「胃がんステージ4の症状」はご存知ですか?自覚症状や転移しやすい部位も医師が解説!

Medical DOC監修医が胃がんステージ4の症状・自覚症状・転移しやすい部位・余命・生存率・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃は体のみぞおち辺りにある臓器です。口から食べたものの通り道であり、食べ物をため、消化して少しずつ腸に送りだしています。この胃にがんが発生したものが胃がんです。胃がんには内側の粘膜からがんが発生して外側へ広がっていくタイプの他に、胃の壁を厚くさせながら広がっていくタイプのスキルス胃がんがあります。
スキルス胃がんは内視鏡での診断が難しいです。気がついたときにはかなり進行していることも多く、治りにくいがんと言えます。
胃がんの2021年の部位別の統計では、患者数は男性、女性共に第4位とがんの中でも比較的日本人に多いがんと言えます。死亡数はやや減少傾向にありますが、現在も注意が必要ながんの1つです。
胃がんステージ4の症状
胃がんのステージ4は肺や肝臓、腹膜などに遠隔転移をしている状態です。このため、胃がんステージ4の時の症状は、胃がんそのものの症状と転移した場所による症状がみられます。
腹痛、背部痛
胃がんは外側に向かって進行し、胃のもっとも外側の漿膜の外側まで達することもあります。このように胃がんが進行する時に、みぞおちを中心としたおなかの痛みや、背側に向かって進行した場合には、背部痛として感じることもあります。痛みが持続して、胃薬などでもなかなか治らない場合には注意は必要です。症状が続く場合には、消化器内科を受診して相談をしましょう。
体重減少
胃がんが進行すると、内腔が狭くなり食べ物が通りづらくなります。吐き気や嘔吐をきたし食欲が低下して体重が減ってしまうこともあります。また、食事を摂っていても「がん」そのものでカロリーが消費され、体重が減少することもあり、注意が必要です。嘔気、嘔吐などの消化器症状が持続したり、食事を摂っていても体重が減少する場合には何か重大な病気が隠れている可能性があります。胃がん以外でもこのような症状が出ることもあるため、消化器内科や内科で相談をしてみましょう。
お腹の張り、むくみ
胃がんが進行し、腹膜播種をきたすと腹水が溜まってお腹が張ったり、むくみがみられることもあります。この症状だけから胃がんであると断定はできません。おなかの張りやむくみが持続する場合には内科や消化器内科で相談をしましょう。
咳、血痰、息苦しさ
胃がんが肺に転移した場合には、咳や血痰、息苦しさなどがみられることもあります。もちろん、これらの症状は、肺そのものの病気の可能性もあり、症状だけから胃がんの転移とは言えません。咳が、1週間以上持続したり、血痰がみられたり、動いたときに息苦しさなどがみられる場合には内科・呼吸器内科を受診しましょう。
黄疸
肝臓に転移した場合、胆管を閉塞して黄疸となることもあります。この症状も胃がんの転移とは断定できず、肝臓の病気の可能性もあります。しかし、黄疸は肝臓で何か異常が起こっているサインであることが多いです。早めに消化器内科を受診しましょう。
胃がんステージ4の症状に自覚症状はある?
