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「バレット食道がん」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2025/09/11
「バレット食道がん」の症状やなりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!

バレット食道がんとは?メディカルドック監修医が食道がんとの違い・症状・末期症状・原因・なりやすい人の特徴・検査・治療法などを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

「バレット食道がん」とは?

バレット食道がんは、バレット食道という前がん病変から発生する腺がんの一種です。バレット食道とは、胃酸の逆流により食道の下部粘膜が胃の粘膜に似た形態に変化した状態を指します。この変化した粘膜からがんが発生することを「バレット食道がん」と呼びます。
バレット食道がんは、欧米では食道がん全体の約80-90%を占める一方で、日本では約5-10%と比較的少ない疾患でした。しかし、近年の食生活の欧米化や肥満の増加により、日本でも患者数が増加傾向にあります。この病気は、慢性的な胃食道逆流症が主な原因とされており、長期間にわたる胃酸の逆流により食道粘膜が変化し、最終的にがん化に至るという過程をたどります。早期発見・早期治療により良好な予後が期待できるため、適切な知識を持つことが重要です。

「バレット食道がん」と「食道がん」の違いとは?

バレット食道がんと一般的な食道がんには、いくつかの重要な違いがあります。一般的な食道がんの多くは食道の中部から上部に発生する扁平上皮がんですが、バレット食道がんは食道の下部、特に胃との境界部分に発生する腺がんです。原因の違いは、従来の食道扁平上皮がんは主に喫煙や飲酒が原因とされていますが、バレット食道がんの主な原因は胃食道逆流症や肥満、ピロリ菌の除菌などです。肥満やピロリ菌の除菌が、酸性の強い胃酸の逆流を助長させ、食道粘膜が慢性的な炎症を起こし、粘膜の性質が変化することでがん化のリスクが高まります。患者層の違いとして食道扁平上皮がんは日本人男性に多く見られ、特に60-70歳代に好発します。一方、バレット食道がんは欧米人に多く、肥満や胃食道逆流症を患う中年男性に多い傾向です。両者は同じ食道に発生するがんですが、発生部位や進行パターンの違いにより、手術方法や治療戦略が異なる場合があります。バレット食道がんは胃との境界部分に発生するため、手術の際は胃の一部も含めて切除することが多くなります。

バレット食道がんの主な症状

つかえ感・嚥下困難

バレット食道がんの最も典型的な症状は、食べ物を飲み込む際のつかえ感や嚥下困難です。初期には固形物を飲み込む際に違和感を感じる程度ですが、進行すると液体も通りにくくなります。この症状は徐々に進行し、食事量の減少や体重減少につながることもあり注意が必要です。症状を和らげるために、食べ物をよく噛んで小さくする、水分を多めに摂取しながら食事をする、流動食や軟らかい食品を選ぶなどの工夫ができます。ただし、これらは一時的な対処法であり、根本的な治療にはなりません。つかえ感が継続する場合は、消化器内科または消化器外科を受診してください。受診時は症状の経過、食事との関連、体重変化について詳しく説明することが重要です。完全に食べ物が通らなくなった場合は緊急性が高く、速やかな医療機関への受診が必要です。

胸痛・背部痛

食道がんが進行すると、胸の奥や背中に痛みを感じることがあります。この痛みは食事に関係なく持続することが多く、しばしば鈍い痛みとして表現されます。がんが周囲の組織に浸潤している可能性を示す重要な症状です。痛みに対しては市販の鎮痛薬で一時的に緩和される場合もありますが、根本的な解決にはなりません。痛みが強い場合は安静にし、無理な活動は避けることが大切です。持続する胸痛や背部痛は、消化器内科での精密検査が必要です。痛みの性質、持続時間、誘因について詳しく記録しておくと診断に役立ちます。激しい痛みや呼吸困難を伴う場合は、緊急受診が必要です。

体重減少・食欲不振

バレット食道がんが進行すると、嚥下困難による食事摂取量の減少や、がんによる代謝の変化により体重減少が起こります。また、がん細胞が産生する物質の影響で食欲不振も生じます。短期間での大幅な体重減少は、がんの進行を示唆する重要なサインです。栄養価の高い食品を少量ずつ頻回に摂取する、食べやすい温度や形状に調整するなどの工夫が有効です。ただし、根本的な治療が最も重要となります。体重減少が続く場合は、消化器内科での精密検査と栄養評価が必要です。受診時は体重が何キロ減ったのか、その期間や食事記録を持参すると診断に役立ちます。急激な体重減少や全身状態の悪化がある場合は、早急な医療介入が必要となります。

