怖い点は、初期段階では自覚症状がほとんどないことです。そのため、症状が現れたときには、すでにがんが進行してしまっているケースも少なくありません。だからこそ、リスクをご存じの方や、少しでも気になる症状がある場合には、早期に検査を受けることが極めて重要になります。

食道がんを発症すると胸にどんな痛みを感じる?

食道がんを発症したときに、胸にどのような痛みを感じるかについて解説いたします。

嚥下時の痛み

食べ物を飲み込んだ際に、胸のあたりが「チクチクと痛む」「しみるように痛い」と感じることがあります。これは、がんによって食道の粘膜が荒れ、そこを食べ物や熱い飲み物、あるいは刺激の強い香辛料などが通過することで生じる痛みと考えられます。

締め付けられるような痛み

がんが進行し、食道の壁を越えて周囲の臓器や神経にまで広がっていくと、「締め付けられるような痛み」が持続的に現れるようになります。この段階になると、食事とは関係なく痛みを感じることが増えてきます。この持続的な痛みは、がんがかなり進行しているサインである可能性があり、特に注意が必要です。

重苦しい鈍い痛み

食道がんによる重苦しい胸痛は、主に腫瘍が食道の壁や周囲組織に浸潤することで発生します。初期は食物の通過障害や違和感程度ですが、進行すると腫瘍が食道壁の神経や筋層を刺激し、鈍い圧迫感のような痛みを生じることがあるため、注意が必要です。嚥下のたびに食道が伸展・収縮し腫瘍部位が機械的刺激を受けるため、痛みや重苦しさが増悪することもあります。これらは進行のサインであり、診断・治療の契機となります。

食道がんを発症すると胸のどこに痛みを感じる?

胸骨の後ろ(胸骨後部)

食道がんで最も一般的な痛みの部位は胸骨の後ろです。これは食道が胸骨の直後に位置しているためで、「胸の真ん中が痛い」「胸骨の裏側が重苦しい」といった症状として現れます。この場所の痛みは、食事の際に特に強くなることが多く、食べ物が腫瘍部位を通過する際の刺激によって引き起こされることが多いです。 圧迫感のある鈍痛、食事時の刺激痛があります。 消化器内科または消化器外科を受診してください。持続的な痛みがある場合は緊急性が高く、速やかな検査が必要です。受診時は症状の発症時期、食事との関連性、痛みの性質を詳しく伝えましょう。

背部痛

食道がんが進行し、食道壁を貫通して後方の組織に浸潤すると、背中に痛みを感じることがあります。特に肩甲骨の間や背骨沿いに「背中が重い」「背中に突き抜けるような痛み」として現れることが特徴的です。この背部痛は、がんが相当進行している可能性を示唆する重要なサインです。突き抜けるような痛み、持続的な重苦しさを感じることがあります。背部痛を伴う場合は進行がんの可能性があるため、緊急度が高くなります。消化器外科や腫瘍内科での精密検査が必要です。夜間や休日でも症状が強い場合は救急外来の受診を検討してください。

みぞおちの痛み

食道の下部(胃に近い部分)にがんがある場合、みぞおちの辺りに痛みを感じることがあります。この部位の痛みは「お腹の上部が痛い」「胃の辺りがキリキリする」といった表現で訴えられることが多く、胃の病気と間違われやすいのが特徴です。そのため、消化器内科での内視鏡検査が重要です。また、胃炎や胃潰瘍との鑑別が必要なため、症状の詳細な経過を記録しておくことが大切です。症状が持続する場合は早めの受診をおすすめします。

食道がんを発症すると胸に痛みを感じる原因

腫瘍による炎症や潰瘍によるもの

食道がんの初期段階では、腫瘍が食道の内側(粘膜)に潰瘍を形成し、炎症を引き起こします。この状態では食べ物や唾液が潰瘍部分に接触するたびに痛みが生じます。特に熱い飲み物、酸っぱいもの、辛いものなどの刺激物によって痛みが増強されるのが特徴です。 消化器内科での上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が必要です。食事に関連した痛みが2週間以上続く場合は、遅くとも1ヶ月以内に受診してください。早期発見・早期治療のためには迅速な対応が重要です。

周囲組織への浸潤による神経圧迫

がんが進行すると、食道の壁を越えて周囲の組織(気管、大動脈、心膜など)に浸潤し、神経を圧迫・刺激するようになります。この段階では食事とは無関係に持続的な痛みが現れ、特に夜間や安静時にも痛みを感じるようになります。持続的な胸痛は進行がんの可能性が高いため、消化器外科または腫瘍内科での緊急検査が必要です。CT検査やPET検査による病期診断が重要になります。症状を自覚したら48時間以内の受診を強く推奨します。

リンパ節転移による圧迫症状

食道がんはリンパ節への転移を起こしやすく、縦隔(胸の中央部)や頸部のリンパ節が腫大することで周囲の神経や血管を圧迫し、胸痛を引き起こすことがあります。この場合の痛みは広範囲に及ぶことが多く、首や肩にまで放散することも少なくありません。リンパ節転移を伴う場合は高度進行がんであり、集学的治療(手術、化学療法、放射線療法の組み合わせ)が必要になります。がん診療連携拠点病院の消化器外科や腫瘍内科での専門治療が必要です。緊急性が非常に高いため、早急に受診してください。

食道がんを発症し胸の痛みも伴う場合のステージ分類とは?