胃がんのステージ4だからと言って必ず症状が出るとは限りません。胃がんは元々症状が出にくいがんの1つです。しかし、ステージ4とがんが進行している場合、何らかの症状が出る可能性は高いです。
腹痛、背部痛
胃がんが進行すると、胃潰瘍の様に胃痛がみられます。また、背側に胃がんがあり、進行すると背中側に痛みが発生することもあります。持続する腹痛や背部痛がみられた場合には、消化器内科を受診しましょう。
血の混じった便、貧血
胃がんの表面から出血し、便に血が混じることも多いです。また、このように少しずつ出血していると次第に貧血が進行します。少しずつ出血すると、症状がなかなか出づらいこともあります。健康診断や血液検査で貧血を指摘された場合や下血を認めた場合には、内科・消化器内科で相談をしてみましょう。
食欲低下、おなかの張り、体重減少
胃がんが進行すると、内腔が狭くなり食べ物が通りづらくなることがあります。そうすると、食欲が低下し、体重が減ってしまうため注意が必要です。また、腹膜播種が起こると腹水が溜まり、腸管の運動が低下しお腹が張りやすいです。また、がんによりエネルギーが消費されることで、食事を摂っていても体重減少がみられることもあります。
胃がんから転移しやすい部位
胃がんが深く入り込み、血管やリンパ管にがんが浸潤し、がん細胞が遠くに流されると遠隔転移を引き起こします。胃がんの転移しやすい部位について解説します。
肝臓
胃の静脈にがん細胞が入り込むと、血流にのって運ばれていきます。胃の静脈は門脈と言って消化管で吸収した栄養を運ぶ役割を持っており、この血液は肝臓に運ばれます。このため、胃がんでは肝臓転移が多いです。肝臓に転移が起こっても、症状が出ないこともありますが、腫瘍が大きくなり胆管を塞いでしまうと黄疸などの症状が出現します。黄疸では、皮膚や眼球の白目が黄色く染まって見える様になります。また、皮膚のかゆみを伴うこともあります。このように黄疸の症状が出た場合には肝臓に病気があるサインの可能性があります。消化器内科で早急に相談しましょう。
肺
胃の静脈は肝臓を通った後に、下大静脈に乗り、心臓を経由して全身へ運ばれます。このため、胃がんの細胞も肝臓を経由した後に、全身の臓器へ運ばれます。血行性転移で多い臓器は、肺や骨などです。肺へ転移すると、咳や血痰、息苦しさが認められることもあります。咳や血痰などの症状のみでは肺転移かはわかりませんが、これらの症状が持続する場合には注意が必要です。早めに主治医に相談をするようにしましょう。
腹膜播種
胃がんが進行して外側の漿膜を超えて大きくなると、腹腔内にがん細胞が露出します。その後に腹腔内にがん細胞が広がってしまったものが腹膜播種です。腹膜播種が起きると、腹水がみられるようになります。腹水の量が多くなると、おなかの圧迫感や張りなどの症状が出現することが多いです。腹水が多くなると、苦しくなり食事の摂取もできなくなることもあるため、場合により腹水を抜く治療を行うこともあります。お腹が苦しい、食事がとれないなどの症状が現れたら、早めに主治医に相談をしましょう。
胃がんステージ4の余命・生存率
胃がんの余命を考えるときに、生存率を参考にします。2014~2015年5年生存率の報告では、胃がんのステージ4でのネット・サバイバルは、1年生存率が38.9%、2年で18.5%、3年10.8%、4年7.8%、5年6.3%となっています。(ネット・サバイバルとは、がんのみが死因となる状況を仮定して計算して求めた生存率です。)この数値を見てもわかるように、胃がんのステージ4での生存率は決して良いものではありません。5年生存率で比較すると、ステージ1は92.8%、ステージ2で67.2%、ステージ3で41.3%であり、ステージ4では急激に生存率の低下がみられます。早期で発見することがとても大切です。
胃がんステージ4の検査法
内視鏡検査
口や鼻から内視鏡を挿入し、食道や胃、十二指腸の内部を直接観察する検査です。この検査で胃の内部にある胃がんの場所や広がり、形状などを観察することができます。また、病変の一部を採取して病理検査を行う生検検査で、がんの確定診断をすることも可能です。
バリウム検査
バリウムという造影剤と胃を膨らませる発泡剤を飲んで検査を行います。体位を変えながらバリウムを胃の壁に沿って広げ、レントゲンで撮影する検査です。この検査により全体的な胃の形、がんの形状や場所、胃の内部の狭窄などを知ることができます。