バレット食道がんが進行すると現れる症状(末期症状)

嚥下不能・栄養失調

がんが進行すると食道の内腔が完全に閉塞し、唾液さえも飲み込めなくなることがあります。この状態では経口摂取が不可能となり、急激な栄養失調や脱水が進行します。この段階では医療機関での緊急処置が必要です。食道ステント留置や胃瘻造設などの治療により、栄養摂取経路を確保することが優先されます。嚥下不能の状態は生命に関わる緊急事態です。消化器内科または消化器外科のある病院へ速やかに救急受診してください。この段階では入院治療が必須となります。

呼吸困難・咳嗽

進行したバレット食道がんが気管や気管支に浸潤すると、持続する咳や血痰、呼吸困難が生じます。また、食道気管瘻(食道と気管が交通した状態)が形成されると、食べ物や飲み物が気道に流れ込み肺炎を繰り返すようになります。呼吸困難に対しては痰の排出や酸素吸入が必要です。咳が強い場合は鎮咳薬が処方されることもありますが、根本的な治療が優先されます。呼吸器症状を伴う場合は、消化器内科と呼吸器内科の連携による治療が必要です。呼吸困難が急激に悪化した場合は、緊急受診する必要があります。

全身衰弱・多臓器不全

末期のバレット食道がんでは、がんの転移や全身への影響により、肝機能障害、腎機能障害、心不全などの多臓器不全が生じます。患者さんは極度の全身衰弱、意識レベルの低下、浮腫などの症状を呈します。この段階では症状の緩和と患者さんの苦痛軽減が治療の中心となります。疼痛管理、呼吸困難の緩和、精神的支援などの緩和医療が重要になります。多臓器不全の状態では、緩和医療科や在宅医療チームとの連携による包括的なケアが必要です。患者さんと家族の希望を十分に聞きながら、最適な療養環境を選択することが大切です。

バレット食道がんの原因

胃食道逆流症

バレット食道がんの最も重要な原因は、慢性的な胃食道逆流症です。胃酸が食道に逆流することで、食道粘膜が持続的な炎症にさらされ、正常な扁平上皮から胃型の円柱上皮へと変化します。この変化した粘膜(バレット食道)からがんが発生するリスクが高まります。とくに全周に3cm以上あるバレット食道はがんの発生リスクが高いです。胃食道逆流症では、胸やけ、酸っぱいものが上がってくる感じ(呑酸)、喉の違和感、慢性的な咳などの症状が現れます。これらの症状が長期間続くと、バレット食道やバレット食道がんのリスクが高まります。胃食道逆流症の症状がある場合は、消化器内科を受診してください。症状の頻度や持続期間、食事との関連について詳しく説明することが重要です。症状が軽度でも、長期間続いている場合は一度検査を受けることをお勧めします。

肥満・メタボリックシンドローム

肥満、特に腹部肥満は胃食道逆流症のリスクを高める重要な因子です。腹部の脂肪が増加すると胃内圧が上昇し、胃酸の逆流が起こりやすくなります。また、メタボリックシンドロームに伴うインスリン抵抗性も、バレット食道がんのリスクを高めると考えられています。肥満やメタボリックシンドロームそのものに特有の症状はありませんが、胃食道逆流症を併発しやすいです。高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病も起こりやすくなります。肥満の管理には内科(内分泌代謝内科)での相談が有効です。BMIや腹囲の測定、生活習慣の見直し、必要に応じて治療が検討されます。緊急性は低いものの、長期的な健康維持のために早めの対策が重要です。

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生し、胃酸を中和することによって胃に生息しています。ピロリ菌は萎縮性胃炎を起こし、胃潰瘍や胃癌の発生母地となるため、ピロリ菌感染が判明した場合は除菌治療がすすめられます。しかし、ピロリ菌を除菌すると、相対的に胃酸が強くなり、胃食道逆流症が増え、それによりバレット腺癌の発生が増加すると予想されています。とはいえ、ピロリ菌は胃がんの最大のリスク因子であり、除菌による胃がん予防のメリットは非常に大きく、バレット食道がんのリスクを懸念して除菌をためらうべきではありません。ピロリ菌除菌後に胸やけなどの症状が出た場合は、胃食道逆流症を抑える治療薬がありますので、主治医に相談しましょう。

