「胃がんで胃を全摘出した場合の余命」はどれくらいかご存知ですか?医師が解説!

胃がんを発症し胃を全摘出した場合の余命とは?Medical DOC監修医が胃の全摘出はステージいくつで行うのか・医師はどのような基準で胃の全摘出を判断するのかなどを解説します。

監修医師:
岡本 彩那(淀川キリスト教病院)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんとは、胃の内側を覆う粘膜からできる悪性腫瘍(がん)のことを指します。胃がんは様々な要因により発生しますが、中でもヘリコバクター・ピロリ感染は胃がんとの関連が示唆されています。そのため、ピロリ菌の検査や除菌など、がんにかからないための治療も行われてきています。
しかしながら未だに胃がんは日本においては3番目に多いがんであり、がんが死亡原因のものとしては、4番目に多いものです(2023年)。
胃がんになった場合、状況により内視鏡処置や手術、抗がん剤などによる治療を行っていきます。ここでは手術、とくに胃全摘となってしまった場合について解説していきます。
胃がんを発症し、胃を全摘出した場合の余命
胃がんを発症し、手術にならないケースは主に
① 内視鏡で取り切れる場合
② 肝臓など遠隔転移がある場合
となります。つまり内視鏡では取り切れない遠隔転移がない胃がんは手術の対象となります。手術対象となるがんの中でも、がんの種類やできた場所などにより胃の一部をとるのか、全部取ってしまうのかが変わってくるのです。つまり、StageⅠ~Ⅲまでの胃がんが手術となりえるため、それぞれのStageによって予後も変わってきます。
一般的にはStageⅠであれば手術で取り切れることも多く5年生存率(5年後に生きている確率)も83~89%と言われています。一方でStage2,3となってくると、がん自体も大きく、リンパ節転移や周囲の臓器へ及んできたりするため、胃がんが進行するにつれ5年生存率も66~77%(StageⅡ)、31~59%(StageⅢ)と下がってきます。
※5年生存率はStage別の生存率
【高齢者】胃がんを発症し、胃を全摘出した場合の余命
まず、高齢者の場合、胃がんの状態自体が手術可能であったとしても、年齢などより手術のリスクが高い、もしくは全身の状態が悪く手術に耐えれないという可能性もあります。
手術に耐えうると判断された場合でも、手術後の抗がん剤治療が難渋する、手術後に十分な栄養を摂れないなど様々な要因が重なり、若年者よりも予後が悪くなる可能性があります。
胃の全摘出はステージいくつで行う?
胃がんで手術を行う場合は遠隔転移等がなく、内視鏡で取り切れない場合です。そのため、StageとしてはStageⅠ~Ⅲに該当します。ただし、Stage分類だけで胃全摘を決定するのではなく、個々の状態、年齢なども考慮して行うか決定していきます。
医師はどのような基準で胃の全摘出を判断するのか?