画像検査(CT、MRI検査、PET検査)
CTはX線、MRIは磁気を利用して体の断面を撮影する検査です。この検査で他の臓器やリンパ節に転移が無いかを調べることができます。造影剤を使用することで、より病変を詳しくみることが可能となります。
また、PET検査は、放射性フッ素を付加したブドウ糖液を注射してがんに取り込まれるブドウ糖の分布を撮影する検査です。PET検査では、CT検査でははっきりしないリンパ節や他の臓器への転移を確認することもできます。
これらの検査を利用して、胃がんの広がりや、リンパ節や遠隔転移の有無を調べ、治療法を検討します。
審査腹腔鏡
審査腹腔鏡は、胃がんが進行して腹膜播種が疑われる場合に行われる検査です。全身麻酔をした上でおなかに小さな穴をあけて、腹腔鏡を挿入し、おなかの中を直接観察します。転移が疑われる部分の組織や腹水を採取して、病理検査でがん細胞の有無を調べ、腹膜播種があるかを調べることができます。
胃がんステージ4の治療法
化学療法
胃がんのステージ4の治療では、遠隔転移がある状態であり、通常手術療法は選択されず、化学療法を行います。化学療法では、「細胞障害性抗がん薬」、「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」があり、これらの薬を単独もしくは組み合わせて使用します。患者さんそれぞれの状態により選ぶ治療薬が変わることがあります。詳しくは主治医に確認をしましょう。
緩和ケア
がんが進行したときの痛みや、腹水などによる苦しさなど生活につらさがあればそれを和らげる治療です。これは、体のつらさだけではなく、仕事のことや、将来への不安も含め心配なことがあれば相談して解決したり、治療を行うこともできます。
何か、心配事や辛さがあれば主治医もしくは医療スタッフに相談をしてみましょう。
「胃がんステージ4の症状」についてよくある質問
ここまで胃がんステージ4の症状などを紹介しました。ここでは「胃がんステージ4の症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がんの手遅れとなる症状について教えてください。
和田 蔵人 医師
胃がんの手遅れとなる症状として特定できるものはありません。しかし、体重が減少したり、腹水が溜まってお腹が張ってきたりする場合には症状が進行している可能性があり注意が必要です。気になる症状があれば、まず医療機関を受診して相談をしましょう。
胃がんステージ4と診断されると食べられなくなるものについて教えてください。
和田 蔵人 医師
胃がんステージ4と診断されて食べられなくなるものがあるわけではありません。しかし、胃がんが進行すると、食べ物の通過がしづらくなったり、胃痛や吐き気などの症状が出ることが考えられます。そのため、刺激物や固形物、消化の悪い物が食べられなくなる可能性があります。辛いものや脂の多いもの、食物繊維が多いもの、固くかみ切りにくいものなどです。具体的には、脂の多い肉や魚、揚げ物、ラーメン、イカ、タコ、こんにゃくや海藻類などが挙げられます。
編集部まとめ 胃がんの症状を疑ったら、消化器内科で相談しよう
進行した胃がんの症状などを中心にお話ししました。しかし、胃がんの症状は他の病気の症状としてみられることも多く、症状のみから胃がんの診断やステージの診断はできません。胃がんは進行すると、予後も悪くなるためなるべく早期での診断と治療が重要です。気になる症状がある場合には、早めに消化器内科を受診して相談をしましょう。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の疾患は胃がんと似た症状が出ることがあります。症状だけでは区別がつかず、治療も異なるため、気になる症状がある場合には消化器内科で相談をしましょう。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹痛・背部痛
- 嘔気・嘔吐
- おなかの張り
- 食欲低下
- 体重減少
- 黄疸
胃がんは初期では症状が出にくいです。しかし、進行すると上記の様な症状がみられることがあります。しかし、これらの症状も胃がん特有ではないため、ほかの病気と区別はつきません。気になる症状がある場合には、消化器内科で相談をしましょう。