喫煙

バレット食道がんにおいて喫煙者は非喫煙者と比較し、約2倍の発がんリスクがあるとされています。喫煙の用量に依存して発がんリスクが高い一方で、禁煙による発がん予防効果も報告されています。喫煙の生活習慣がある方は特に注意が必要です。禁煙したいのに自分だけ
では難しいという方は禁煙外来で相談することをおすすめします。

バレット食道がんになりやすい人の特徴

中年男性・白人種

バレット食道がんは男性に多く発症します。特に白人男性での発症率が高いことが知られています。日本人では比較的少ない疾患です。年齢や性別は変更できない危険因子ですが、該当する方は定期的な健康診断での内視鏡検査を受けることが重要です。また、胃食道逆流症の症状がある場合は、早期の治療開始が予防につながります。加齢により食道の運動機能が低下し、胃酸の逆流が起こりやすくなることが一因と考えられています。該当する年代の男性は、消化器内科での定期的な検査を受けることをお勧めします。

胃食道逆流症がある方

長期の胃食道逆流症はバレット食道・バレット食道がんの重要な危険因子です。特に週に2回以上の胸やけがある場合はリスクが高まります。胃食道逆流症に対しては、胃酸を抑える作用のある内服治療が効果的です。また、禁煙は最も重要な予防策の一つです。生活習慣の改善として、食後すぐに横にならない、頭部を高くして就寝するなどの工夫も有効となります。長期間の酸逆流により食道粘膜が慢性炎症を起こし、バレット食道へと変化することが原因です。長期間の胃食道逆流症がある場合は、消化器内科で内視鏡検査を受けましょう。症状の持続期間、治療歴について詳しく説明してください。定期的な内視鏡検査が推奨される場合があります。

食生活・生活習慣

高脂肪食、辛い食べ物、アルコール、カフェインの過剰摂取は胃食道逆流症のリスクです。また、大食い、早食い、就寝前の食事も逆流のリスクを高めます。運動不足や過度のストレスも間接的に影響します。食事内容の見直し、小分けして食べる、食後2-3時間は横にならない、アルコールやカフェインを控える、適度な運動を行うなどの生活習慣の改善が効果的です。これらの食生活や生活習慣は、下部食道括約筋の機能を低下させたり、胃酸分泌を増加させたりすることで、胃食道逆流症を引き起こしやすくします。消化器内科や内科で生活習慣に関する相談をしてみましょう。食事日記をつけておくと、どのような食品が症状を悪化させるかがわかりやすくなります。管理栄養士による栄養指導を受けることも有効です。

バレット食道がんの検査法

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

消化器内科や内視鏡科で行われる最も重要な検査です。口または鼻から内視鏡を挿入し、食道、胃、十二指腸を直接観察します。バレット食道がんの診断には欠かせない検査で、疑わしい部位があれば生検(組織採取)も同時に行います。通常は外来検査として行われ、入院の必要はありません。検査時間は10-15分程度で、鎮静剤を使用した場合は1-2時間の安静後に帰宅できます。生検を行った場合でも、特別な処置がなければ当日帰宅可能です。

CT検査・PET-CT検査

放射線科で行われる画像検査です。CT検査では胸部から腹部の断層画像を撮影し、がんの進展範囲や他臓器への転移を評価します。PET-CT検査では全身のがんの分布を調べます。通常は外来で検査することが可能です。CT検査は30分程度、PET-CT検査は数時間程度で終了し、当日帰宅できます。造影剤を使用する場合は、アレルギーの有無を事前に確認し、検査後しばらく経過観察することがあります。

超音波内視鏡検査(EUS)

消化器内科や内視鏡科で行われる専門的な検査です。内視鏡の先端に超音波装置がついた特殊な内視鏡を用いて、食道壁の詳細な構造や深達度(がんがどの程度深く浸潤しているか)を評価します。この検査を用い、治療方針の決定に必要な重要な情報を得ることができます。外来で行われることが多く、入院は通常必要ありません。検査時間は20-30分程度で、鎮静剤を使用することが多いため、検査後1-2時間の安静が必要です。検査結果は当日または後日説明されます。