ステージIII

持続的な胸痛や背部痛を伴う場合、がんが食道外の組織に浸潤している可能性があります。気管、大動脈、心膜などへの浸潤により、食事に関係ない持続痛が特徴的です。治療法は 化学放射線療法が中心となり、場合によっては手術も検討されます。集学的治療(複数の治療法の組み合わせ)が重要で、患者さんの状態に応じて個別化された治療計画が立てられます。その他に現れる症状は、 重度の嚥下困難、食事摂取不能、体重の著明な減少、呼吸困難、血痰などです。

食道がんの前兆となる初期症状

嚥下時の違和感・つかえ感

食道がんの最初の症状として最も多いのが、食べ物を飲み込む際の違和感です。「食べ物がつかえる感じ」「胸の奥に引っかかる感じ」として現れ、特に固形物(ご飯、パンなど)で強く感じられます。初期では水分では症状がないことが多いのが特徴です。症状は段階的に悪化し、最初は固形物のみ、進行すると水分でも症状が現れます。対処法は無理に飲み込もうとせず、よく噛んで小さくしたり、水分と一緒に摂取したりしてください。ただし、根本的な解決にはならないため、症状が続く場合は検査が必要です。消化器内科での上部消化管内視鏡検査が必要です。2週間以上症状が続く場合は必ず受診してください。早期発見のためには迅速な対応が重要で、緊急性は中程度です。

胸やけ・胃酸逆流の増悪

もともと逆流性食道炎がある方で、胸やけの症状が急に悪化したり、今まで効いていた薬が効かなくなったりした場合は注意が必要です。食道がんによって食道の動きが悪くなり、胃酸の逆流が増悪することがあります。従来の胸やけとは異なる持続的な灼熱感、就寝時の症状増悪、咳や声のかすれを伴うことがあります。食後すぐに横にならない、上体を起こして就寝する、刺激物を避けるなどの生活習慣の改善を行ってください。制酸剤の一時的な使用も有効ですが、症状の根本解決にはなりません。消化器内科での検査が必要です。症状の変化が明らかな場合は1ヶ月以内の受診をおすすめします。特に50歳以上の男性で喫煙・飲酒歴がある場合は早期受診が重要です。

体重減少・食欲不振

明らかな食事制限をしていないにも関わらず、1ヶ月で2~3kg以上の体重減少がある場合は注意が必要です。食道がんによる嚥下障害や全身状態の悪化により、知らず知らずのうちに食事摂取量が減少することがあります。段階的な体重減少、食事に対する関心の低下、満腹感の早期出現などが特徴的です。対処法は高カロリー・高タンパクの食品を少量ずつ頻回に摂取し、栄養バランスを保つよう心がけてください。サプリメントや栄養補助食品の活用も有効です。ただし、根本原因の解決が最優先です。まずは消化器内科での精密検査が必要です。明らかな体重減少がある場合は緊急性が高く、2週間以内の受診を強く推奨します。血液検査、画像検査を含む包括的な評価が必要になります。

食道がんの主な原因

喫煙

喫煙は食道がんの最も重要な危険因子の一つです。タバコに含まれる発がん性物質が食道の粘膜に直接作用し、DNA損傷を引き起こします。喫煙経験者の非喫煙経験者に対する相対リスクは3.01倍とする報告があります。消化器内科での定期的なスクリーニング検査が推奨されます。特に40歳を過ぎた長期喫煙者は年1回の検査を検討してください。また、禁煙外来との連携も重要で、がんのリスク軽減のためには禁煙が最優先です。

アルコール

アルコール、特に日本酒やウイスキーなどの強いお酒の常飲は食道がんのリスクを大幅に増加させます。アルコールが代謝される過程で生成されるアセトアルデヒドが強い発がん性を持ちます。特にアルコール脱水素酵素の活性が低い体質の方(お酒で顔が赤くなりやすい方)では、よりリスクが高くなるため、注意が必要です。
受診について: 長期間の多量飲酒歴がある方は消化器内科での定期検査が必要です。1日日本酒2合以上を20年以上続けている場合は高リスク群となり、年1回の内視鏡検査が推奨されます。アルコール依存症の場合は精神科との連携も重要になります。