進行がん
まず、全摘術に関わらず、手術を行う場合は進行癌です。早期癌であれば内視鏡等での切除(ESD:内視鏡的粘膜下切除術、EMR:内視鏡的粘膜切除術)になります。手術と内視鏡での切除では侵襲(医療により身体)も少なく、まず推奨されます。内視鏡を行っても取り切れなかった場合はその後に手術を選択します。
遠隔転移がない
手術を行う場合は手術によって根治、つまり癌がとり切れることが前提です。遠隔転移(肝臓など他の臓器への転移)がある場合はその部分まで取り切れません。そのため、基本的には遠隔転移(肝臓など他の臓器への転移)がある場合には手術ができません。ただし、転移があったとしても一つだけなどで、抗がん剤での治療でがんが小さくできて取り切れると判断された場合などは手術を行うこともあります。
胃がんのできる場所
胃がんの手術でどのような手術になるか決定する因子の一つには胃がんができる場所がどこか、ということになります。
胃の出口に近い場所にできている胃がんであれば胃の下半分をとる形の手術となることが多いですが、胃の入り口近くまで及んでいる、もしくは胃の入り口近くにできているがんは胃全摘術が選択されることが多いでしょう。
範囲が広いがん
早期胃がんであっても、範囲がかなり広い、大きながんとなってしまった場合は内視鏡で取り切ることができません。そのため、手術となりますが、この場合も胃の入り口近くにがんがあり、胃の下まで広がってしまった場合は胃全摘術が選択されることがあります。
周囲臓器まで浸潤しているがん
進行癌で膵臓等、周囲の臓器まで及んでおり、膵臓などを一緒に取る必要がある場合でも胃全摘術が選択されます。
胃を全摘出した後に日常生活で注意するべきこと
初めは複数回、少量の食事を
胃は食べたものをため込んで消化し、少しずつ腸に流す働きがあります。胃全摘後では胃がすべてなくなってしまうため、その働きがなくなります。そのため、初めは一度にたくさんのものを取るのではなく、少しずつ複数回に分けて食べるようにします。
ゆっくりかんで少しずつ食べる、早食いをしない
食べたものは直接腸に流れてしまうので、短時間、一度に食べ物を多く摂ってしまうといきなり腸にたくさんの食べ物が流れ込むことになってしまいます。そうすると食後すぐ(30分以内など)に冷や汗や動悸、倦怠感、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの症状が出ることがあります。これは一度に腸の中に食べ物が流れることで腸の動きが激しくなりすぎてしまい起こる症状です。そのため、ゆっくりと少しずつ食事をすることが肝心です。
一度に多くの食べ物をとってしまい、これらの症状が出てしまった場合は横になって休むようにしましょう。また、一度に食事をとって血糖が上がりすぎた場合は、身体が血糖を下げようとします。その際に血糖が下がりすぎてしまい低血糖を起こし、冷や汗やめまい、ふらつきなどをおこすことがあります。このような症状が出てしまった場合は飴などの糖分を口に含むようにしましょう。
消化にいいものを食べる
胃全摘の場合、胃がすべてなくなっており、食べたものは食道から直接腸に流れていきます。本来であれば胃で消化されるべきものが直接腸に流れるため、胃があるときより消化できていないものが腸に流れることになります。そのため、なるべく消化に良いものを取り、脂物などは控えるようにしましょう。
水分をこまめにとる
先に述べた通り、胃がなくなることで消化する力が少なくなったり、その他の症状で下痢などの症状を起こすことがあります。そのため、身体から水分がなくなり脱水になったりします。
定期検査をうける
胃がんになった場合、手術を行って治療をしても再発してしまったり、他の合併症(カルシウムやビタミンの吸収不足による貧血や骨粗鬆症など)が起こる可能性もあります。定期的に病院を受診し、異常がないか検査を行うことは重要です。
「胃がんで胃を全摘出した場合の余命」についてよくある質問
ここまで胃がんで胃を全摘出した場合の余命などを紹介しました。ここでは「胃がんで胃を全摘出した場合の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃を全摘出した場合、食事はどのようなことに気をつければいいですか?
岡本 彩那 医師
胃がなくなることにより食物をため込んで少しずつ流す働きがなくなったり、消化する力が少なくなります。そのため、消化に良いものを少しずつ食べるようにしましょう。
編集部まとめ
胃全摘を行った場合、根治を目指すことができるので手術を行えない場合より良いと言えるでしょう。しかし、様々な生活の制限がかかってきたり、偶発症が起こることもあります。また、残念ながら再発することも0ではありません。
胃がんに対して手術を行った後も生活に気を付け、定期的に病院を受診し異常がないか確認することが重要です。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
- ヘリコバクターピロリ菌感染
- 萎縮性胃炎
ヘリコバクターピロリ感染は胃がんの原因として知られています。胃カメラ等でピロリ菌感染が疑われた場合は検査を行い、感染していれば除菌をするようにしましょう。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹痛
- 吐血
- 貧血
- 浮腫
上記のような症状が気になる場合は医療機関への受診をお勧めします。また、症状がなくても定期的に胃カメラ検査を行うことも考慮してください。
参考文献