バレット食道がんの治療法

内視鏡的治療

消化器内科や内視鏡科で行われる低侵襲治療です。早期のバレット食道がんに対して、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われます。がん病巣を内視鏡下で切除する治療法で、開腹手術に比べて体への負担が少ないのが特徴です。数日から1週間程度短期入院を必要とします。治療前日に入院し、治療翌日または翌々日に退院することが多いです。合併症がなければ、比較的早期の退院が可能です。退院後は定期的な外来通院が必要です。定期的な内視鏡検査を行い、治癒状況や再発の有無を確認します。その後は年1-2回の定期検査を継続します。

外科手術

消化器外科で行われる根治的治療です。バレット食道がんは食道下部に発生するため、食道下部切除と胃上部切除を組み合わせた手術が行われます。開胸開腹手術または胸腔鏡・腹腔鏡を用いた低侵襲手術があり、患者さんの状態に応じて選択されます。手術は入院治療として行われ、入院期間は数週間程度です。術後の経過により延長することもあります。手術前日に入院し、手術翌日から徐々に食事を開始し、全身状態が安定してから退院となります。退院後は定期的な外来通院が必須です。定期的な血液検査、画像検査、内視鏡検査により再発の有無を確認し、必要に応じて栄養指導も行われます。

化学療法・放射線療法

腫瘍内科、消化器外科、放射線科で行われる全身治療です。進行したバレット食道がんに対して、抗がん剤による化学療法や放射線照射による放射線療法が行われます。手術前の補助療法として行われることもあります。化学療法は外来通院で行われることが多く、副作用の管理のため短期入院が必要な場合もあります。放射線療法も外来で行うことが多いです。治療期間中は週数回の定期通院が必要です。血液検査による副作用のチェック、全身状態の評価、必要に応じた支持療法が行われます。また、治療終了後も定期的な効果判定と経過観察のための通院が継続されます。

「バレット食道がん」についてよくある質問

ここまでバレット食道がんを紹介しました。ここでは「バレット食道がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

バレット食道がんを発症する確率について教えてください。

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

バレット食道のバレット食道がんのリスクは一般人口と比較すると30~125倍高いリスクとされていますが、バレット食道の方がバレット食道がんを発症する確率は、欧米の報告では年間0.3~0.6%程度でそれほど高い確率ではありません。また、バレット食道があっても必ずしもがんに進行するわけではありません。定期的な内視鏡検査による経過観察と、胃食道逆流症の適切な治療により、リスクを軽減することが可能です。特に高度異形成を伴うバレット食道では、がん化のリスクが高くなるため、より頻繁な検査や予防的治療が検討されます。

バレット食道がんの初期症状について教えてください。

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

バレット食道がんの初期症状は非特異的で、胃食道逆流症の症状と区別がつきにくいことが多いです。最も早期に現れる症状は、固形物を飲み込む際の軽度のつかえ感や違和感です。また、胸やけや呑酸といった逆流症状が以前より悪化したり、治療に対する反応が悪くなったりすることもあります。体重減少や食欲不振は、ある程度進行してから現れる症状です。これらの症状は他の疾患でも見られるため、長期間の胃食道逆流症がある方や、バレット食道と診断されている方は、定期的な内視鏡検査による早期発見が重要です。

編集部まとめ バレット食道がんは予防的な生活習慣が重要

バレット食道がんは、慢性的な胃食道逆流症から発症する比較的稀ながんです。特に中年男性、肥満、長期間の逆流症状がある方は注意が必要です。早期の段階では症状が軽微で見過ごされやすいため、リスクファクターを持つ方は定期的な内視鏡検査を受けることが重要となります。早期発見により内視鏡治療など侵襲がすくない治療が選択肢になりますので、定期的な検査をおすすめします。

「バレット食道がん」と関連する病気

「バレット食道がん」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

耳鼻科の病気

食道がんは耳鼻科系のがんも合併することが多いとされています。お腹の症状だけではなく、喉の違和感などにも注意を払う必要があります。気になる症状がある方は医療機関を受診しましょう。必要時は定期的な検査をおすすめします。

「バレット食道がん」と関連する症状

「バレット食道がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 呑酸
  • つかえ感
  • 嚥下困難
  • 体重減少

これらはバレット食道がんに特異的な症状ではありません。胃食道逆流症などの良性疾患から、バレット食道がん以外の悪性疾患の可能性もあります。これらの症状を放置せずに医療機関を受診し、医師の診察を受けましょう。

この記事の監修医師