逆流性食道炎の長期化

胃酸の逆流が長期間続くことで食道の粘膜が慢性的な炎症を起こし、バレット食道(食道の粘膜が胃の粘膜様に変化)を経て食道腺がんに進展することがあります。これは欧米に多いタイプの食道がんですが、日本でも食生活の欧米化により増加してくることが予想されます。逆流性食道炎の症状が長期間続いている方は消化器内科での定期的な内視鏡検査が必要です。特に全周に3cm以上の長いバレット食道(LSBE)と診断されている場合は、定期的な内視鏡による経過観察が推奨されます。

食道がんの検査法

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

食道がんの診断において最も重要な検査です。口または鼻から細い管状のカメラを挿入し、食道の内部を直接観察します。怪しい病変があれば、その場で組織を採取(生検)して病理学的診断を行うことが多いです。最新のNBI(狭帯域光観察)やBLI(青色光観察)などの特殊光を用いることで、早期がんの発見率が向上しています。消化器内科、消化器外科、内視鏡センターなどで検査が実施されます。通常は外来での日帰り検査です。検査時間は5分〜15分程度です。生検を行った場合は、結果が出るまで数週間程度かかります。

CT検査

食道がんの進行度(ステージング)を評価するために必須の検査です。造影剤を使用することで、がんの大きさ、周囲臓器への浸潤、リンパ節転移、遠隔転移の有無を詳細に評価できます。治療方針の決定において極めて重要な情報を提供します。放射線科で実施されます外来での日帰り検査です。検査時間は数分程度で、造影剤使用時は絶食や一部内服を中止する薬があります。腎機能に問題がある場合は造影剤を使用できないことがあるため、事前の血液検査が必要になります。

PET-CT検査

がん細胞が正常細胞よりも多くのブドウ糖を取り込む性質を利用した検査です。放射性ブドウ糖(FDG)を注射し、その集積を画像化することで、原発巣の評価だけでなく、全身の転移の検索が可能です。特に遠隔転移の発見に優れており、治療方針の決定に重要な役割を果たします。PET-CT装置を有する総合病院やがん専門病院で実施されます。外来での日帰り検査で、検査時間は注射後の待機時間を含めて数時間程度です。

「食道がんと胸の痛み」についてよくある質問

ここまで食道がんと胸の痛みの関係性などを紹介しました。ここでは「食道がんと胸の痛み」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

逆流性食道炎と食道がんの胸の痛みは同じ特徴でしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

逆流性食道炎と食道がんの胸の痛みは区別できないことも多いです。ただし、両者の違いをあげるとすると、逆流性食道炎による痛みは主に「胸やけ」として現れ、食後や横になった時に悪化し、制酸剤で軽快することが多いです。一方、食道がんによる痛みは食べ物の通過時に生じる「嚥下時痛」が特徴的で、進行すると食事に関係なく持続的な痛みとなります。また、食道がんでは制酸剤の効果は限定的です。前述の通り、特に逆流性食道炎が長期間続いている方では食道がんのリスクも高くなるため、定期的な内視鏡検査による確認が重要です。症状に変化があった場合は必ず専門医を受診してください。

編集部まとめ 喫煙・飲酒歴のある方は食道がんに注意

食道がんによる胸の痛みは、がんの進行とともに変化する重要な症状です。初期の嚥下時痛から始まり、進行とともに持続的で激しい痛みへと変化していきます。痛みの部位も胸骨後部から背部、みぞおちへと広がることがあり、これらの変化は病期の進行を反映しています。食道がんは初期症状に乏しいがんですが、胸の痛みが現れた場合はすでにある程度進行している可能性が高いため、早急な検査と治療が必要です。特に喫煙・飲酒歴のある方、逆流性食道炎の既往がある方は定期的なスクリーニングを受けることで、より早期の発見が可能になります。胸の痛みや嚥下困難などの症状を自覚された場合は、自己判断せずに消化器内科や消化器外科の専門医を受診してください。早期発見・早期治療により、良好な予後が期待できる疾患でもあります。

「食道がん」と関連する病気

「食道がん」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

耳鼻科の病気

食道がんは他の消化器がんとの関連性が高く、特に頭頸部がんとの重複がんも多く見られますので、定期的なスクリーニングが重要です。特に飲酒・喫煙歴のある方は注意が必要です。

「食道がん」と関連する症状

「食道がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 嚥下困難
  • 胸やけ
  • 体重減少
  • 声のかすれ
  • 背中の痛み
  • 食欲不振

これらの症状は食道がん以外の疾患でも現れることがありますが、複数の症状が組み合わさって現れる場合は注意が必要です。定期的な胃がん検診や健康診断の受診が重要です。

この記事の監修医師